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(20)フラグ?

「それで? そいつらはどうなったんだ?」

 学園祭三日目が終わりアマテラス号に戻ったシゲルたちは、ミカエラから男たちから絡まれた話を聞いていた。

 そして、その話を最後まで聞き終わったフィロメナがそう聞くと、ミカエラは小さく首を傾げた。

「さあ? 祭りが楽しかったから思い出しもしなかったわ。後を付けてくる様子もなかったし」

 後のことは全く興味なしという顔をしているミカエラを見て、フィロメナがなるほどと頷いた。

 その顔を見れば、自分が同じ立場になれば同じように気にしていなかっただろうと思っていることは一目瞭然である。

 それは、フィロメナだけではなくマリーナやラウラも同じだ。

 

 ミカエラが、男たちのことを忘れて祭りをきちんと楽しめたのであれば、これ以上言うことはない。

 そんなことよりも、シゲルは一つだけ気になることがあったので、そのことを聞くことにした。

「ところで、リーダー格の男で気になったことってなに?」

「ああ、あれね。大したことじゃないわよ。あいつが精霊をぞんざいに扱っているってだけで」

 ミカエラは、これまで数多くの契約精霊を持った精霊使いと接してきている。

 その中には、精霊を物のように扱っている者たちも少なからずいた。

 そうした者たちの契約精霊と同じような雰囲気を、ミカエラはあの男から感じ取ったのだ。

 

 ミカエラの言葉に、マリーナが少しだけ顔をしかめながら言った。

「ぞんざいに……ね」

 マリーナにしてみれば、どのランクの精霊も神の眷属のような存在である。

 だからこそ、精霊を道具として扱うことが信じられないのだ。

 

 そしてシゲルはといえば、そのマリーナを見ながら少しだけ嫌な予感がしてフィロメナを見た。

「精霊をぞんざいに扱う取り巻きを連れている男って……なんとなく、嫌な予感がするんだけれど?」

「それは、勘とかではなく、事実に基づいた考察と言わないか?」

 シゲルの言葉に、フィロメナはため息をつきながら頷き返した。

 フィロメナは、わざわざ確認するまでもなく、シゲルと同じ人物のことを思い浮かべたのだ。

 

 シゲルとフィロメナのやり取りを見て、ミカエラが首を傾げながら聞いた。

「二人とも知っているの?」

「知っているというかなんというか……ミカエラも以前話を聞いたはずだぞ?」

 フィロメナがそう応じたが、ミカエラはまったく思い当たることがなく首を傾げたままだ。

「ほら。自分がいる研究室とは別の研究室があるって話したじゃない。その時に出てきた人」

「ああ!」

 シゲルがさらに説明を付け加えると、ミカエラがようやく思い出した表情になって握った右手のこぶしを左手にポンと当てた。

 

 シゲルとフィロメナが言っているのは、勿論ミラン研究室のアーダムのことである。

 ミカエラは件の男の顔の造作などの特徴を聞いたわけではないが、ミカエラから見て精霊の扱いが悪い取り巻きを連れた男ということからアーダムを連想したのだ。

 そもそもアークサンド学園において精霊使いの数はそこまで多くないので、そんなことをする者がアーダム以外にいるとは考えにくい。

 もしアーダム以外にいたとすれば、シゲルがヤコミナ研究室の面々から話を聞いているはずだ。

 勿論、わざわざそんな人物のことを話す必要もないと思っている可能性もあるが、できればそんな面倒な人はアーダムだけにしてほしいというのがシゲルの考えだ。

 

 そんなことを考えていたシゲルを見ながら、フィロメナが苦笑しながら言った。

「ヤコミナ研究室とミラン研究室以外に精霊使いが全くいないわけではないが、少なくともアーダムのように取り巻きを連れているの話は聞いたことはないぞ」

「そうだといいんだけれどねえ」

 フィロメナにそう答えながら、シゲルは首を左右に振った。

 アーダムがいるだけでも面倒なのに、ミカエラが眉をしかめるような精霊の扱いをしている別の人物がいるなんてことは考えたくはない。

 今のところアーダムが、わざわざシゲルのところに直接ちょっかいをかけてくる気配はないが、だからといって油断はできない。

 いつぞやのように、学園の敷地内でばったりと会う可能性はゼロではない。

 

