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精霊育成師の世界旅行 作者:早秋

第4章 風の都

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(6)ギルドカードと精霊について

 シゲルたちがノーランド王国を出るのは、まだ数日先ということになっている。
 その理由は、次の目的地がホルスタット―ノーランド間よりも遠く、準備に色々と時間がかかるためだ。
 途中の町で買えるような消耗品はそこまで考えなくてもいいのだが、やはり大きな町に入らないと買えないような物もある。
 そうした品物を王都に居るうちに揃えておきたかったのである。
 中には注文してから数日待ちという物もあるので、すぐに出発というわけにはいかないのである。

 待ちの状態になっていたからといっても、シゲルたちは暇をしていたわけではない。
 特にシゲルは、契約精霊たちの作業指示などもあるし、何よりも折角時間があるからということで、冒険者ギルドで日数のかからないような依頼を受けたりしていた。
 そうした依頼は、大抵料金が安く、人気が無いので余っていて受けやすかったという事情もある。
 それでも、ランクアップのためのポイントにはなるので、お金に困っていないシゲルとしては、なんの問題もない。
 普通の冒険者であれば、依頼料から普段の生活費や装備などを整えなければならないので、シゲルくらいのランクだとそこまで余裕のある生活が出来るわけではない。
 シゲルは、そうした意味では、一般常識からは外れた存在ということになる。

 
 この日も依頼を無事に終えて、ギルドカードに完了の登録をしてもらったシゲルだったが、ふと思い出したように呟いた。
「そういえば……」
「うん? どうしたんだ?」
 シゲルの依頼に付き合っていたフィロメナが、その呟きを拾ってそう聞いて来た。
「いや、不思議だったんだけれど、ギルドカードも魔道具だよね?」
「ああ。そう言われているな」
「言われている?」
 曖昧な返答をしてきたフィロメナに、シゲルは首を傾げた。

 そのシゲルに、ごく当たり前という顔をしながらフィロメナが続けた。
「シゲルがそう思うってことは、もう既にわかっていると思うが、普通の魔道具と考えれば、あまりにも高度すぎるからな。一部からは、神からの贈り物とさえ言われている」
 ギルドカードを作成するための魔道具は、各ギルドにとっての生命線とも言われており、それに関することはほとんどが表に出てこない。
 それほどまでに気を使って情報を扱っているのだが、それでも漏れてくる情報というものはある。
 そうした情報を総合すれば、とても人の手によって作れるほどの道具ではないという結論になるのだ。

 それもそのはずで、そもそもギルドカードに登録されている各種情報は、世界にあるどこか一か所にまとめて集められて管理されていると言われている。
 そうでなければ、大陸中を移動しても同じように使えるという説明が出来ない。
 世界中のほとんどの人が各ギルドでギルドカードを発行しており、情報の量は膨大なものになるはずだ。
 それをきっちりとすべて管理しているとなると、とても人の手で造られた道具では出来ないという主張が出てくるのも当然だと言える。
 もっとも、シゲルに言わせれば、あるいはどこかでサーバー管理しているようなものだとも考えられなくはないのだが、この世界ではそんな技術はオーバーテクノロジ―だと思われても仕方ないだろう。

 とにかく、いくら古代遺跡の技術であったとしても、それは人知を超えた技術であると思われているのは確かだった。
「――というのが、現在の一般的な考え方だが……そうではないと、シゲルも考えているのだろう?」
「あ~、まあ、そうなるのかな?」
 確信した顔で聞いて来たフィロメナに、シゲルは曖昧に頷いた。
 あれほどの建築技術を持っている文明であれば、データ管理をしておくサーバー的な物を思い付いてもおかしくはない。
 シゲルがそう考えるのは、当然のことだった。
 問題があるとすれば、それらのデータを維持管理するための技術者などをどう確保しているのかという問題はあるが、それも既にヒントになるような存在には二度も会っている。
 シゲルがそれらを結び付けて考えるのは、ある意味で当然のことだろう。

