『選定試験』
【戦いたい】と同時投稿です。
気まぐれです。
どうぞ。
受付前から場所は変わって、『冒険者組合』に併設されている修練場。
その中心に四人はいた。
「『A』ランク【光盾】タルドだ。今回の『選定試験』の教官……まあ、対戦相手だな。よろしく」
「ん、イリス」
「零刀だ」
互いに自己紹介をしながら、互いに「『冒険者』の割に意外と礼儀がある」とか考えていたのだが、互いがそれを知ることは無い。
「で、どっちからやる?俺からしたらまずやりたくないんだが……」
「そうだな。どうする?」
「ん、じゃあわたしから。真打は後で」
イリスが一歩、前に出る。
「嬢ちゃんが先か……まだ向こうよりはマシか」
「……? というか、零刀を先にしたら絶対に回って来ない。それよりもういい?」
「ああ、ちょっと待ってくれ。レイトって言ったか?あの時ポーションありがとうな。かなり効果が高かったが、貰ってよかったのか?」
「ああ、別にいい。もう知ってると思うが作ったのは俺だからな」
「あー、【変態】どもに知られたのは済まない。気づいた時には『鑑定』されてたんだ」
「……まあ、気にすんな、とは言えねぇが、今回の試験で返すってことでひとつ」
「あれ、これって俺死──いや、これでも『A』ランクだ。死んで堪るもんか!絶対に死んでも生き残ってやる!」
タルドは生き残る為に決死の覚悟をした。
──何度も言うが、当の本人達はタルドの胸中を知らないので二人して首を傾げている。
「では、両者の準備が整ったようなので……これより、『選定試験』を開始します!」
「ん、とりあえず──【魔砲】」
「ッ!いきなりかよ!『光纏いて我が身を守れ』!【光盾】!」
初撃として放たれた【魔砲】を、光を纏った盾を斜めに当てることで威力を流しつつ躱す。
「ん、さすがの『A』ランク。正直言って今ので倒せると思ってた」
「……まさか、俺の代名詞とも言える【光盾】をこんなにも早く……というか一撃目で使わされるとはな。俺も見くびっていたようだ」
(……なんて言ってみるが……コイツはやべえな。正面から受け止めてたら吹き飛ばされていた。それだけの威力が、今の攻撃にはあった。てか、レイトとか言うやつもバケモンだが、こっちの嬢ちゃんも十分過ぎるくらいにバケモンじゃねぇか!)
外面は強がってはいるものの、内心では冷や汗タラタラである。
「今度はこっちから行くぜ──『身体強化』、【光爆】!」
「うぅ!?まぶし、見えない……?」
(貰った!【盾撃】!)
「……なんて、うそでした。【爆発】」
「ぐあっ!?」
視覚を潰されたと思われたイリスだが、それは真っ赤なウソ。
そうと知らずにシールドバッシュを決めに行ったタルドはその爆発に吹き飛ばされる。
「ぐっ、あっぶねぇ。とっさに盾で身体を隠さなかったら、ヤバかった」
「ん、死んでない……?」
「やっぱり殺すつもりだったなコノヤロウ!」
「ん、わたしはおんな」
「そういうことを言ってんじゃねぇ!」
とっさの判断で身を守ったタルドは生きていた。
余裕が無いのにも関わらずイリスの言葉にツッコミを入れているあたり──
「──なるほど、芸人魂か」
「誰が芸人だ!」
──そう言った瞬間、背筋に悪寒が走る。
それは今まで『冒険者』をしてきた中で何度も助けられた『直感』。
その『直感』によって感じる、明確な【死】の気配。
──それを感じた瞬間、反射的に横に飛んでいた。
そこを、尋常ではない魔力が地面を抉りながら通り過ぎた。
そしてその奥の壁に当たり、大爆発を引き起こす。
「なっ!?いったい何が……」
「ふ、ふふふ……」
戸惑うタルドの耳に、誰かの嗤う声が聞こえる。
そちらを向けば、今まで戦っていた相手ではあるものの、明らかに雰囲気が違っている人物。
「……あ、少しヤベェかもな。イリスのやつ、『魔王モード』になりやがった。あのタルドってヤツ、死ななきゃいいが……」
零刀のそのセリフにぎょっとする受付嬢だが、その間にも『試験』は続いていく。
「ふふふ、あはははは……ここまで粘るヒトは、久しぶり……もう少し、本気出しても、よさげ、かな!」
「っ!【身体強化】!」
イリスの視線に何かを感じ取ったタルドは、再度横っ飛びに見えない何かを避ける。
そして先程まで居た場所を振り返ってゾッとする。
(【石化】してやがる!?コイツ、『魔眼』持ちか!……本気で、行くか)
そう判断したタルドは腰に付けてあった袋から|もうひとつ盾を取り出した(・・・・・・・・・・・・)。
「──【魔法眼】、『並列展開』【属性魔槍】!」
「なんじゃ、こりゃあ……」
タルドを覆うように、ドーム状に色とりどりの【魔法陣】が展開されていく。
──そこから、様々な【属性】が象る槍が数多放たれた。
「マジかよ、これはさすがに、シャレにならんぞ……」
そう言いつつも身を低くすると、左右の盾に【光】を纏わせる。
「──【光盾乱舞】」!
