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朝の誰もいない教室へ入るのにはもう慣れた。いや、慣れる慣れないの次元感覚ではなく、ぼくにはこの静謐な孤独みたいなものを、日常として受け入れることに多少なりとも抵抗があった。
誰もいない教室は中学生のころから見知っている。だってぼくは家を出るのが他人より早いから。
それが日常だった。だけど、高校へ入学してすこしその日常から抜け出そうと思った。それで家を遅く出てみました。果たして、クラスのみなさんは始業ベルの鳴り出す五分前に集まり出した。
……馴染めません。
五分前に学校へ着いたりなんかすると、駐輪場は人でごった返してしまう。人波を掻き分けられる自信はない。
……え? これ、元々ぼくには無理ってことじゃないかな?
そんなこんなで状況を嫌々受け入れることになった。
教室は一年三組。下駄箱を右手に曲がり、T字の廊下を右へ曲がって現れる四組の隣りだ。まあ、そこまで詳しく説明するまでもないことだが。
ぼくはT字路を曲がり、四組の横をとおる。そのとき、違和感を覚えた。
――廊下が、やけに明るいな。
三組付近の廊下は、教室に電気が灯っていないためほんのちょっと薄暗い。だが、今日は明るい――
教室の窓から、明かりが漏れていた。
こんなことは今まで(今日は四月一八日)なかった。まあ、まだ一週間ぐらいしか経っていないが。
――昨日の放課後、誰か消し忘れたのかな? いや、先生が見回るはずだし……。
じゃあ、誰かがいるっていうことになる?
ぼくは足を止めた。教室のドアは閉められている。スライド式のドアの隙間から明かりが零れてぼくの上履きを照らす。
ドアに手を掛け、横へとずらす。
いつもは陰湿な光景が広がっているはずだが、今日は色彩豊かだ。
その光景の中に、少女が一人立っていた。
「うん? あっ、おはよう。早いんだね、キミ。えーと……黒木くん、だよね?」
前髪を垂らしたポニーテール少女は、そう言って微笑した。




