『錬成師』と【禁忌】
ペース合わせのためにこちらを投稿します。
恐らくこれが九月最後の投稿でしょう。
今月もお疲れ様でした。
それでは、どうぞ。
「……のどか」
「そうだな」
「……ひま」
「俺のが暇だ」
そんな会話をしているのは、芝生に寝転がっている二人。
場所は街の外で、少し離れたところではあるのだが──
「魔物、少ない」
「たまにハグレが出るくらいだもんな。『薬草』は?」
「とっくに集め終わった。……ん、向こうにゴブリン一体。おそらくハグレ」
「……俺がやるのは──」
「ダメ。【魔法眼】、【風矢】。【転移眼】」
目の前に現れた【魔法陣】が消え、続いて目の前にゴブリンの死体が現われる。
「ん、食べて」
「あいよ──【喰らう者】っと。これで10体か。目標は達成したけど、何だかなぁ」
本来なら魔物が現れないなら場所を変えればいいのだが、それが出来ないのだ。
理由はこの前の『初依頼』に関わることだ。
あれから『冒険者組合』は『ゴブリン』がやって来たと思われる方向へと調査隊を派遣したのだ。
『調教師』が脚の速い魔物に馬車を引かせ、馬車など比較にならない速度を出して調査へ向かった結果、そこには大量の魔物が居たのだ。
それが、この『モニア』の街目掛けて侵攻して来ている。
それを、【転移】が使える調査隊メンバーが魔力を切らしながらも伝えに来たのだ。
とはいえ、距離はかなりあって接触まで数日かかると見られている為、その間隣の大きな都市からは増援や武器などが馬車にて運ばれ続け、逆に『モニア』からは一般市民が避難を続けている。
侵攻に備え、戦力の低下は避けるべきということで遠出や他の街への移動は禁止されているのだ。
さらに──
「……ってか、『大発生』だったか?それに『仮登録』だと参加できねぇとか……」
そう、『仮登録』である零刀はまだ完全に『冒険者組合』の一員とはなれておらず、今回の作戦にはサポート以外では参加できないのだ。
「なのに、ゴブリン倒すのもダメっておかしくねぇか?」
「……零刀が戦ったところで、意味あるとは思えない。なら、わたしの『的』にした方がいい」
「……まあ、そうなんだけどな。ってか、俺が『仮登録』のままなのはお前が試験官をぶっ飛ばしたからだろうが」
さすがに言い返すことができないイリスは視線を逸らす。
「ハァ、ったく……別に怒っちゃいねぇよ。ただ、その間の生活費は任せたぞ」
「ん、任された」
その場から、立ち上がる。
「零刀、この後は?」
「あー、さすがにこのまま任せすぎも良くねぇしいい機会だからな。『ポーション』とか色んなものを作ってみようと思ってな」
「『錬成師組合』、いくの?」
「行かねぇよ!一応作り方は覚えてるしな。まあ、一応途中でレシピは買っていくが……」
「お金、は?」
「この前の『帝国』かどっかの鎧売っただろ?金がないって言ったらそれの一部を払ってくれてな。大した量じゃねぇがそれを使う。それで『ポーション』作って売れば足しにもなんだろ」
そう言いながら二人は、今日の新たな予定を組みながら街へと帰って行った。
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「おや、いらっしゃい。商売あがったりな、こんな非常時に本を見に来る奴がいるとは思ってもみなかったよ」
「俺もこんな非常時に本を売ってる奴がいるとは思ってなかったがな」
「それじゃ、お互い様ってことでどうだい?」
「そうだな」
そう言って会話を交わしてから本を見始める。
(……ふむ、蔵書量はそこそこか。『錬成』やら『ポーション』とかが書いてある本は…………ん?)
