問
今週まで投稿ペースは落ちます。
同時刻に【戦いたい】の方も投稿させて頂いています。良ければそちらもどうぞ!
「──命に別状はないみたいです」
ウルがエレーナの胸から手を退けそう言う。
零刀が現状をどうにかするために呼んだのだ。
「そうか……なら良かったが、理由はわかりそうか?」
「異常な魔力は感じられませんが、全体的に魔力が乱れてますね。それと、わずかながら『瘴気』が」
「『瘴気』だと?俺は何もしてないが……」
「こうなった状況の説明をしてもらっても?」
「とは言ってもな……そいつが『鑑定眼』を使ってきて、少ししたら暴れ始めたってところだが」
その説明を聞いて、ウルはため息を吐く。
「それ、絶対的にレイさんのせいじゃ無いですか。状況的にはコレの自業自得ではありますが……」
「何かわかったのか?」
「ソレですよ、ソレ」
ウルが指差すのは、零刀の纏う外套。
「それは今までの外套──『深淵』とは異なる『権能』から生み出されたものですよ?それも、『深淵』が発展したようなものからです」
「『 昏キ底ヨリ嘲笑ウ』か……なるほど。『深淵』の時には『鑑定』を反射みたいな形で相手の『ステータス』を開示していたのが、さらに追加効果を発揮したってところか……『己ヲ喰ライテ糧ト成ス』と同じく、もっと『解析』していく必要があるな」
「ですので、イリスさん。レイさんを『見る』時には充分気をつけてくださいね」
「?『レラント』からここに来る間も見てたけど、異常なかった」
「それなら『無意識状態』の時は発動しないとかでしょうか?もしくはその外套を纏っている間という可能性もありますが……」
「そこら辺のことは今後要検証ってとこだな」
そう返しながらエレーナに触れ、『瘴気』を取り除く。
「ん、あれ……私、何して──ひっ!?」
「『それは穏やかな水面の如し』【平穏領域】」
表情を強ばらせ悲鳴を上げかけたその時、ウルがそう呟く。
すると次第に表情から険しさがなくなり、落ち着いていく。
「落ち着きました。ありがとうございます」
「それならよかった。で、本題に入ろうか。呼んだ要件についてだ」
「……あら?まだ言ってなかったかしら?レイト・カミノ、あなたの『昇級試験』に関してよ」
その言葉に首を傾げる。
「『昇級試験』?なんか問題でもあったか?」
「いや、過去のモノじゃなくて次の……『Bランク昇級試験』のことよ」
「……そんなに依頼をこなした覚えが無いんだが?」
「一番大きいのは『中継都市レラントにおける謎の異変』の解決ね。アレはレラントの組合長が意識を失う直前にここに連絡してきてね、『緊急依頼』として受理し、張り出される予定だったのよ」
「予定だった?」
「そう。張り出す直前に連絡が来てね。どこかの誰かさんが独りで解決したって言うじゃない?それで結果的に『ひとつの都市の全ての人を救った』って言うことで、『Bランク昇級試験』を受ける資格を与えるってわけ」
「はぁ……まあ、受けれるっていうなら受けるが……予定は?」
「一週間後ね。この都市の闘技場を使って一般公開でやるつもりよ」
「は?一般公開?」
「そうよ?この街では『昇級試験』も一種の娯楽なの。『Aランク昇級試験』はもっと盛大にやるくらいなのよ」
「はぁ、ま、郷に入っては郷に従えとも言うしな。デメリットは大きくないだろうし、やっとくか。で、要件は終わりか?」
とりあえずやる、という意思表示をした零刀はめんどくさそうに聞く。
「そうね……最後にひとつ聞かせてもらおうかしら。あなたはチカラを何に、どう使う?」
その問に対して、零刀は明確な答えを持っていた。
「──俺は、我が道を行くために。それを妨げる全てを『否定』するために」
しかしその道は今、変異し始めていた。
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「そう言えばイリス。シリウナはどうしたんだ?」
『冒険者組合』を出た零刀は、目を覚ましてからその姿を見ていないことに気がつき問いかける。
「……ん?そう言えば……昨日薬とかを買ってきてもらってから見てない」
「おいおい、何かに巻き込まれたとかじゃねぇだろうな?とりあえず宿に戻るぞ」
そう言い歩調を速めた二人の背中を見送りながら──
「彼女なら、レイさんの支えになってくれると思っていたのですが……残念です」
そう呟いて、その場から姿を消したのであった。
「──亭主、シリウナは帰ってるか?」
急ぎ足で宿に帰った零刀がそう尋ねる。
「ん?あの狐の嬢ちゃんか?今日はまだだな」
「そうか──」
「だが、昨日これを渡してくれって頼まれたぞ」
踵を返し、外に出ようとした零刀にそう呼びかけ手紙を渡す。
「手紙、だと……?」
それを受け取ってすぐに開き、読む。
そこには──
──『ごめんなさい』という言葉と、『もう一緒には行動できない』という言葉が書かれていた。
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「痛っ、つつ……あのヤロー、そこそこマジでぶちかましやがって……俺じゃなきゃ致命傷だぞ……」
そう言い、ムクリと起き上がると辺りを見回す。
「……もう話は終わったのか?ならせめて俺を放置していくなよ……って、うおぁ!?」
タルドが驚いたのも無理はない。
「うっ、はぁ、はぁ……」
──零刀たちが去った『冒険者組合』の応接間で、エレーナは身体を縮こませ震えていたのだから。
「どうした、何があった?プライドの高いお前がここまでなるなんて……いや、何が見えた?」
途中で質問の仕方を変えれば、それまで反応しなかったエレーナの身体がピクリと反応する。
「見られた……いや、違う……見つめ返された」
「お前の『眼』の事か。それで、何が見えた」
「ダメ、説明できない……アレは、形容できるものじゃない」
『精霊眼』と『鑑定眼』という魔眼を持っていたからこそ、見えてしまった。
異形共が嘲笑っていたのだ。
愚かだと言うように、浅ましいと言うように。
無数の貌がこちらを見つめていたのだ。
──そしてコチラに、異形の腕の様なものを伸ばしていたのだ。
まるで、何かを求めるかのように。
「アレは……人間じゃない。ヒトのカタチをした、名状しがたいナニカ。私は【最強】をこの『眼』で見たことがあるけど、あれはまだ人間だった」
「……そこまで言うほどか。あながち『魔王より魔王』って言葉も間違いじゃないかもな」
「モニアを襲撃した『魔族』の言葉だったかしら。そうね、私は『魔王』を見たことは無いけど、あれならそう言われてもおかしくない」
そう言いながら、タルドの入れたお茶を飲む。
「──『冒険者組合』内でそれとなく伝えておいて。アレには絶対に手を出すなって」
「了解した。だが、言っておくが、俺はアイツに助けられてもいる。もし正当性も無く排除しようとするなら……」
「わかってるわ。そんなことをすれば私の破滅よ。する訳がないじゃない」
「なら、いい」
タルドが退室したのを見て、エレーナは大きく息を吐く。
「あんなに『恐怖』を覚えたのは三十年ぶりかしら」
タルドに話して震えが多少落ち着いたのを確認しながら、思い起こす。
「──文字化けした『ステータス』に、わずかに『混沌』の文字を見つけた時だったかしら」
そう言って、もう一度大きく身体を震わせた。
来週からはもう少し投稿できるかと……




