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ダークヒーローが僕らを守ってくれている!  作者: 重源上人
VS.法律戦隊ジャスティスレンジャー編
6/76

第四話 連戦!激戦!大決戦! 放て必殺 ジャスティスピラーボム!

「六法全書、変形! フレェェェェムッ・ジャスティスアックス!」


[ジャスティスアックス! 斬首刑ネック・スラッシュモォードッ!]


 分厚い六法全書が機械音声を流しながら、火花を散らす謎の変形動作を経て、赤い炎をまとう両刃斧へと姿を変えた。

ジャスティスレッドはその両刃斧を大上段に構えると、お菓子怪人に向かって突撃した。


「くっくっく! イノシシのような男だなぁ! どうお料理してあげようかなぁ!」


 お菓子怪人はそれを迎撃する構えを取った。一口サイズのチョコレートを十六個分指にはさんで構えると、手を背後に大きく振りかぶった。


「まずは一口いかが!? チョコレートボンボン爆弾!」


 お菓子怪人はその一口サイズのチョコレートをばらまいた。そのチョコレートは地面に触れた瞬間、黒色火薬と同等の黒煙混じりの火柱を上げて爆発した。


「はっ!」


 だが、ジャスティスレッドは臆することなく突き進み、爆発の瞬間に高く跳躍。ビル三階分の高さまで飛翔したレッドは火柱を飛び越え、燃え上がる斧を空中で大きく振りかぶった。


「燃え上がれ! ジャスティスアックス!」


 赤い斧の刀身から轟という音と共に爆炎が噴き出す。ジャスティスレッドは降下時の重力加速を利用して、最大の勢いをつけた斧をお菓子怪人の脳天めがけて振り下ろした。


「甘いなぁ! べっこう飴シールド!」


 しかしお菓子怪人がしゃがみ込んで地面に手を触れると、カラータイルの隙間から流水のように柔らかなべっこう飴が湧きだした。


 その黄淡色で半透明な壁はお菓子怪人の頭上を守る盾となり、降下してきたジャスティスレッドを受け止めて絡みついた。


「うぉ! なんだこれ!」


 べっこう飴はべたべたとジャスティスレッドの体に張り付いていく。

 その尋常ではないほど粘性の高いべっこう飴は強固にジャスティスレッドの体を抑え込むと、徐々に硬化を始めてジャスティスレッドを取り込んでいった。


「くっ! 飴がべたついて、抜け出せない!」


 ジャスティスレッドはなんとか抜け出そうともがく。しかし、硬化を始めたべっこう飴はゴムのようにやわらかく、いくらジャスティスレッドが力を込めても引き伸びるだけだった。


「くはははは! 手も足も出まいぃ! そのままアーティスティックに、僕のべっこう飴彫刻の中に閉じ込めてあげるよォ!」


 べっこう飴がついにジャスティスレッドの頭までを包み込もうとした。


 だがその瞬間、お菓子怪人の予想だにしない方向から、さらにもう一人のヒーロー戦隊が飛来してきた。


「凍れべっこう飴! ジャスティス・ブリザード!」

「なにぃ!」


 ジャスティスブルーがお菓子怪人の頭上を飛び越え青い吹雪を空中で放ち、べっこう飴に絶対零度の吹雪を浴びせかけられた。


 べっこう飴は一瞬にして凍りつき、レッドが少し力を加えただけでべっこう飴は粉々に砕け散る。


「助かったぜ! ブルー!」

「一人で突っ走るなレッド!」


 ジャスティスブルーがレッドの隣に駆け寄ると、両手に握った片刃の斧の結露を振り払い、振り返ってお菓子怪人に向けて斧を構えた。


「まずいよトミー君……! 早く、逃げないと……!」


 観衆に混じって、ユダがつぶやく。

 二対一となっては明らかにお菓子怪人が不利だった。ましてや、冷気を扱うジャスティスブルーはお菓子怪人の天敵とも言える。


 全てを呑み込むべっこう飴、津波のように押し寄せるチョコレート、鞭のようにしなるグミ。お菓子怪人の能力は応用の幅こそ広いが、全て冷凍されれば砕かれてしまう代物ばかりだ。


