『レラント』
自転車操業はキツい……だが、書き溜めしように投稿ペースを考えるとできない……ままならないものです。
ガタリゴトリという音とともに、中にいるもののお尻にダメージが入る。
「……なぁ、イリス」
「ん?」
「……なんか、アレだな」
「……さびしい?」
零刀の言葉にイリスはそう聞く。
というのも、馬車の中に二人しかいないからだ。
「いや、寂しいわけじゃないんだが……なんか、少しだけかわいそうだったかな、と」
零刀達二人は『モニア』から乗合馬車に乗っていたのだが……そこで事件は起きた。
「まさか、俺に『恐怖』して、乗るヤツみんな逃げていくとはな」
零刀を目にした誰もが、怯えて逃げ始めてしまったのだ。
幸い、『モニア』から少しだけ離れた所に停留所があったため、そこまで大きな騒ぎにはならなかったのだか……乗客が二人だけしかいなくなってしまったのだ。
その際、かなり不審げな目で見られたのだが、乗客として乗せてもらったのだ。
「まあ、俺が馬車でゆっくりしながら行きたいなんて言わなけりゃこんなことにはならなかったんだが……」
「……後悔、してる?」
「いや、無いな。俺が悪いことは何一つ無いからな」
そう言えるのは、さすが零刀と言うべきか。
──だが、イリスの『眼』には、見えていた。
だからこそ、彼に聞きたいが、聞けなかった。
──「本当に、これでいいのか」と
「御者さんや、あとどれくらいかかりそうだ?」
「このペースだとあと半日くらいですかね。本来ならもうちょっとかかるんですが、今回は乗客が少なくて軽いですから……まあ、そろそろ日も暮れますし、もう少ししたら街道の近くで野営に……ん?アレは」
御者は言葉の途中で、何を見つけたのか前方へと目を凝らす。
「──これは、『害意』。それも『欲望』によるものか……イリス」
「……ん、身なりからして【盗賊】。『ステータス』上でも【盗賊】、数は十。それから……ひとり逃げてる?」
『害意』に敏感な零刀がイリスに確認するとそんな言葉が帰ってくる。
「くっ、【盗賊】だなんて、運の悪い!一旦逃げますよ!」
「──た、……け、て」
御者の声にかき消されてしまうほどに、か弱く紡がれたそれは、『人間』の耳には届かない。
「──馬車はこのまま進めさせろ」
──だが、それは幸か不幸か、馬車に乗っていた『人間』でないモノへと届いた。
「へっ?ちょっと、何言って……って、馬の制御が効かない!?」
突然のできごとに、御者が焦るがそれに零刀は取り合わない。
「──ハァ、俺は『正義の味方』じゃあねェんだがな。むしろ、『理不尽』を『否定』する為なら何でもするから、『悪』とかそっち側なんだが……」
数回頭を掻くと、前を──逃げるそれを追いかける【盗賊《理不尽》】へと視線を向ける。
「──まあ、俺の行く『道』を遮ろうとしてるんだ。俺がそれを『否定』することに、何ら問題は無い」
そう言って零刀は、馬車から飛び降りると、黒い『魔力』を放出し、それは龍の顎を象る。
「──『喰らえ』」
「ぎゃぁああああああ!!?」
龍の顎が襲いかかり、悲鳴が上がる。
「イリス」
「ん、回収済み」
その声の方へと振り返れば、イリスの足元には先程まで逃走していた少女が横たわっていた。
「調子は?」
「かなりの疲労と、そこそこの負傷で、気絶中。暫くは起きなさそう。……そっちは?」
「ああ、今終わった」
そう言って零刀は龍の顎を『魔力』に戻すと、そのまま【悪食】を発動させて血痕一つ残さずに喰らい尽くしていく。
「ひっ、ひぃいいい!こんな、バケモノが乗ってたなんて!うわぁぁあああああ!!」
御者はそう叫んで『モニア』へと逃げて行ってしまった。
「あ、あー、行っちまったな」
「……どする?」
「幸い、『馬車』の形は覚えているからな。【変異錬成:馬車・黒耀石】っと、馬は……『変質異貌』でと……これでよし」
そこには、黒く輝く馬車と、それに繋がれた黒い毛並みに赤い目をした馬がいた。
「……馬?なんか、紫の『瘴気』みたいなの纏ってるけど……【鑑定眼】」
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UMA LV【不明】 Age【不明】
種族:UMA 【不明】
称号:【不明】
体力 【不明】
魔力量 【不明】
魔力 【不明】
筋力 【不明】
敏捷 【不明】
耐性 【不明】
魔耐性 【不明】
〈固有技能〉:不明生物
〈技能〉:
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不明生物
『ステータス』上の表記を【不明】にすることができる。
また、この生物の持つ、この個体由来の『技能』をこれに統合することができる。
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「……うま?」
「『解析』……うん、UMAだな」
半ば無理矢理感もあるが、見た目馬なのだから、これは『馬』なのだ。
「よし、乗るか。普通の馬よりも強いだろうし、早く着くだろ」
「……あれ、御者は?」
「いなくて平気だ」
御者が居なくても、馬車を引いて走る『馬』……それは本当に『馬』と言えるのかは定かではないが、便利ではあった。
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「──怪我人がいるんだけど、入れるかな?」
周囲が未だ真っ暗な中、篝火の灯る詰め所へと声をかける。
「ちょっと待ってろ──すごい怪我だが、大丈夫か?」
「一応『ポーション』で応急処置はしたんだけど……全部使い切っちゃってね。これ以上は宿にある分を使わないと行けないんだ……急ぎで通れるかな?」
「そうだな……身分証は?」
「僕のはポケットに入ってる。イリス、取って貰ってもいいかな。あと君たちの分を」
「ん、こっちが彼とわたしの『ギルドカード』、こっちが彼女の『ステータスプレート』」
人を背負っているせいで取れなかった零刀はイリスに頼んで提出してもらう。
「……確認した。本来この時間の入場には手続きが必要なんだが……それは特例で省略しよう。それと、『冒険者』は銅貨5枚、一般人は市民以外銀貨1枚だが……」
「銀貨2枚でお釣りは要らないよ。急いでるんだ」
「ああ、わかった。──ようこそ『レラント』へ」
その言葉を背に聞きながら、二人は街に入る。
「っ、ふぅー、何とか入れたな」
「ん、それにしても零刀、いつもと全然違かった」
「ああいうのは、ある程度丁寧にして下手に出てればだいたいどうにかなるんだよ」
そう疲れたように、先ほどとは打って変わった言葉使いをする。
「……詐欺師でも、してた?」
「してねぇよ、人聞きの悪い……」
「それで、コレどうするの?」
「ああ、もういいだろ。嵩張るしな」
そう言って隣の『空間』を割ると、そのなかに放り込んだ。
「これでよし」
「いいんだ?」
「……まあ、アイツなら事情は察して何かしらしてくれんだろ。それよりも、空いてる宿を探しに行くぞ」
「ん、」
こうして二人は街へと入り、宿を探しに行くのであった。




