『暗殺者』と『紫紅』と『盗賊』と
今週最後、ギリギリ……
投稿ペース上げたい……
あ、どうぞ
「ハァ……やっと『冒険者組合』か……」
かなり疲れた様子で、零刀はそう零す。
「『女子の買い物は長い』とは言うが……何であんなにも簡単に、それこそ見ただけで決めるイリスとは対照的にシリウナの選ぶのがメチャクチャなげぇんだよ……」
「いやぁ、色々と吟味して選ぶのが買い物じゃあないですか。というより、私にはあんなにも簡単に決められるイリスさんが不思議でなりませんよ!」
「……?物なんて見ればわかる、でしょ?」
「ああ、そうだった。この人はそういう人だった……」
「そんなことはもういいから、行くぞ」
「……ああ、この人もそういう人だった」
一言言って『冒険者組合』に入っていく零刀とイリスに、とぼとぼとついて入る。
「イリス、お前はここで『昇級試験』が受けられるかどうか、聞いてこいよ」
「ん、了解。零刀は?」
「依頼表の所で見てるわ」
「わかった」
「じゃあ、私はレイさんと一緒にいますね!」
そんな形でふた手に分かれ、零刀は依頼表を見始める。
(『魔物討伐』の依頼は常駐系以外はほとんど無しか……ま、そりゃそうか。中継都市な上に近くに巨大な森やら迷宮やらがある訳でもないしな。それにそういうヤツはそれこそ隣の【冒険者都市】の……『アドヴェアス』だったか?に流れるだろうからな)
そんなことを思いながらも依頼表を眺めていると、ふと目に留まった。
(『喚起』?へぇ、ここら辺で気をつけることとか呼びかけも書いてあったりするのか。なになに?)
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注意喚起
最近、『レラント』付近において捕縛された【餓狼】という大規模な盗賊組織の一部による情報になります。
『モニア』付近に仮拠点を置いていた部隊が何者かによって襲われました。
その際、『連絡魔道具』によって近くの【餓狼】メンバーに連絡が入ったようです。
いわく、襲撃者は紅と紫の眼の人形であるが、襲撃の際には異形となり襲いかかってきたというものです。
この襲撃者が『人』か『魔物』かの判断も付いていないので、見掛けたら刺激せずにご連絡ください。
また、これにより『モニア』付近の『盗賊』が『レラント』付近に流れてきているので注意してください。
それに伴い、『盗賊討伐』の報酬には色を付けさせていただきます。
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「あ、レイさんもそれ、気がついたんですか?」
「……なんか知ってんのか?」
「私自身はよくは知りませんが……私を助けてくれた時に、『盗賊』が『紫紅のバケモノから逃げてきたおかげで上物に会えるとはなっ!』とか言ってましたので……それかと。でも、どうしてですか?」
「いや、気になっただけだ」
その言葉に、零刀は視線を逸らして言った。
「……なんか、すげぇ身に覚えがある話だな」
小さく呟いた言葉は、誰の耳に届くわけでもなく、中に漂って消えていった。
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「……ん、いた」
虚空に視線を漂わせていたイリスが、そう呟く。
「自然じゃ無い魔力の混じった岩に、そのなかに異なる魔力が二十。距離は700mほど」
「そうか……よし、シリウナって言ったか?お前がどこまでやれるのかが見たいからな。まずは一人で行ってもらうが……行けるか?」
木々の生い茂る森の中、その木の枝ひとつにのっている零刀が聞く。
「……問題ありません、行けますよ。と言うよりも──」
零刀へと振り向き、言い放つ。
「──別に、全て倒してしまっても、構わないのでしょう?」
その瞳からは温もりが消え、氷を思わせる冷たさを孕んでいた。
「なんか、フラグにも聞こえるんだが……いや、まあいい。できれば幹部っぽいヤツがいれば、一人だけ残してくれると助かるんだが……」
「構いませんよ。それと、短剣かなにかありますか?」
「ああ、これでいいか?」
そう言って差し出された黒一色に耀く短剣へと『鑑定』をかける。
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黒耀ノ短剣
製作者 レイト・カミノ
黒耀石の短剣。
黒耀石その物が変異しており、魔力をある程度流す上に、魔力を通すと光を反射しなくなる。
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「うん、悪く無い。むしろ、いい──では、行ってきますね」
そう言って駆け出す。
「……?これ、は……」
「へぇ、凄いな」
それを見た二人は感嘆の声を漏らす。
眼の前にいたはずなのに、次の瞬間には消えていたのだ。
「わたしが、『眼』で追えなかった……?」
「高度な『隠形』と『気配支配』による【気配消失】、あとは一瞬だけ『身体強化』系を全力で使ったって感じか……『瞬動』みたいなタダの高速移動というよりは他者の意表をついた移動術──元の世界で言う【縮地法】に近いものだな。気配に【死】を付与すれば、俺もできるかな……いや、【壊離】もあるし、使う機会がねぇか。それよりイリス、どうだ?」
「ん、ちょっと待って……『合成』【千里投影眼】」
二人の前に長方形が現れ、そこにシリウナの姿が映し出される。
「おお、便利だな。だが、さすがに音はないか」
「実際はわたしの視界を長方形に切り取って写してるだけだから、さすがに音は無理」
「これで十分だ。……それにしても、強いな」
暗闇から切り裂き、背後から一突きし、時には青い灯火を出現させて意識を逸らさせてから、確実に殺していた。
「……わたしでも、ヘタしたらやられる」
「『魔王』を倒せる『暗殺者』、ねぇ?案外いい拾い物だったかもな」
そういう二人の視線の先では、そこのボスだったと思われる男の放つ矢を【蒼炎】にて燃やし尽くしながら近寄り、攻撃するシリウナが映っている。
「さて、俺らも行くか」
「ん、零刀、掴まって……【転移眼】」
一瞬の浮遊感が通り過ぎ、景色は先程まで映像として見ていた場所へと変わる。
そこでは、シリウナが盗賊の首に短剣を突き立て──
「シリウナ、『止まれ』」
その言葉に、シリウナの動きが不自然に止まる。
それに対して盗賊も飛び退き距離をとるが、足を怪我しているようで移動できずにいる。
「あ、あれ?身体が……」
「悪いが、止めさせてもらった。ちょーっとばかり、聞きたいことがあったからな」
「くっ!」
「おっと、お前も動かないでもらおうか」
そう言いながら視線を向ければ、腕を動かしていた盗賊までもが不自然に動きを止めた、その手から礫がこぼれ落ちる。
──それを眺める零刀の左眼は、紫のモヤを漂わせていた。
「ま、まさか……お前が、『紫紅のバケモノ』……?」
「そうそう、それに関してなんだが……それって、俺のことか?」
「う、うわぁぁああああ!!?」
怯えつつも身動きの取れない盗賊へと、身体から触手を生やしながらそう歩み寄るのであった。




