勇者side:迷宮都市襲撃
【我が道】8月初めの投稿です。
向こうと比べて文字数が増えてしまいました。
オムライスが食べたい今日この頃。
それでは、どうぞ。
──迷宮都市『オルデール』
それは、彼らが百層をクリアした後、零刀が生存していたことの証明が成された頃のことであった。
「主人、『たこ焼き』って無いかな?『オムライス』でも良いんだけど」
「んだそれ?知らねぇ名前だな」
「そうか……どうしたものか……自分で作るにしてもあのふわふわは難しいんだよな……」
そんな平和な日常が送られる街で
「ねーねー、あれなにー?」
子供が空に向けて指を指した。
「アレは……魔物?い、いや、違う、アレは──」
その異様な反応を見た周囲の人々は、その視線の先を見る。
そこには翼を生やした紫の肌を持つ──
「我らは誇り高く、空を支配する魔族、『翼族』。此度、この街を落としに来た」
「ま、魔族が出たぞぉお!!」
──その声が響くとともに街に火が放たれ、たちまち混乱に包まれた。
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「いったい、何が……」
「惚けてる場合じゃねぇだろ!」
飛来した【炎球】を拳で打ち払いながら、立ち尽くしていた冒険者と思われる人物に怒鳴る。
「お前冒険者だろ!?こんなところでボサッとしてねぇで『協会』に行きやがれ!もう収集が始まってる頃だ!戦えねぇならそれなりの仕事があるハズだ!早く行け!」
「は、はいっ!ご武運を!」
少年の怒りの混じった声に驚きつつもその言葉に従い、駆けていく。
「……ハァ、ったく。何で唐突に襲撃されてんだ?」
ため息を吐きながらそう言って辺りを見回す。
「チッ、他のメンツとはぐれちまったのがちとキツいか?」
目を、開く。
その先は、魔族。
「勇者も、増してはアイツも居ねぇんだ。俺が、どうにかするしかねぇか。無理に倒す必要は無ぇ。最悪、光輝どもが戻って来るまで持ち応えればいい──」
そう言って拳を握りしめる。
「──だが、倒してしまっても構わないわけだ」
そう言って左掌に、右拳を打ち付ける。
(今の俺にできるのは、これくらいだ。それに何より、コイツらをぶっ殺せば少しは強くなれんだろ!)
「ああ?なんだコイツ?一人か?」
「なんだよ、一人だけかよ。期待外れだな」
その魔族へと、鋭い視線を向ける。
「行くぞ、誰の為じゃねぇ。赤坂の名において、俺が、強くなるためにも──オラァァアアア!!」
──目の前の障害──襲撃している魔族目掛けて、赤坂 寛人は駆け出した。
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──この魔族の襲撃における被害は、そこまで拡がっていなかった。
それの理由としては異世界から召喚された人物が活躍していたことが大きな理由として挙げられる。
しかし、王都に留まっていた者も居り、そこそこの数しかいない【異世界人】が魔族の猛攻を全て防げるわけも無く、次第に被害は拡がっていった。
「くっ、コイツら!強い!」
「マズッ、一体抜けた!」
一体の翼魔族が前衛を抜け、後衛の少女へ向かう。
「へっ、地を這うことくらいしかできねぇ劣等種に俺様が止められるかよ!」
「えっ、キャァァアア!」
私は振り下ろされた剣を見て思わず悲鳴を上げ目を閉じてしまう。
「──じゃあ、その自慢の翼が無くなったら、どうなるのかな」
そんな声が聞こえ、肉を断つ音が聞こえ、続けてカエルの潰れたような声が聞こえる。
「えっ?」
私が恐る恐る目を開けると──
「良かった、間に合ったね」
──光り輝く剣を持った、『勇者』がいた。
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(どうにか、間に待ったか)
一つ、脅威を退けられたことに安心し、息を吐く。
「光輝、間に合ったみたいだな」
「僕はこのまま殲滅に向かいますが……アドルフさんはどうされますか?」
後ろから追いついてきたアドルフに光輝が問う。
「ああ、俺は駐屯兵の指揮に当たるから少し離れることになるが……大丈夫か?」
「ええ。じゃあ、僕はこのまま──」
「光輝、少し待って。やるなら私たちでやろう。さすがに一人は無理だよ」
光輝がそのまま行こうとするのを引き止めて言う。
「……でも、それだと負傷者たちが」
「──それで、目先の全てを助けようとして、被害を広げるの?あの時みたいに?」
鈴が冷たく、そう言い放った。
「え?それって、どういう──」
「鈴!」
隆静が怒鳴り気味に鈴の名を呼ぶ。
「今その事を言ってもどうしようも無いだろ!それに光輝もだ。もし少しでも多くの命が救いたいなら、この被害が広がる前にさっさと終わらせて救出でも何でもすればいい!とにかく目の前の問題を先に片付けろ!!一人で何でもできると思うな!!」
「……わかった。さすがに目の前の問題を放っておくわけにはいかないからね」
「悪いけど、私は他の支援に行くから」
光輝が納得したのを見て、りあがそう言った。
「え、でも……」
「さすがにこれ以上、無駄に前衛は要らないでしょ。それに、さっきの光輝じゃ無いけど他の場所もヤバいことには変わりないしね」
そう言ってりあはその場を離れる。
「……りあが居なくなったが、アイツの言う通りだ。俺達でどうにかするぞ」
その声に応じて、各々が武器を構える。
「──平穏を乱す『悪』は、僕が許さない!行くよ、みんな!」
光輝の号令と共に、駆け出した。
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「くっ、オラァァアアア!」
また一人、魔族を殴り飛ばす。
それを追いかけて追撃しようとするが他の魔族がそれを許さず、足を止めた俺らを後衛の魔族が【魔法】で狙い撃ちする。
「チッ!【魔纏外装・炎風】!!」
『魔装』によって作られた魔力の篭手に【炎】と【風】を纏わせ、飛来した【魔法】を拳で打ち払う。
「ハァ、ハァ、ハァッ……」
(クソっ、決めきれねぇか!)
