(6)光と闇の精霊の能力
新たに精霊と契約したシゲルは、その数日後にフィロメナと一緒に魔の森の魔物狩りにいそしんでいた。
その目的は、光と闇の精霊の能力の確認と、フィロメナの魔道具作成に必要な素材の取得である。
シゲルが狩りに行ってくるとたまたま居間にいたフィロメナに告げると、彼女もちょうどいいと言ってきたのである。
そして、本格的に狩りを始める前からシゲルとフィロメナは感心することとなった。
「――なるほど。これが光と闇の精霊の能力ということか」
シゲルがそう呟けば、フィロメナもそれに追随するように頷いている。
「五大の精霊とはまったく方向性は違うが、必要な能力であることには違いないな」
フィロメナがそう言うと、シゲルも頷き返した。
シゲルとフィロメナがなにに感心しているかといえば、光と闇の精霊による魔物の発見の速さである。
しかも、単にどこどこに魔物がいるという指示だけではなく、どういった魔物が何体いるという詳細まで言ってくる。
それをシゲルやフィロメナは勿論、ほかの精霊よりも早く見つけるのだから感心するのも当然だろう。
ちなみに、今シゲルの護衛についている初期精霊はシロだが、配下を周辺に送っているシロよりも早く報告してくるのだ。
シゲルは、光と闇がそれぞれ物質や精神に感知する能力に優れているということは分かっていたが、こういう方面でここまで役に立つとは考えていなかった。
それはフィロメナも同じで、だからこそシゲルと一緒に感心しているのである。
「これだけ探知能力に優れていれば、逆に見つからないようにすぐに隠れることもできるだろうな」
「ああ、なるほど。そういう見方もできるね」
フィロメナの言葉に、シゲルはすぐにそう返した。
これも光と闇の精霊が人前に中々姿を見せない理由の一つとして上げられる。
これだけ探知能力に優れているとなると、精霊の側が会いたいと思わない限りは会えないのだから発見数が少なくなるのも当然だ。
フィロメナとシゲルがそんな会話をしている間にも、光と闇の精霊は新しい魔物を見つけていた。
その中にフィロメナが探していた魔物がいたので、揃ってそちらのほうに移動した。
今回の討伐は、フィロメナのストレス発散も兼ねているので、基本的に魔物を討伐するのは彼女の役目である。
そして、戦闘を終えたフィロメナは、光と闇の精霊をそれぞれに見比べながらシゲルに向かって言った。
「光と闇の精霊は、ほかの精霊と違って直接の戦闘よりは補助に優れているという感じだな」
「そうなの?」
「いまの戦闘もブースト系の魔法をかけてきたからな。しかも効果は非常に高かったぞ」
フィロメナがそう説明すると、シゲルは何度目かの頷きを返した。
いまの戦闘では、シゲルはわざとシロに手を出さないように指示を出していた。
光と闇の精霊が、どうやってフィロメナの戦闘に加わるかを知りたかったためだ。
その結果がフィロメナの言った言葉につながるのであれば、光と闇の精霊は単独での戦闘よりは補助に回したほうがいいということになる。
もっとも、シゲルが見ていた限りでは、普通の魔法でも攻撃を加えていたので、まったく個人戦闘ができないというわけでもなさそうだった。
そんなことを考えていたシゲルは、フィロメナを見て言った。
「悪いんだけれど、もう少し戦ってもらえるかな? 今度は個別でどうなるかを見てみたい」
今は光と闇の二体が同時に戦っていたので、それぞれ個別だとどうなるかを確認したいとシゲルは考えたのだ。
「ああ。それは私も興味があるな。勿論構わないぞ」
シゲルのお願いに、フィロメナはすぐにそう言ってきた。
フィロメナも、ミカエラほどではないにしろ光と闇の精霊に関しては興味があるのだ。
その後、フィロメナが必要な素材のために何体かの魔物と戦うことになった。
その結果、光と闇の精霊は、やはり探知と補助の能力に優れているということがわかった。
それは、同時に活動している場合だけではなく、それぞれ別個で活動している場合でも同じである。
そして、実際に補助魔法をかけられたフィロメナの感想としては、個別で魔法をかけられたときのほうが効果が分かり易かったそうだ。
二対揃って魔法をかけられた方が効果が高くなるのは、紛れもない事実である。
ただし、個別に掛けられた魔法と比べて単純に倍になるというわけではなく、体感では一・五倍程度だったということだ。