 だが、お菓子怪人は臆することなく余裕の笑みを浮かべたまま、ジャスティスレンジャーを嘲笑するように笑った。


「くくく! 一人増えたところで同じだよォ! 君たちみんな、まとめて僕のお菓子の隠し味にしてあげるよぉ!」

「どうしてトミー君! さっさと逃げないと!?」

「無理だよユダっち! トミー君は逃げられないんだよ! いま周りにいっぱい人がいるから、下手に逃げたら辺りの一般人にジャスティスレンジャーの攻撃が当たってしまうかもしれない! だからトミー君は逃げられないんでいるんだよ!」

「そんな!? トミー君律義過ぎるよ! いったいどうするつもりなの!?」

「私にも分かんないよ! うまく逃げられる流れに出来ればいいんだけど、ジャスティスブルーの氷は相性悪すぎるし……」

「怪人クッキング! ダブル・クッキースラッシャー!」


 お菓子怪人は両手に巨大なクッキーを作りだした。それらお菓子怪人はチャクラムのように掴むと、果敢にもジャスティスレンジャーに向かって駆け出した。


「行くぞ、ブルー!」

「まかせろレッドっ!」


 ジャスティスレンジャーもそれぞれの得物を手に駆け出していく。


 すれ違いざまにぶつかりあう斧とクッキーが火花を散らした。振り下ろされたクッキーをレッドは斧で受け流し、返しの刃で放たれるレッドの斧をお菓子怪人はもう片方のクッキーで受け止める。

 レッドの斧を片手で受け止めたまま、さらに背後から襲ってきたブルーの振り下ろし攻撃もお菓子怪人は振り返って受け止めた。だがお菓子怪人の視線がブルーに移ったところで、レッドは鋭い足刀蹴りを放ち、お菓子怪人の腹部が蹴り飛ばされた。


「ぐぅ!」


 お菓子怪人の口から空気が吐き出される。体を折り曲げてよろめく菓子怪人に、さらにブルーが追撃を仕掛けてきた。


 お菓子怪人は両手のクッキーを掲げてブルーのX字切りを受け止める。しかし、お菓子怪人のクッキーはブルーの冷気をまとった斧にあっさりと打ち砕かれてしまった。


「ええぇ! アスファルトよりも硬い僕のクッキーが!?」

「だいたいのものは凍らせれば壊れやすい! たとえクッキーだろうと例外はないぞ! くらえ! ジャスティス・ブリザード!」


 ブルーのジャスティスアックスの刃に冷気が渦巻いた。大気中の窒素を白く凍らせるほどの冷気が奔流を生み、粉末状のクッキーが降り注ぐ中ブルーはお菓子怪人の足元を流し切った。


「えぇ! 足に氷が!?」


 白い霧が吹きぬけた後、お菓子怪人の足元には小さな氷山が形成されていた。

 怪人の足を地面につなぎとめたその氷は異様なまでの堅牢さがあり、常人の十倍以上ある怪人の力を持ってしても砕くことはできなかった。


「チャンスだレッド! 必殺技を放つぞ!」

「任せろ!」


[ジャスティスアックスッ! 死刑デス宣告ペナルティモォードッ!]

 ジャスティスレンジャーはそれぞれの斧を合体させた。レッドの斧にブルーの斧が取り付けられ、獣の爪を思わせる三枚刃の斧が出来上がる。


 動くことが出来なくなったお菓子怪人は格好の的だった。回避することも出来ず、氷と炎をまとわせた必殺の武器を防ぐ術も持ち合わせていない。


 絶体絶命。お菓子怪人の死の運命は回避しようがないようにも思われた。


「やっぱり駄目だ! ごめんユダっち! どけて!」

「モリス!? きゃっ!」

「変身っ!」


 それは突然のことだった。観衆の中からモリスが飛び出し、駆け出しながら両手を交差させ、振り下ろす。そしてモリスは闇の渦に包まれた。


闇の塊となったモリスは大きく跳躍、空中で闇を爆散させ、一瞬にして怪人・ダストイーターに変身した。


「なに、新手か!」


 ジャスティスブルーが振り返る。


「ヒィヤッハァァァァァ! 待たせたなぁっ! ゴミ怪人 ダストイーター様の登場だぁっ!」


 つむじ風のように渦巻く黒い風と共に、爆弾処理班が着る防爆スーツのような防具で身を包んだ怪人が駅前の上空に現れた。


 その怪人はゴム製のガスマスクの顔を持ち、両肩から錆びたステンレス製のダクトホースを第二の両腕のように生やした無機質な機械じみた怪人だ。後背部にはジェットパックが取り付けられており、白煙を噴き出させながら空中で滞空している。