──一体それが、何度繰り返されただろうか。
決定的な決めてが無く、また多少ダメージを入れたとしても後ろに引かれ、回復されては意味が無い。
それどころか、無理に深追いすれば、逆にこちらが痛手を負ってしまうという状況だ。
だからこそ、深追いはせず被害を最小限にしているが故に決めてが無く拮抗した状態が続いているのだが──
(このままじゃ、確実にこっちが負けるな)
俺はそう理解していた。
少し考えれば当然のことではあるが相手は集団での戦闘に慣れている者達だ。
それに対し俺一人で、消耗を減らしながら戦ったところで向こうは【回復】までできるのだ。
勝てるハズも無い。
「とはいえ、向こうも戦術とまでは行かず、個々の得意に合わせた動きしかしてねぇのが救いか」
魔族は総じて、個々の『ステータス』が『人間』より高い。
故に戦術を組むという習慣そのものが薄いのだろう。
(だが、それもまた俺らが負ける可能性を高めている一つの要素だ。なにか、なにかこの状況をひっくり返す手は──)
「──ッ!?【魔纏外装】!」
飛来した【魔法】を先ほどのように打ち払った。
──瞬間、あまりの倦怠感と脱力感に、思わず膝を着いてしまった。
「マズッ、『魔力枯渇』か!こんな時に──」
「散々手こずらせやがって……やっと魔力切れか。ま、俺ら相手にこれだけ持ったんだ。ククク……せいぜい誇って死んでいくんだな!」
とうとう膝も崩れ横倒しになり、動けなくなった俺に魔族が歩み寄り、笑みを浮かべながら剣を振り下ろす。
(もう、ダメか──)
これまでのダメージが蓄積されていたのか、視界も霞み始め──
ドゴンッ!という轟音と共に衝撃が地面を伝わってくる。
「──ここまで良く持たせたな」
(この魔族、死んでる?それに、女の声……増援、か?誰か……間にあったのか……)
「それにしてもお前、なかなかに面白い戦い方してたな。今になってこれが使えるとはな……お陰で一昔前に戻った気分だ。まあ、とりあえずお前はそこでゆっくりしていろ」
顔だけでも確認しようと無理をして視線を上げるが、視界の端に木製の手甲が入るだけだ。
(いや、木製の手甲?どっかで、聞いたことが──)
そんなことを考えるが、それ以上思考が回らない。
「──さて、気分もノッてる事だし、最近何かとストレスが溜まっててな……さあ、戦争を始めようか!!」
意識が遠のいていく中、そんな声が聞こえた気がした。
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「くっ、はぁ!」
【風】を纏った剣が、魔族を切り裂く。
(くっ、まさかこんな所に逃げ遅れている人がいるだなんて!)
そう言って、腰を抜かして座り込んでしまっている方へと一瞬視線を向ける。
(動けそうにない、か。さすがにここを守りながらだとキツいか──)
視線を前に戻すと、魔族の向こう側から歩いてくる、黒ローブの人影が目に入る。
(まさか、まだ逃げ残りが!?)
「あ?んだよ、こんな所にもいるじゃねぇか」
魔族もそれに気が付き、襲いかかる。
「危ない!」
自分も駆け出すが、距離から考えても自分より先に魔族の方がたどり着いてしまう。
(ダメっ!間に合わな──)
瞬間、襲いかかった魔族の首が飛んだ。
「──へ?」
(見えなかった?小さい頃から剣術をやっていて、動体視力に自信のある私が──?)
「うん、やっぱりだ。聞きたいことがあるんだけど……」
「なんだコイツ!」
「やっちまえ!」
「……コイツらがいると落ち着いて話もできやしないか」
瞬間、また首が飛んだ。
(手すら動かしていなかった……)
ここまでくるともう、わけがわからない。
「これでよし、聞きたいことがあるんだけど……フワフワなオムライスの作り方ってわかるかな?」
「……へ?」
私は耳を疑った。
どうしてそんなことを、この状態で聞くのだろうか?
