《オープニングイベント》 最終決戦! 怪人王ゾシマ 正義の心を賭けた戦い!
そこは荒涼とした砂地だった。砂利の積み上げられた採石場だ。
昼時の太陽が広大な砂地を照らし、冷たい秋の風が砂埃を薄く巻き上げる。周囲に人影はなく、遠くに見える山林の葉擦れさやけく音だけが静かに響いていた。
その何の変哲もない採石場に、砂利をすりつける音を立てて一人の大柄な怪人が地面に降り立った。
怪人。そう、奇怪な黒大鎧の男だった。
古来の機能性を追求した西洋の全身鎧ではなく、無意味に刺々しい牙の生えた異形の大鎧だ。黒漆の鎧は陽光を反射して重々しく輝き、鎧の隙間からネオンのような紫色の光を溢れ出させている。手には宝石でごてごてしく装飾された式典杖。背中にはビロードの黒マント。頭部を覆うフルフェイスの兜は獅子を思わせる優れた造形の作りであった。
その漆黒の大鎧の怪人は立ち上がって振り返ると、対面に立っていた三人の男女に向かって語りかけた。
「正義の味方と怪人王の決戦の場が、まさかこの採石場とはな。……なかなか風情というものが分かっているじゃないか! ジャスティスレンジャー!」
怪人王の叫んだ先には、ジャスティスレンジャーと呼ばれた三人の男女がいた。
その三人組はそれぞれ赤、青、黄色の全身タイツとフルフェイスヘルメットを着こんだ昔ながらのヒーロー戦隊のような姿をしており、その例にもれずレッドとブルーは男性、イエローは女性だった。
だが本来汚れ一つないはずの彼らの衣装は今は切り傷と泥に汚れ、三人は疲労困憊といった様子で荒い呼吸だけをくりかえしていた。
「ブルー、イエロー。まだいけそうか?」
中央に立つレッドが、左右の二人を見ながら声をかけた。
ブルーとイエローは、それに応じてうなずく。
「ああ、大丈夫だレッド。まだまだ俺は戦える」
ブルーが冷静な声で答える。
それに続けてイエローも返答した。
「私も大丈夫だ。まだ、戦える」
二人はそう意気込むと呼吸を整え直して武器を構えて真っすぐに立つ。レッドはそれを確認するとうなずき、再び武器を眼前に構えた。
「よし! もう一回ジャスティス斬りをしかけるぞ!」
「ああっ!」「分かった!」
レッドの掛け声に二人が応じ、彼らもまたそれぞれ手に持った武器を眼前に構えていく。
レッドの掲げた武器はレギュラーサイズの両刃斧だ。全長は60センチくらいの長さで、赤いプラスチックカラーの刀身をもつおもちゃじみた手斧である。しかし見た目こそおもちゃのようだったとはいえ、刃から溢れる炎熱は確かな熱量を持った本物の炎。立ち上がる火は空気を膨張させて、周囲の情景を揺らめかせる灼火を放っていた。
その右に立つブルーの武器は片刃斧の二刀流だ。レッドの斧を二分割したかのようなデザインの武器で、レッドの斧よりもだいぶ短い。冷気を操る能力があるのか、プラスチックカラーの刀身の回りには青々とした冷風が渦を巻いて大気中の窒素を粉雪に変えていた。
そして左に立つイエローの武器は、巨大な両刃の三日月斧だ。柄と刃を合わせた全長はイエローの身長よりも高く、その刀身も両手を広げて掴めるほど広い。あきらかに重くて取り回しも難しそうな大斧だったが、イエローはそれを軽々と持ち上げ、刃からはじけ出る黄色い電撃を空中に巻き散らかしていた。
そんな三振りの武器に充分なエネルギーが満ちた時、三人は一斉に駆け出していく。
「奥義! ジャスティス斬り!」
三人は呼吸を合わせて同時に加速した。
その速度は一瞬にして弾丸の早さを越え、三色の光の矢のように怪人王に突撃していく。
だが……。
「ふん! 何度やっても同じだ!」
