零刀、捕まる
新章スタートです。
章名に関しては暫しお待ちを
「今日はラッキーだったな」
「そうっすね。何せ疲弊した帝国軍の部隊を丸ごとですからね。財宝は無くとも武器やら防具やらで売っても儲け、使っても戦力増強っすからね!」
「こんな日にはパーっとやるか!」
「おお!」
そんな楽しげな彼らに、忍び寄る影があった。
「なァ、楽しそうだな。俺も混ぜてくれよ」
「なっ!?コイツ、どっから入ってきやがった!?」
「『気配察知』に引っ掛からなかっただと!?」
それぞれが驚愕の反応を示す中、灰髪の少年は、笑みを浮かべ──
「とりあえず、金目のモノ全部出せや」
「「「ぎゃあああああああ!!」」」
──洞窟内に、絶叫が響き渡った。
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「零刀、殺したの?」
「ん、まあな。盗賊は生死問わず、だろ?」
「ん、さすが」
「……何がさすがなのかは突っ込まないが……とりあえず地図を見つけた。これいわく、ここからすぐの街道を道なりに行けば着けるみたいだな」
「どっち?」
「あっち」
「ん、見てみる……【千里眼】……あった」
零刀が指さした方を見つめると、すぐに返事が返ってきた。
「早いな。それに便利だ。俺にも使えたりしねぇかな?」
「ん、無理。それにそうなったら、わたしの出番が無くなる」
その言葉に、零刀はそれ以上何も言えなくなる。
「……少しは励ましてくれても、いいと思う」
「なんか、スマン……」
「謝られても、困る……それに、わたしはわたしの使えるものを、使うだけ。……それより、跳ぶ?」
「ああ、頼む」
「ん、手……【千里眼】、【転移眼】」
イリスの言う通りに手を握ると光に包まれた。
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「ん、到着」
「おう、ご苦労さん。少し並んではいるが、進みからしてすぐ入れそうだな」
──十分後。
「次の方ー」
「出番か……それにしてもこうして手続きをして街に入るのは初めてだな。ちなみにだがイリス、お前やり方わかるか?」
「ん、知らない」
「おい、どうしたそこの二人。早く『ステータスプレート』を出せ」
「『ステータスプレート』?わたし、持って無い」
「無いのか?まあ、同行者の身分さえハッキリしてれば『組合』で作れるからな」
「ん?ああ、『ステータスプレート』か。ちょっと待て、確かここら辺に……あったあった。ほら」
「おう、確かに」
そうして受け取った『ステータスプレート』を何かの機会に入れる。
(……『解析』)
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検問機
『ステータスプレート』を入れることによって、特定の『称号』を検知した時に反応する『魔道具』。
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(便利なモンだな……それにしても反応する『称号』か。【盗賊】とか【殺人鬼】とかか……ん?そういや俺の『称号』っていやぁ……)
そこまで思い至ったところでビィー!ビィー!、とけたたましくサイレンが鳴り響いた。
「なっ!この警報、『最大警戒レベル』だと!?貴様!今まで一体何をして生きて来た!!?」
「いや、必死に生きてきたらこうなったというか……」
「とりあえず、こっちに来てもらうぞ!そこのキミもだ!」
「まあ、さすがにこれはどうしようも無いな」
「……殺す?」
「やめろ、街に入れなくなるだろうが」
「来るやつ全部、殺せば一緒」
「お前な……目指せ『魔王』てか?シャレにならねぇわ」
「むしろ、『魔王』はわた──」
「──イリス、しばらくの間黙ってろ。それはさすがにシャレにならん」
零刀が慌ててイリスの口を押さえるが、幸いな事に周りには聞こえていなかったらしい。
「どうした、早く来い!」
なかなか動かない二人に衛兵が怒鳴る。
さらによく見てみるとその奥からも大量の衛兵が来ているようだ。
「はーい、ゴメンなさーい。今から行くので手荒なマネはご容赦をー」
棒読みで言いながら渋々ではあるが、詰所の中に入っていくのであった。
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「とりあえず『鑑定師』の人に来てもらうからそこでしばし待て──と、もう来たのか、早いな」
