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異変

この話は長くなってしまったので、分割しました。


多少違和感があるかも知れませんが、ご容赦を

「さて、と。大体必要なものはこんだけありゃあ充分か?孤児院じゃシリウナもそこそこ食べていたからな。多めに買っておいて損はねぇだろ」


そう呟きながら『空間』を割り、そのなかに物を放り込む。


「しかし、閉まってる店が多かったな……まあ、灯り自体がそこまで進んでるわけでもないし、そんなもんか?」


そんなことを口に出して、ふと思う。


「独り言、か。最近はいつも隣にイリスや他の誰かが居たからか、随分久しぶりな気がするな」


そう言って笑みを浮かべ──


「こういうのも、悪くないな。さて、シリウナ用の武器でもつくるかな。部屋じゃあアイツらが寝てるだろうし、やるなら街の外か……【中継都市】だけあって、手続きさえすれば夜でも街から出れるんだっけか」


そう言いながら、街の外へ行くために街門へと歩みを進めるのであった。



──この街に、異変が起こり始めていることに気が付かずに。



------------------------------------------------------------



「確か、アイツが使うのは『短剣』だったな。それに、『暗殺者』か……なら、一撃の殺傷能力に重きを置いて……いや、あまり重くしたり形状を特殊にしすぎたりすると取り回しが悪くなるか……ならいっそのこと……」


街の外、即席の小屋を作った零刀は一人考案を練っていた。


「両立できないならいっその事、二本作っちまうか……殺傷能力の高い方は形状を特殊にして……刺したら『瘴気』が流入するとかも面白そうだな……よし、やるか」


そう言って『黒耀石』を取り出して『錬成』し始める。


「構成は……『黒耀石』の【循環】の性質を利用して、『瘴気』の流入回路を形成……貯蔵機能も付けておくか。あとは形状も……あ」


その声が漏れると同時に、手元にあった『黒耀石』が崩壊した。


「あー、『黒耀石』じゃあ容量キャパシティ超過オーバーしちまうのか……だとすると、問題は素材か……『瘴気』にも耐えられるものとなると、だいぶ幅が減るな」


今更になって、素材の問題が発生して頭を悩ませる。


「あ゛ー、こんなことなら『死瘴邪龍』の素材でも残しておけば良かったな……でももう喰っちまったからなぁ……ん?」


そこまで言って、ふと閃いた。


「【喰った】ってことは、『変質異貌』で……!」


そう言うと、掌から『牙』を生成する。


「良し!あとはこれを『錬成』して……ッ!『黒耀石』よりも難易度が高いな……いっちょ全力でやるか」


『知恵』の『技能スキル』を稼働させて、精密な『錬成』を行っていく。


(材質の変性──『黒耀石』をバランス良く混ぜることで【循環】の性質を持たせて、それ用の回路を形成……成功。それに加えて貯蔵機能を……少しキツいか。下手にやると『短剣』その物がダメになりそうだな。なら、『瘴気』は外部からはめ込み式で供給できるようにして……良し、あとは形状を持たせて──)


そしてそこにあったのは漆黒の剣身に、紫色の線が入った『短剣』。


「──完成だ。『解析』──よし。概ね予想通りだな。ただ、ちょっとだけ全力でやりすぎて性能に差が出たが……まあ、誤差の範囲だろ。銘は──『蝕』だな」


そう言って空に掲げて見ていると、ふと空の黒さが薄れ始めていることに気がつく。


「やべっ、すぐ帰るって言ってたのに……もうこんな時間か!」


急いで『短剣』──『蝕』を『空間』を壊して放り込むと、即席の小屋を【破壊】して走り去る。



(──よしっ!門番も居なかったしスムーズに入れた。イリスが起きても居なかったら、心配されるからな。現に、以前それで怒られてるしな)


そう思いながら駆けていると、違和感を覚え、足を止める。


「──音が、しない?この時刻なら、早いものはもう起きているハズだが……」


なのにも関わらず、生活音ひとつしないのは、どう考えても『異常』であった。


(そう言えば、門番が居なかったこともおかしいだろ……【中継都市】とはいえ、検査くらいはあるハズなのに……)