その神速の勢いで放たれた三人の同時攻撃は、怪人王の杖から放たれる黒い稲妻にたやすく受け止められた。
「くっ! はじき返される」
ジャスティスレンジャーは黒い稲妻に押し返されると、爆発するかのように威力を上げた黒い稲妻に吹き飛ばされた。
「うわっ!」「そんな、ばかな!?」
ジャスティスレンジャーの三人が驚く。
黒い稲妻に押し上げられるように三人は宙に浮くと、十メートル先まで吹き飛ばされていた。
空中で反転してしてなんとか受け身を取るも、着地時に膝を折り片手を地面に付けてしまうほどその稲妻の威力は強烈だった。
そしてそのジャスティスレンジャーの着地した瞬間を、怪人王は狙い撃った。
「次は、こちらの番だ!」
式典杖から放たれる黒い稲妻が、ジャスティスレンジャーの体とその周辺の地面を貫いた。
その瞬間、地面から火薬が爆発したかのような爆炎が轟音と共に噴き出し、その爆発にジャスティスレンジャーの三人はきりもみ回転をして大きく吹き飛んでいった。
「ぐあああああああああああ!」
ジャスティスレンジャーは三人そろって地面に倒れ伏した。
這いつくばった姿勢のまま、三人は見上げるようにして怪人王を見た。
「なんてパワーだ! これが怪人王ゾシマの力か!」
「これまでの怪人とは違う! まるで歯が立たないぞ!?」
「レッド! ブルー! ここは一度、退却すべきじゃないか!」
そのイエローの弱気な発言に、振り返ったレッドが熱意を込めて叫び返す。
「なんだイエロー! 珍しく弱気じゃないか! だが俺たちはここで引くわけにはいかない! 俺たちが逃げたら誰が怪人王と戦ってくれるんだ! 俺たちは正義のジャスティスレンジャー! 悪の怪人を前にして、俺たちが逃げるわけにはいかないんだ!」
「レッド! くっ! ここでやるしかないっていうのか!? だがどうやって倒せばいい! 私にはあいつを撃退する方法なんて思いつかないぜ!?」
イエローはそう弱音を吐きながらも、斧を地面に突き刺し杖代わりにして立ちあがる。
レッドとブルーもそれぞれの斧の先を地面に突き刺して立ちあがった。
だがもはや体力の残らない三人には立ち上がることが精一杯で、再び必殺技の構えを取る余裕などまるでない状態だった。
「っはっはっは! わしをこの採石場に誘い込んだのは失敗だったな。逃げ場をなくしたのはお前たちの方だ! 死ね、ジャスティスレンジャー!」
怪人王は杖を掲げると、先端に黒い稲妻を濃縮させて高圧の稲妻を宙に浮かべた。
その稲妻は空中にて一切の光を放つ事のない不気味な漆黒の太陽を形成していくと、そのエネルギーは瞬く間に事象の地平線を超え小規模なブラックホールへと姿を変えた。
「まずいっ! 必殺技が来る!」
「体が、動かない! あの大きさは避けられないぞ!」
三人は斧を眼前に構えて防御的な姿勢で備えた。だが、その程度で塞げる必殺技ではないことは明白だった。
「0次元の向こう側に消え去るがいい! ダークネス・オブ・ゼロっ!」
怪人王は高々と式典杖を掲げ、そして勝負を決めるべく勢いよく杖を振り落とす。
しかし、その瞬間。
「させません! たやああああああ!」
漆黒の太陽が落ちる寸前、怪人王の足元にいくつもの投斧が降り注いだ。
投斧は怪人王の足元に刺さった瞬間に爆発、黒煙混じりの火柱を跳ねあげて地面を穿つ。
「なにっ!?」」
怪人王は咄嗟に両手を交差させて爆発の衝撃波から身を守った。
だが制御を失った漆黒の太陽は細やかな稲妻となって周囲に霧散してしまっていた。
「ばかな! この斧はっ!?」
怪人王が驚く。