棚を見ていた視界に、黒いモノが映る。
すると、そちらも気がついたかのようにこちらを向く。
「おや?あなたは依頼を受けてくださった……」
「零刀だ。お前、バイトはどうしたんだ?」
「……ああ、さすがにこの非常時に経営するのも厳しいので休みなのですよ」
そう言いながら手に持っていた本を棚に戻す。
「ちなみにどんな本を読んでいたんだ?」
「『宵の龍がなく頃に』という悲哀ものですね。これには昔、世話になったもので……」
(へぇ、悲哀モノもあるのか……この世界、意外と書籍の類いが進んでいるのか?)
黒ローブの人物の話を聞きながらそんなことを思う。
「あ、買いますか?」
「いや、今は金に余裕が無くてな。必要なものだけにする予定だ」
「そうですか。それでは私もそろそろ」
「ああ、じゃあな」
「またお会いしましょう」
黒ローブが居なくなり、その奥へと進む。
(……恋愛モノに伝記、伝説から物語まで……それにそこまで高くないと言うことはやっぱり進んでいるようだな。面白そうなものも多いしな。っと、これか)
『ポーションの作り方集』と書いてある本を手に取る。
(あまり長居すると余計なものまで買ってしまいそうだ)
そう思い足早にその場から離れようとした瞬間、ある本が目に入る。
「『錬成師と【禁忌】に対する考察』?」
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あなた方は、私達『錬成師』が何故『ハズレ』と言われているかご存知だろうか?
その第一の要因は『ステータス』の低さだ。
我々『錬成師』は元の『ステータス』は変わらずとも圧倒的にレベルアップ時の『ステータス』の増加量が低い。そのせいで『魔力量』が少ないから『魔力操作』にいくら適性が高かろうと【放出系魔法】を放つことは難しい。……まあこれには【魔法】以外の『魔力操作』が必要な『錬成』に慣れてしまうが故の弊害とも言えるのだが……そう言った理由で、『錬成師』が『ハズレ』と呼ばれているわけだ。
しかし、我々は『錬成師』には可能性があると思っている。
それは『錬成』という他の『職業』には無い『技能』を扱うことができることだ。
他の『職業』……例えば『剣士』であれば『剣術』を得やすくはなるが……それは努力次第で他の『職業』でも取得することができる。
──が、『錬成』はそうではない。『錬成師』という『職業』のものだけが得ることのできる『技能』なのだ。
我ら『錬成師』のみに扱うことのできる『錬成』……そしてそれは、既存のものを変え、新たなものを創り出すチカラ。
──だからこそ、『錬成師』は神の領域へと至ることができると考える。
個人的な見解はここら辺にしておこう。
この世界における『ステータス』、その『称号』、【禁忌】について、あなたはどう考えてるのだろうか。
まず、【禁忌】に抵触する事柄についてですが、わかっているものがいくつかある。
いわく、
一つ、『死者の蘇生』
一つ、『生命体を別の生命体へと変えること』
一つ、『新たなる生命の創造』
一つ、『生命の根源の創造』
一つ、『生命の混成』
──これが、『禁忌目次録』に記されている情報だ。これは過去の【偉大なる錬成師】とも呼ばれた者が、どこかに存在するという『世界の記録』から得た情報と言われている。
今挙げた【禁忌】だけでも、どれも神の御技に等しい。
そして、思ったのだ。
──我々『錬成師』が持つ『錬成』は、それらを成すことができるのではないだろうか。
──そしていずれは、『神の領域へと至ることができる』のではないだろうか、と。
──『錬成師組合』、『組合長』
オームズ著
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「──って、これ書いたのあの変態オッサンじゃねェか!」
最後のページに乗っていた白黒写真のようなものに写っていたものを見て叫ぶ。
零刀が今いるのは宿だが、『錬成』をする時に何らかの間違いが起きても周囲に被害を拡大させないために【紫氷】で防音してあるので、他の客の迷惑になることは無い。
「ていうか、あのオッサン『組合長』かよ……【変態】共の総括者かよ……」
『冒険者組合』での一幕を思い出してゲンナリしつつも本を閉じる。
(それにしても、【禁忌】と『神の領域へと至る』ね。そういや俺の『称号』に【禁忌】は勿論、【至りし者】なんてのもあるが……考えすぎか?)
