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精霊育成師の世界旅行 作者:早秋

第7章 大精霊との契約

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(8)一触即発?

 メリヤージュは、初めて会ったときに、自身が『精霊の宿屋』を訪ねることができるようにしてほしいというようなことを言っていた。
 《炎の調べ》を取り込んだ段階で『精霊の宿屋』の拡張条件が出てきたことを考えると、エアリアルの言ったことも辻褄が合う。
 そして、それが意味することは、次の段階に拡張すると大精霊が来れるほどの広さになるということになる。
 今のところ『精霊の宿屋』の広さが大きくなることによって得られるメリットは、精霊が多く訪ねて来るようになっていることくらいしか感じられない。
 あるいは、別の何かがあるのかもしれないが、少なくともシゲルは実感してはいなかった。
 その状態で、大精霊が来るようになると、どんなことが起こるのかは分からない。
 ただ、訪ねて来る精霊のことを考えると拡張しないという手はない。
 大精霊が訪ねて来ることによって、『精霊の宿屋』に何かが起こるかもしれないが、それはそれでイベントの一つとしてシゲルは受け入れるつもりでいた。

 そんなことを考えつつ、シゲルはイグニスと会った洞窟を出てアマテラス号へと向かっていた。
 勿論、他の者たちも一緒である。
「それにしても、あなたの持っている『精霊の宿屋』って不思議よね? なぜ大精霊が当然のように来たがっているの?」
 シゲルの予想は、すでに他の者たちにも話をしている。
 それを聞いたうえで、ミカエラが歩きながらそんなことを聞いてきた。
「いや、そんなことを言われても自分にもわからないんだけれど? どうしても知りたいんだったら、直接聞いてみたら?」
 シゲルも歩きながら肩をすくめてそう答えた。

 そのシゲルをぎろりと睨んだミカエラは、
「そんなことできるわけないじゃない。気軽に大精霊と話ができる変人と一緒にしないでちょうだい」
「いや、変人って……」
 変わった人扱いされたシゲルは、微妙に傷ついた顔になった。
「変人じゃなかったら何だっていうの? 次から次へと大精霊をひっかけて。あまつさえ、契約までしているのよ!?」
 名づけが契約の一種だということを知らなかったミカエラが、プリプリとしながらそう言った。

 精霊と契約する際には、名前を付けることがある。
 ただし、それを行わない者もいるので、名づけ自体に契約の効力があるとは思われていなかったのだ。
 シゲルは、その名づけをこれまで四体の大精霊に行っている。
 ということは、四体の大精霊と契約をしているということになり、それはミカエラが知る限りでは、世界で誰も達成したことのない偉業なのだ。
 しかもシゲルは、力で強引に契約をするのではなく、相手から名づけをするようにと言われて契約している。
 ミカエラでなくとも変わった人扱いする者は、間違いなくいるはずだ。
 現に、言われた当の本人以外は、様々な表情を浮かべているが、ミカエラの言葉を否定するようなものではない。

 フィロメナたちにまで肯定されてしまったシゲルは、ため息をついてから答えた。
「そんなこと言われてもね。気づいたらそうなっていたんだから、どうしようもないと思わない?」
「思わないわよ」
 たった一言で切って捨てたミカエルを見て、シゲルは肩を竦めた。
 どうやらミカエラは、名づけが契約の一種だと初めて知って、八つ当たりに近いような感情をぶつけてきているのだと悟った。
 気持ちが不安定になっている今は、変に反論するよりも、気分が落ち着くのを待つことにしたのだ。
 フィロメナたちもそれが分かっているのか、あえて口を挟んで来ることはしてこなかった。

 
 ミカエラの愚痴にしばらく付き合っていたシゲルたちだったが、それがフィロメナの一言で止まることになった。
「ミカエラ」
 たったそれだけでフィロメナが何を言いたいのか分かったのか、これまでぶちぶち言っていたミカエラもすぐに口を閉じた。
 マリーナは既に戦闘態勢になっていて、ラウラの傍によって守る様子を見せている。

 彼女たちの行動を見て、シゲルはようやくアマテラス号の傍で異変が起こっていることが分かった。
 そろそろアマテラス号が見える位置にまで近づいてきていたが、その周りに複数人の人影が見えたのだ。
 場所とタイミングを考えれば、昨日同じように周辺をうろついていた魔族であることは間違いない。
 シゲルは、隣を歩いていたリグに目配せをして、姿を消すように指示した。
 言葉には出していなかったが、リグはその意味を察して、すぐに姿を消していた。
 戦闘になってしまえば姿を見せないわけにはいかないが、最初から余計な情報を与えるつもりはないのである。

