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精霊育成師の世界旅行 作者:早秋

第7章 大精霊との契約

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(19)貴族たちの思惑

 シゲルが大精霊を従える存在だからこそ、下手に手を出すわけにはいかないということで、国からの干渉を認めないという方向で検討を始めたアドルフだが、問題がないわけではない。
「――――一番の問題は、どうやって貴族たちを説得するかということだが……」
 アドルフはそう言いながらチラリとシゲルとラウラを見た。
 この場にいた者は、実際にシゲルが大精霊を呼び出すところを見ているので、まだ納得ができる。
 だが、実際にその瞬間を目にしたわけではない者が、そんな話を聞いて信じるかどうかは微妙なところだ。
 というよりも、ほとんどの者は信じないだろう。
 実際に目にしたアドルフたちですら、信じられない、信じたくないという思いがあるのだから、そうなるのは当然だ。
 王政を取っているホルスタット王国だが、絶対君主というわけではなく、貴族たちの力もあるのでそうした声を完全に無視することはできないのだ。

 アドルフがそう言いだすことを最初から予想していたラウラは、落ち着いた表情にまま頷いた。
「それでしたら特に問題はありません」
「……というと?」
 首をかしげながらそう聞いてきたアドルフに、ラウラはさらりと言った。
「いずれにしても一度はシゲルさんも顔を見せないといけないでしょう。その際に、ついでに大精霊を呼び出してもらえればいいのです」
「そんなことが、できるのか?」
 ラウラの言葉に、アドルフは半信半疑といった顔になって、シゲルを見た。

 一般常識では大精霊を呼び出すなんてことは、空想の世界でしかない。
 そのため、いくらシゲルであっても気軽に呼び出せるはずがないとアドルフが考えるのは当然のことだった。
 それを、ラウラが気楽に呼び出すといったのだから、疑念の表情になるのもわかる。

 そんなアドルフに、ラウラは頷いた。
「できます。どうせでしたら、シゲルさんとわたくしの婚約発表の際にでも呼び出したほうがいいと思います」
 ラウラがはっきりと婚約発表といったところで、横で黙って話を聞いていたシゲルは何ともいえない気分になっていた。
 それは、まさか自分が、こんな短期間で出会った女性と婚約に至るなんて考えてもいなかったというところだ。
 勿論、ラウラとの婚約が嫌だというわけではない。
 むしろ、こんな美人を相手に婚約できるのだから、不満など全くない。

 そんなシゲルの気持ちに気付いているのかいないのか、ラウラとアドルフの会話は続いていた。
「それであるなら何とかなるか。……最初からそうするつもりだったな?」
「当然です。それが、シゲルさんのためにもなるのですから」
「そうか。それにしても、あのラウラがなあ……」
「な、なんでしょうか?」
 ため息交じりにそう言ってきたアドルフをみて、ラウラは少しだけ怯んだような顔になった。

「報告を受けて、きちんと乙女をやっているとはわかっていたが、ここまで変わるとは思っていなかった」
「あらあら。いい変化なのですから、よろしいではありませんか」
 アドルフの言葉に、ラウラが何かを言い返すよりも先に、ラダがそう言ってきた。
 話の内容が、アドルフの雰囲気から変わったと察したので、ここぞとばかりに話に加わることにしたのだ。
「うむ。それはそうなのだがな。男親としては、なんとも微妙な感じだ」
 ラウラに変化を与えたのが、自分ではなくシゲルだったということに、アドルフは親としての複雑な感情をのぞかせた。

 そんなアドルフに対して、ラウラはこれまでの雰囲気を一変させて、つんとした態度を取った。
「そんなことは知りません。そもそも国の利益のために、シゲルさんに余計な負担を押し付けたのは、父上ではありませんか」
「それを言われると耳が痛いな」
 最終的にラウラが了承したからということもあるが、シゲルの傍に行かせると最初に言い出したのはアドルフだ。
 その点に関しては、言い訳のしようがない。
 それに、そもそも複雑な気持ちがあるといっても、別にシゲルとの婚約に反対というわけではないのだ。

 そのアドルフ以上に、なんとも言えない表情を浮かべている者が、ラウラの弟であるカインだった。
「――いよいよ姉上が婚約発表ですか。弟や妹たちに、なんと言ったものでしょうね」
 現在のホルスタット王国の王家は、兄弟仲が非常に良い。
 それは、カイン自身の能力の高さのお陰でもあるが、ラウラの存在も大きかった。
 それほどまでに、ラウラはカインを含めた兄弟たちから慕われていたのだ。

