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『奴隷』と二人

11月に入ってから初めての投稿ですね。


早いものです。


それでは、どうぞ

温かい陽の光に、まだ重い瞼を僅かに開く。


(あれ……今まで、何をして……)


どうやら自分は木陰にいるようだということを認識すると同時、近くに気配があることに気がつく。


「──あら、目が覚めましたか」


そこには青い髪に、一房だけ紫の混じった女性。


「とりあえず、水分補給も兼ねて『家庭菜園』のトウを切ったので、どうぞ」


それを、反射的に『鑑定』してしまう。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

仙果


過去、神が地獄より舞い戻る時に、追いすがる敵に投げつけ、追い払ったという伝説の果実。


※これ以上の鑑定結果を表示できませんでした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「はい、あーん」


その鑑定結果に口にするのを躊躇しつつも、喉の乾きに耐えられずゆっくりと口を開くと、その僅かな隙間からねじ込まれる。


「むぐぅ!?」


「食べて良くなってくださいね。私が何もしないで、あなたに死なれたら怒られてしまいますから」


「むぐぅ、むぐぐぅ!?」


というよりも、今の行為のせいで死にそうだ! と突っ込もうとするが、口一杯にそれが入っているせいで言葉にならない。


「よし、これで大丈夫そうですね!レイさん、褒めてくれるでしょうか……」


何とか飲み込むと、それこそチカラを使い果たしたのか再び倒れ込む。


「あらあら、だいぶお疲れのようで。よく寝て良くなってくださいね」


そんな声を聞きながら、意識が遠のいて行った。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



──ふと前を見れば、川が流れていた。


そしてその向こうには、黄金に輝く九本の尾を持った狐の獣人が手を振っていた。


「あっ、おばあちゃーん!」


こちらも勢いよく手を振り返すと、向こうもにこやかな笑みを浮かべ──




──周囲に九つの火の玉を浮かべ、連続でこちらに向かって飛ばし始めた。


「いやぁぁぁああああ!」


それに、直撃し──





「──はっ!?」


ガバリ!と身体を起こして、額に手を当てる。


(夢、か……というか、おばあちゃんまだ生きてるし、元気だし……)


夢の内容にそんなことを思いながらため息をひとつ吐いた。


(──いや、そうじゃない。あのあと私はどうなった?確か、倒れて……!?)


自分の最後の記憶を辿った彼女は状況を確認すべく辺りを見回す。


(場所は部屋、恐らく宿屋だと思われる。窓はひとつ、出入口もひとつ。すべて木製で窓のみが透明度の低いガラス。そこまでランクの高い宿では無いと判断)


心持ちが一瞬にして切り替わり、必要な情報だけを抜き取っていく。


(そして、この部屋には私と、男がひとり……身体の感覚と対象が死んでない・・・・・事から襲われた心配は無し。善意で助けた?まあ、どっちでも殺しておけば・・・・・・後腐れない・・・・・、か。『本能』も、そう言っている事だし)


そんなことを考えながら口内から黒く小さな長方形の物を取り出す。


それをひと振りすれば、先から銀の輝きが飛び出る。


(善意だったのかも知れないけど、もしもの時が怖いから、悪いけど死んで)


「──ごめんね」


一言呟いて、眠るその首に刃を突き立て、切り裂いた。



「……これでよし。次は──」


そこまで口にしたところで、ふと気配があることに気がつく。


慌ててそちらを向けば、僅かに開いた扉の隙間から『目』か見えた。


(──っ!?不味い、見られた!?)


状況を判断し、一瞬の思考の果てに導き出した答えは、姿を見せた金髪の少女からの一言で霧散する。


「……零刀、いつまで寝てるの?」


(……まさか、まだ死んでると思われていない?なら、好都合。部屋に入った隙に逃げ出せば……)