「あれ、聞こえなかった?フワフワなオムライスの──」
「聞こえてます!聞こえてますから……でも、私は料理をしないので……ごめんなさい」
「んー、そっか。どうしたものか……この世界の『世界の記録』にも記載されて無いしな……」
「あの、なんかごめんなさい。それと、助かりました」
「ん?ああ、良いよ気にしないで。僕は知りたいことがあって、そのために動いただけに過ぎないから」
そう言って、去っていく。
「……はぁ、せっかくだし色んなものに挑戦してみるかな」
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「【飛翔魔穿】!」
「ぐぁ!?」
隆静の刺突が空を駆け、一人の翼魔族を穿ち、落とす。
それに続いて土の円錐が撃ち抜き、【炎球】が燃やす。
「チッ、この距離だとさすがに魔力がキツいな。悪いが俺はここで打ち止めだな。ここからは後衛の守護に徹する」
「了解」
「ハァ、俺も空を飛べれば良かったんだが……」
「普通に考えて飛べる方が少ないんじゃないか──な!」
再び撃ち飛ばされた土の円錐を目で追いながら、光輝を視界に入れる。
──そこには【光盾】を次々に生み出してそれを足場にしながら空中を移動し、魔族を切り殺していく光輝の姿があった。
『勇者』である光輝の『ステータス』は『限界突破』を使った反動で落ちていたが、それも時間が経つにつれ元の数値を取り戻し始めている。
さらに空中に足場を作って移動しているため翼による飛行とは異なり小回りがきく上、急激な方向転換も可能である。
故に『空を飛べる』というアドバンテージを生かせない上に機動力で負けている翼魔族に勝てる要素などほとんど無いのだ。
「クソっ!何なんだお前は!?お前の様な戦力がいるなど聞いていないぞ!一体何者なんだ!?」
「お前ら悪を滅する、【光の勇者】だ!」
指揮官を除いた最後の魔族を切り伏せながら、問いかけにそう答えた。
「『勇者』、だと……?くっ、仕方ない。いざと言うときにと言われていたが……今がその時だな」
そう言って懐から紫色の球体を取り出す。
「……『鑑定』」
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瘴気の丸薬
瘴気を特殊な製法で球体にし、食べた者へと一時的にではあるが壮絶なチカラをもたらす。
副作用として使用後は激痛に加え、死に至る。
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「な、待て!それは──」
光輝が何かを言う前に、それを魔族は口にした。
瞬間、魔族から紫色のモヤが溢れ出る。
「ああ、チカラが漲ってくる……!!くくっ、くははは!!」
「ハァ!」
何かをする前に魔族に切りかかるが──
「ッ!『聖剣』が通らない!?」
「くははは!その程度か!【闇弾】ォ!」
魔族の放った【闇弾】は一つだけではなく、光輝はそれを見て慌てて距離を取る。
「くくく、まだだ、まだまだまだぁ!【闇弾】!」
【闇弾】を躱しながら距離を詰めようとするが、次第に【闇弾】の密度が増し、傍から見る人が見れば弾幕ゲームのようになっている。
(くっ、近づけない!どうすれば──)
「光輝!」
思考を巡らせる中、後方の地面から聞こえてきた声に、少し振り返る。
そこには鎧を脱ぎ捨て、盾だけを持った隆静の姿があり──
「行くよっ!【豪振撃】!」
──隆静が打ち飛ばされてきた。
「なっ!?」
「光輝!俺に続け!【金剛体】!」
そのままの勢いで光輝を通り過ぎ、魔族へと飛んでいく隆静を光輝が追いかける。
「ウォォォォォオオオオオオオオ!!」
「空も飛べぬ下等種族が!我らが土俵に上がってくるな!【闇球】!」
「オラァァァアアア!」
両者がぶつかり合い、隆静が撃ち落とされる。
だが──
「相殺、できた……光輝!決めろ!」
「──『限界突破』、『我は闇を斬り悪を断つ』、【光煌一閃】!」
「グッ……ぐぁぁぁあああああ!!」
──その光は紫色モヤすら断ち切り、魔族を切り裂いた。
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「ふむ、『聖剣』対策の切り札まで使ったのにも関わらずそれを切り裂く……か。まだまだ改良の余地ありだな」
戦地の様子を観ていた男はそう言いながら、玉座の背もたれに寄りかかる。
「──それにしても、こちらの計画はまずまず、問題は無い、か。それよりモード、あの羽虫共の計画の方はとうなっている?」
先ほど声を掛けた執事──モードにそう問いかける。
「順調に」
「そうか。なら我は部屋に戻る。細かいことは任せた」
「御意に。──魔王陛下」
男はそれを聞き、背を向けて自室へと戻って行く。
そこに残された執事──モードはただ独り、眼に剣呑な光を宿していた。
【戦いたい】を読んでいる方はわかる人もいるのでは……そろそろ零刀sideに戻りますかね。




