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Turn Side ①
かつてそのホールは市民に愛される建物だった。
ここがコンコルディアになった時にはもう廃墟となっていたが、その中の設備は豪華だ。大きなエントランスにいくつもの倉庫、真ん中には劇場もある。まさに市民たちの憩いの場。
皮肉にもそれは今になってまた市民が集まるようになったらしい。
ホールの前には大勢の人影があった。
虚ろな目で棒立ちする者、訳も分からず暴れる者、何もない所に向かって延々話し続ける者。
様々な人が集まっているといえば聞こえはいいが、どいつも正気じゃない。
そんな中、まともそうな人間が霧の中から三人現れる。
刀を携えた和装の人物、拳をパキパキ鳴らしている赤髪の青年、表情の見えない仮面をつけた男。
三人は潜むことも隠れることもせず、堂々と正面から歩いてくる。
彼らの目的は誘導。つまり囮だ。
周辺にいる堕ちた住人たちを引き付け、本命の部隊を建物内に突入させる。そういう手はずになっている。
目論みは成功したようで、三人に気付いた住人たちは皆一様に睨み付けてきた。
「さあ、決戦開始だ」
仮面の大男が宣言すると同時に一斉に走り出す。
霧の街の行く末は今、この瞬間に委ねられた。




