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(9)次の段階

「ふー、やれやれ。何とかなったね」

 アマテラス号の艦橋に入ったシゲルは、大きく息を吐きだしながらそう言った。

「随分とあっさりと通してくれましたね」

「向こうのリーダーは、こちらの力をある程度分かっていたみたいだからな。無駄に死にたくないという考えは、魔族にだってあるだろう」

 少し不思議そうな顔になっているラウラに向かって、フィロメナがそう答えた。

 むしろ、力によって支配されている魔族だからこそ、その差がどれくらいなのか見抜く能力も必要となる。

 もっとも、今回に限っては、リーダー以外にはまともに見抜いている者はいなかったと、フィロメナは考えていた。

 態度に出ていたのは二人ほどだったが、他の者たちもただリーダーに従っているように見えていた。

 

 フィロメナの言葉を聞いて、そんなものなのですねと頷くラウラを見てから、シゲルは他の面々を見回した。

「それで? 言葉通りにさっさと出発する?」

「ああ、その方がいいだろう。きちんと姿を見せながら、だな」

 アマテラス号は、飛んでいる最中も姿を隠しておくことができる。

 ただ、それだと先ほど魔族に説明した通りにはならないので、きちんと姿を見せておく必要がある。

 

 シゲルが一応フィロメナ以外を見て確認すると、他の者たちも頷いていた。

 魔族にアマテラス号を見せること自体に反対する者は、一人もいなかった。

 アマテラス号を不用意に見せれば、魔族側も騒ぎになる可能性もあるが、それは別に魔族の領域で見せなくても同じことだ。

 人族の領域でさんざん見せて回っているので、魔族側にも情報は伝わっているというのがフィロメナたちの見解だった。

 人族と魔族は、完全に交流が途絶えているわけではなく、ある程度の情報はお互いに出回っているのだ。

 

 全員の意思が確認取れたところで、シゲルが頷きながら言った。

「了解。それじゃあ、さっそく出発するか――と言いたいところだけれど、だれか他の人が操縦しない?」

「うん? 珍しいな。シゲルが操縦すると思っていたが?」

 アマテラス号の操縦は全員ができるようになっているが、エアリアルのことを考えてシゲルがすることが多い。

 そのため、今回もそうなるだろうとフィロメナが考えるのは当然のことだった。

 

 そのフィロメナに、シゲルは首を振りながら言った。

「本当ならそうしたいところだけれどね。今は『精霊の宿屋』を優先したほうがいいと思ってね」

 シゲルの答えに、フィロメナだけではなく、全員が嗚呼という顔になった。

 『精霊の宿屋』を拡張した場合にどうなるのか知りたいのは、シゲルだけではないのだ。

 

 

 それなら私が操縦するというフィロメナにアマテラス号を任せて、シゲルはさっそく『精霊の宿屋』を起動した。

 アマテラス号が姿を見せた時の魔族たちの驚く様子はしっかりと確認しておいたので、すでにシゲルの意識は『精霊の宿屋』に向いている。

 シゲルが『精霊の宿屋』を起動すると、護衛についていたスイが画面をのぞき込んできた。

 スイは体が小さいままなので、今のように胸元から見られる分には、あまり邪魔にはならない。

 

 貯めて置いた精霊石を必要な分だけ精霊力に変えたシゲルは、さっそく『精霊の宿屋』の拡張を行った。

 すると、予想もしていなかったメッセージが画面上に出てきた。

「……げ、ナニコレ?」

 シゲルが思わずそう言ってしまうと、当然のように他の面々から視線を向けられた。

「どうしたのよ?」

 ミカエラがそう聞いてきたが、シゲルは数秒の間、答えることができなかった。

 それほどまでに、メッセージの内容が意外だったのだ。

 

《この拡張を行うと、外敵から襲われるようになります。――実行しますか?》

 

 外敵というのがどういう存在であるかはわからないが、これまでのように平和な世界であり続けるというわけにはいかないようだった。

 シゲルは、何度かメッセージを確認してみたが、残念ながらその表示が消えることはなかった。

 相変わらず自分に視線を向けてくるミカエラに、シゲルはため息をついてから答えた。

「どうやら、今以上に拡張すると、敵が出てくるようになるみたいだよ?」

「え? なによ、それ?」

 ある程度『精霊の宿屋』のことについて話を聞いているミカエラも、それには驚いたのか、目をパチクリさせながらそう聞いてきた。

 