その言葉でそう判断し、口を開く。


「あの──は?」


それが間の抜けた音になってしまったのも無理はない。



──なぜならそこには、複雑な【魔法陣】が浮かんでいたのだから。



「ちょっ、ヤバ──」


「起きないなら、仕方ないよね──【魔砲マナ・カノン】」


慌てて身を捻った場所を、光線が通り抜ける。


「──【補喰ス深淵プレデイション・オブ・アビス】」


それがぶつかる寸前、くうが割け、光線を呑み込んだ。


「……は?」


目の前のできごとに理解が及ばず、再び間の抜けた声を漏らす。


「……おい、イリス。この起こし方はやめろと言っただろうが」


「ん、買い物に行く約束をしたのに、なかなか起きない零刀が悪い」


「……ああ、そういやそんなことも言ってたな。悪い、昨日遅くまで実験してたせいで感覚切ってたんだわ」


「ん、じゃあ首から血が出てるの、気付いてない?」


「ん?あ……あ、本当だ。シーツも汚れちまったな。『喰らい尽くせ』【悪食】っと、これでよし」


「いやいやいや、『これでよし』じゃあ無いですよ!何言ってるんですか!?」


そんな光景に物申す者がいた。


「コイツ、誰だっけ?」


「ん、昨日ひろったやつ」


「ああ、そういやそんなこともあったな。元気そうで何よりだ」


「あ、その件に関してはどうも……って、そうじゃなくて!首、切れてるんですよ?普通、死にますよ?」


「あ、治すの忘れてたわ。『再構成』っと、これでよし」


「だから『これでよし』じゃないですって!下手したら死んでるんですよ!?」


「いや、死んでねぇし。てかこの程度じゃ死なねぇし?しかも治ってるんだから、なんの問題もねぇだろ?」


「本人がそう言うのならそうなのかも知れませんけど、この程度じゃあ死なないんですか……治るのもおかしいですけど」


零刀の言葉に少しだけ落ち込みながらそう零す。


「……ん?そう言えば零刀、そういうの・・・・・には敏感なのに、気が付かなかった?」


「さっきも言ったが、【死】って程のものは感じなかったし、『殺意』やら『害意』も薄かったんだろ」


「つまり?」


「気にする程でもなかったって事だな。どっちかと言うとお前の『目覚まし』の方が危機を感じたな」


「……なんだろう、負けた気分」


そう言ってガックシと肩を落とすと、首元でカチャリと音が鳴る。


「……そういやお前それ、『奴隷の首輪』だよな?『主人』はどうした?」


「あー、これですか? えっとですね、とある理由・・・・・で、通りかかった『奴隷商人』に身売りをしたんですが……そのあとに【盗賊】に襲われまして……」


「ああ、それであんな所にいたのか。てか、『主人無し』の『奴隷』って大丈夫なのか?」


「えーと、あまり宜しくないので、役所に行って手続きをお願いしたいのですが……」




そして、その会話の一時間ほど後。




「──で、どうしてこんな事になった」


「……さあ?良くわからない。けど、確かに言えることは──」


そうして二人で後ろを向いてため息をつく。



「「──▼『狐の獣人』が仲間に加わった」」


「他人行儀な人たちですねぇ。晴れてあなた方の『奴隷』になったんですから!」



──そう、彼女の言う通り、零刀の『奴隷』となったのだ。



「てか、手放すにも売るのにも金がかかる上に審査が必要で、更には暫く街に滞在して調査を受けてって……面倒過ぎるだろう」


「その代わりに格安で、こんな美少女の『奴隷』を手に入れられたんですし、いいじゃないですか!それに、そこそこの教養もありますよ!」


「じゃあ、重力加速度9.8m/s²の自由落下において、3秒後の速度は?なお、空気抵抗は無視し、初速度は0とする」


「え、えっと……ジューリョクカソクド?って何ですか?」


「へぇ……コレで、ねぇ?」


ちなみに零刀はこの世界での重力加速度は元の世界とほぼ同じであると言うことを実体験より予測し、簡単な実験をした結果知っている。


(たまに出てくる『元の世界』との共通点からして、このくらいはわかるかもと思ったが……いや、学問においてはこの程度か?)



「コレって何ですか!せめて名前で呼んでくださいよ!」


「いや、聞いてねぇし」


「ん、『シリウナ・フォスオブ』。『職業』は『暗殺者』で『種族』は『狐獣人』の『変異種』。面白い『固有技能ユニークスキル』も持っている。そして上から──」


「いやいや!何でそんなことまで知ってるんですか!?『隠蔽』してましたよね!?」


「ん、あったところで、わたしに見えないものはほとんど無い」


「で、どんな『固有技能ユニークスキル』だ?」


「──【鑑定投影眼】。はい」



------------------------------------------------------------

殺傷本能


対象を殺せるか否か、また、どうすれば殺せるかを本能的に知覚することができる。


------------------------------------------------------------



「へぇ、便利そうじゃねぇか。ちなみにだが、俺は殺せそうか?」


「……正直に言うと、『わからない』。殺せるとは思うけど、死に至らしめるのは難しそう」


零刀の問いに、先ほどの調子とは一変し冷えきった声音でそう言った。


「……そうか。でも、『暗殺者』か……『冒険者』としての活動もするなら、そういう『職業』が居ても何ら問題無いな」


「……えっ、そうですか?私はてっきり『暗殺者なんて恐ろしい職業のやつなんて置いておけるか!』とか言われると思っていたのですが……」


「俺に限って、そんなこと言うかよ。俺なんか『錬成師』だぞ」


「はぁ、『錬成師』ですか……って、『錬成師』!?あの『ハズレ』と名高い『錬成師』ですかっ!?」


「……ん、それよりも買い物」


「ああ、そうだったな。その後に『冒険者組合ギルド』で依頼でも見に行くか」


「賛成、いこ」


「って、無視しないでくださいよ!」



こうして、唐突に増えた『奴隷』──シリウナは彼らに振り回されながらもついて行くのであった。



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【『ハズレ』と言われた生産職でも戦いたい!!】
並行して書いているものです。

【ココロミタシテ】
何となくで書いた詩です。
これらもよろしくお願いします。
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