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次の日、朝の教室へ入るのが鬱だった。崇城さんがいたとしてもいないとしても、いいことなんてない。
いたとしたら、ぼくはどうすればいいのだろう? 普段通り接するべき? それとも問い詰めてみるべき?
いなかったら、それをぼくはどう捉えるべきなんだろう? 突き落とした犯人だから来辛いのか? それとも単なる偶然?
いろんな考えが浮かび、自己の表面で渦巻く。
――……?
T字の廊下を曲がると、三組の灯りが消えているのが見えた。
――来てない。
嫌な予想が、それだけで結果として出たような気分。
崇城さんは姿を現さなかった。先生に欠席の連絡は入っていないらしく、朝のホームルームで先生はそのことを気にかけた。だが、それだけだった。
昨日のことは、軽く連絡された。
昨日の放課後、二年生の女子生徒が何者かによって昇降口の階段から突き落とされました。
先生はそうと伝えた。崇城さんについては何も言わなかった。
放課後セミナー室を訪れると、いつものメンバーが既に揃っていた。
「こんちはー。黒木くん、君のお友達、なんだか大変そうだね。今日は学校に来たかい?」
開口一番、パソコンのディスプレイを睨んだまま山気先輩が訊いてきた。他のお三方の視線がぼくに集まる。
「今日は来てませんでした」
「やっぱりな」
松前先輩が呟く。あうー、という情けない心持になる。
「先生たちは何も言わない。どうしてかしら?」
平先輩も呟く。このお方、大人びた口調のくせに、声帯はどうにも幼い。そのギャップに初対面時には驚かされたが、そんな驚きも既にない。寂しいな、ぼくの感性。……ではなくて。
「そうですね。うちの担任も何も言わなかったし」
國寺くんが会話を繋げる。ぼくは口ではなく首肯することによって同意を示した。




