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「崇城さん。なんであなたがここに?」

 電車が過ぎたあとに問い掛けると、崇城さんは恐怖から驚嘆を示した。どうやら、ぼくの存在には気付いていなかったらしい。

「あ、黒木、くん……なん、で……」

「とりあえず、ベンチに座ろうか」

 ぼくはベンチを指した。ああ、うん、と崇城さんは頷いたが、立ち上がりはしなかった。いや、出来ない?

「立てよ、とりあえず」

 そう言って國寺くんは手を差し延べた。……優しい! いや、格好いい! それも格好付けではなく自然な感じである。

「あっ……え……?」

 國寺くんの意外な一面を含めた(?)行為に、ぼくだけでなく崇城さんも戸惑い。

「いい加減、腕が辛いんだけど」

「えっ……! あっ、ゴメン!」

 崇城さんは國寺くんに助けて貰い立ち上がった。崇城さんをベンチに座らせ、ぼくらは立ったまま。……はたからはどう見えるだろうか?

「で、なんでアンタはここにいるんだ」

 さっきの優しさはやはりレアものだったらしく、いつもの人を射る声で國寺くんは問う。崇城さんは息を呑み、ふわふわ視線を彷徨わせた。

「それは……」

「言えないのか」

 疑問形になっていない國寺くん。詰問である。

「……先輩の家へ」

「万永さんの家か」

 崇城さんは頷く。

 ……どういうことだ?

「アンタは万永さんを突き落としたんだろう。その謝罪にでも行ったのか」

 そんな一つしかない可能性を言うみたいな口調にならなくても……。

「突き落とした? ワタシが?」

 崇城さんはうろたえた。ぼくと國寺くんは自然と顔を見合わせた。

「万永さんは言っていたぞ。『崇城に落とされた』って」

 國寺くんの言葉――万永さんが國寺くんに伝えた言葉を聞いて、崇城さんは目の焦点を失っていた。

「ワタシは突き落としてなんかない。……なんで、先輩、そんなことを」

 崇城さんの狼狽加減は、嘘をつくときに見せるそれとは別物に思えた。

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