Ladybird
核を倒してから数日後。
最後の霧が消えたのが観測されてから丸一日経って、ようやく霧の事件の収束宣言が眠る心臓本部から言い渡された。既に街には平穏が戻り、人々はいつものように働きに出ている。
後始末を任されていたレディバードもやっとその務めが終わった。明日からは平常通り蟲屋を開店する予定だ。
「ありがとう、カワード。最後まで手伝ってくれて」
日が暮れて電気が点いている蟲屋の中で、レディはカワードに礼を言った。
彼女は四区民にも関わらず最後の霧の消失まで付き合ってくれたのだ。そして収束宣言が出された今、カワードも四区に帰れる。
「本当にどれだけ感謝したらいいか分からないよ。キミがいなかったら、きっとボクはどこかしらで諦めていたと思う」
カワードはレディが霧の調査を始めたその日から協力を申し出てくれた。自分の危険を顧みず、レディを助ける為に霧の街へ飛び込んでくれたのだ。
そのことを思うと全く頭が上がらない。
「ううん。僕は、レディを助けたかった、だけだから」
彼女はそう言うが、レディとしてはそういうわけにはいかない。お金か食事か、なんでもいいからお礼がしたかった。
「それじゃあレディ、もし僕がレディのようなピンチになったら、助けてくれるかい」
「助ける。助けるに決まってるさ」
「約束」
「ああ、約束だ。ボクは必ずカワードの危機には駆けつける」
例え彼女が消えてしまおうと探して見つけ出してみせる。ふたりは小指を結ぶ代わりに軽い笑顔で約束を交わす。
カワードが蟲屋の扉を開くと、もう夜だというのに外にはひとりの青年が立っていた。
「やあ、ふたりとも。カワードちゃんはこれから帰りかい?」
「……ランベルト」
まだ調査報告に追われているはずのランベルトが何故か蟲屋を訪ねてきた。
その取ってつけたような彼の笑顔に、レディは悪い予感を覚えざる他がなかった。