 そのゴミ怪人は駅広場の上空でホバリング状態を維持すると、胸を大きく張り上げて叫んだ。


「駅前の全てのゴミよっ! 集まってこいっ!」


 ゴミ怪人がそう叫んだ瞬間、駅前全域に渦を巻く突風が吹きすさび、付近のゴミ箱の廃棄物や地面に落ちたガムの包み紙、さらには屋外喫煙所の灰皿の吸い殻などが全てゴミ怪人のガスマスクの口に吸い込まれていった。


 やがて駅前周辺にゴミの類が一切なくなった時、ゴミ怪人は両肩から伸びたダクトホースの排出口をジャスティスレンジャーに向けた。


「喰らえジャスティスレンジャー! ダストシュート!」

「うおっ!」


 ゴミ怪人の両肩のホースから、圧縮されたゴミが二発打ち出される。

 ラグビーボールのように丸まったゴミは螺旋の回転を加え亜音速まで加速すると、レッドとブルーめがけて飛来した。


 ジャスティスレンジャーはとっさに必殺技の構えを解き、飛び込み前転をしてゴミの弾丸を回避。飛来したゴミの弾丸はコンクリートタイルを粉砕して深く地面にめり込み、摩擦発熱で熔岩石のように真っ赤に発熱してコンクリートの中で湯気を立てた。


「まずいぞレッド! あのゴミの弾丸、洒落にならない威力だ!」


 ブルーがその威力を批評する。

 圧縮され鉄のように硬くなった砲弾が、ジャイロ効果によって弾道がぶれることなく着弾する。それは近代戦車が主力として搭載したライフル砲と同等の仕様であり、個人が放つ技としては過剰すぎる威力があった。


「よくぞ避けたな! だが、これならどうだ? 街中のゴミよ! すべて集まってこい!」


 さらにゴミ怪人が大きくのけぞりながら息を吸い込むと、今度は街全体につむじ風が吹いた。

 つむじ風は街中すべてのゴミ箱のみならず、街路樹下の吸い殻や空き缶、オフィスビルの中のゴミ箱とシュレッダーの中身に至るまですべてをかき集めた。


「なんてことだ! 街中が、美化されていく!」

「オュウウウウウウウウウウウウッ! 集まってきたぞ! すべてのゴミが!」


 風の止んだ後の市街地は枯れ葉一つ無くなり、すべてが新品のように光り輝いていた。信号機の錆すらも全て吸い取られ、どういうわけだかビジネスオフィスの汚かった社員の机も整理整頓されてしまっていた。


「ヒャァァァァァァッハァ! 今度は百連発だ! ダスト・ガトリング!」


 ゴミ怪人は両肩のダクトホースから圧縮したゴミを連射した。毎秒五発の掃射で照準を定めない射撃を行う。その激烈な面制圧攻撃は、回避する余裕すらもジャスティスレンジャーには与えなかった。


「「うあああああああああああああ!」」


 ジャスティスレンジャーの足元に数多のゴミの弾丸が着弾し、地面がひっくり返されるように真上に瓦礫が弾け飛ぶ。


 レッドとブルーはその地面の炸裂に巻き込まれ、空中に跳ね上がるように吹き飛ばされると背中を打ち付けて倒れ込んだ。


「ひゃっひゃっひゃっ! いいざまだなジャスティスレンジャー! さて、今、その氷を砕いてやるぜぇ、パティシエール!」

「たすかったんだよぉ! ダストシューターァ! もうこんな無茶はしないって誓うよぉ」


 ゴミ怪人はダクトホースをお菓子怪人の足元の氷に向けた。足の間の氷山に照準を定め、一撃で破壊しようと体内でゴミを濃縮圧迫していく。


「そこまでよ! はああああああああ!」


 その瞬間、ゴミ怪人の背後から、誰とも知れぬ少女の叫びが響いた。


「ダスト! 後ろぉ!」

「なにっ!?」


 お菓子怪人が忠告した時にはすでに遅い。ゴミ怪人の背中に無数の手裏剣状の斧が突き刺さる。ゴミ怪人の背中のブースターに突き刺さった紫の手裏剣斧は、一瞬、薄紫色の光を放ち、間髪いれずに爆発した。


