挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
精霊育成師の世界旅行 作者:早秋

第5章 今後に向けて

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

85/122

(5)五神と魔道具

 シゲルが転移した世界では、精霊は木、地、水、火、風の五種類に分類されている。
 その五種類は、精霊たちの性質によって分けられているが、なぜ五つなのかといえば、元になっている精霊がいるためだ。
 その五体の精霊を『五神』と呼び、それぞれの属性の頂点に立つと言われている。
 その力は、神にも到達すると言われており、人知の及ばない膨大な力を持っているとされる。
 宗教によっては、五神の存在は神そのものだと言われている。
 自然そのものを神としているオーラ教やマリーナが属しているフツ教は、その考え方に立っている宗教である。

 それだけ大きな力を持つ精霊であるがゆえに、存在そのものは語られていても、人の前に姿を現すことは大精霊以上にありえないことだ。
 それゆえに、五神が人の世に直接関わっていると言われたフィロメナたちの衝撃は、相当なものだった。
「シゲル……確かに五神であれば、あれを作り上げることも可能だが、本当に関わっているのか?」
 疑念半分、納得半分といった顔をして聞いて来たフィロメナに、シゲルは肩を竦めた。
「自分だって信じられないけれど、少なくとも日記にはそう書かれているからね。もしそこを疑うんだったら、日記そのものを創作だと思わなければならなくなるよ?」
 シゲルがそう答えると、フィロメナたちは揃ってうめき声を上げた。
 ミカエラやマリーナも、フィロメナと同じように未だに半信半疑といったところなのだ。

 シゲルは、そんな三人に言葉での説得(?)をしようとはしなかった。
 ただ黙って、彼女たちの中で気持ちの整理ができるのを待っていた。
 そして、やはりというべきか、一番先に復活したのはフィロメナだった。
「……よし。とりあえず、その話に関しては、保留としておこう。あまりにも世間に与える影響が大きすぎる。それに、確かめる手段などないからな」
 フィロメナの言葉に、ミカエラとマリーナは同意するように頷いた。

 フィロメナの見事な棚上げ論に、シゲルは確かにそれが良いだろうなと考えていた。
 別の世界から来たシゲルであっても、日記の内容を未だに百パーセント信じ切れているわけではない。
 故国が同じだけに、信じたいとは思っているが、どこかに疑念を持っていることは確かだった。
 それは違和感といっても良いかも知れない。
 ただ、その違和感は、シゲル自身も自覚していないためこの場で言葉にすることはなかった。

 それよりも、今のシゲルは先に解決しておきたいことがあった。
「ということは、王に会いに行くときは、この話は伏せておくんだね?」
「当然だろう。こんな話、できるわけがない。話をしたとしても精神がおかしくなったと、良くて病院送りになるだけだ」
 苦笑しながらそう答えたフィロメナに、シゲルは他人事のようにそんなものかと考えていた。
「いま知られている古代文明よりも、さらに発達した文明がそれ以前にあったというだけでも場合によっては正気が疑われ兼ねないから。更に五神となると……私も黙っておくことに賛成だわ」
「私も同じく」
 マリーナに続いてミカエラが賛成を示したところで、五大の情報の扱いに関しては、方針が決まった。
 いずれは話をすることもあるかも知れないが、それは超古代文明の話が世間に浸透してからが良いというのがフィロメナたちの意見だった。

 気の長い話に、シゲルはため息をついたが、フィロメナたちが慎重になる気持ちも理解できる。
 特にシゲル自身は、日記の内容をすべて公開するべきだと考えているわけではないので、その方針に反対することもなかった。
 それよりも今は、タケルがハマり、生活の糧にしていた魔道具作りに興味が向いている。
「日記にも書いてあったけれど、当時はそれだけの物を作り上げることが出来るだけの技術力があったみたいだね。遺跡からもそれは想像できたけれど、当時いた人の言葉は貴重だよね」
「それは確かに。一体、どれほどの技術や生産力があったのかと考えると、ため息しか出てこないな」
 フィロメナが、半ば感嘆するようにそう応えた。
 決して大げさではなく、当時と今では、少なくとも魔道具作りに関しては、天と地ほどの差があったことが窺える。
 フィロメナがそんなことを言いたくなるのは、仕方ないといえるだろう。