 はっきりしないシゲルの返答だったが、フィロメナはそうだろうと頷きながら続けた。
「もし、それが証明できるような証拠があれば、もしかしたら古代文明は二つ以上あったと証明出来るのだがな」
「あれ、そうなの? 大精霊が絡んでいるから、あまり表沙汰には出来ないんじゃなかったっけ?」
 首を傾げるシゲルに、フィロメナは首を左右に振った。
「大精霊が絡んでいるのは、管理している遺跡だけだ。そこに入らずに証明が出来るのであれば……もっといえば、他の研究者でも簡単に調べられるのであれば、一般に発表することは問題ない」
「あー、そういうことか」
 フィロメナの説明に、シゲルは頷いていた。

 大精霊が管理している古代遺跡は、入場が制限されているため、一般の研究者はまず入れないと考えられる。
 そのため、いくらこの時点でフィロメナたちが発表したところで、色物扱いされるのが関の山である。
 もし、フィロメナが言う通りに、普通の研究者が容易に入れる、あるいは調べられるものがあれば、発表することは問題ないのだ。

 そう言う意味では、フィロメナは次の遺跡には期待を寄せていた。
「もし、風の都に行って新たな発見でもあれば、もしかしたらその発表もできるかも知れない。私は、そういう期待もしている」
「うーん。そう簡単に見つかるとは思えないけれどねえ」
 風の都は、すでに一般に知られている遺跡であり、当然ながら研究者も何度も立ち入っている場所になる。
 そうしたところで、新しい発見をするのが容易でないことは、シゲルは良くわかっていた。
 これは、シゲルが元の世界で行っていた『現地調査』の実体験で得た教訓である。

 フィロメナもそのことはよくわかっているのだが、敢えてシゲルに期待していると言った意味は、別にあった。
「普通なら私もそう思うのだが、今回はまず大丈夫ではないかとも思っているからな」
「えっ、なんで?」
「シゲルがいるからだ」
 森の遺跡も水の町も、いずれも大精霊がシゲルに興味を示したからこそ入ることが出来た。
 であれば、風の都でも同じことが起こってもおかしくはないというのが、フィロメナの自信の元だった。

 そんなフィロメナに、シゲルは苦笑を返した。
「いや、あまり期待されても……なんで大精霊に興味を持たれているかなんて、理由はわかっていないんだし」
「それはわかっているさ。だが、これまでの経験からいっても、大丈夫ではないかと思っているからな」
 自信満々にそう言ってくるフィロメナに、シゲルとしてはさらに苦笑を返すことしか出来なかった。

 この時シゲルが思い浮かべたのは、水の大精霊(ディーネ)との話の内容だった。
 フィロメナはあの時の会話を聞いていたわけではないし、シゲルが話をしたわけでもない。
 それでもシゲルが精霊に好かれているということは、確信を持っているようだった。
 それは、フィロメナだけではなく、ミカエラやマリーナも同じで、それはやはりシゲルに対する精霊たちの懐き度合いで分かることなのだ。
 この世界の住人の常識からいえば、やはりシゲルは精霊に異常に好かれているというのは、三人の共通した考えなのである。

 今もシゲルの懐に隠れているであろう精霊のことを思い浮かべつつ、戸惑うシゲルにフィロメナは笑いかけた。
「まあ、あまり気にするな。そもそも風の都に大精霊が居るかどうかも分からないし、本来大精霊など気楽に会える存在ではないのだからな。……水の大精霊はともかくとして」
 王都で溢れている水の大精霊の噂を思い出したフィロメナは、苦笑しながらそう付け加えた。
「それは自分もよくわかっているけれどね」
 ディーネの姿を思い浮かべながらそう答えたシゲルだったが、なぜかそのまま頭を叩かれる想像をしてしまって、一瞬ブルリと身を震わせてしまった。
 余計なことは考えるものではない。

 しっかりとシゲルが震えたことに気付いたフィロメナだったが、その理由には思い当たらずに首を傾げた。
 そんなフィロメナにシゲルは首を振りつつ、なんでもないと答えておいた。
「それならいいが……これから旅が続くのだから、体調はしっかり治しておいた方がいいからな?」
 そんな心配までされてしまって、シゲルとしては恐縮するしかない。
 シゲルは、まさかこの場で、大精霊に対して失礼なことを考えてしまったからと言う事は出来ずに、その場はそれで話を終えるのであった。
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