投斧の爆炎が静まり、土くれが雨のように降ってくる中で、怪人王は辺りを見渡してその投斧を放った相手を探した。
その投斧を投擲した相手は、怪人王の背後の方角にいた。
怪人王は小高い丘の上に立って構える、白いジャスティスレンジャーの姿を見つけると驚愕した。
「貴様は、ジャスティスホワイト! なぜだ! たしかに幽閉していたはずなのに!」
ジャスティスホワイトと呼ばれたそのヒーロー戦隊は、怪人王がこちらに気付くと同時に新たな投斧を手の中に出現させて再び投擲の姿勢を取って構えていた。
さらに怪人王はその白いジャスティスレンジャーの隣に、もう一人子供のように小柄な体躯の紫のジャスティスレンジャーがいることに気が付いた。
「私がホワイトを解放したんだよ!」
そう叫んだ紫のジャスティスレンジャーの存在に、怪人王は目を見張って驚いた。
「貴様は、パープル! 貴様まさか、私を裏切ったというのか!?」
「そのとおり! 今日から私はジャスティスパープルさ! よくも今まで私をだましていてくれたね、怪人王ゾシマ!」
ジャスティスホワイトとジャスティスパープルと呼ばれた二人は、たった一回の跳躍で30メートルの距離を飛び、怪人王の頭上を飛び越えてレッド、ブルー、イエローの3人と合流した。
「ホワイト! パープル! 無事だったんだな!」
レッドが叫ぶ。
それに合わせてホワイトとパープルはレッドの左右に立ち、ヘルメットで表情は分からないながらも、嬉々とした声を上げて再会を喜んだ。
「はいっ! お待たせしました! 心配をおかけして申し訳ありません!」
「無事なのは私たちだけじゃないよレッド! ほら、上を見て!」
パープルはレッドの手を引き、先ほどまで二人が立っていた場所の隣の丘を指差した。
レッドはその指の先に視線を向けると、その丘の上に何十人ものヒーロー戦隊が立ち構えていることに気が付いた。
「バカな!? わしが封印したはずの歴代のヒーロー戦隊たちが、なぜここに!?」
怪人王はその尋常ならざる量のヒーロー戦隊に圧倒される。
その怪人王の驚きに応じ、軍勢の中でも年季と貫録を感じさせる古めかしいデザインの赤いヒーロー戦隊が一人、一歩前に踏み出して叫んだ。
「残念だったな怪人王ゾシマ! 俺たちヒーロー戦隊をいつまでも封印できるとは思わないことだな!」
その宣言に合わせて、隣のピンク色の女性ヒーロー戦隊も一歩踏み出して言った。
「私たちのヒーローパワーは、少しずつあなたの封印を打ち砕いていたのよ! さあ、みんな。名乗り上げよ!」
「「「「「「「「応っ!」」」」」」」」
ヒーロー戦隊たちが一斉に応じた。最初に叫んだ赤く古めかしいヒーローを先頭に、右から順番にヒーロー戦隊たちは名乗りを上げていく。
「古代の炎で全てを焼き切る! 暗闇から生まれた炎の力! オーパーツレッド!」
「古の力で全てを断つ! 超古代文明の水の力! オーパーツブルー!」
「あまねく光で全てを照らす! 歴史に埋もれた光の力! オーパーツイエロー!」
「いかなる暗雲も風で切り裂く! 大空に隠れた風の力! オーパーツグリーン!」
「深き大地は命の重み! 人の子知らざる大地の力! オーパーツブラック!」
「太古の力に身を包み、現世の闇を打ち払う! いにしえ戦隊オーパーツレンジャー!」
オーパーツレンジャーの背後で爆発が起こった。
「宇宙の光よ、この身に宿れ! 未来の力、フューチャーレッド!」
「科学の力よ、この身に宿れ! 理化学の力、フューチャーブルー!」
「医療の技術よ、この身に宿れ! 現代医学の力、フューチャーピンク!」
「戦争の歴史よ、この身に宿れ! 火薬の力、フューチャーグリーン!」