 フィロメナが嘆いている間に、今度はマリーナが興味を引かれたような顔になってシゲルを見た。
「それにしても、タケルは随分と腕のいい職人みたいだけれど、やっぱり当時のトップだったのかしら?」
「さあ? さすがに本人の日記にはそこまでは触れていないみたいだね。まだ全部は読めていないけれど」
 さらりと流し読みしかしていないので断言はできないが、シゲルはそう答えておいた。
 もっとも、何冊かの日記を読んだシゲルの感想としては、タケルはそんなことを日記にわざわざ書くような性格ではないと考えている。
 ただし、乗せられやすそうでもあるためか、周囲に流されたということは何度も書かれていたりするのだが。

 とにかく、タケルが次々に新しい魔道具を開発していたことは間違いない。
 その事実に、フィロメナが今度こそはっきりとため息をついた。
「やはりあそこで何かしらの資料を持ってこなかったのは、失敗だったな」
 風の都の地下にあった資料や道具は、そのまま置いて来ていた。
 短い日数で行き来が出来るだろうという考えもあったし、何よりもエアリアルの許可をもらっていなかったためだ。
 あの時は、アマテラス号の衝撃が大きすぎて、そこまで気が回らなかったのである。

 嘆くフィロメナに、ミカエラが苦笑しながら言った。
「まあまあ、あの時は仕方なかったじゃない。それに、多分だけれど、風の大精霊の許可はもらえなかったと思うわよ?」
 エアリアルがタケルに対して、特別な感情を持っていることは、あの場にいた誰もがわかっていることだ。
 それを考えれば、地下にあった資料や道具を持ち出せた可能性は低い。
 むしろ、アマテラス号を持ち出せたこと自体を喜ぶべきだった。

 勿論、フィロメナもそのことは十分によく理解している。
「それはわかっているさ。だからこそ惜しいのだが……そういえば、日記以外には何もなかったのか?」
「残念ながら。その日記も技術的なことはほとんど書いていないしね。その辺はきっちりとわけて書いていたみたいだね」
「そうか。……残念だな」
 シゲルの言葉に、フィロメナは非常に残念そうにため息をついた。

 とはいえ、これ以上嘆いていても仕方ない。
 それに、エアリアルは、あの場所に戻って来ては駄目だということは言っていなかった。
 それどころか、アマテラス号のメンテナンスのためにも、たまには戻って来ることを推奨している向きさえあった。
 その時に資料を見に行けばいいと、フィロメナは気持ちを切り替えていた。

「まあ、今はそれはいいか。それよりも、これから先のことを考えると、余計なことをしている暇はないな」
 シゲルたちは、これから超古代文明について幾つかの国と話をする予定でいる。
 それを考えると、残念ながらフィロメナが新しい魔道具作りにまで手を出している余裕がないのは確かだった。
「本当ならそんなことを放っておいて、好きに魔道具を作っていたいのだがな……」
 そう言いながらため息をついたフィロメナに、残りの三人がお互いに苦笑をして見せた。

 フィロメナたちが超古代文明について、世間一般に知らしめようとしているのは、結局それが自分たちに利益に繋がると考えているためだ。
 特に魔道具に関しては、その時代のことが分かれば、今の研究も進むだろうと期待している。
 まさしく「急がば回れ」という状態なのだが、目の前に最高の資料があるという餌をぶら下げられたフィロメナとしては、もどかしく思っていることも確かだった。

 そんなフィロメナを宥めるように、マリーナが言った。
「まあまあ。今はとりあえず、交渉を優先することを考えましょう? 焦る気持ちも分かるけれど、そこで失敗したら、なんの意味もないわよ」
「確かに、その通りだな」
 マリーナの言葉に、フィロメナはもう一度ため息をついた。

 それを見ていたシゲルは、だいぶフィロメナの中にイライラが貯まって来ているのかなあと思っていた。
 旅の間も含めて、フィロメナは満足に魔道具開発ができていなかった。
 それを考えると、一度はフィロメナが好きにできる時間を作ったほうが良いのかもしれない。
 そんなことを考えていたシゲルは、ふとミカエラとマリーナに視線を向けた。
 すると、二人ともほぼ同時に、シゲルを見ていた。
 そのやり取りで、意見の一致が見られたと理解したシゲルは、森の開発が終わった後で、一日だけ好きに出来る時間を作るかと提案して、フィロメナに喜ばれることになるのであった。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