挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
精霊育成師の世界旅行 作者:早秋

第1章 準備編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

6/122

(6)『精霊の宿屋』

 フィロメナと一緒に朝食の片づけを終えたシゲルは、与えられた部屋に入って箱庭の確認をしていた。
 本来の予定であればすぐにでも近くの町に行く予定だったのだが、シゲルの心のつかえがとれたことと、精霊石を手に入れたフィロメナがやりたいことができたということで、先送りになったのだ。
 シゲルとしても箱庭でやりたいことがあったので、それに了承して部屋に戻ったというわけだ。
 勿論、シゲルの傍には、きちんと三体の精霊がついて来ている。

 ちなみに、いつまでの名無しだと不便なので、三体の精霊にはきちんと名前を付けて上げた。
 赤髪の精霊はラグで、青い髪はリグ。そして、犬型の精霊はシロだ。
 自分が名前を付けていいのかとも考えたのだが、シゲルが名前を付けて呼ぶと喜んでいたので、問題ないと判断している。
 ついでに、箱庭には精霊を管理する場所もあるのだが、そこにしっかりと付けた名前が表示されていた。
 何とも不思議なシステムだが、そういうものだと割り切ることにしている。

 
 部屋に入ってベッドに腰かけたシゲルは、箱庭を起動した。
 今の入力端末には、芝が一面に広がっている箱庭の様子とメニューの一部が表示されている。
 それらのメニューの中に、『チュートリアル』と表示されている項目があるので、それをタップした。
 ずっと画面上で点滅していることに気付いてはいたのだが、やる暇がなかったのだ。
 箱庭がシゲルの知っているゲームと同じような作りになっているとは限らないが、どれくらい時間がかかるのかわからないものをいきなり始める勇気がなかったのだ。
 折角ゆったりできる時間ができたので、この際にチュートリアルを消化することにしたのである。

 シゲルが『チュートリアル』タップした後に、画面上には一体の精霊が出て来た。
 精霊だとわかったのは、背中に一対の透明な羽が生えていたからである。
 どうやらこの精霊が、案内役を務めるようだった。
 画面上には、その精霊がしゃべっているように、吹き出しが出ている。

 その吹き出しの案内に従って最初にやったのは、箱庭世界に名前を付けることだった。
 しばらく考えたシゲルは、『精霊の宿屋』と付けた。
 これでこの世界の名前は、精霊の宿屋と呼ばれるようになる。
 そして、続いて出て来た案内は、こうした箱庭ゲームではある意味定番のイベントともいえる「箱庭の確認をしてみよう」だった。
 これも画面上をスワイプしたり、ピンチイン(アウト)したりして、クリアした。

(体感的には、スマホとかタブレットとほとんど変わらないね)

 現在の『精霊の宿屋』は、小中学校のグラウンド(陸上トラック一つ分)位の大きさで、一面に芝が植えてある。
 この環境を変えることによって、精霊たちを呼び込んで、御代をもらいながらその御代を使ってさらに環境を整えていく、というのが『精霊の宿屋』の世界だ。
 ただし、世界の環境を変えるためには、シゲルが精霊に指示を出して、現実世界からいろいろな物を集めなくてはならない。
 たとえば、シゲルが外に出て何かの草を取って、それを入力端末の上に置くと、それが登録されて『精霊の宿屋』の世界にも反映されることになる。
 さらに、集めて来た(特に)植物は、シゲルがメニューから配置するだけではなく、ランダムで勝手に生えてくることもある。
 そうやって世界を作り替えていきながら、多くの精霊を集めてさらに発展させていくというのが、『精霊の宿屋』で出来ることになる。