一室に通された二人に、連れて来た衛兵がそう言うと同時、扉が強く開け放たれた。
「──『最大警戒レベル』が現れたと聞いて!それでそのどちらが?」
「ああ、男の方だが……一応事情があるかも知れないんだから失礼の無いようにな」
「で?アナタはどんなコトをしたのかな?アナタはどんな『称号』持ちかな?【殺人鬼】?【殺戮者】?それとももっとヤバいやつかな?【同族喰らい】とか?」
「おい、何だコイツは」
「『鑑定』をLv10まで修めた【第一級鑑定師】の資格を持つすごいヤツなんだがな……ご覧の通りアタマのオカシなヤツだな。ちなみに『錬成師組合』のとこの奴だ。そこにいるヤツも例に漏れずだが──」
「ねぇねぇ、そんなことよりも仕事を始めるけどさ、とりあえずキミの『職業』から聞いてもいいかな?」
「──『錬成師』だが?」
「おお!『錬成師』!一緒だね!これはもしや、期待してもいい感じかな?ということで『鑑定』させて頂きまーす!『鑑定』!」
そうして──
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レーネ Lv80 Age19 女
種族:人間
職業:練成師
称号:【錬成師組合】【変人】【一級鑑定師】
〈固有技能〉:真偽の魔眼
〈技能〉: 錬成Lv6 鑑定Lv10 魔道具作成Lv6 看破Lv8
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「あ、アレ?」
(ふむ、簡易表示の方がぱっと見でわかり易いな。それにしてもコイツ、『魔眼』持ちか。注意が必要だな)
──零刀の視界には、目の前の【鑑定師】の『ステータス』が表示されていた。
もちろん、『深淵』の効果である。
「……なんか全部【不明】表記何ですけど。なにコレ?『看破』、『看破』!……あの、見れないんですけど……」
「参ったな。それだと解放できないぞ……」
「……ああ、悪い。【不明】外すの忘れてたな。とりあえず『称号』だけでいいか?」
「……隠してもわかりますからね?」
「いや、さすがにそんな『魔眼』持ち相手にウソはつかねぇよ。ほら」
「私、『魔眼』持ちだなんて言った覚え無いんですけどね……『鑑定』って、ハァ?」
「お、おい!どうした!一体何が見えたって言うんだ!?」
俯き、小刻みに震え始めた彼女を見て、衛兵が異常を感じて声をかける。
「……零刀、何かした?」
「何もしてないハズだが……」
「内容が内容だったから、恐怖?」
「あー、それは考えてなかったわ」
「お前ら一体これまで何してきたんだ!?」
二人の会話を聞いた衛兵が顔を青くしながら問いかけると、レーネはスクっと立ち上がり──
「──ここに、いた。我らが目指す、神の業すら成すという領域へ、至ったモノが!」
そう叫びながら、拳を天目掛け高く突き上げる。
「神の領域にすら足を踏み入れる【禁忌】に始まり、【喰らう者】【適応者】。これらは『ヒトの魂は本来不完全なものである。ならば他者の持つ足りない部分を継ぎ足せば完全に到れるのではないだろうか』という思想に近いもので、他者を喰らう事で自分の魂を補完し、適応していくというものであろう!?恐らくだか【不明】【外道】もそれによって本来の『人間』という『道』からハズレたが故のモノだろう。【至りし者】【死の否定者】【再生】なんてモノからしても『死者蘇生』の【禁忌】でも行なったのかねぇ!?これらは全て私の推測に過ぎないが、どうだろうか!!!」
「「「……は?」」」
レーネ以外の全員が、声を揃えた。
「というわけでちょっと調べさせて貰えないかねぇ。大丈夫、法律のギリギリを攻めるのは得意なんだ」
「おい、何を根拠に……って、近い近い近い!寄るな手をわきわきと動かすなにじり寄るな触ろうとするな来るな!」
「いいじゃないかちょっとくらい。ねぇ?ぐふふ」
「おい、衛兵!コイツはいったい何なんだ!?」
さすがの零刀もこの異常事態に、衛兵に叫ぶ。
「ああ、これはさっきの話の続きになるんだがな。『錬成師組合』ってのは【変人】の集まりってので有名でな?こういうヤツが多いんだ」
「なんだそれ!ってか、助けろ!衛兵だろ!」
「昔からよく言うだろう?『レベルの高い変態ほど手に負えない』とな」
「クソっ、ふざっけんなぁああ!」
【変態】に襲われる『危険人物』に、この時ばかりは同情する衛兵であった。
教訓
変態は手に負えない




