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(24)報酬回収

 精霊喰いが遺した例の結晶(?)を譲渡されたシゲルたちは、すぐに王城を出て現場へと向かった。

 一応騎士団が周囲を警戒しているとはいえ、何も知らない者が好奇心に負けて触れてしまう可能性もなくはない。

 それに、騎士団を展開しておくのもただではないので、出来る限り早めに回収してほしいという王国からの願いもある。

 もっとも、王国もシゲルがその日の内に取りに行くとは考えていなかっただろうが。

 アマテラス号という最速の移動手段があるからこそ、シゲルたちも疲れなどほとんど気にすることなく取りに向かうことができているのだ。

 

 現場近くにアマテラス号が止まると、そばを見張っていた騎士の一部が近づいてきた。

 アマテラス号にシゲルたちが乗っていることは既に周知されているので、警戒している様子はない。

 むしろ、先日のようにお偉いさんが乗っているのではないかと伺う様子が見え隠れしている。

 今回はアンドレを始めとしたお偉いさんは乗っていないので、シゲルがそれを伝えるとあからさまにホッとした様子を見せていた。

 

「――では、事後処理ではないとすると、今回は何故この場所へ?」

 現在の騎士団をまとめている隊長がそう聞いてきたので、シゲルはアンドレから預かってきた一枚の紙を渡した。

「目的としては例の結晶の回収かな。これを見せれば大丈夫だと言われてきたけれど……?」

「拝見いたします」

 シゲルから許可書を受け取った隊長は、何度か頷きながら内容を確認していた。

「――はい。確かに確認いたしました。問題ないようですので、いつでも回収をしてください。一応、私たちが見守ることになっていますが、大丈夫でしょうか?」

「ええ。それのことはきちんと聞いています。問題ないですよ」

 あらかじめアンドレから言われていたことを隊長が確認してきたので、シゲルは頷き返した。

 結晶をどのように回収するのか国がきちんと見守りたいという気持ちもわかるのと、そもそも見られて困るようなことは何もないので、拒否する理由もない。

 

 

 そんな感じで隊長と軽い会話を交わしたシゲルは、フィロメナたちを伴って結晶のある場所まで近づいて行った。

 現場まで近づくと、数人の騎士たちが遠巻きにして結晶を見張っていることが分かった。

 その騎士たちは、シゲルたちの傍に隊長がいることが分かっているので、警戒を強めるようなことはなかった。

 そして、隊長が現在の見張りを行っている隊に指示を出しに行くのを見ながら、シゲルたちはより結晶へと近づいた。

 

 結晶に近付くと悪い影響を受ける可能性があると聞いているフィロメナたちだったが、シゲルが近づいていくのを数歩離れたところで見ていても止めることはしない。

 理由は簡単で、シゲルの両隣に浮いているラグとリグがいるからだ。

「――どこまで近づけばいいかな?」

 シゲルが二人の精霊にそう問いかけると、ラグがすぐに応じた。

「私がもっと近づいて処理してきます。シゲル様はここに。リグはシゲル様をちゃんと守って」

 ラグがそう言うと、シゲルが何かを言うよりも早く、リグが「わかってるよ~」といつもの調子で返した。

 

 シゲルたちや騎士たちの多くの視線がラグに集まる中、その当人は特に気にする様子もなく結晶へとより近づいて行った。

 そして、腕を伸ばせばギリギリ触れられないくらいの距離にまで近づくと、ラグはスッと右腕を結晶に向かって伸ばした。

 さらに右腕を伸ばしたラグが何事かを呟き始めると、結晶に変化が現れ始めた。

「結晶が見えなくなって……?」

 騎士の誰からそう呟くのに合わせて、他の騎士たちから「おお」という声が漏れた。

 ラグが腕を伸ばしてから一分も経たないうちに、確かにその場にあった結晶が完全に無くなってしまったからだ。

 ちなみに、前もってどういうことをするのかを聞いていたシゲルたちは、とくに驚くような様子は見せていない。

 

