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(1)さらに拡張

ラグたちが話ができることについてのシゲルとミカエラの会話に、話の矛盾があるという指摘があったため、第6章4話を修正いたしました。

気になる方はそちらをご確認ください。

m(__)m

 ネクロガンツ大洞窟から戻ったシゲルは、さっそくグラノームから受け取ったアイテムを『精霊の宿屋』へ取り込んだ。

 当然のように、取り込んだだけではなんの変化も起きなかった。

 ただし、取り込むと同時に例によってメッセージが出てきて、設置をするかと確認してきた。

 その時に出てきた名前を見て、グラノームから受け取ったアイテムが『大地の恵み』だということをシゲルは知った。

 大地の恵みは水の地帯を除けば、割とどこにでも設置できるようであったが、シゲルは既に設置する場所を決めている。

「ほかの精霊魂に被らないようにするには、北西の森に置くしかないんだよな……っと、ここでいいか」

 別にほかの精霊魂と被せても問題はなさそうだったが、折角空きがあるので北西側にしようと決めていたのだ。

 それは、ただのシゲルのこだわりでしかないが、そういうのを決めるのが楽しいからこそ『精霊の宿屋』の管理を続けられているのだ。

 

 シゲルが大地の恵みを設置する場所を決めて画面上のその部分をタップすると、いつものように許可を促す小さい画面が出てきた。

 当然許可をするを選んだシゲルだったが、そのあとに起こった変化に少しだけ驚いた。

「あらま。そうなるんだ」

 思わずシゲルがそう呟くと、隣で護衛についていたラグが不思議そうな顔になってみてきた。

「いや、森にアイテムを置いたらちょっとした山みたいなものができたんだ」

「そんなことも起こるのですね」

 シゲルの答えに、ラグも驚いたように目を見開いてそう返してきた。

 

 大地の恵みを置いた北西部分は、これまで森林になっていたのだが、それがそのまま高さが十メートにも満たない山になったのだ。

 森林になっていた木々はそのまま残されていて、元からそこが山だったように見える。

 そして、肝心の大地の恵みがどうなったかといえば、表からは見えなくなった。

 どこに行ったのかと疑問に思ったシゲルが少しだけ『精霊の宿屋』を操作していると、湖の中にある精霊の雫と同じように、地中に埋められているということが分かった。

 『精霊の宿屋』は地中まで見ることができるわけではないが、どこにアイテムがあるかは調べることができるようになっているのだ。

 

 とにかく、大地の恵みはきちんと設置することができた。

 心なしか画面内にいる精霊たちが騒めいているようにも見える。

 それを見つけて満足げな顔になったシゲルは、ラグと同じように護衛についていたサクラを見て言った。

「ごめん、シロに設置した部分を確認してきてもらってもいいかな?」

 シロは現在、『精霊の宿屋』の管理業務についている。

 見回りも含めて、変化があった部分を確認してもらうのがちょうどいいと考えたのである。

 

 シゲルの言葉に頷いたサクラは、すぐに姿を消した。

 そして、十分もしないうちにシロからの伝言をもって戻ってきた。

 それによると、大地の恵みが設置されたことは、訪問している精霊たちにもわかっていて喜んでいるということだった。

 それを聞いたシゲルは、よかったと笑みを浮かべつつ頷くのであった。

 

 

 そして、肝心の拡張条件がどうなったかといえば、それはあっさりと解決していた。

 小山ができて、周辺にそれ以外に変わったことが起きていないことを確認してからさらに拡張の項目を見てみると、普通に拡張するかどうかの確認事項が出ていたのである。

「――今回は、事前の確認ができないパターンだったか。……今後は出てこないのかね?」

 さらに拡張できるかどうかは分からないが、拡張条件は出てこないと考えたほうがよさそうだ。

 

 とにかく、拡張するための項目が出てきていたので、早速拡張を行ってみた。

 ……のだが。

「随分と大きくなったような……?」

 きちんと確認する前からかなり広がっていることが分かった。

 理由は簡単で、ちょこまかと動いている精霊や中央にある桜の木が、かなり小さく見えていた。

 そのうえで、さらに画面をスクロールしないと駄目なほどで、全体を確認するのにちょっとした手間がかかるようになっていた。

 あとからきちんと確認して分かったのだが、単純な面積で六百平方キロメートルあり、これは東京二十三区分に匹敵する大きさだった。

 