「うぐぉ!?」


 ゴミ怪人ははじけ飛んだ。強烈な爆風は体格のあるゴミ怪人を軽々と十メートル以上吹き飛ばし、駅前のタイルの上をバウンドさせながら横転させた。


「ホワイト!」

「はい、任せて下さい!」


 さらにその地面を転がるゴミ怪人に、白い光と共にテレポートしてきたジャスティスホワイトが腹部を蹴り上げて打ち上げた。


「がはっ!?」


 ゴミ怪人のガスマスクの口から屑ゴミがいくつか吐き出される。

 さらにジャスティスホワイトは吹き飛んでいくゴミ怪人の頭上にテレポートして、ゴミ怪人の後頭部に肘鉄を叩き込んだ。ごみ怪人が勢いをつけて地面に落ちていく。


「六法全書、変形! ジャスティス・トマホーク!」


 さらに間髪いれずにジャスティスホワイトが空中にいくつもの投斧を投擲する。

 同時にゴミ怪人の真下にテレポートし、に、真上から落ちてくるゴミ怪人に向かって投斧を直接叩きつけた。


「ぐああ! ぐあっ! ぐあっ! があああああああああ!?」


 ゴミ怪人は叩きつけられた投斧に弾き飛ばされ、さらに空中から落下してくる投斧に接触し誘爆を繰り返しながら空中でピンボールのように弾かれた。


 その完璧に計算された誘爆に沿ってゴミ怪人はお菓子怪人の頭上に向かって落ちていった。


 お菓子怪人は自分の頭上にゴミ怪人が落ちてくるのを見ると、足に張り付いた氷山ゆえに身動きをとることができず、ただただ両手を大きくふるって慌てていた。


「ダストイーター! ぶつかる! ぶつかっ、うわぁ!」

「ぐわぁ!」


 ゴミ怪人はお菓子怪人に叩きつけられ、お菓子怪人の上に倒れ伏した。


「ぐっ! お、おのれぇっ!」


 ゴミ怪人は爆発でボロボロになった体を無理やり起こすと、破れかぶれにダクトホースの銃口をホワイトに向けた。


 何か考えがあったわけではないが、ほとんど圧縮をさせないゴミの塊をとにかく素早く打ちだそうとゴミ怪人は力を込める。


 しかしその大した危険性のない攻撃ですらも、ジャスティスレンジャーは許さなかった。


「秘儀! ジャスティス影縫い!」

「なに! か、からだがっ!」


 パープルの手裏剣斧が素早くゴミ怪人の影に突き刺さった。

 するとゴミ怪人は、ダクトホースをホワイトに向けたままの姿勢でフィギュアのように動かなくなる。ゴミ怪人がどれほど力を込めようともその束縛は解くことができす、僅かに震えることばかりはできたが、その場から動くこと自体はまるで出来なくなっていた。


「助かったぜ! ホワイト! パープル!」

「お待たせしました、レッドさん!」

「遅れてごめんねー! でも颯爽と現れる私かっこ良かったでしょ!? 私に惚れしてもいいんだよブルー!」

「ああ、格好良かったぞパープル。だが、俺はそう簡単に惚れたりしないぞ?」

「ブルーのケチ~! こんな美少女がかっこいいとこ見せたのに惚れないなんて頭おかしいよ!」

「ヘルメットをかぶっているのに美少女も何もないだろう。とにかく、今はまじめにやれ。みんな見ているんだからな」


 ブルーは視線を観客に向けた。それに合わせて、ジャスティスレンジャーは当たり前のように四人横一列に立ち位置を変えて並び立った。


 それは観客に配慮した、古き良き時代から続くヒーロー戦隊伝統の並び方だ。

 ジャスティスレンジャーが四人そろったことにより、その圧倒的な戦力差と団結力を見せつけるようにして、ジャスティスレッドが周囲に向けて力強く号令をかけた。


「よし、改めて必殺技を放つぞ!」

「わかった!」「任せて下さい!」「はーい!」


 レッドはしゃがみこみ、ジャスティスアックスを長銃に変形させる。さらに背後からブルーがそのレッドの長銃に双銃を取りつけ、さらにホワイトの短銃と、パープルのクロスボウも組み合わせていく。