 シゲルが先ほどフィロメナに渡した精霊石は、『精霊の宿屋』に訪れた精霊たちが、一定期間以上滞在したときに置いていくことになる。
 精霊の滞在期間が長くなれば品質や大きさも良くなっていく。
 ちなみに、この場合の精霊というのは、ラグたちのように姿形がとれる存在の事を言っており、彼らよりも極小の存在である精霊たちは含まれていない。
 早い話が、ラグたちくらいの姿形を取れる精霊というのが、『精霊の宿屋』の世界では重要視されているのだ。
 さらにいえば、ラグたち以上の精霊も当然ながら存在している。
 それらの精霊を集めるためには、今の環境では滅多なことでは来ることがないということだ。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 チュートリアルを終えたシゲルは、入力端末から指を離してラグたちを見た。
 ラグたちは、『精霊の宿屋』に定着している精霊で、よほどの乱雑な扱いをしない限りは逃げ出すことはない。
 そして、彼らには指示を与えて、箱庭の環境を整えたり、そのための作業をさせることが出来る。
「リグ、シロ。今から外に行って、一時間くらい集められる限りの物を集めてきてもらえるかな? 勿論、何かに襲われそうになったら逃げることを優先にしてね」
 シゲルがそう言うと、リグは嬉しそうな顔になって頷き、シロは尻尾をハタハタと振った。
 これが精霊たちに出せる指示のなかでも重要なもののひとつとなる。
 何しろ『精霊の宿屋』は、集めた自然物によって環境を変化させていかなければならない。
 一度集めて登録さえしてしまえばいいのだが、多様な環境を用意するためには、どうしても色々な場所での探索は必要になるのだ。

 リグとシロが窓から出ていくのを手助けしたシゲルは、今度はラグを見て言った。
「今度はラグだけど……って、どうしたの?」
 ラグに指示を出そうとしたシゲルだったが、彼女が突然近寄って来て首を左右に振るのを見て首を傾げた。
 その様子を見る限りでは、ただ単に甘えているだけではなく、何かの理由があってそうしているように見える。
 何かの見落としがあったかと、シゲルはもう一度『精霊の宿屋』のメニューからヘルプを確認した。

「――――これか」
 ヘルプを確認していたシゲルは、とある項目を見つけてそう呟いた。
 そこには、『精霊の宿屋』の持ち主の傍には必ず一体以上の精霊がいる必要があると記されていた。
 理由としては、持ち主が亡くなって『精霊の宿屋』が失われれば、ラグたちのような契約精霊もその存在を失くしてしまうかららしい。
 要するに、シゲルが無防備な状態では、精霊たちが不安に思ってしまうので、護衛以外のいう事を聞かなくなるということだ。
 現に、ラグの状態を確認すると『護衛』となっていて、それ以外に変えることができなかった。

 ほかの二体の精霊は、『探索(外)』となっている。
 この(外)というのは、家の外という意味ではなく、『精霊の宿屋』の外の探索をしているということだ。
 例え建物の中であっても、探索さえしていれば『探索(外)』となる。
 当たり前だが、基準は『精霊の宿屋』に置かれているのである。

 
 ラグに関してはもう動かしようがないので、シゲルは別の項目を確認することにした。
 『精霊の宿屋』の大きさはトラック一つ分くらいだが、これで固定というわけではない。
 精霊石を分解した際にできる精霊力を使えば、自由に大きさの変更ができる。
 ただし、当然というべきか、『精霊の宿屋』の大きさの変更にはかなりの精霊力を使うことになる。
 まずはいまの大きさで環境を整えることによって、多くの精霊が来るようにしなければ、大きさの変更もできないのである。
 付け加えると、その環境を整える作業を行うためにも精霊力は必要になる。
 一言で言ってしまえば、精霊力はこの箱庭世界においては、基本となる力なのだ。

 精霊力は、『精霊の宿屋』の環境を変えるためだけではなく、箱庭世界への物の出し入れにも使うことができる。
 たとえば、今は芝生しかない環境を花が咲き乱れる環境に変えて、その咲いた花を外部、この場合は現実世界(?)に精霊力を使って送ることができるのだ。
 これにより、精霊が箱庭世界でなにかを作った場合に、その作った物をシゲルが受け取ることができたりする。
 もっとも、それをするためにも精霊力が必要になるので、出来るようになるのはまだ先のことになる。

「うーん。見れば見るほど、チートだよなあ」
 もし、精霊が作った物が簡単に出し入れできるようになり、それが普通に売れるとすれば、少なくとも財政的には困らなくなる。
 精霊石でさえ普通に売れることが分かっているのだから、それ以上の金銭を得る手段ができれば、シゲルが一人で生きていく分には何の問題もなくなるだろう。
 もっとも、このチートがいきなり無くなっても良いように、出来得る限りほかにも金銭を得る手段は確保するつもりだ。
 シゲルは、どういう理由で自分に『精霊の宿屋』が与えられたのか分からない以上、それだけに頼り切るつもりは無いのである。
※次話更新は明日の朝8時になります。
(以降、予告が無い限りは朝8時更新が続きます)
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