 諦めたように最後にため息をついたシゲルは、ミカエラを見ながら聞いた。

「扱いが悪いのに、なんで精霊使いとしてやっていけるのかな?」

「精霊使い……精霊術は、突き詰めるとどうやって精霊を従えるかだからね。精霊の意思を無視して強引に言うことを聞かせることもできなくはないわよ。人の世界だって、そういうことはあるでしょう?」

「あー、まあ、そう言われるとそうか」

 ミカエラの説明に、シゲルは微妙な表情になりながら頷いた。

 精霊にとっての精霊使いは、場合によっては虫たちにとっての夜にある光のような存在になりえる。

 そうした習性を利用すれば、無理やり言うことを聞かせることも不可能ではない。

 さらに、強引に言うことを聞かせるほうが術の威力が高くなる場合もある。

 そのため、どの時代にも精霊を道具扱いする存在は、いなくなることがないのだ。

 

 とても自分の考えとは相いれないという表情で頷くシゲルに、今度はラウラが首を傾げながら疑問を口にした。

「以前シゲルさんは、その人と会われたのですよね? その際には気付けなかったのですか?」

「あー、それタブン無理だと思うわよ」

 シゲルがなにかを言うよりも先に、ミカエラが先んじてラウラにそう答えた。

「そもそもシゲルは、今まで悪い扱いをされている精霊にあったことが無いじゃない。だからおかしな気配になっている精霊に気付けても、それが精霊だと思わなかったんじゃない?」

「そんなことってある?」

「たぶん、だけれどね」

 シゲルが首を傾げながら聞くと、ミカエラはそんなことを言いながら確信したような顔で頷いた。

 シゲルの精霊に対する感受性は自分よりも強いとミカエラは認めているが、それとこれとはまた別のことなのだ。

 

 疑問の視線を向けてくるシゲルに、ミカエラはさらに説明を続けた。

「感覚的なことだから言葉では説明しづらいけれど、道具扱いされている精霊はまったく別ものと思ったほうがいいわよ」

「そんなに違うんだ」

「いまシゲルが考えている以上にね。それが契約精霊になってくると、ほとんど別の存在に見えるわよ」

 ミカエラはそう言いながらシゲルの足元で寝そべっていたシロに目を向けた。

 道具扱いされている契約精霊は、こんなに穏やかな態度で契約主の傍にいることはない。

 

 どう考えてもそんな悪い状態になっている精霊と関わり合いになりそうな事態に、シゲルはもう一度大きくため息をついた。

 そんなシゲルに、フィロメナがさらに面倒なことを言った。

「なんというか、初日に来たという女の先輩の不穏な言葉といい、面倒なことがどんどんと近づいている気がするな」

「フィー。そういうことを実際の言葉にすると、本当にそうなってしまうわよ?」

 フィロメナの言葉に、マリーナが少しばかり咎めるような視線を向けながらそう言った。

 シゲルが知る限りでは、こちらの世界に言霊という言葉があるわけではないが、似たようなニュアンスはあるらしい。

 ちなみにシゲルは、フラグと言霊は別物だと考えている。

 

 フィロメナが言ったように、あの女性の先輩の言葉と(恐らく)アーダムのことが面倒事を引き寄せているかはまだわからない。

 だが、一度気になってしまうとそれがどうにもフラグのように思えてならないシゲルなのであった。

《連絡事項》

ついに書き溜めが完全に無くなってしまいました。(´・ω・`)

ついでに、脳内にあったはずのプロットも完全に行方不明になってしまったので、次話の更新は間があきます。

といっても、一月も二月も待たせるつもりはありません。

長くて半月(二週間)後くらいには更新を再開したいと思いますので、それまで少々お待ちください。


それから、いつもであればこれで第14章が終わりという話数ですが、学園祭の四日目と五日目を残した状態で次の章に行くかも悩み中です。

きちんと話の筋道を考えてから章の分け方も考えるので、次話が新章になるかも今のところは不明ということでご了承ください。

m(__)m

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