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 崇城さんは電車でおよそ三〇分ほど掛かる町に住んでいる。高校の最寄り駅から十分ほど掛けてまずは県内でも大きな市へと出る。そこから乗り換えて十分ぐらい。乗り換えで時間が掛かってしまうようだ。

 住所はいつぞやか聞いていた。ほとんどぞろ目に近い番地なんだ、と彼女は笑って言った。

「……黒木。オマエ、どうかしてる」

 電車の中で、今日何度目かのセリフをつかれ、ぼくは相変わらず苦笑いを浮かべる。

「うん、かもしれないね。でも、結局ついてきてくれてありがとう」


 家に、行ってみようかな?――

 そう思ったとき、ぼくはなぜか國寺くんを誘って実行に移そうとした。突然のことにさすがの國寺くんも戸惑ったが、松前先輩が面白そうだから行って来いよと煽ってくれた。それでも國寺くんはふざけるなと反論した。

「オレが一緒だと崇城は逃げ出すだろう」

 それもそうかな、と思ったが、松前先輩がそれならそれで捕まえて来いよ、と無茶を言う。

 それからも國寺くんは首を縦に振ってはくれなかったのだが、しばらく粘ると折れた。


「そもそも、どうしてオマエは崇城ってやつをそんなに気に掛けんだよ?」

 國寺くんの疑問にぼくは答えることが出来なかった。実際のところ、ぼく自身どうしてこんなことをしているのかわからない。

 ……うーん。単純に、友達が疑われるのが嫌なだけ、かな?

 根拠はないけど……。

「うーん……なんとなく」

 睨まれた。

「そんなことで……。次で降りる」

 奇しくも次の停車駅は國寺くんが日常利用している駅だった。

「そんな……」

 駅が近付く。なんとか一緒に来て貰おうと説得するが、國寺くんは発言を覆してくれない。

「オマエはそもそもな――」

 國寺くんは何かを言おうとして取りやめた。

 電車がホームへ入った。國寺くんは流れゆくホームの後方を眺め続けた。

「なんで、アイツが……」

 そう言い残して國寺くんは電車の後方へと走り出した。

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