 結晶がその場から完全に無くなるのを確認すると、腕を卸したラグがシゲルの元へ近づいてきた。

「これで終わりです」

「ご苦労様。もう宿屋に……?」

「はい。問題なく回収されたようです」

「そう。それじゃあ、戻って確認しようか」

 シゲルがそう言うと、ラグは無言のまま頷き返した。

 

 

 ラグから回収報告を受けたシゲルは、すぐに騎士隊長へと近づいて行った。

「これで回収は終わりです。ここにいる隊が今度どうするかは聞いていませんが……」

「それでしたらご心配なさらぬよう。しばらくは様子を見るようにとの指示がありますから。それはともかく、本当にあれで回収されたということでよろしいですか?」

「はい。問題ありません」

 シゲルが自信をもってそう返事をすると、隊長は「そうですか」とだけ返してきた。

 別にシゲルの言うことを疑っているわけではないのだが、あまりにもあっさりと回収作業が終わったので、多少拍子抜けしている様子だった。

 勿論口に出しては言わないが、これで済むんだったら国で回収してもよかったのではないかという考えも多少はある。

 精霊喰いとの戦闘が終わってからこれまで見張っていた中で、全く何も起こっていなかったのを直接見てきたのだから、そういう考えが浮かぶのも当然だろう。

 

 とはいえ、精霊喰いが遺した結晶をシゲルたちへの報酬と決めたのは、国の上層部だ。

 当たり前だが、騎士の一人である隊長がそれに対して具体的に何かを言うことはない。

 それに、シゲル(というかその精霊)がどのように結晶を回収したのか、この後隊長が上に報告することになっている。

 その上でどう判断するのかも、やはり隊長やこの場にいる騎士たちの役目ではない。

 

 隊長がそんなことを考えているなんてことは全く気付かずに、シゲルは頭を下げてからフィロメナたちと一緒にアマテラス号へと戻ることにした。

 これ以上この場所にいても、シゲルたちができることは何もない。

 それよりも、シゲルにとっては回収できた結晶がなんであるのか早く確認したいという気持ちのほうが強い。

 この場で『精霊の宿屋』を確認するわけにはいかないので、より気が急いているのだ。

 

 だが、そんなシゲルの様子に気が付いているのか、アマテラス号に戻る途中で騎士たちの目や耳がないことを確認したフィロメナが言ってきた。

「あの騎士、何やら思う所があるようだったが……」

「別にいいんじゃない? どうせもう何も出来ることはないんだし」

「そうですね。上に報告するかは微妙なところですが……そこまで責任を持つ必要はないと思います」

 ラウラは、ミカエラの言葉に同意しつつ自分の言葉を付け加えて言った。


「同感ね。それに、あの騎士が私たちに何かをしてきたとしても、もうどうすることもできないでしょう?」

 マリーナがそう言いながら視線を向けると、フィロメナの発言に多少驚いていたシゲルが頷いた。

「それもそうか。どうせ結晶? ――は宿屋の中だし、どうすることもできないよ」

「まあ、そうなんだが。殺せば隠した物もどうにかできると短絡的なことを考えなければいいがな」

「それは流石に大丈夫じゃない? あの結晶を直接どうにかしたのは、シゲルじゃなくて精霊だという認識しかないだろうし」

 ミカエラがまとめるようにそう言うと、フィロメナを含めた全員が納得した顔で頷いた。

 

 結局、あの隊長についてはシゲルたちが国に報告するようなことはなく、何かをしてくるということはなかった。

 隊長が国に対してどのような報告をしたのかもシゲルたちは知らないし、国がそれについて何かを言ってくるようなこともない。

 いずれにしても、この後シゲルたちが隊長と関わることは一切なかったのであった。

何やら後半はフラグっぽいですが、特にそういう意図はありませんw

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