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精霊育成師の世界旅行 作者:早秋

第6章 遺跡の扱い

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(7)ゲルリオン帝国

 ゲルリオン帝国に向かうことに決めたシゲルたちだったが、エルフの森から真っ直ぐに向かったわけではない。
 ホルスタット王国でも出したように、遺跡に関しての提出するための資料を作らないといけない。
 基本的にシゲルはそれらの資料作成にはノータッチなので、フィロメナたちにお任せ状態だ。
 その資料ができるまでの間、シゲルは『精霊の宿屋』を確認していた。
 短いエルフの森の滞在中も、しっかりとシロに周辺探索をするように指示を出していた。
 初めて行った地域だったため、新しく手に入れたものも多くあり、確認することがたくさんあったのだ。

 ベッドの上で寝そべりながら新しく増えた設置物を確認していたシゲルは、傍に寝そべっていたシロの背中を撫でながら考えていた。
(うーん。あの短時間で百種類近く新しい物が増えたのはいいんだけれど……さすがに全部を把握するのが難しくなってきたかな)
 幸いにして、『精霊の宿屋』のシステムでは新しく手に入れた物は分かるようになっている。
 手に入る地域も書かれているので、何を手に入れたのかは分かるようになっているのだが、それを使いこなせるかどうかはまた別の問題だ。
(まあ、だからこそ、地域ごとに一括で環境が作れるようになっているんだろうけれど)
 『精霊の宿屋』には、○○地域とか○○周辺という形で環境が作れるようになっている。
 それを利用すれば簡単に地域別の環境を用意できるので、便利な機能なのだ。

 そんな感じで新しく登録されたアイテムを見ていたシゲルだったが、悩まし気な声を上げた。
「折角新しいものを手に入れたから使ってみたい気もするけれど……現状上手くいっているから変に手を入れたくないんだよな」
 今の『精霊の宿屋』は、これまで細かく調整した甲斐もあってか、訪れる精霊の数が過去最高にまで伸びている。
 大きな変更はしていないのだが、生えている木を変えたり、環境のバランスが取れるようにしたりとちょっとした手を入れたりしているのだ。

 この状態から大きな変更を加えると、今の収入が減ってしまう可能性が大きい。
 そもそもシゲルは、今の環境が気に入っているので、無理に変える必要性も感じていなかった。
(……まあ、いいか。どうせ全部を使い切るなんて無理なんだし)
 今までもすべてのアイテムを使っているわけではない。
 というよりも、ほとんどのアイテムは使っていないのが現状だった。
 『精霊の宿屋』の広さに対して、手に入れているアイテムの数が膨大なのだからそれも当然だ。

 今回は、新しく登録されたアイテムを眺めるだけで済ませたシゲルは、ベッドから起き上がって自室から出て行った。
 そろそろ夕食の準備をするのにちょうどいい時間になっていたのである。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 資料を用意するといっても、論文のように堅苦しいものを用意する必要があるわけではない。
 そもそも学会なんていうものが存在しているわけではないのだ。
 フィロメナたちが複数の国に古代遺跡の話をしに行こうとしているのは、あくまでも話を加速するためであり、真偽の判断はそれぞれに任せるというスタンスなのだ。
 遺跡を目の当たりにしているフィロメナたちは、超古代文明があったことを確信しているが、それを他の者たちが信じるかどうかはまた別問題である。
 もし、大精霊が管理していない文明の名残などが見つかれば、そこに研究者が入ってその存在が認められることも加速するだろう。
 だが、そんな遺跡は見つかっていないので、現状は今の方法で行くしかないのである。

 資料ができたシゲルたちは、アマテラス号に乗ってゲルリオン帝国の帝都へと入った。
 アマテラス号は、当然のように城壁の外側に停めてある。
 帝都に入ったシゲルたちは、その足で町の中央にある城へと向かった。
 そこで、関係者と会えるように手続きをするのだ。
 ホルスタット王国のように、気軽に皇帝に会えるわけでもないので、関係する部門の者と会えればそれで十分だとフィロメナたちは考えている。
 その関係者と会うのもある程度の時間がかかることは分かっているので、今回はちょっとした旅行気分で帝都を見学するつもりでもいた。