自分の『称号』を思い出しながら考えていると、ふと思った。
「──そういや、今俺の【禁忌】って、どうなってるんだ?」
一時期見るもんかとまで言っていた【禁忌】ではあるが、一度気になり出すと見るまで治まらない。
「……まあ、【外道】なんてもんを持ってる時点で今更か。『解析』」
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禁忌
人が忌むべきことを行なった者に与えられる称号。
【禁忌】『変異』
対象:人体錬成
人体を錬成という冒涜をしたことによって与えられた。
【禁忌】『生命の混成』
本来あるべき生命を混成させ、新たなモノを生み出したことによって与えられた。
生命の冒涜である。
【禁忌】『生死の否定』
『生』を『否定』し『死』を『肯定』し、『生』を『肯定』し『死』を『否定』したことによって与えられた。
『生死』という理の冒涜である。
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「増え過ぎだろ……まあ、色々と言いたいことはあるが、なっちまったモンは仕方ねぇ。それに今悩んだところで答えも出なさそうだ。とりあえず当初の予定の『ポーション』に取り掛かることにするか」
【禁忌】については半ば諦めて、本来やる予定だったものに着手するのであった。
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一方その頃、『冒険者組合』。
「ん、精算」
「はい、『ゴブリン10体』に『薬草採集』ですね。確認しました。……そう言えば、イリスさんは『魔石』の売却はなさらないので?ゴブリンとは言えども、多少の稼ぎにもなりますが……」
お金が無いことを知っている受付嬢が善意でそう聞いた。
「ん、『魔石』?……ん、売らない。というか売れない」
「売らないというのはわかりますが、売れない、とは?」
「解体、めんどくさい。それに──」
「それに?」
「──零刀が、たべちゃう」
「へ?」
イリスの言葉に『組合』内がザワつく。
「レイトって、あの連れだよな……」
「『魔石』を食べるって、どういう事だ?」
「比喩表現、か? いや、」
──しかし、それも長くは続かなかった。
「『組合長』はいるか!」
叫び声とともにドアが開け放たれる。
「どうされましたか?」
「魔物です!魔物が街に、攻めてきました!」
「早すぎませんか?予想では早くてもあと一日はあったと思いますが……」
「突然空間に穴が空いて、そこから現れたんだ!恐らく【空間魔法】だろう!」
その言葉に『冒険者組合』中が騒めく。
「──総員!至急先日伝えた配置に移動してください!『大発生』時は換金レートが上がります!報酬のためにも皆さん、死力を尽くして作戦を完遂してください!」
「「「うぉぉおおおおお!」」」
受付嬢の言葉に、『冒険者』たちが声を上げる。
元々、命を賭けて報酬を得ることを生業にしている者達だ。多少のリスクは当然である。
「総員、出撃!」
「「「うぉぉおおおおお!!」」」
ドドドドド、地響きを鳴らしながら移動が始まった。
「……っと、待たせたか──ってあれ?『冒険者』たちは?」
それが静まってから、奥の階段から男性が下りてきた。
「遅いですよギルマス。先に出撃させました」
「そうか、助かった。さて、俺も行くとするか──って、お前さんらは行かないのか?」
背負った大剣の柄を握りながら問いかける。
「私は後衛ですからね。アレに混ざる必要はありません」
「ん、わたしも」
急いで移動し始めた他の『冒険者』を落ち着いた様子で見ていたのはイリスとそれに対応していた受付嬢だ。
「あなたも参加するの?」
「ええ、これでも戦闘経験はありますから」
「じゃあ、俺達も行くか!」
「あなたはがっつり前衛でしょう。早く行きなさい!」
「うおっ!?いきなり蹴るなよ……わかったわかった!だから弓をこちらに向けるな!」
──こうして、『冒険者』たちは『大発生』への対応を始めた。




