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精霊育成師の世界旅行 作者:早秋

第6章 遺跡の扱い

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(16)ノーラのお土産

 シゲルがタケルの資料を読み、マリーナが写本を行っていると、探索に出していたノーラが戻ってきた。
 それに最初に気付いたのは、慣れない文字を書いて少し休憩を取ろうと顔を上げたマリーナだった。
「あら、シゲル。精霊が戻ってきたわよ?」
「……うん? ああ、ほんとだ。ノーラ、ご苦労様」
 シゲルがノーラにそう声を掛けると、ノーラは嬉しそうにその場でくるりと回った。
 言葉を話せない精霊は、こうして身振りで感情を示すことが多い。

 シゲルがノーラをねぎらい、『精霊の宿屋』に戻って休んでいてと言ったが、何故かノーラはすぐには戻らなかった。
「あれ? どうしたの? なにかあった?」
 いつもなら喜んで『精霊の宿屋』に戻って行くのだが、ノーラは何か言いたげにその場にとどまっていた。
 シゲルが首を傾げながら聞いたが、何やら手をパタパタさせていて、残念ながら何を言いたいのか理解できなかった。
 残念ながら今この場にいるのは、言葉を話せないシロなので、ノーラが何を言いたいのかもさっぱり分からない。
 言葉の話せるラグとリグは、ノーラと同じように探索に出ているので、すぐに確認することも不可能だ。

 さてどうするかと悩むシゲルだったが、ここでシロが動いた。
 シゲルの傍で寝そべっていたが、むくりと起き上がってノーラを鼻先でつついたのだ。
 それだけでシロが何を言いたいのかわかったのか、ノーラは少し慌てた様子で服の中から何かを取り出して、シゲルに差し出すような仕草をした。
「うん? その石がどうかした?」
 ノーラが取り出した石を見て、シゲルは首を傾げながらそう聞いた。

 何かを取り出す仕草をしたノーラの腕の中には、ちょうどシゲルの握りこぶしくらいの大きさの石があったのだ。
 もっとも、ノーラの大きさだとシゲルの握りこぶしは、一抱え以上の大きさになる。
 頑張って抱えているようにしか見えないノーラの姿を見て、シゲルは慌ててその石を受け取った。

「何かしらね?」
 傍でそのやり取りを見ていたマリーナも、シゲルの手にある石を覗き込んでそう聞いていた。
「うーん。よくわかんないけれど、わざわざ他の採取物とは別に渡してくるってことは、何かあると思うんだけれどね?」
 探索に出している精霊たちは、珍しい物は時折こうして別個で差し出してくることがある。
 この場合の珍しい物というのは、捜し辛い場所にあったり、量自体が少ないような物を指している。
 これまで見つけてきた珍しい物の中は、滅多に見ない植物がほとんどだった。
 今回のように、鉱石を差し出してきたのは、初めてのことになる。

 ノーラが出した石を手の上でコロコロと転がしていたシゲルだったが、そんなことをやっていてもその石がなんであるかなんてことは分かるはずもない。
 そこでシゲルは、興味深げに見ているマリーナに差し出した。
「調べてみる?」
「……いいのかしら?」
「うん。『精霊の宿屋』で取り込んでも名前は分かると思うけれど、それが実際に何に使われる物なのかまでは分からないからね」
 『精霊の宿屋』は、精霊たちが取ってきた物は、きちんと名前で表示される。
 ところが、その名前は、時として一般で知られているものとは違って表示されることがあるのだ。
 シゲルは、その違いを通称と学名の違いのようなものだと考えていた。

 ノーラがわざわざ差し出してくるということは、珍しい物であることには間違いないはずだ。
 それならば、最初からマリーナやフィロメナに調べてもらったほうが良い――というところまで考えたシゲルだったが、ふと思い出したようにノーラに聞いた。
「ところで、この石は、これしか見つからなかったの?」
 シゲルがそう聞くと、ノーラは首を左右に振った。
「あら。ということは、この場所にはある程度の量はあるけれど、ほかの場所には滅多にないってことかな?」
 シゲルがそう問いかけると、ノーラは何やら微妙な表情になった。
 その顔を見れば、間違っていないが、正しいというわけではないということがわかった。
 これまで言葉を話せなかったラグたちを見てきているので、それくらいのことは理解できるようになっているのだ。