 全てが組み合わされた瞬間、[ジャスティスアックスッ! 死刑デス宣告ペナルティモォードッ!] という機械音声が駅前に響き、一つに合体したジャスティスアックスが光を放った。


「いっけ~! ジャスティスレンジャー!」

「必殺技だー! 決めろー!」 


 観衆のボルテージも最高潮に達していた。熱の入った応援がジャスティスレンジャーに力を与え、変形したジャスティスアックスの銃口にプラチナのような白い光を吸い込ませる。


「放してクロスさん! 助けないと! モリスとトミー君を助けないと!」

「……ッ! クッ!」


 クロスは必死にユダの肩を掴んで取り押さえていた。


 四対一ではユダに勝ち目はない。モリスと同じように死角や多方向からの攻撃にさらされて、結局のところはユダも地に伏すことになる。今この場で、トミーとモリスを助ける手立てはない。


 それが部外者として冷静さを保っていたクロスの出す結論だ。そのクロスの結論は多分に漏れず正確であることは疑いようもないのだが、冷静さを失っていたユダはそんなクロスの制止の意図をくみ取ってはくれなかった。


 ユダとクロスとの間に決定的なまでの体格差があったことが幸いし、力強いクロスの手がユダまで死地に飛び出すことを防いでいた。


「被告人に判決を言い渡す!」

「罪状は怪人であること! その行いは悪逆非道!」

「更生の余地はなし! 執行猶予も不要!」

「寄って判決はっ!」

「「「「死刑!」」」」

「ジャスティス・ピラーボム! 執行!」


 合体したジャスティスガンは地面に設置されると迫撃砲の形を取った。銃口から巨大な光の球体が発射され、それは上空に向けて放射曲線を描きながら落ちていき、お菓子怪人とゴミ怪人の頭上に落下する。


「「うああああああああああああああああああああああああ!」」


 光の球体が二人の頭上に着弾した。


 必殺技は巨大な炎の渦を巻いて炸裂。炎は拡散することなく集約し、天高くまでその炎の柱を伸ばしていく。熱量を持ったその炎渦から強い赤外線を含んだ光が放射され、観衆の肌にチリチリとした刺激を体感させた。

 炎の中央にいた怪人二人は黒い影となって燃え尽き、燃えカスも残さずに消滅していく。


 大気中の酸素を食いつくした炎の柱も細くなってゆくと、数秒後には炎もあっさりと自然消滅していった。

 散り散りと浮かぶ炎の残火の中には、蛍のように浮遊する小さな光の塊が二つだけ残っていた。その怪人の魂のような光の塊はレッドとブルーのジャスティスアックスに抗いようもなく吸い込まれていき、ジャスティスアックスに触れた瞬間火花を散らして消え去った。


[ゴミ怪人・ダストイーターの魂を封印しました]

[お菓子怪人 パティシエール・ロマンの魂を封印しました]


 レッドとブルーのジャスティスアックスから、それぞれ機械音声が鳴った。

 ジャスティスアックスの小さな窓のような表示画面に、ピクトグラム化されたそれぞれの怪人の紋章が表示されていた。


 それを確認したヒーロー戦隊は各々うなずき合い、観衆を振り返ると、斧を掲げて叫んだ。


「おっし! 俺たちの勝利だ!」


 わぁっとギャラリーからの熱のこもった歓声があがった。


 ジャスティスレンジャーはそれに手を振ってこたえる。賞賛、羨望、感謝。数多のヒーロー戦隊を賛美する声に応じて、四人は心地よく応じ観衆に向かって歩きだした。


 観衆は横一列に並んだジャスティスレンジャーを正面から見れるよう場所を移していく。後列の観衆はワイワイガヤガヤと今日のゲリラライブへの感想を言い、先頭の観衆は往々にしてジャスティスレンジャーへの感謝を述べた。


 舞台にはまだ、熱気冷めやらぬ興奮と歓声が満ち満ちていた。


「……あ、ああ…………」


 唯一、歓声を上げる観衆のなかで、ユダだけがひどくうつむいていた。


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