『大発生(スタンピード)』と怒り
十月始めの投稿です。
どうぞ
『大発生』の一団が『モニア』の街に現れ、常駐していた衛兵たちはそんな自分たちを呪いつつも迫り来る魔物達を相手取っていた。
いきなり現れた魔物達に衛兵らは戸惑っていたのだが、何故か魔物達も戸惑っており、多数の魔物相手でもどうにか持ち堪えることができていた。
「ひゃっはァァあああ!」
「殺戮じゃぁああ!」
そして時間を稼ぐ事が出来たことにより、現れた【変態】──もとい、『錬成師組合』たちの増援が間に合った。
「ふむ、この毒はなかなかだな」
「やべっ、新作爆発しやがった。いっそのこと投げつけるか」
「みんな頑張っているようですな。私も行きますかな!」
オームズも他のものに引き続き、槍を持って敵を貫いていく。
その頃には魔物達も現状を理解していたのだが、変態達の異様な強さにより形勢は人間へと大きく傾いた。
「何か来たぞ!」
「おい、まさか、アレ……」
「「「【変態】か!!?」」」
そして続いて現れた『冒険者』達がダメ押しののように殲滅して行った。
「……攻撃の範囲を抑えないと、『魔石』が消し飛ぶ……」
イリスも縮小した【魔砲】によって次々に討伐して行った。
──しかし、それも長くは続かなかった。
「あー、思ったよりも減らされてんな。このままだと殲滅されかねないか。──少し早いが使うか」
「グ、ギャアアアア!!」
「ガァァアアア!!」
どこからとも無く声が聞こえると同時、魔物達が苦しみ始める。
──そしてその身体から、紫色のモヤが溢れ出した。
「「グギャアアア!」」
「ギュォォォオオオオオ!」
「ッ!こいつら急に強くなりやがった!?」
「ダメージを気にしないで向かってくるぞ!」
「まさか、『狂戦士化』か!?」
「こんなに『狂戦士化』持ちがいるわけねぇだろ!」
「首だ!首を狙え!」
死を恐れずに立ち向かって来る魔物達。
一体一体がさほどの強さでなかったとしてもこれ程の量が向かってくればかなりの脅威となる。
そして更に、『冒険者』達を絶望へと落とし入れる存在が現れる。
「おい、アレ……」
「うそ、だろ」
「何で、あんなのがここに……」
「……さすがの俺も、これはちとキツいな」
他の『冒険者』に続いて、その『組合長』までもが弱音にも似た言葉を漏らす。
「アレの素材は是非とも欲しいところだが……」
「あそこまでは毒も届かないな」
「さすがに私どもがいくら変態であろうとも、アレはムリですな」
あの【変態】達も恐れるほどの存在。
「グォォォオオオオオオオ!!」
「神話にも登場する、最悪の『龍』──【瘴邪死龍】、『イヴィラーデスドラゴン』」
その神話の龍が、口元に紫の光を湛え始め──
「ッ!ガァァアアア!!」
誰もが死を感じだとき、その横から【光線】が飛来し邪龍の光を相殺した。
「全力の【光線】で、相殺……こいつ、強い。【鑑定眼】」
イリスの『魔眼』が『邪龍』を射貫く。
------------------------------------------------------------
暴君 LV250 Age 5050
種族:瘴邪死龍〔魔物〕
称号:【神話の存在】 【理不尽】 【神話最悪の邪龍】
体力 900000/900000
魔力量 800000/800000
魔力 400000
筋力 450000
敏捷 400000
耐性 500000
魔耐性 450000
〈固有技能〉:瘴闇属性魔法 瘴気操作 【瘴纏 瘴気生成】 瘴気耐性 眷属 邪眼【毒 石化 麻痺 恐慌 静止 】
〈技能〉: 爪術Lv10 魔力操作Lv8
------------------------------------------------------------
「ん、強い。明らかに格上……だけど、『精霊の森』でレベルアップした、今なら」
邪龍と目が合う。
「わたしだって、頼ってばかりじゃいられない……!」
「グルォォオオオオ!!」
【魔王】と【神話最悪の邪龍】との戦いが、始まった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
一方その頃、
「──『魔石』を細かく砕いて、『錬成』しながら『薬草』の抽出液と混ぜて溶かして……」
『黒耀石』によって作られたビーカーの中で、緑色の液体がわずかに輝き──『黒耀石』のビーカーが砕け散り、中の液体が消し飛んだ。
「……またか、クソッ」
実を言えば零刀、五回目の失敗である。
零刀の魔力に含まれる、『本質』である『否定』が、ポーションというものを『否定』してしまうのである。
「まさか、俺って『錬成師』に向いてない……?」
自分の中で結論が付いたのかそう呟く。
実際は他の『錬成師』には扱えない『黒耀石』を『錬成』したり、自分の身体を『錬成』したりと規格外な事をしているのだが……
「もっと『本質』を抑えて『錬成』するしか無いか……イリスに頼り切りってのもよくねぇしな」
そう言って何度も何度も『錬成』を繰り返す。
イリスも同じようなことを思って戦っているのだが、互いが互いのことを知ることはできずにいた。
そして、何十も挑戦し続けた結果──
「──できた、のか?」
そこには、綺麗に透き通った緑色の液体があった。
「いや、待て待て待て。もしかしたら違うって可能性も……『解析』」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ライフポーション【二級】
傷を癒し『体力』を回復することができる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「キター!やっとできたぞ!……で、【二級】ってなんだ?『解析』」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【二級】
ポーションなどの回復系アイテムに付けられる『等級』で、上に上がれば上がるほど効果が高くなる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「あー、『等級』は低い感じか。まあ、今のでコツは掴めたが……慣れるまでは時間がかかりそうだな」
そう言いながら、買ってきてあったガラス瓶に移す。
「他人に渡すものもいつまでもあのポーションを使ってる訳にはいかないしな。……これは残しておくか──ッ!?『深淵』!」
そう言って空に透かして見ていた零刀は、唐突に感じた魔力と『瘴気』に反射的に今纏っている『深淵』の効果を使用した。
──瞬間、紫色の光線が零刀を襲った。
それが収まれば先の光線は斜め上からだったようで、天井は消し飛び零刀以降の射線上は無事だったものの、そこ以外は消し飛んでいる。
わずかに光線の端がかかっただけで、である。
その中でも無傷だった零刀は、目の前の手に持っていた部分以外が消失したビン──だったものを見つめていた。
そこからはぴちゃりぴちゃりと、わずかに緑色の液体が落ちていく。
──それを零刀は、一瞬わずかに手を広げるとパリンッと握り潰した。
「──ああ、こういうのは『理不尽』って言うんだよなァ?」
その言葉に、思わずチカラが入る。
光線の射線上を辿って感知を広げていけば、そこには馴染みのあるそれに近い、禍々しいオーラを纏った存在があった。
「…………ぶっ殺す!」
零刀はそんな言葉を残すと黒色の翼と【紫氷】の翼を生やし、その場から飛んで行った。
──ちょうど、『大発生』の対応に追われている場所めがけて。




