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精霊育成師の世界旅行 作者:早秋

第4章 風の都

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(1)次の予定と今の『精霊の宿屋』

 水の町での調査を終えたシゲルたちは、メリヤージュの時と同じように、最後にディーネに挨拶をした。
 そのときに、きちんと日記の持ち出しの許可を得ておいた。
 ただし、やはりディーネにとっても日記は必要なものらしく、写本が終われば返してほしいという条件が付けられた。
 日記を返すには、シゲルたちが水の町に戻って来る必要はない。
 ディーネから渡された道具を水場がある場所で使えば、精霊を呼び出すことができ、そのときに出て来た精霊に渡せばいいらしい。
 非常に便利なアイテムだが、精霊を呼び出すことにしか使えず、さらには一度きりの使い捨てアイテムなのだ。

 日記はシゲルが持ち出すことになったので、他の三人もそれぞれ許可をもらっていた。
 ただ、やはり魔の森の遺跡と似たような傾向になっているのは、それぞれの研究分野があるためだ。
 被る物がないというのは、それだけ研究が進むことになるので、それぞれの意見交換は重要になっている。
 一つの分野では見えなかったところが、別の視点から見れば解明することが出来るということは、別に古代遺跡の研究に限ってのことではないのだ。

 
 ディーネへの挨拶を終えたシゲルたちは、水の町を出て王都へと向かった。
 その途中で、馬車の荷台で一緒になったマリーナがこう切り出してきた。
「随分と読み込んでいるみたいだけれど、何か重要そうな話は見つかったのかしら?」
「ああ、うん。そろそろ聞こうかと思っていたのだけれど――」
「何?」
「山の中にある町ってあるのかな?」
 シゲルの問いに、マリーナはキョトンとした顔になった。
 山は金属資源が多く取れるので、山中に小さな町を作ることも珍しくない。
 マリーナにしてみれば、何を今更という質問だったのだ。

「それはいくらでもあるわよ? でも、シゲルが聞きたいのは、そういう事ではないのよね?」
 マリーナからそう聞かれたシゲルは、自分の聞き方が悪かったとここで気付いた。
 頭の中にあるイメージが優先していて、もう少しきちんとした聞き方をしなければならなかったことを忘れていたのだ。
「いや、ゴメン。その通りだね。……うーんと、なんて言ったらいいのかな……?」
 そう答えたシゲルは、少し考えてから続けた。
「山の中にあるのはそうなんだけれど、山頂とかそれに近い場所にあって、麓からは見えないような場所にある町、かな?」
 シゲルがイメージしているのは、前の世界でも遺跡となっていた有名な都市のことだ。

 その説明でも伝わりにくかったのか、マリーナは小さく首を傾げながら考えるような顔になっている。
 そのためシゲルは、さらに補足するように続けた。
「今、この時代になんて呼ばれているかは分からないけれど、空中都市とか空中庭園とか言われている所はないかな?」
 そのシゲルの言葉で、ようやく思い当たるところがあったのか、マリーナはポンと手を打った。
「それならあるわよ。その遺跡に行くまでがあまりにも大変な道のりで、結局打ち捨てられたと言われている遺跡ね。……でも、他の二つみたいに高い建物があるわけじゃないわよ?」
「それはまあ、場所が場所だけに、多くの建築資材が運べなかったとかじゃないかな? とにかく、そこはこの日記の翻訳者が関わっているみたいなんだ」
 シゲルがそう言うと、マリーナは考え込むような顔になった。
 今まで忘れていたのだが、シゲルと会話したことで、その遺跡がとある名前と関連付けられて呼ばれていることを思い出したのだ。

「風の都とか、風の精霊のお気に入りとか、そんな名前がつけられていたわね。確か」
 遺跡自体は取り立てて他のものと変わらないような造りになっているのだが、その遺跡では人が居なくても多くの風の精霊が確認されている。
 それに加えて、場所が場所だけに風の精霊と関連付けられて大事にされている遺跡なのだ。
「うーん。既に見つかっている遺跡だったら、特に新しい発見はないかな?」
「それはどうかしらね? 確かに見つかって結構経っている遺跡だけに、多くの研究結果もあるでしょうけれど、調べつくされたということはないはずよ?」
 マリーナが知る限りでは、その名前の由来になっている風の精霊関連の研究が多く出ているが、それ以外に目ぼしい話は聞いたことがない。
 もしかしたら、一般に知られている前史文明よりもさらに前の遺跡という視点で見れば、新しい発見があるかも知れない。
 そう付け加えたマリーナに、シゲルはなるほどと頷いた。

