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冬の指先
ひっそりと
つららは凍る
うすく陽がさせば
すこし泣き
なみだは光り
おちもせず
かぜに震え
とおいのです
まっしろな野を姿のない旅人はゆく
あらしを知るものは静けさを恐れ
あさの雲は翻る
あなたの知らない風に
ああ!
どうして冬は悲しい
こんなにも冷えきった指先
あなたの冷たくなった頬
すこしの華やかさがあれば
さむさは銀の純粋に結晶して
ゆくえ知らずの風に煽られて
すみわたる空へと高く 高く昇っていくのに
なまり色の悲しみから
はい色の思い出たちが降ってくる
まちわびた雪片の放埓さは
ゆきをんなの情熱
てのひらで溶けて
わたしを少し奪っていく
どこかの洞穴で
ひとつ
つららが生まれる
それは わたしの欠片
けっして届かぬ
あなたへ伸びる冬の指先




