『孤児院』と零刀と、
パクリと言われることもありますが、パクリではありませんからね。
後半の流れもだいぶ変わってきますし……
言い訳をしたところで、本編をどうぞ
「……ハァ」
零刀からため息が漏れる。
「あー、ため息ついたぁ!」
「ため息つくと、幸せが逃げちゃうんだぞっ!」
「あのなぁ、幸せってのは自分で掴むものだって習わなかったか?いや、そんなことはどうでもいいんだが……苦労をかけに来てるお前らがそれを言うな」
そう言って揚げ足をとってくる子供たちをあしらう。
「えー、カッコイイじゃん!【紫紅】!」
「かっこいいー!」
「お前らは子供だからそう言えんだよ……なんか中二臭いだろうが」
そう思うのはそういう『異世界』から来たせいであって、元々この世界にはそういった概念は無く、寧ろ【二つ名】は歓迎され、誇れるものなのだ。
現に──
「えー、カッコイイじゃん!」
「というか、『ちゅうに』ってなに?」
「みんな【二つ名】貰ったら嬉しいのになー。変なのー」
この世界で生まれ育った子供たちは心の底からそう思っているのだ。
「……そうか?なら、いいのか……?」
そして零刀も、戦闘やら何やらのように、こう言ったことにも適応して行かないといけないと思い直し始めていた。
「……で、レイさんはどうしてこんな所にいるんでしたっけ?」
「ん、依頼。確か、『教会の孤児院のご飯作り』。教会の人が、なにかの用事で離れないといけないから、その代わり」
「へぇ、レイさんって料理できるんですか?」
「ん、めちゃくちゃ美味」
「……私たちも食べれますかね?」
「……さあ?でも、食べられないと、悲しい」
そんなことを、子供たちに絡まれる零刀から離れた場所で話す。
「……なんか深く考えるのが馬鹿らしくなってきたな。良しっ!夕飯は腕によりをかけて作ってやる!」
「「「おおおお!」」」
「「「やったーー!」」」
「──ってことで、さっきからサボってるお前ら、コイツらの相手を頼んだ」
「「えー」」
「働かねぇなら、飯は抜きだぞ?」
「やる」
「やらせて頂きます!」
こうして、ご飯に釣られた二人を巻き込んで、この依頼は進んでいくのであった。
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「ウル、野菜取ってくれ」
「はい、これですか?」
「ああ、あとは香り草を少し多めに貰ってもいいか?」
「どうぞ」
「ありがとな。あとは……煮込めばいいか。ゆっくりしててもらっていいぞ」
「では、向こうにいますね。そう言えば、私の分は……」
「あるから安心しろ。もう少し出出来る」
「ありがとうございます。それでは!」
そう笑顔で言うと、イリスやシリウナの所へと小走りで移動する。
「ん、ウル。もうごはん?」
「もう少しだそうです」
「すでに匂いだけでも美味しそうですね……あれ、そう言えば貴女は……」
目が覚める前、僅かの間だが邂逅した事を思い出す。
「ああ、申し遅れました。私は【水属性王位精霊代表】、並びにレイさんの【眷属】をしております『ウェルシュ』と申します」
「ああ、これはどうも。『シリウナ』と申します。って、えええ!?【精霊王】の方ですか!?それが、レイさんの【眷属】ぅ!?」
「あら、いいリアクションだこと。それよりも、もうお怪我は?」
「あ、大丈夫です。そう言えば、私たちが会った場所てここら辺じゃあありませんよね?あれって、何処ですか?」
「……それをどうして聞くのですか?」
「あれだけ穏やかで綺麗な場所なら、もう一度だけでも行ってみたいなぁと思いまして……」
シリウナの問いに、ウルは少し考えてから言う。
「……あそこにまた行きたいと?」
「えっと、はい。……そんなに難しいところなんですか?」
その言葉に、ウルは少し悲しげな笑みを浮かべ──
「あそこはレイさんの──零刀さんの心の中であり身体の中。『現在する心象世界』のようなものですよ」
「──えっ?いや、でも、私はあそこに……」
「正確には少し違うのですが……『隣接する固有亜空間』という言葉をご存知ですか?」
「えっと、確か……世界には鏡合わせの様な『隣接する亜空間』が存在していて、その中でも生物や物に隣り合うように存在する『亜空間』の事ですよね?それがあることによって【転移】などの際に重なってしまったり、体内に【転移】させたりできないという……」
「それです。そして、レイさんはそれを【喰べて】しまったのです」
「──え?」
唐突に、理解できない言葉によって混乱するシリウナだが、それに構わず話は続けられる。
「彼は半分無意識のようですが……それによって空いてしまったそこには、代わりに彼の『心』が映し出され、擬似的な『心象世界の顕現』をしてしまったのです。言ってしまえば、あれは彼の心の具現。そして、アレが綺麗に見えているのならばまだ問題は無いということでしょう」
「えっと、つまり?」
「あそこに行きたいならば、彼の心に入りなさいな。ということです。まあ、あなたになら、もしかしたら──」
「おい、できたぞ。配膳くらい手伝え」
二人の会話を、完成を伝える零刀の言葉が遮る。
「あ、すみません。今行きます」
「私も手伝いますよ!」
「ん、やる。早く食べたい」
各々がそう言いながら食器を運び始める。
(そう言えば、今の会話にイリスさんは関与してきませんでしたね。ということはやはり、彼女の『眼』には見えている、という事でしょうか)