 とにかく、この石がなんであるのか、一度きちんと調べてみないことには話が進まない。
 そう考えたシゲルは、未だの手の上で石をコロコロさせているマリーナに聞いた。
「何かわかった?」
「いいえ。残念ながら。ちゃんとフィーに調べてもらったほうが良いわ」
 こういった素材になり得る物に関しては、フィロメナが誰よりも詳しい。
 そのことはシゲルもわかっているので、頷きながらフィロメナがいる所に行こうかと提案するのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 作業員の部屋(?)で資料を読んでいたフィロメナは、突然シゲルとマリーナが入ってきたことに気付いて、戸惑ったような表情を向けた。
「なんだ? 何かあったのか?」
 二人の顔が真剣にものになっていることが分かったフィロメナは、少しだけ首を傾げてそう聞いた。
「何かあるのかどうかは、フィロメナの答え次第、かな?」
 シゲルがそう言ってきたことで、フィロメナはますます意味が分からないという顔になった。

 そこで今度はマリーナが、フィロメナに向かって例の石を差し出した。
「これがなんの鉱石かわかるかしら? ノーラが見つけてきたみたいだけれど……あら?」
 マリーナの言葉に、一緒について来ていたノーラがシゲルの前でなにかを知らせるように、上下に移動している。
 シゲルは、ノーラが何かを知らせようとしていることは分かったが、その細かい意味までは分からなかった。
「うーん。何かを教えてくれようとしているのはわかるんだけれど……」
 シゲルがそう言うと、ノーラは困ったような顔でその場で止まった。
 ついでに、当然のように着いて来ているシロも、クーンと寂しがっているような鳴き声を上げていた。

 シゲルとノーラのやり取りを見ていたフィロメナは、どれと言いながらマリーナが差し出していた石を手に取った。
「とにかく、この石がなんであるかを調べれば、何か分かるのでは……って、ちょっと待て!」
 フィロメナは、その石を一目見るなり、顔色を変えてノーラとシゲルを見た。
「これはどこで見つけてきたんだ!?」
「あ、やっぱり珍しい物なんだ」
「いや、珍しい物といえば珍しいが、珍しくないと言えば珍しくないな」
「なんだそりゃ」
 フィロメナの微妙な言い回しに、シゲルは力の抜けたような返答をした。

 その言葉の意味が分からなかったのはマリーナも同じだったようで、少し首を傾げながら聞いた。
「私は初めて見たのだけれど、珍しい物じゃないの?」
 冒険者をやっていれば、鉱石であってもある程度の知識はある。
 露出している珍しい鉱床などを見つければ、それが収入に繋がるのだから当然のことなのだ。
「ああ、それは仕方ない。私も鉱石の段階で現物を見るのは初めてだからな」
 フィロメナは一度そこで言葉を区切ってから、何やら部屋の壁を指した。
「それは、これらの壁で使われている建材だ。正確には、それをどうにか加工すれば、この壁のように使えるようになる」
 フィロメナのその言葉に、シゲルとマリーナは、思わず呆けたように壁や天井を見た。

 
 これまで見てきた遺跡の建物には、特殊な建材が使われているということは聞いていた。
 まさかその建材の材料となる物をノーラが見つけてきたのかと、シゲルは思わずまじまじと見つめてしまった。
 だが、そのノーラは、相変わらず何かを言いたげにシゲルを見ている。
「ふむ。これは予想なんだが、もしかしたら、これはノーラが見つけて来た物ではなく、作った物なんじゃないか?」
「え」
 フィロメナの予想に、シゲルは目を丸くしてノーラを見た。
 そして、そのノーラは、フィロメナの言葉を聞いて、嬉しそうに上下に動き始めた。

 驚くシゲルに対して、フィロメナは納得の顔で頷いた。
「やはりか。もともとこの石は自然界には存在せずに、何かの加工を施していると言われていたからな」
「……疑問が解けたのはいいけれど、フィーは少し落ち着きすぎじゃないかしら?」
 ジト目になってそう言ってきたマリーナに、フィロメナは肩を竦めてみせた。
「そうか? だが、シゲルの精霊がやったことだぞ?」
 あっさりとフィロメナがそう返すと、マリーナは少しだけ目を丸くしてから「ああ」と肩の力を抜いた。
 ポーションを作り出すことが出来る精霊がいるのだから、建材になりうる素材を作り出してもおかしくはない。
 マリーナは、フィロメナがそう言いたいことを理解して、納得したのであった。
今度はノーラがやらかしました。
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