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精霊育成師の世界旅行 作者:早秋

第6章 遺跡の扱い

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(17)精霊の好むもの

 フィロメナの言葉に、ノーラは嬉しそうな顔で何度も頷いていた。
 それを確認したシゲルは、慌てて『精霊の宿屋』を確認してみる。
 とはいえ、今の『精霊の宿屋』は、最初の頃に比べて膨大な量のアイテムが登録されているので、どれがそれにあたるのかが分からない。
 一応、鉱石や鉱物にあたる欄を見ているのだが、シゲルにはさっぱり分からなかった。
 そのシゲルが、フィロメナにどんな名前なのかを聞こうとしたその時、嬉しそうにふわふわ浮いていたノーラが、とある箇所を指した。
「これが、その石の名前?」
 シゲルがそう問いかけると、ノーラは何度かコクコクと頷いた。

 どうやら間違いないようだと理解したシゲルは、今度はフィロメナを見ながら聞いた。
「リート石って名前みたいだけれど、合ってる?」
「ああ、間違いないな。きちんとそう呼ばれているぞ」
 そう言いながらフィロメナが頷くのを見て、シゲルはそうなんだと呟いた。
 精霊たちが取ってきた物――というよりも、『精霊の宿屋』に登録されている物の名前と現実世界(?)で呼ばれている名前は、良く違っていたりする。
 そのため、時折話に行き違いが出たりすることもあるのだが、今回はそれに当てはまらなかったようだ。

 そのまま『精霊の宿屋』のチェックを続けているシゲルを見ながら、フィロメナがワクワクしたような顔になった。
「な、なあ、シゲル」
「んー?」
「もしかしなくても、これはたくさん用意できるのか?」
 その問いに、シゲルは『精霊の宿屋』から視線を上げて、ようやくフィロメナの状態に気がついた。
 その顔は、どうみても新しいおもちゃを手に入れて喜んでいる子供のように見える。

 フィロメナが何を期待しているのかを理解したうえで、シゲルは苦笑しながらノーラを見た。
 手元にあるリート石(付与済み)を作ったのはノーラなので、聞いてみないと分からない。
 シゲルとフィロメナの会話をしっかりと聞いていたのか、ノーラは先ほどと同じように何度か上下に首を振った。
「あ、そうなんだ。それじゃあ、それはこっちで造れるのかな? それともこれの中だけ?」
 これと『精霊の宿屋』を指しながら聞いたシゲルに、ノーラは一度困ったような表情を浮かべてから、なにやら一生懸命に身振りを交えながら説明を始めた。
 だが、残念ながらシゲルにはノーラが何を言いたいのかがさっぱり分からなかった。
 分かったのは、何やら複雑な事情があるという事だけだ。

 一旦ノーラからその事情を聴くのを諦めたシゲルは、フィロメナを見て言った。
「ごめん。なんか事情があるみたいだけれど、今理解するのは無理そうだ」
「今? 後からなら分かるのか?」
「多分? ラグかリグが戻ってきたら中継してもらえると思うよ」
「あ。そう言えばそうだったな」
 リート石のことで頭が一杯になっていて、すっかりそのことを忘れていたフィロメナは、力が抜けたような顔になった。
 どうしてもノーラから話を聞かないと、と思い込んでしまっていたのだ。

 フィロメナの様子を見て苦笑したシゲルは、念のためラグとリグの状況を教えておくことにした。
「何か特別なことでもない限りは、結構長時間戻ってこないと思うから、フィロメナも中断した作業をやり直したほうが良いんじゃないかな?」
「むう。仕方ない。しばらく待つか」
 不満そうな顔になったフィロメナだったが、無理を言っても仕方ないと判断したのか、素直に読みかけていた途中の資料を手に取った。
 元々この場所にはあと数日滞在する予定だったので、焦っても仕方ないと思い直したのだ。

 そんなフィロメナを見て、少しでも早めてあげるかと考えたシゲルは、今度はノーラを見て言った。
「悪いんだけれど、ラグかリグを捜してきてくれるかな? もし範囲外にいるようだったら無理はしなくていいからね」
 シゲルがそう言うと、ノーラはコクコクと頷いて今いる部屋から出て行った。
 精霊が探索できる範囲は、ランクによって変わって来るので、上位ランクにいるラグやリグはノーラでは探せない範囲にいるかも知れない。
 それはそれで仕方ないので、フィロメナには諦めてもらうしかない。

