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精霊育成師の異世界旅行 ~レア素材ゲットで、おとも精霊が急成長!?~ 作者:早秋

第10章 精霊育成師

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(17)真名(中)

 祠に関しての調査は、順調に進んでいる。
 といっても、今のところは、祠についての記述がありそうな本や書類を探すことに終始しているので、具体的なものが見つかったわけではない。
 それは、今まで見つけてきた本や書類から精査していくことになるので、本格的な調査はこれからともいえる。
 そろそろ大まかな調査は止めて、より詳細に調べて行こうということになっているので、数日のうちに結果が出てもおかしくはないはずだ。
 シゲル自身もそう感じているので、しっかりと古語が読めているフィロメナたちの表情は明るい。

 その日の調査結果が報告された後、シゲルは拠点にしている建物の一室でラグと話をしていた。
 勿論その内容は、真名のことについてである。
 シゲルは一人で一部屋与えられているので、他人がいない場所という意味ではちょうどよかったのだ。
「――それで? 真名の付け方は聞いていいのかな?」
「勿論です。……ですが、その前にシゲル様、怒っていますか?」
「え? なぜ?」
 思ってもみなかったことを言われたシゲルは、目を見開いた。

 そのシゲルの顔を見て、ラグは安堵のため息をついていた。
「いえ、あの時に話をしなかったので……」
「いや、精霊にとっては大事な話なんだから、当然だよね?」
 ラグの答えに、シゲルは苦笑をしながらそう答えた。
 いくらなんでも、すべての秘密を他のメンバーがいるところで話せなんてことを言うつもりは、シゲルにはない。

 そもそもシゲルは、真名についての話を聞くつもりはなかったのだ。
 だが、今この場でラグから聞こうとしたのには、きちんと理由がある。
「なんか、ラグが話をしたそうだったから聞こうと思っただけなんだけれど……自分の勘違いだったら、別に話さなくてもいいよ?」
 シゲルがそう言うと、今度はラグが驚いた顔になった。
「い、いいえ! そんなことはございません!」
 ラグは、まさかシゲルに気付かれているとは思っていなかったので驚いたのだ。

 胸を押さえて気持ちを落ち着かせるような仕草をしたラグは、少しだけ笑っているシゲルを見ながらさらに続けて言った。
「それで、真名のことですけれど……いいでしょうか?」
「うん。話して」
 シゲルがそう促すと、ラグは一度だけ頷いてから話を始めた。
「まず、真名のことについてですが、私たちの真名は世界に縛られるためのものです」
「縛られる?」
 聞きようによっては物騒な言いように、シゲルは思わず眉をひそめた。

 それに気づいたラグは、少しだけ間を空けてから話始めた。
「勘違いをされないように言っておきますが、私たちにとっては世界に残る(・・・・・)ためには必要なことです」
「どういうこと?」
「本来精霊は、物質的に居続けられる存在ではありません。名前を付けてもらうことで、その存在を確定しているともいえます」
 精霊というのは力そのもののことで、姿形をとることはその一面でしかない。
 ただし、そんな精神的な状態では、長い間存在していることが難しくなる。
 それは、いくら力のある精霊だといっても同じことだ。
 逆に言えば、力のある精霊でずっと存在していられるということは、必ず真名があるということになる。

 それだけを聞くと真名は付けたほうがいいということになるが、そう簡単なことでもない。
 ラグが言った「世界に縛られる」というのはまさしく言葉通りで、世界にある言葉で縛られることで、存在を確定しているのである。
 逆に言えば、真名を持つ精霊がその力をふるえるのは、名前によって縛られている世界の範囲内だけということになる。
 その世界が狭いとみるか広いとみるかは、個人個人によっても変わってくるのだが。