 そんなことを言ってきたカインに、ラウラが何かを返すよりも先に、ラダがホホと笑ってから言った。
「あなたの場合は、それもあるでしょうが、自身のこともあるのでしょう? さっさと覚悟を決めなさい」
 ラダの言葉に、カインはウッと詰まり、それを見たラウラが少しだけ呆れたような顔になった。
「カインは、まだ決めていなかったのですか」
 王太子であるカインは、当然ながら誰と婚姻を結ぶのかと国内外から注目をされている。
 ラウラを隠れ蓑にして自由を謳歌していたカインだったが、昨今では貴族たちからの圧力も強くなっているのだ。
 そんな状態で、未だに相手を明らかにしていないというのだから、ラウラが呆れるのも無理はなかった。

 アドルフを見て、この場にいる王族には味方が一人もいないと理解したカインは、今度はシゲルを見ながら言った。
「どなたかいい相手はいませんか?」
「いや、何故それを、渡り人である私に聞くのですか。こちらの世界で出会った女性は、確実にカイン王子よりも少ないのですよ?」
 元の世界を合わせても恐らく少ないだろうと思ったシゲルだったが、それを口にすることはなかった。
 余計なことを口走れば、墓穴を掘ることになると察したのだ。

 そんなシゲルに対して、カインが聞き捨てならないことを言ってきた。
「いえ。女性の扱いが上手いと評判のシゲルであれば、ほかにいい女性を知っていると思ったのですが?」
「ちょっと待ってください。一体どこで、そんな噂が!?」
 カインの言葉に、シゲルは慌てた様子でそう聞いた。
 女性の扱いが上手いなど、自分では全く考えたこともない。
 しかもそんな噂が王族の耳に入っているというのが、さらに問題である。

 そんなシゲルを見て、カインは呆れたような表情になり、なぜかラウラは笑いをこらえるような顔になっていた。
「何を言っているのですか。美人と評判の勇者と聖女に加えて、姉上もですよ? 市井のことは分かりませんが、貴族たちの間では、当然のように広まっています」
 当然だろうという顔でそう言ってきたカインの言葉を聞いて、シゲルは王の前だと分かっていても、思わず頭を抱え込んで呻いてしまった。
「近くで見ていれば誤解だと分かるのですが、改めて言われると、そう思われても仕方ないでしょうね」
 そのシゲルの様子を見て、ラウラがくすくすと笑いながら言った。

 今度は、そのラウラにラダが視線を向けながら首を傾げた。
「そうなの?」
「はい。シゲルさんは、元の世界の影響もあるのでしょうが、そもそも一対一の関係を重視される方ですよ?」
 現状全く説得力がないその言葉に、ラウラを除いた他の面々の不思議そうな視線がシゲルに集まった。
 その視線には、端から見ている分には、とてもそんなようには見えないという感情がこもっている。

 王族たちからの視線を受けて、シゲルは助けを求めるようにラウラを見た。
「もし、ほかの方々が同じように勘違いされているのでしたら、きちんと忠告をすべきでしょうね。シゲルさんの機嫌を損ねて、大精霊が動くことになるかも知れませんよ?」
 シゲルはそんなことをしないと分かっていても、ラウラはいたずらっぽい顔になりながら、敢えてそんなことを言った。
 顔は冗談めかしているが、その裏の意味は、これ以上余計な女性を押し付けたりしてくるなという意味が含んでいる。
 これ以上は、シゲルの負担にはなっても喜ばれるはずがないという確信が、ラウラにはあった。

 そんなシゲルとラウラを交互に見ながらアドルフが言った。
「それは分かったが、他国がどう動くかまでは、制限できないぞ?」
「もちろんそれは分かっています。ですが、やはりフィロメナの家がこちらにあるのが、一番の問題ですから」
 フィロメナの家は、どこの国の領域でもない魔の森にあるとはいえ、一番近い町がタロの町ということもあって、やはり一番影響力があるのはホルスタット王国である。
 そのホルスタット王国をけん制できれば、大分楽になるのは確かな事実なのだ。

 何故だか最後はシゲルの女性に対する扱いに関する話になってしまったが、とりあえず当初の目的を果たした話し合いは、無事に終えるのであった。
これでラウラの話は終わりです。
次は、フィロメナとマリーナに触れて、今章は終わりになります。
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