「大いなる神よ、この身に宿れ! 宗教の力、フューチャーホワイト!」
「歴史の力で悪を斬る! 未来戦隊フューチャーファイブ!」
フューチャーファイブの背後で爆発が起こった。
「背中に背負うは赤の朱雀! 炎の長ドス使い、カタギレッド!」
「背中に背負うは青の青龍! 氷のチャカ使い、カタギブルー!」
「背中に背負うは黄色の黄龍! 雷のヤッパ使い、カタギイエロー!」
「背中に背負うは緑の玄武! 猛毒のレンコン使い、カタギグリーン!」
「背中に背負うは白の白虎! 鋼鉄のワッパ使い、カタギホワイト!」
「悪の組織にケジメをつける! 任侠戦隊カタギレンジャー!」
カタギレンジャーの背後で爆発が起こった。
「赤いサイレン、心に響く! 一番乗りはレッドポリス!」
「青のバイクで悪を追いこむ! 二番手カラテのブルーポリス!」
「緑のハジキに魂乗せて! 三発必中のグリーンポリス!」
「ピンクの愛で取り調べ! 信頼の四訓ピンクポリス!」
「黒の捜査で闇夜を暴く! 五導の暴力ブラックポリス!」
「110番の叫びを聞いて、やって来ました正義の味方! 警察戦隊ポリスレンジャー!」
ポリスレンジャーの背後で爆発が起こった。
「戦車の力をこの身に宿す! 特攻一番、レッドミリタリー!」
「ヘリコプターの力をこの身に宿す! 大空飛翔、ブルーミリタリー!」
「列車砲の力をこの身に宿す! 一撃粉砕、イエローミリタリー!」
「ゲリラ兵の力をこの身に宿す! 乾坤一擲、グリーンミリタリー!」
「衛生兵の力をこの身に宿す! 愛情一番、ホワイトミリタリー!」
「正義の弾丸、装填完了! 最強の威力偵察部隊、ミリタリーレンジャー!」
ミリタリーレンジャーの背後で爆発が起こった。
「炎のカラテで悪を殴る! 熱き心のレッドファイター!」
「水のジークンドーで悪を突く! 清き魂のブルーファイター!」
「雷のサンボで悪を締める! 正しき技のイエローファイター!」
「音のカポエラで悪を蹴る! 優しき規則のオレンジファイター!」
「黄金のスモウで悪を押し出す! 強き力のゴールデンファイター!」
「正義のこぶしに力を込めて! 悪と戦う五人の戦士! 格闘戦隊ファイトレンジャー!」
ファイトレンジャーの背後で爆発が起こった。
「野球の力で怪人をホームランッ! スポーツレッド!」
「サッカーの力で怪人をシュート! スポーツブルー!」
「テニスの力で怪人をサーブ! スポーツイエロー!」
「バスケの力で怪人をダンク! スポーツグリーン!」
「ビリヤードの力で怪人をショット! スポーツブラック!」
「流れる汗が悪を貫く! ダーティープレイは許さない! 運動戦隊スポーツレンジャー!」
スポーツレンジャーの背後で爆発が起こる。
「できた役は五光の花札! 大穴狙いのレッドギャンブラー!」
「できた役はロイヤルストレートフラッシュのポーカー! 逆転狙いのブルーギャンブラー!」
「できた役は国士無双のマージャン! 一発狙いのイエローギャンブラー!」
「できた役は777(スリーセブン)のスロット! 確変狙いのピンクギャンブラー!」
「できた役は爆上がりのFX! 荒稼ぎ狙いのブラックギャンブラー!」
「命を賭けて悪と戦う、一発限りの正義のヒーロー! ギャンブル戦隊チップインヒーロー!」
チップインヒーローの背後で爆発が起こった。
「赤いバラを正義に捧げる。愛しき正義の心、レッドフラワー」
「青いスミレを愛に捧げる。清く正しい、ブルーフラワー」
「黄色いヒマワリを友に捧げる。暖かい優しさ、イエローフラワー」