 とにかく、精霊にとって真名をもつということは、その言葉がある世界に縛られると同義なのだ。
「ここまでは、この世界での精霊にとっての真名の在り方です」
「この世界の……?」
 シゲルは、ラグの微妙な言い回しにきちんと気付いて、そう聞き返した。
「はい。私たちがその法則に当てはまるかどうかは、まだ分からないことがあります」
「どういうこと?」
 ラグの説明では意味が分からずに、シゲルは首を傾げた。

「先ほども申し上げた通り、真名はその世界に縛られることを意味します。ということは、シゲル様と契約している精霊は、『精霊の宿屋』に縛られるということを意味します」
「まあ、そうだよね」
「だとすると……こんなことは話したくはありませんが、シゲル様が亡くなったあとは、『精霊の宿屋』はどうなるのでしょうか?」
 これまで考えたことがなかったその問いかけに、シゲルは虚を突かれたような表情になった。

 そのシゲルの顔を見て、ラグは慌てた様子で首を左右に振った。
「勘違いしてほしくないので申し上げますが、私たちは生の終わりについては、さほど執着はありません」
「そうなの……?」
 探るような視線を向けてきたシゲルに、ラグははっきりと頷いた。
「はい。そもそも物理的に存在しているわけでもなく、元が姿形もないあやふやな状態が始まりですから」
 ラグのその説明に、シゲルはなるほどと頷いた。

 とはいえ、いくら生に対する執着が薄いとは言っても、他人にそれを握られているというのは気分が良くないはずだ。
 そんなことを考えていたシゲルに、ラグはクスリと笑いながら付け加えた。
「私たちはきちんとそのことを理解した上で、シゲル様と契約をしているのです。そのことでシゲル様が気にされるようでしたら、厳しい言葉ですが筋違いというものです」
 珍しいラグの厳しい言葉に、シゲルは苦笑を返すことしかできなかった。
「それに、シゲル様の生に縛られるのが嫌であれば、途中で契約を解除してしまえばいいのです」
「契約の解除……できるの、そんなこと?」
「できます」
 はっきりと頷き返してきたラグに、シゲルは幾分か心が軽くなった。
 いくらラグの厳しい言葉があったにせよ、他人(他精?)の生死を握っているというのは気分がいいものではない。
 生死がかかっているような戦闘で指示を出すのとは、わけが違うのだ。

 シゲルの表情が和らいだことに気付きつつ、ラグはそのことには触れずにさらに続けた。
「私たちの生死観はともかくとして、真名についてです。『精霊の宿屋』に縛られるということはその通りですが、その上でお願いがあります」
「お願い?」
「是非、私に真名を付けていただけないでしょうか? ほかの者たちは、個別に聞いていただければと思います」
 そうはっきりと「お願い」をしてきたラグに、シゲルは戸惑ったような視線を向けた。

 そのシゲルの顔を見て、ラグは少しだけ頬を緩めながら言った。
「シゲル様から真名を得るということは、それだけ『精霊の宿屋』にとってより多くの力を振るえることになります。私にとっては、長い生よりもそちらのほうが大切ですから」
 言外に自分シゲルが生きていない世界には興味がないと言われた気がして、シゲルは居心地が悪そうに身じろぎをした。
 ラグの忠誠心(?)が高いことは分かっているが、はっきりと言葉にされるとなんとも妙な気分になるのだ。

 それでもラグの真剣な思いには、きちんと応えなくてはならない。
「……わかった。そんな大切な名前なんだから、この場の勢いで決めるのじゃなく、ゆっくりと考えておくよ」
「そうしてください。私も今すぐにつけてほしいわけではありませんから」
 そもそも、急いでいたのであれば、ミカエラが話をしてきた時ではなく、自分から申し出ていた。
 そう付け加えたラグに、シゲルは確かにそうだろうなと頷くのであった。
真名がどんな名前にするかは、まだ決まっていません。
というよりも、敢えて曖昧のままにしておこうかと考えています。
名前が二つあっても読むのに混乱しそうですし、その方が意味ありげな雰囲気になりそうですのでw
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