その中で一人、ウルはそんなことを考えていた。
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「ねーねー、【紫紅】さんは何か【魔法】つかえないのー?」
「あー、俺のは危ないからな。戦闘以外ではあんまり使えねぇんだ」
そう言いながらチラリとイリスたちの方を見る。
そこでは土が変形し、水が生き物を象り、蒼い灯火が空を舞っていた。
「てか、あいつら子供の扱い上手すぎだろうが……しかも俺が参考にできない類いのものばかり……俺にはこれくらいしかできねぇよ」
そう言って何本か触手を生成して動かす。
「ほら、これが嫌なら向こうに混ざって──」
「わー、なにこれ!?」
「すごーい、うねうねしてるよ!」
「おいしそー」
「はっ?えっ、いやこんなんでいいのかよ……てか、最期の奴!おかしいだろ!こら、触手を噛むな!食いもんじゃねぇ!」
多少なりとも怖がられると思ってやったのだが、どうやら子供たちには大ウケしたようでてんやわんや状態である。
「ねーねー、絵本読んでー」
「この状態でか!?題名は……『宵の竜がなく頃に』?確かあの黒ローブに勧められたヤツだな。へぇ、絵本にもなってんのか。いいぞ。お前らちょっと大人しくしろ。本を読んでやる」
そう言って子供たちを落ち着かせると、静かに読み始める。
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結論から言おう。
子供たちが泣いた。
というか、悲哀モノでそこそこ悲しいやつだった。
「『悲哀もの』に近いって言ってたっけか。そりゃあ、こんな話聞かされたら泣くわ……てか、何でこんなもんが教会の孤児院なんかにあるんだ……」
そう愚痴りながらも、泣き疲れて眠ってしまった子供たちを運び終わった零刀が椅子にもたれ掛かる。
「はい、コーヒーです」
「ああ、サンキュ……って、コーヒーもこの世界にあったんだな」
「遠い島国にあるものをドラちゃんに頼んで生やしてもらいました」
「アイツ、本当に便利だな。まあ、あまりこき使ってやるなよ?」
ウルとそんなやり取りをしながらまったりしていると、孤児院の玄関が開いた音がした。
「ただ今帰りました……子供たちは?」
「シスターさんか。もう寝たぞ。それより、これで依頼は完了ってことでいいのか?」
「えっと、子供たちからあなたの様子を聞いてからの評価になるので、申し訳ありませんが、後日となるかと……」
「ああ、それは構わん。取り敢えずお前も疲れているだろうからな。もう行くわ。ほら、二人とも起きろ。帰るぞ」
「今日は本当にありがとうございました」
その言葉に軽く手を振って孤児院を後にする。
外に出れば、既に陽は落ちて暗くなっていた。
「たく、寝るくらいなら帰っていいって言っただろうが」
「さすがに『奴隷』の私がレイさんを置いては帰れませんって」
「その割にお前は仕事して無いけどな」
「うぐっ!それは、なんと言いますか……ほら、レイさんが子供に好かれていたからですよ!」
「後付け感がハンパねぇな、オイ」
「……ん?」
「ああ、お前は呼んでねぇよ。眠いんだったらシリウナにでも背負ってもらえ」
「なんか、うとうとしてるイリスさん、カワイイですね」
そう言いながらイリスを背負う。
「……あ、少し食料が不足してるな……すまないが、買い足しに行ってくる。先に戻っててくれ。イリスが居れば問題ないだろ」
そんなことをシリウナに告げると、ひとりその場を去っていく。
「行ってしまいましたね……全く、私が逃げるとは思わないのですかね?」
そう呟きながら歩を進め、ふと思う。
「そう言えば、今回の孤児院の依頼といい、あの『心象世界』といい、案外優しい人なのかも知れませんね」
(それなら、もしかしたら私のことも──)
「──だから、こそ……」
少し物思いに耽けかけた時、背中からそんな声が聞こえた。
「寝言ですか……ほら、もう宿に着きましたよ。もうすぐ部屋ですからね」
子供に言い聞かせるように言いながら部屋に入り、ベッドに寝かせる。
「だから…零…は……支え…壊れ……」
「寝言でもレイさんの事ですか……ふふ、お好きなんですねぇ。さて、私も眠くなって来ましたし、レイさんが帰ってくるまでひと眠りしますかね」
そう言って、空いているベッドに横になる。
(レイさんがああいう方だったとは……まあ、優しい方が手玉には取りやすい……ですよね)
そんなことを考えながら、微睡んでいき──
(──っ!?)
──ふとした拍子に、『本能』が警鐘を鳴らした。
(まずい!この感覚は死にかねない!?)
しかしながらそれは、少し遅かった。
(やばい、カラダが、動かない……?イリスさんも寝てる……マズい、このままじゃあ……本当に……!まだ、死ねないのに……!)
外を確認して、まだ暗いのを確認すると自分の助かる道を模索する。
(時間はどれほど経ったのかはわからない。声は……出ない。助けは呼べないか……カラダも動かない。絶体絶命、か……)
「できるなら……早、く。帰って、来てくださ、い……レイさん」
突然の絶望の中、シリウナは生きるために弱々しく、零刀の名を呼んだ。
これに伴い後日、『宵の竜がなく頃に』の短編をどこかで上げようと思っています。その時は告知させて頂きます。