 一気に大きさが広大になったことで、シゲルはちょっとしたパニックになっていた。

「いや、大きくなりすぎだから。これを管理しろって、無理じゃないか?」

「シゲル様、少し落ち着いてください。直接管理をするのは私たちですし、特級精霊の誰かがいればなんとかなります。シゲル様は、今まで通り指示をしてくれればいいのです」

 うろたえているシゲルを前にして、少しだけ『精霊の宿屋』の状態を見てきたラグが、ゆっくりとした口調でそう言ってきた。

 勿論、シゲルを落ち着かせるために、敢えてそうしているのである。

 

 冷静なラグを見て、少しだけ恥ずかしさを覚えたシゲルは、一度大きく深呼吸を行った。

「――とりあえず落ち着けたよ。ありがとう」

「いいえ」

 一度ラグにそう礼を言ったシゲルは、改めて大きくなった『精霊の宿屋』を確認した。

「とはいっても、さすがにこれは予想外だな。精霊力は余り気味だったからよかったけれど……さすがに全部を直すには足りないかな?」

 拡張する際に大量の精霊力を使っているが、幸いにしてまだ精霊石のままで残してある分も含めて、それなりの量の精霊力は残っている。

 ただ、それらを入れても精霊力は足りないだろうということは、机上の計算だけでもわかった。

 

 少しだけ悩んだシゲルだったが、すぐに首を振って考えるのを止めた。

「どう悩んでも足りないものは足りないや。前みたいに、少しずつ環境を変えていこう」

「それでいいと思います」

 シゲルの呟きに反応して、ラグがそう言いながら頷いた。

 最初の頃を知っているラグは、少しずつ環境が変わっていくところを見ている。

 ラグは、その時の状況を考えて、それでも大丈夫だと判断したのである。

 

 ただし、それでも問題点がないわけでもない。

「環境に関してはそれでもいいとして、広くなった分、外敵の対処が大変になるよね?」

「確かにそうですが、配下の精霊を使って監視をすればなんとか……」

「となると、やっぱり一人は特級精霊がいる必要はあるってことか」

「そうなります。それに、私たちの力が増せば、配下が増えることもわかっています。そうすれば少しは余裕も出て来るかと」

 特級精霊になって細かいランクがなくなったラグたちだが、スキルのレベルはまだ残っている。

 配下を従えることがスキルで表わされているわけではないが、ラグたちが成長すれば配下は増えるようだった。

 そのことは、少し前にラグやリグから説明を受けていた。

 

 ラグたちの指示に従っている精霊たちは、なにも自分たちで外敵の対処をするわけではない。

 いわば監視や警戒の役目をしていて、実際に外敵が来た時にはそれを知らせて上位のランクの精霊を呼ぶのである。

 当然そこには、ラグたちが向かうことになる。

「今回は稼ぎのことだけを考えて拡張しちゃったけれど、次からはその辺もきちんと考えないとだめだな。……次があるかはわからないけれど」

 今更といえば今更な感想に、シゲルは自分自身でため息をついた。

 

 それを見ていたラグが、慌てて補足するように言った。

「拡張については私たちも望んでいたことですから、少し急かしてしまったかもしれません」

「いいや。それは別にないよ。あくまでも急いで拡張すると判断したのは自分だよ。だから謝る必要はないからね」

 ラグだったらそうするだろうと予想したシゲルは、先んじて釘を刺しておいた。

 その予想が見事に当たったのか、ラグはシゲルの言葉に少しだけ目を泳がせていた。

 

 それを見てクスリと笑ったシゲルは、軽く頭を振ってから続けて言った。

「とりあえず、拡張しちゃったものはもう戻せないから、少しずつ整理をしていかないと。あと、無理は禁物だからね」

 先に言っておかないと無理をしそうなラグに、シゲルは敢えてそう念を押しておいた。

 その言葉を聞いたラグは、神妙な顔になって頷いていた。

 そして、それを確認したシゲルは、これで少しでもラグの無茶が無くなればいいなと思うのであった。

いきなり大きくなりました。

お陰でしばらくは自転車操業になります。

といっても、どこかから借金をしているわけではないのですがw


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重要なお知らせ


なんと、この『精霊育成師~』の書籍化が決定いたしました。

それに伴ってタイトルも変更になります。

詳細は活動報告にてご確認をお願いいたします。

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