 ただし、聞かれたシゲルも明確な答えを持っているわけではない。

「さて、どうするか」

 と、呟いてみたものの、明確な答えが出せるはずもない。

 しばらく考えていたシゲルだったが、途中ではたと思い出した。

 この場合は、当事者がいるのだから何も一人で悩む必要はないのだ。

 そう考えたシゲルは、さっそくラグとリグを呼び出した。

 

「――――というわけなんだけれど、どうしたほうがいいと思う?」

 シゲルがそう問いかけると、ラグとリグは同時に顔を見合わせた。

 どちらもその顔には困惑が浮かんでいる。

「正直に申し上げれば、今のままでも十分居心地はいいというのが、私の思いです」

 ラグがそう言うと、リグもその隣でウンウンと頷いていた。

「ただ、もっと多くの精霊に『精霊の宿屋』を知ってほしいという思いがあるのも確かです」

「広さが限られていると、どうしても来れる精霊の数も限界があるからねー」

 ラグの言葉に付け加えるように、リグもそう言ってきた。

 精霊からの視点の意見に、シゲルはなるほどと頷いた。

 

 そのやりとりを見ていたミカエラが、少しだけ不思議そうな顔になって聞いてきた。

「デメリットは分かるけれど、メリットはそれくらいなの?」

「いや、そんなことはないよ。多分だけれど、成長が頭打ちになっているスイやサクラやノーラも、拡張したら解放されると思う」

 それはシゲルの予想ではあったが、ほぼ間違いないだろうと確信していた。

 もし外敵が出てくるようになるのであれば、精霊たちも成長させる意味が出てくる。

 逆に今の平和な世界であれば、上級精霊は三体もいれば十分だということだ。

 もしくは、初期精霊だけが特別な扱いになっているだけということも考えられる。

 

 ただ、それはあくまでもシゲルの予想でしかないので、違っていた場合には面倒なことになる。

 最悪の場合は、折角作った箱庭世界が、外敵とやらに破壊されつくされる可能性もあるのだ。

「外敵ねえ……。それって、上級精霊が揃っていても、倒せない相手なのかな?」

 重ねてそう聞いてきたミカエラに、シゲルは首を左右に振った。

「その辺は何とも……。結局、やってみないと分からないってところだね」

「なるほどね。無理に拡張する必要はないけれど、拡張しないとこれ以上の成長は望めないということか。難しいわね」

 ミカエラは、言葉通りに難しい顔になってうんうんと頷いた。

 

 さらに、その会話をしっかりと聞いていたラウラが混ざってきた。

「それだけではないのではありませんか?」

「え?」

 意味が分からずに首を傾げるシゲルに、ラウラがさらに続けて言った。

「私は詳しく存じませんが、確か木の大精霊様との約束もあるのでは?」

「あ……」

 外敵が出てくるというメッセージに踊らされて、すっかりそのことを忘れていたシゲルが、少しだけ呆然とした顔になった。

 

 シゲルは、ラウラのお陰で思い出した事実と合わせて、さらに別の考えも浮かんできた。

「……そうか。いざとなれば、メリヤージュたちに頼むということもできるんだった」

 シゲルがすでに大精霊と契約しているというのは、洞窟内でのやり取りで判明している。

 それならば、外敵が出てきたときに、大精霊たちに対応してもらうこともできるのではないかと考えたのだ。

 それどころか、最初に会ったときに言われたメリヤージュのメッセージは、こういうことも考えてのことだとさえ思えてきた。

 

 シゲルのセリフをしっかりと耳にしたミカエラは、少しだけ白い目を向けた。

「そこで大精霊を使うと発想になるのが、シゲルらしいといえるわね」

「いいじゃないか。それに、大精霊なんて過剰戦力は、こっちだとほとんど使えないんだから、箱庭世界で使ってもいいんじゃない?」

 シゲルがそう答えると、ミカエラは好きにしなさいと言わんばかりに肩を竦めた。

 大精霊という強力な助っ人がいるとわかったシゲルは、すでに気持ち的には開き直っている。

 

 どちらにしても、これ以上の拡張をしなければ、いずれは頭打ちになることは分かっている。

 それならば、試しに拡張を行って成長を促すのも手だろうと、シゲルはそう決断するのであった。

あっさりと大精霊を使うことを決断したシゲルでしたw

少しだけ気分が高揚していたりします。

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