 今も護衛についているシロであれば、同じランクなので探してくることは可能だろうが、シロがそれを嫌がりそうなのでやめておいた。
 別にシロが探索を嫌がるという意味ではなく、ランクが高い初期精霊のうち最低でも一体を護衛につけておかないと、不満気な顔をするのだ。
 それはシロだけではなく、ラグやリグも同じだ。
 そんなことで不満がたまって、見限られるのも嫌なので、シゲルは出来る限り初期精霊のうち一体は必ず護衛として残すようにしているのである。

 
 ノーラを送り出したシゲルは、再び『精霊の宿屋』のチェックをすることにした。
 新しいアイテムが増えたので、出来ることも同じように増えたのではないかと考えたのだ。
 すると、その予想通りに、新しい項目が増えているところがあった。
「おっと。そう来たか」
 シゲルが思わずそう声を上げると、部屋にある本棚を眺めていたマリーナが興味深げな視線を向けてきた。
「何かあったの?」
「うん、あった。新しい建材が増えたからか、作れる建物が増えているね」
 これまでも石を使った建造物はあったのだが、それ以上に作れる物が増えている。
 端的に言えば、高層ビルらしきものが作れるようになっているのだ。

 それらを確認したシゲルは、ふと疑問に思って首を傾げた。
「――前から思っていたけれど、なんのためにこの建物ってあるんだろうな。住む人がいるわけでもないだろうに」
 以前から不思議だったのだが、『精霊の宿屋』には各種建物が設置物として建てられるようになっている。
 小屋を建てているシゲルが言うことではないかもしれないが、なんのためにそれだけの数の建造物を用意しているのかがわからない。
「案外、精霊たちも建物の中で雨露をしのぐこともあるのじゃない?」
 マリーナが冗談めかしてそう言うと、シゲルは少しだけ笑い返した。

 それは、お互いに冗談だとわかっているからこその笑いだったが、ふとシゲルは真顔になって言った。
「……いや、案外冗談じゃないかも知れないよ?」
「え、いや、シゲル?」
 シゲルの言葉に、マリーナは戸惑ったような顔になってそう返した。
 こちらの世界でも、精霊は自然を好むもので人工物には中々近寄らないというのは、常識の範囲なのだ。

 そんなマリーナに、シゲルは首を振りながら続けた。
「勿論、精霊全体がそうだとは言わないよ。でも、一部の精霊だったら、そういうのがいてもおかしくはないんじゃない? そうでないと建物の中にまで精霊がいることの説明がつかないし」
 人工物を嫌っていると言われている精霊だが、建物の中に全くいないというわけではない。
 そうでなければ、建物の中で精霊術が使える説明が出来なくなる。
 先ほどのことと矛盾するようだが、精霊術を使える者の中ではそのことも常識として言われているのだ。

 シゲルの説明を聞いたマリーナは、考え込むような顔になった。
「確かにそうかも知れないけれど……だとすると、やっぱり精霊が好む建物とかもあるという事かしらね?」
「ああ、なるほど。それも十分にあり得そうだね」
 例えば、土の精霊が好む石などを使って建物を作った場合には、それらの精霊が好んで集まって来るとかが一番分かり易い。
 そもそも精霊ノーラが作った建材がある以上、そうした建物があってもおかしくはないのだ。

 そこまで考えたシゲルは、何度か頷いた。
「それだったら積極的に建物を建てるってのもありだな」
 これまでの『精霊の宿屋』では、建物は小屋をひとつしか建てていなかった。
 それは、精霊が人工物を嫌っているという常識を考えてのことだったが、大きめの石しか置いていない現状を考えると、積極的に建物を増やしても良いだろう。
「建てた結果どうなったかは、私にも教えてね」
 いろいろと今後のことを考えて算段をたてるシゲルに、マリーナがそう言ってきた。
 マリーナは精霊術を使えるわけではないのだが、知識欲はあるので精霊の好むものには興味がある。
 それはマリーナだけではない、他の面々も同じだろう。

 マリーナの言葉に、シゲルはわかったと返事をしたところでその場での話し合いは終わりとなった。
 そして、ノーラの頼んだラグとリグの探索が終わって戻ってきたのは、それから三十分ほど経ってからのことであった。
リート石の名前は、コンクリートから取っていますが、コンクリートではありませんw
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