「愛と心のフラワーレンジャー。世界に愛が満ちますように……」
フラワーレンジャーの背後で、花びらがフワァと舞い散った。
「国語の赤は生徒の努力! レッドティーチャー!」
「算数の青は心の足し算! ブルーティーチャー!」
「英語の黄色は魂の叫び! イエローティーチャー!」
「保健体育の白は清らかな愛! ホワイトティーチャー!」
「歴史の黒は隠されし真実! ブラックティーチャー!」
「PTAの力を借りて! 教育の力で世界を変える! 教育戦隊ティーチャーレンジャー!」
ティーチャーレンジャーの背後で爆発が起こった。
総勢四十八名。十組のヒーロー戦隊の名乗りが終わった。
砂利の丘の上にズラリと並ぶそのヒーロー戦隊の姿は、壮観としか言いようがないものであった。
本来ならば並び立つことのない時代の違うヒーローたちだったが、怪人王の作戦の失敗のため、この場についにドリームチームとして結集したのだ。
「形勢逆転だな怪人王! よし、みんな! 俺たちも続くぞ!」
「「「「応っ!」」」」
レッドの叫びに合わせてジャスティスレンジャーも動きだしてゆく。
統率された動きで並び順を変えて、ジャスティスレンジャーはレッドを中心とした横一列の陣形に整えられた。
「六法より与えられし、炎の憲法の力! ジャスティスレッド!」
「六法より与えられし、氷の行政法の力! ジャスティスブルー!」
「六法より与えられし、雷の刑法の力! ジャスティスイエロー!」
「六法より与えられし、光の社会法の力! ジャスティスホワイト!」
「六法より与えられし、闇の産業法の力! ジャスティスパープル!」
「六法全書の力を借りて、すべての悪を処断する! 法律戦隊ジャスティスレンジャー!」
ジャスティスレンジャーの背後で爆発が起こった。その爆発は歴代のヒーロー戦隊のものよりもひときわ大きく、五色の爆炎を上げる派手なものだった。
その爆風は怪人王に片腕を掲げさせ、防御の構えを取らせるほどの風圧を放つ。
怪人王はその五色の爆風から目を守るために掲げた腕を振り下ろすと、その圧倒的な数の差に気圧されて、敗北の恐怖を感じてたまらず叫んだ。
「くっ! なんという数だ! まさか最後の最後で大逆転されるとは!」
「覚悟するんだな怪人王ゾシマ! これが貴様の最後だ!」
ジャスティスレッドが怪人王ゾシマに向けて斧の先を向けた。
怪人王は斧を向けられて一歩後ずさる。
だが、その時までは怪人王はその圧倒的なまでの大群の登場に焦りを見せていた。しかしやがてその焦りは演技だと言わんばかりに怪人王は落ち着いていくと、ゆっくりと笑い声を上げていく。
「……っくっくっく、っかっかっか、くぁぁっはっはっはっはぁ! こいつはこまったなぁ! この数の差ではさすがのワシでも勝てんだろうな!」
怪人王はその自身の劣勢をまるで予見していたかのように笑った。
嘲笑ではない。自らの死を当然のものとし、敗北してもまるで問題ないという、策士のような達観した立場からの自嘲だった。
その理解できない怪人王の笑い声に、ヒーロー戦隊は誰もが不気味に思った。
「な、なぜだ、なぜ笑う!?」
「お前たち、これですべてが終わると思っているのか? わしが死んで、世界が平和になると思っているのか?」
「なに! それはどういうことだ!」
動揺するジャスティスレッドに対し、怪人王は演説するように自分の言葉を叩きつけた。
「お前たちはなにも知らない。怪人の力とは絶望の力。この世に絶望がある限り、悪の怪人は無限に現れ続ける! 私は今日こそ思い知ったぞ! 正義こそが真の絶望なのだと! 正義が悪を求め続ける限り、世界は絶望の未来を歩み続ける! そんな世界でお前は絶望を胸に秘めて、未来に生きていけるのか!?」