 ――と、そんなことを考えていたシゲルたちだったが、認識が甘かったことを思い知らされた。
「さすが勇者一行。ホルスタットみたいに直接迎えが来ることはなくても、普通は時間がかかりそうな手続きも一発だったね」
 シゲルがそう冷やかすと、フィロメナは何とも言えない顔になりながら応じた。
「まあ、こういうときはその名が便利に働くと考えておこうか。……その分面倒も増えるのだが」
 最後にぼそりと付け加えられた言葉に、一同は苦笑した。
 それは、紛れもない事実であり、これからその面倒が待っていることが分かっている。
 だからといって避けることも出来ないので、そうするしかできなかったのである。

 とにかく、使者からの報告を聞いたシゲルたちは、その案内に従って城へと向かった。
 ことが進んだ以上、あとは予定通りに話を進めて行くしかない。
 予想よりも早く担当者と会えるようになったことは、素直に喜ぶべきだと考える一同なのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 シゲルたちが担当者と城の中で会う少し前の事。
 城の主である皇帝に、勇者一行が来たことが伝えられていた。
「――何? そんな話は初めて聞いたが?」
 通常、馬を使うにしろ歩きにしろ、領地内に入ればすぐに皇帝の耳には入るようになっている。
 いきなり帝都に入ったという報告がくることは、普通ではありえないのだ。

 だが、一瞬驚いた様子を見せたダフィズ皇帝だったが、すぐにとある噂話を思い出していた。
「あの噂は本当のことだったか。眉唾ものだと思っていたのだが、まさか一日もかからずにここまで来れるとはな」
 御歳六十を超える年齢でありながら、この頭の回転の速さが、まだまだ現役で行けるだろうと思われている最大の要因だ。
 そのダフィズに、報告者は頷きながらさらに報告を続ける。
「そのようです。現在、壁の外に船が一隻泊まっています。――どのように対処しますか?」
「ふん。すぐさまその船を手に入れろ――といいたいところだが、精霊が張り付いているのだったな」
 ダフィズ皇帝は、そう言って顎を撫でながら少しの間考えるような顔になった。

 ダフィズが思考を巡らせている間、報告者は余計な口を開くことはない。
 それに、そもそもダフィズが悩んでいた時間は、さほど長いものではなかった。
「非常に惜しいが、無用な手出しは止めておけ。直接その船に手出しをするよりも、人から攻めた方がいいだろう」
 船に直接手出しするのは諦めても、持ち主と話をつけろということまで諦めたわけではない。
 それに、皇帝に限らず、ゲルリオン帝国の者たちには、ホルスタットに出来なくても自分たちには出来ると考える傾向があるのだ。
「畏まりました」
 ダフィズの言葉に、報告者はそう答えながら丁寧に頭を下げた。
 皇帝に直接話が出来るだけあって、その辺りの教育はきっちりされた者が話をしに来ているのだ。

 下げた頭を元に戻した報告者は、ダフィズに重ねて聞いた。
「勇者たちは、例の古代文明の件で担当者との目通りを願っているようですが、陛下は如何なされますか?」
「そんなことのために、わざわざ私が会う必要もなかろう。担当者に任せておけ。国としての判断は、その報告が上がってきてからだ」
「――畏まりました」
 この時点で、ダフィズの元にも報告者の元にも、ホルスタットの王女であるラウラが一行に加わっているとは知らなかった。
 それもそのはずで、王国内にとどまっていた王女の顔を知る者は、帝国内では少数なのである。

 もし、この時点でダフィズ皇帝や報告者がラウラのことを知っていれば、また別の対応をすることになっていただろう。
 また、フィロメナが勇者だからといって、遺跡のことに関しての話で皇帝自ら会う必要性はないと考えるのも、帝国内では当然の考えだった。
 何が何でも勇者との繋がりを欲しているのであれば、そもそもフィロメナが魔の森とはいえ、ホルスタット寄りの位置に住むことを許しているはずがない。
 勿論、勇者の名声は無視できるものではないが、帝国内ではことさらに甘い対応をする必要が無いと考えられているのである。

 とにかく、ダフィズはシゲルたちに直接会うことを選択しなかった。
 これが吉と出るのか凶と出るのかは、まだ誰にも分からないことなのであった。
勿論、吉と凶以外の何も(騒動が)起こらないという道もあります。
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