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 悲鳴が途切れ、何かが転げ落ちる大きな音がする。音は外から。玄関を出るとすぐ昇降口があり、その階段を何かが落ちている?

 ぼくは靴を中途半端に履いたまま駆けた。隣の下足場から國寺くんも飛び出してきた。一緒に玄関を抜け、階段を迂回して正面へ回る。

 階段の前には何もなかった。

「おい、黒木」

 今日初めて國寺くんに名を呼ばれて彼の顔を見ると、彼は階段を見上げていた。つられて目を向けた。

 階段の中ほどで女子生徒が倒れていた。その人は今にもさらに転がり落ちてきそうだった。

 そんな理解をしているあいだに國寺くんは階段を駆け上がっていった。ぼくもあとに続く。

 幸いぼくらが辿り着く前に再び転がり落ちてくるようなことはなかった。

「大丈夫ですか」とすこし肩で息をしながら落ち着いた声で國寺くんは訊く。その人はぐったりとしていたが意識は保っていて、國寺くんの呼び掛けに弱々しく頷いた。

 ブレザーの胸にある校章の色が緑だった。どうやら二年生のようだ。

「黒木、保健室の先生」

 國寺くんはその人の体を安定させて言った。ぼくは頷くと、保健室へ向かった。

 保健室は一階にある。この学校の校舎は三つの棟からなっていて、クラス棟、特別教室棟、職員棟に別れている。保健室は職員棟の一番奥に位置する。昇降口はクラス棟と特別教室棟のあいだにあり、保健室までは三分もあれば着く。

 棟と棟を繋ぐのに、一階は特にしきりというものがない。だから外からでも容易に出入り出来る。ぼくは靴のまま特別教室棟へ乗り込んだ。職員棟へも渡り、保健室へ向かう。この時間では、保健室の先生もいないのではないか、と危惧したが、これまた幸いに先生はいた。突然ノックもなしに入ってきたぼくに面食らったようだが、説明すると応急手当のための道具の入った箱を持って出てきてくれた。

 往復八分ほどで戻ってみると、女子生徒はそのままに、國寺くんが何やら険しい表情を浮かべていた。

「黒木、遅いよ」

 不吉なことを國寺くんは呟く。えっ……!

「オマエが遅いから、犯人を捕り逃した」

 だが、顔と名前は覚えた――

「オマエ、崇城って女子、知ってるか?」

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