「──『変質異貌』」


己の身体に他の生物の要素を混ぜ、聴力を人間の遥か高みへと至らせる。


「……レ、イさん」


その声が僅かに聞こえた瞬間、零刀は【壊離】を使って上空にいた。


「──あっちだな!」


そして障害物が無いのを確認すると、再び【壊離】にて目的地へと移動する。


「──邪魔ッだァ!」


目の前にある木製の壁をぶち壊し、中へと転がり込む。


「レイ、さん……?」


「どうした!何があった!?」


自分の名を呼んだシリウナへと駆け寄り、そう声をかける。


「わか、りません……ですが、『本能』は、死を……」


「『解析』……『体力』と『魔力量』が減っていること以外は問題ないが……【死】か」


シリウナの言葉に思うところがあったのか、左眼の眼帯をハズす。


そこに見えたのは──


「なんだ、これ……『解析』」



------------------------------------------------------------

死霊


悪霊にすら至っていない、死した生き物の成れの果て。


怨み嫉みにより他者に取り憑き、生命力や魔力を吸収することができる。


------------------------------------------------------------



──紫の入り混じった、透明なナニカが纏わりついていた。


「『死霊』?これは……取り敢えず【死】で……触れるが、ダメか」


紫色の【死】を纏って触れるが、触れることはできても殺すことはできなかった。


「そりゃあ死んでんだもんな。なら──」


【死】を纏った手で掴むと、それを引き離して放り投げる。


「──『喰らい尽くせ』【喰らう者ソウル・イーター】!」


実体を伴わない黒いモヤが口のように動き、それを【喰らう】。



──妬ましい、苦しい、嫌だ、死んでしまえ、なんで私が、辛い助けて



「グッ!?」


ソレを【喰らった】と同時に、様々な感情や意思が流れ込み──


『──ありがとう』


「────、───」


「レイ、さん?」


苦しげな声を上げたと思えば、身動きしなくなった零刀に、心配そうに声をかける。


「──ああ、何でもない。ところで調子はどうだ?」


「まだ少し、辛いですが……『本能』も、収まりました」


「そうか、ならイリスの方が問題だな」


そう言って視線を向ければ、イリスを覆うように蠢く死霊の姿があった。


「これは……『王』の性質によって、死霊たちが近づけないのか……それでも、『魔力量』の減少から見てかなり疲労してるな。音で起きないのもそのせいか……」


そう言いながら、黒いモヤを使って死霊を【喰らう】。



そしてソレらから流れて来た感情は、『救済へ対する感謝』だった。



「コイツら……『王』であるイリスを襲いに来たんじゃなくて、『救済』を求めてやって来たのか!?」


そう言っている間にも、死霊は少しずつではあるがイリスへと寄ってくる。


「……これは、この街全体に拡がっているのか……」


自分が開けた壁の大穴から外を眺めた零刀は、死霊たちが舞う空を見てそう呟く。


(……どうする?いちいち喰らっててもキリがない……なら、街からさっさと出てから、対処するか?なら、『聖水』辺りはあった方がいいな……)


「シリウナ、少し出てくる。すぐ戻ってくるからこれを持ってろ」


そう言って『空間』を割ると、そこから『蝕』を取り出し紫色の宝珠を填めて放り投げる。


「これ、は……?」


「持ってれば死霊は寄ってこなくなるハズだ。現に、俺にも寄ってきてないしな。すぐ戻る。待ってろ」


そう言って『割れ目』に飛び込んだ。


そして、その先では──


「シスター!」


──倒れたシスターをどうにか助けようとする、孤児院の子供たちがいた。



「あ、【紫紅】……シスターが、シスターが……」


零刀の来訪に気がついた子供がそう呟くのを聞きながら、零刀は横になっているシスターに歩み寄る。


(このシスターは【光属性魔法】が使えるのにも関わらず、瀕死レベルまで衰弱してる……?ああ、イリスの時みたいに『救済』を求める死霊どもが群がったのか……子供たちがまだ元気なのは……ああ、『生気』が溢れてるからってのと、そっちに行く分がこのシスターに行ってるのか)


そう結論づけた零刀はそこを離れ、教会へと進もうとするが、子供たちに外套の端を掴まれる。


「頼むよ!助けてくれよ!シスターが、シスターがっ!」


「離せ。俺も行かなきゃ行けないところがある。それに、状況から考えて、真っ当な方法じゃあ助からねぇよ」


そう言って手を払うと歩みを進める。


「なん、でだよ……『理不尽』だろ……こんなの……」


(俺は『理不尽』と言われようと、手に届く物を守るだけだ)


心の中でそう、誰にとも無く行ってから奥へと進む。



「……こんなときに、『正義の味方』は……助けに来てくれないのかよ……」



──しかし、背後から聴こえてきた……聴こえてしまった言葉に足を止めた。



「……気が変わった。お前ら、そのシスターを助けたいか?たとえ、自分の命を投げ打ってでも?」


「……ああ、助けたい。もともとシスターが居なかったら、死んでたんだ。例えあんたに命を差し出しても、それで助かるなら……っ!」


その言葉に必死になって縋る姿を見て、ひとつため息をつく。



「はァ、言っておくが、『正義の味方』は来ねェぞ。どれだけ苦しかろうと、どれだけ悔しかろうと──どれだけ、叫ぼうとも。『正義の味方』は他人の都合で動くが、届かなければ動かないし、聞こうと耳をすませもしないからな」


その無慈悲な言葉に、子供たちが悔しそうに俯き──


「──だから俺は、『否定』したんだ。自分勝手で自己中心的で──『理不尽』な『正義』とやらを、な」


その言葉に視線を上げれば、そこには既に、零刀の姿は無く、その地の遥か上空にいた。



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【『ハズレ』と言われた生産職でも戦いたい!!】
並行して書いているものです。

【ココロミタシテ】
何となくで書いた詩です。
これらもよろしくお願いします。
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