迫り来る【土槍】を盾で受け流し、迫っていた【水槍】にぶつけて相殺し、【光槍】を受け流して【闇槍】にぶつけ、さらに迫る【水槍】を受け流して【火槍】にぶつけて【風槍】を受け流して【土槍】にぶち当てる。
【光】を纏った盾を縦横無尽に動かして次々に流し、時に防いでいく姿は正しく【演舞】の様でもあった。
「うぉぉおおおおお!」
しかし、この量の攻撃全てに対応するのは難しいようで少しずつダメージを受けていくが、雄叫びを上げながら盾を扱い少しずつドーム状の【魔法陣】に近づいて行く。
そして──
「っ!らぁああ!」
──気合いのこもった声とともに、その【魔法陣】から抜け出した。
その視線の先には、イリスの姿。
(くっ、今までの動き、確実に限界を超えて動いていた……だからこそ、ここで止まったら、動けなくなる!)
一瞬でその思考を巡らせたタルドは最後のチカラを振り絞って【身体強化】を施し、【魔法】を構築する。
「──【光盾一閃】!」
盾の周りに【光】の刃が現れたかと思えばタルドの姿が消え、次の瞬間にはイリスの目の前にあった。
(これで、どうだ──!)
そうして振るわれた盾の刃であったが、そこに感触は無かった。
「──ッ!」
そして、背後に『魔力』の反応。
そこへと振り返れば、上下逆さまになったイリスと、その目の前に展開されている【魔法陣】──
「くふ、うふふふふ、あはははははははっ!これで、終わり!」
──そこに込められている『魔力量』は、先程の比では無い。
「──っ!そこまで!『選定試験』は終了、直ちに攻撃を止めてください!」
「──吹き飛ばせ……!【魔砲】!」
制止の声をかけるが、それも空しく攻撃は放たれた。
「これは、まず──ぎゃぁぁぁあああああああ!!?」
「……死んだか」
「死にましたかね?いや、死んでもおかしくない攻撃でしたが……」
──タルドは、魔力の砲撃に呑まれてしまった。
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『選定試験』結果報告書。
『イリス』 『C』ランクへアップ。
【備考】
『A』ランク【光盾】、タルドを圧倒。
実力的には『A』、ひいては『S』ランクを上回る可能性あり。
いくつもの『魔眼』を扱っている可能性あり。
『レイト』 ランクの変動無し。
【備考】
『A』ランク【光盾】、タルドが戦闘不能となってしまったので彼の『選定試験』は延期。
そのため実力を測ることは難しいが、重傷であっても治してしまうポーションを作れる可能性あり。
そのポーションを使って瀕死のタルドを助けたはいいがそのまま自分の『選定試験』をやらせようとした。
さすがにそれは公正な判断ができなくなるということで納得してもらったが……とりあえず色々とやばそうである。
彼の戦闘を見たという『冒険者』パーティーから聞いた限りではかなりの実力が伺える。