シゲルはそれらの結果を、フィロメナは必要な素材をそれぞれ得て、二人はほくほく顔で家へと戻るのであった。
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シゲルが家に戻って今回の件について自室で要点をまとめていると、突然ラグが『精霊の宿屋』から出てきた。
足元にいてそのことにシロが、真っ先にシゲルに注意を向けるように体を寄せてきた。
「あれ? どうしたの? 管理についていたと思ったんだけれど?」
『精霊の宿屋』の管理には必ず一体の精霊が必要なのだが、現状では必ず複数の精霊が付いているので、自由に出てこようと思えば出てこられる。
ただし、ラグがシゲルの指示を無視して出て来ることは珍しいので、不思議に思ったのだ。
「はい。シゲル様が彼女たちの能力についてまとめられていると聞いたので、このタイミングがいいかと思いまして」
ラグは、そう言いながらチラリと光と闇の精霊に視線を向けた。
シゲルはラグに、光と闇の精霊が『精霊の宿屋』の中でどういう能力を持って活躍できるかを調べて貰っていたのだ。
そのことを思い出したシゲルは、持っていた筆をおいてから改めてラグに向き直った。
「そうか。確かにその方がいいね。――聞こうか」
野外での戦闘についてまとめていたところなので、ラグから報告を聞くのにはタイミングとしては丁度いい。
ラグは、シゲルに向かって一度頷いてから話し始めた。
「はい。まず、戦闘能力についてですが、シゲル様がまとめていらっしゃる能力とさほど変わりありません」
護衛に着いているシロから聞いていたのか、ラグはまずそう言った。
そのことはシゲルも予想していたので、すぐにラグに頷き返した。
「まあ、それはそうだろうね。『精霊の宿屋』の中でだけ特殊能力を発揮するなんてことは、まずないだろうし」
絶対にないと言い切れないのが難しいところが、少なくとも今までどの精霊も『精霊の宿屋』の中と外で能力が違っていたということは一度もない。
敢えて上げるとすれば、特級精霊になったラグたちの光と闇に関する能力で違いが出てるくらいだが、そもそも基礎(属性)になっている部分が違うので、シゲルとしは例外として扱っている。
「そうだと思います。ただ、特別な力として上げるとすれば、やはり他の者たちと比べて探知能力が高いことがあげられると思います」
「うん? どういうこと?」
光と闇の精霊の探知能力が高いことは、すでにフィロメナと行った戦闘で分かっていることだ。
そのことはラグもわかっているはずなので、敢えて付け加えてきた理由が、シゲルには分からなかったのだ。
シゲルがそう聞き返してくることはラグも予想していたのか、すぐにその問いかけに答えてきた。
「彼女たちの探知能力ですが、現在の『精霊の宿屋』の約七割程度をカバーできるようです」
「……まじかい」
ラグの言葉を聞いたシゲルは、驚きで思わずそう返してしまった。
そのあとはしばらくの間、絶句したまま黙り込んでいる。
現在の『精霊の宿屋』の七割の範囲を網羅している。
言葉にすると簡単なのだが、実際のことを考えるととんでもない能力だということがわかる。
なにしろ、今の『精霊の宿屋』は、東京二十三区ほどの広さがあるのだ。
それだけの土地の七割の範囲を探知できるというのは、とんでもない能力といえるだろう。
少なくとも現在の『精霊の宿屋』の防衛については、光と闇の精霊のお陰で、随分と楽になったと言えるだろう。
勿論、全域をカバーしているわけではないので、彼女たちに頼りきりになるつもりはない。
しばらくしてから復活したシゲルは、一度首を左右に振ってからさらにラグに聞いた。
「それ以外には?」
「いえ。今のところ特に目立ったものはありません」
「そう。まあ、探知能力だけで十分だといえるけれどね」
「そうですね」
感嘆のため息交じりに言ったシゲルに対して、ラグも真顔で頷きながらそう返すのであった。
光と闇の精霊は、探知能力がぶっ飛んでいます。
後半契約した精霊については数が増えすぎて混乱すると考えて敢えて名前を付けていなかったのですが、やはり付け(お知らせし)たほうがいいでしょうか?
これだけ「光と闇の精霊」と連呼すると、逆にわかりずらい気がしたのですが。。。
感想ででも教えていただけるとありがたいです。
m(__)m