「いったい何を言っているんだ怪人王!? 正義の力は絶望なんかじゃない! これは希望の力だ! 俺たちが胸に秘めるのは、未来への希望なんだ!」
レッドは確かな未来への希望を込めて力強く答えた。
しかし怪人王はそんな答えを無視すると、どこか責任を感じさせる重く確かな言葉をヒーロー戦隊に向けて叫んだ。
「これだけは言っておかなければならないだろう! すまなかった! そして、お前に全てを押し付けて、申し訳ないとは思う! だが最後に一つだけ問いたい! お前はワシを越えて、その絶望を胸に秘めて未来を創っていけるのか!?」
「ふざけるな! 絶望なんてものは俺たちにはいらない! 俺たちは希望を胸に未来へ進むんだ! 未来を創るのは絶望じゃない! 希望だ!」
ジャスティスレッドはその怪人王ゾシマの不自然な問いかけに怒りをもって答えた。
そしてその隣に並び立っていたジャスティスブルーも怪人王に向かって叫ぶ。
「そうだ! 俺たちの希望こそが絶望を打ち砕く! 絶望の化身であるお前に勝ち目はない! 希望こそが絶望に打ち勝つ最強の力なんだからな!」
ジャスティスレンジャーが自らの正義の気持ちを怪人王に叩きつけていく。
さらにその隣に立っていたジャスティスホワイトとジャスティスパープルも、自分の意思を見せるべく、一歩前に踏み出して怪人王に向かって叫んだ。
「私たちは希望と法律のために戦う戦士! 絶望に支配された未来を創るつもりなんてありません!」
「そうよ! 未来を創れるのはあなたの絶望なんかじゃない! 私たちの正義と希望が、新しい未来を創るんだよ!」
そしてその二人の言葉が終わったあと、最後にジャスティスイエローがそこからさらに一歩踏み出して、怪人王ゾシマに宣言して見せるように叫んだ。
「怪人王ゾシマ! 絶望だろうが希望だろうが、私はなんだって背負ってみせる! あんたの絶望だって乗り越えて、本当に平和な世界を必ず創って見せる! 安心して死んでくれ! 未来は必ず、私たち正義の味方で創って見せる!」
怪人王ゾシマはそのジャスティスイエローの言葉を聞いた後、ヒーロー戦隊たちを見て、不思議と笑顔を見せて喜んでいた。
そして、怪人王は言った。
「……その言葉を聞けてよかった! ならば盛大に散ってやろうではないか! カーテンコールが鳴りやまないほどのラストダンサーとしてな!」
怪人王の挙動はさながら劇中の舞台俳優か、もしくは道化のような、そんな大仰な動きだった。
怪人王ゾシマは両手を広げ、そしてありったけの黒い稲妻をその身に纏い、最終決戦のためにその身に残った力の全てを披露していく。
「忘れるな! これは決して終幕などではない! 所詮ワシは前座にすぎんのだ! ここからがいよいよ世界が始まる! さあ、マスカレードでも踊ろうか! かかってこいジャスティスレンジャー! かかってこい正義の味方! お前の正義、貫き通して見せるがいい!」
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ヒーロー戦隊は激闘の末、怪人王ゾシマを滅ぼした。ほんのひと時の間だけ、世界は平和になったかに思われた。
だが彼の遺言通り、怪人は数を減らしたものの死滅することはなかった。少しずつ再び街に姿を現し始めていった怪人たちは、ヒーローから身を隠すようにして社会に潜み続けた。
世界の平和を守るため、ジャスティスレンジャーは再び街に駆け出し、怪人の残党狩りを行うのであった。