 ある程度の緊張感を保ちながら、シゲルたちはアマテラス号へと近づいて行った。
 彼らがこの場所を去るのがいつになるのかわからないし、連日来ているということは、そう簡単に諦めるとも思えない。
 それならば、最初から姿を見せたほうがいいと考えたのだ。
 戦闘になったとしても、勇者パーティが簡単にやられるわけではないし、どうせすぐにこの場からいなくなるつもりだったので、多少の問題を起こしたとしても不都合はない。

 少しの間でそう判断して近づいて行ったシゲルたちに魔族たちが気付いたのは、数メートルも近づいていない時だった。
 仲間が周辺をしらみつぶしに調べている間、斥候役と思われる男がシゲルたちの存在に気付いたのだ。
「おい! 誰か来たぞ! ――人族だと!? なぜこんなところにっ!?」
 その斥候役の声で、周囲に散っていた他の五人が一瞬で集まってきた。
 その動きを見れば、フィロメナたちほどではないにしろ、それなりに実力があるということは分かる。

 気付かれているとわかっていても気にせず近づいてくるシゲルたちに、集まった魔族の一人が声をかけてきた。
「おい! そこで止まれ! 人族がこんなところで何をしている。いや、その前に、一体どうやってここまできた!?」
「なぜその問いに答える必要があるんだ? それに、こちらが質問したとして、お前たちが答えるつもりはあるのか?」
 最初から喧嘩を売るように言ったフィロメナだったが、これにはきちんとした理由がある。
 そもそも魔族たちを見れば、彼らが最初から戦闘するつもりであることは分かる。
 わざわざ質問をしてきたのは、少しでも情報を得るためなのだ。

 その返答を聞いて、魔族パーティは気色ばむような顔色になっていたが、声をかけてきたリーダーらしき男は一人だけ真っ直ぐにフィロメナを見てきた。
 それを見たフィロメナは、おやと直前までの考えを改めた。
 どうやら話し合いの余地があるらしいと思ったのだ。
 ただし、それだけで警戒を解くようなことはしない。

 フィロメナの予想通りに、魔族パーティのリーダーが少ししてから問いかけてきた。
「――何が聞きたい?」
「……ここは、お前たちにとっても未開の地であるはずだ。そんなところで何をしているんだ?」
「ちょっとした探し物だ」
 フィロメナの問いに、リーダーは少しだけ間を空けてそう答えてきた。

 リーダーの言動を見ていれば、彼がフィロメナたちの実力をしっかりと見抜いていることは分かる。
 だからこそ、問答無用で戦闘になってもおかしくない人族を相手に、会話をしようと試みているのだ。
「そうか。探し物か。だったら私たちの答えも同じだ。探し物があってここまで来た。……どうやって来たのかは、私たちを見逃してくれれば、すぐにわかるだろう」
 アマテラス号の姿を消さずに立ち去ることを示唆したフィロメナの言葉に、シゲルは一瞬驚いてすぐに納得の表情になった。
 フィロメナは、魔族側にもアマテラス号の存在を明らかにさせようという意図を持っているのだ。

 フィロメナの言葉を聞いた魔族リーダーは、再び考える様子を見せた。
「――――そうか、わかった。こちらに手を出してこない限りは、攻撃は控えよう」
「リーダー!?」
 リーダーがそう答えると、魔族側の一人が信じられないという顔をした。
 だが、リーダーはそれには答えずに、腕を上げるだけでそれを沈めた。
「俺たちはしばらく脇にどけていよう。その間は、こちらから攻撃しないことを約束する」
「そうか。それならそのまま通させてもらう」
 戦闘が起こらないで済むのならそれに越したことはない。
 フィロメナは、リーダーの言葉に頷きながらそう返した。

 
 結局魔族たちとの戦闘は起こらなかった。
 シゲルにしてみれば、魔族たちが警戒をしている中で横を通るのは冷や冷やものだったが、どうにか焦っている姿は見せないで済んだはずである。
 魔族側は一部の者が何やら言いたそうにしていたが、リーダーがきっちりと抑えたのか、攻撃してくることはなかった。
 そんな緊張感の漂う中、シゲルたちは無事にアマテラス号へと乗り込むことができたのである。
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