 
 この時シゲルとマリーナが話した内容は、フィロメナとミカエラにも伝えられた。
 その結果、次の目的地は風に関連したその遺跡に決まったのである。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 次に向かうべき場所は決まったが、シゲルたちはしばらくの間ノーランド王国の王都に滞在することにした。
 これまで長旅を続けて来たのを癒すという目的もあるし、遺跡で見つけた研究結果を整理するということもある。
 何よりも、水の大精霊から借り受けている日記の写本を早めに終わらせて返さなければならない。

 日記はかなりの厚さの本としてまとめられているので、写本は一週間やそこらで終わるわけではないが、出来る限り進めておく必要がある。
 さらには、写本自体はシゲルではなく、フィロメナたちが行うことになっているので、かなりの手間がかかると予想されていた。
 ちなみに、三人揃って写本を行うのは、それぞれ別々の文字で写本を行うためである。
 超古代文明のことをどこまで一般に明かせるか分からない中で、それだけの手間をかけて写本を行う意味があるのかどうかは不明だが、シゲルでは気付かないような重要な話が隠されているかも知れないということで、それだけの手間をかけて行うことに決まったのである。

 写本は、王都に戻った翌日の午前から早速始まっていた。
 シゲルが英語と日本語の日記を読み比べながらそれを声に出して読み上げて、三人が同時に書き綴る姿は、傍から見ればシゲルが何かを教えている教師にしか見えなかった。
 もっとも、実際も似たようなものなので、それを突っ込む者はいなかった。
 最初のうちはそれぞれに戸惑いもあったが、進めて行くうちに段々と慣れて行き、最後にはある程度のペースで進められるようになっていた。
 そんなこんなで午前中の作業を終えて、午後からは自由に過ごすことになった。

 
 昼食を取り終えたシゲルは、宿の外に出かけずに与えられた部屋に籠っていた。
 部屋でゆっくりしたいという事もあったが、水の町に行っている間に『精霊の宿屋』にも変化があったので、それを整理しようと考えたのだ。
「――さて、まずは箱庭が広くなった効果からかな?」
 シゲルはそう呟きながら、『精霊の宿屋』を開いた。

 水の町で調査を行っているときに、すでに精霊力は十分に貯まっていたので、広さは変えてある。
 前回の変更で東京ドームくらいの大きさになっていたのだが、今回の変更で、その広さはさらにその四倍程度の大きさになっている。
 感覚的には、それなりの大きさの公園といった感じだろう。
 余った精霊力を使って、少し大きめの池も置いたので、猶更立派な公園のように見えている。

 今回はその設置してある池に、ディーネから貰った精霊の雫を合成することにした。
 水の町でやらなかったのは、日記の確認で忙しくてそれどころではなかったためである。
 精霊樹の枝を桜の木に合成したときと同じように、精霊の雫を合成するように指示すると、確認のメッセージが出てくる。
 それに同意をすると、精霊の雫が無くなったことを示す文が出て来た。
「よし。あとはこれで、訪ねてくる精霊にどんな変化があるかだな」
 池が追加されて公園のように見える『精霊の宿屋』は、俯瞰的にみてもかなり見ごたえのある場所になっている。
 その出来に、自分で造ったところとはいえ、シゲルは満足そうな顔になった。

 
 全体の出来を見たあとは、精霊たちの状態を確認した。
 初期の三体の精霊とサクラは、中級精霊のBランクになっている。
 さらに、初期精霊たちは、新しいスキルもそれぞれ追加で覚えていた。
 対照的にサクラのスキルは増えていなかった。
 これは、ずっと『精霊の宿屋』内にいることと、外の世界でも行動させていることの差だとシゲルは考えていた。
 サクラも外に出せるようになれば、自由にさせてあげたいところだが、いかんせん『精霊の宿屋』内に固定なのはいまだに変わっていないので、どうしようもない。
 そもそも、外に出させてあげたいというのが、シゲルの勝手な感情である可能性もある。
 まあ、ラグたちを見ていれば、そんなことはないと考えてもいるのだが。

 残りの一体であるスイは、中級精霊のEランクになっている。
 成長の度合いがラグたちと比べても早い気がするが、これは『精霊の宿屋』の状態が関係しているのではないかとシゲルは考えていた。
 精霊たちは、ランクが上がればそれだけ行動力も増えて、何となくだが人間らしさが増えているように思える。
 もしかしたら、大精霊のようなより人に近い存在になるかも知れない。
 そう考えると、先のことがさらに楽しみになっていくシゲルなのであった。
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