そして彼は事実を知り、神を殴ることを決意する。
長いです。
話名は読めばわかります。
少し遅れちゃいましたが、どうぞ
「さて、そろそろ行くか」
「……でも、【魔法陣】とか出てないよ?」
しばらくの間ここにいたが、それらしきものは出てきていない。
見回しても階段すら無いので、奥に進む道自体がないということになる。
「ああ、こういう時は大体、どこかしらに隠し通路でもあるモンなんだよ」
「じゃあ、探さないと──」
「ああ、面倒だから一気にやるわ」
「……どうやって?」
「イリス、しゃがんでろよ?こうやって──だ!」
【黒炎】が辺りの壁へとぶつかり、轟音を響かせる。
【黒炎】を纏わせた『黒剣』を横薙ぎに振るい、自分を中心とした円を描き斬撃を飛ばしたのだ。
「──っと、あったな」
零刀の視線の先には、土煙の少し晴れたところに通路のようなものがあった。
「……すこし焦げた」
「……お前、【障壁】張ってただろうが。そもそも【破壊】の『性質』でできた【黒炎】じゃあ焦げねぇっての」
そんな会話をしながら、通路へ向けて歩いていった。
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「何もなさすぎだろ……」
「同意」
二人ともげんなりしながら、未だ代わり映えしない通路を歩いていた。
「長い、つまらない、飽きた」
「あのなぁ、テーマパークの待ち時間じゃあねぇんだから……」
周囲に変化がある分、テーマパークの行列の方がマシではあるだろうが……
「恐らく、これを作ったヤツは、性格が最悪か、もしくは何も考えていないバカ」
「まあ、そうなんじゃねぇの?」
「零刀、もうめんどくさいから【壊離】して」
「いいのか?お前が風情が……とか言ってたのに……いや、うん分かってる。本気で飽きたんだなお前……【壊離】と。ほれ」
そんなこんなで、ラスト感のある長い──というか長すぎる通路は終わりを告げるのであった。
「──と、着いたか。【壊離】使えば一瞬なんだがそれまでの道がな……」
「……ん、さすがに、ここまで長いとは思ってなかった」
零刀のジト目にイリスは目をそらしながら答える。
『良く、ここまで──』
「さて、どうする?ここを散策する前に腹ごしらえでもするか?」
『いくつもの試練を乗り越え──』
「ん、軽く肉串くらいでいいんじゃない?それなら食べながら移動できるし……」
「それもそうだな。ほれ」
「ん、ありがと」
『ここに至ったことを──って、アレ?聞こえていないの?』
「しかし、何も無いな……」
「財宝も無い……ここまで来て何も無いとか……やっぱり製作者は性格最悪」
『ねぇ!ちょっと!製作者ここにいるって!ねぇ!ホントに聞こえてないの!?』
部屋のど真ん中にある紫色の水晶と、脳内に響く声を無視しながら好き勝手にいう。
「……ん、で、アレ何?」
そう言ってまるで今気がついたかのように指を指す。
『はぁ、やっと気がついた──』
「こら、指を指してはいけません」
『なっ!?』
「……どうして?」
「ああいうのはめんどくさいって相場が決まってる」
零刀がバッサリと切って捨てる。
「わたし、めんどくさかった?」
「お前の時のことか?……逆に聞くが、お前はめんどくさくなかったとでも思っているのか?」
「……ごめんなさい。めんどくさかったです」
「わかればいい。じゃあ、アレは──」
「「めんどくさい」」
『ちょっと!全部聞こえてるんですけど!って言うかこっちの声聞こえてて無視してるでしょ!あ!今笑った!ニヤってした!』
紫色の水晶の中にいる金髪少女が騒ぎ立てる。
「まあ、それはそうとして……脳内に響く声に突っ込みたいところでもあるんだが……それよりも、だ。もし、アレが俺の予想通りならば、やらなくちゃいけねぇことがあるんだがな。イリス、アイツ【鑑定眼】で見て、何が見える?」
──少しの間を置いて、イリスはこう言った。
「『光神』だって」
瞬間、零刀の姿が消える。
「オラァァアアア!死に晒せェ!クソ女神がァァァアアアアア!【破拳】ッ!」
ドゴォォォォオオオオオン!!
到底拳では鳴らないような轟音が鳴り響く。
「ギャァァアアアアア!!ちょっ、何よ突然!今まで無視してたくせに!私が『光神』だってわかった瞬間に殴りかかってきて!普通わかったら少しは敬うものでしょ!?」
「知るかボケェ!テメェを恨むことはあっても、敬う要素なんてねェんだよ!それに会ったらぶん殴るって決めてたんだよ──【瘴打】ァ!」
「ちょっ、まっ、【破壊】と【死】の『性質』を打ち込んでくるとか『紫水晶』が無かったら死んでるわよ!!」
そう、零刀が殴りかかったのは
零刀達をこの世界に喚んだとされている『光神』だったのだ。
「零刀……わたしも聞きたいことがあるから、そこら辺で……」
「チッ、仕方ねぇな。まあ、俺も聞きたいことはいくつもある」
イリスが零刀を沈め、次第に空気が落ち着いていく。
「はぁー、どこの誰かは知らないけど助かったわ──って、魔王の娘!?」
「ちがう、今は『魔王』。それよりも、それを知ってるってことは……」
「……どうやら、厄介なことになってそうね。もう一度いうけど、私は『光神』──」
「『リルムスフィア』だろ?知ってる」
「──へ?いや、ちょっと待って……なんで『真名』の方を知ってるの?」
「いや、見ればわかる──なあ、イリス」
「ん、見れた」
「『鑑定系統』の『技能』は【上位存在】には効かないはずなんだけど……それかよほど『見る事』に特化してる存在くらいか……あぁ、もう!とりあえず私が二人を見ればわかる話か!」
(あ、これ見られる流れか……)
「ふむふむ、ああ、ホントに『魔王』なのね。それでもって【魔眼の王】。『見る事』に特化してるわけだ。で、そっちの少年は────へ?はぁ?」
零刀の方へと視線を向けると首を傾げ、変な声を上げた。
「……いや、『称号』以外の表記が【不明】って何よ……『光を司る』──暗きに光灯し、光差す全てを見通す私が見れないなんて……訳がわからないわ」
そんなことを言われている零刀本人は──
「おっ!イリス、俺も見れたぞ。そら」
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リルムスフィア LV Age ?????
種族:神格光精霊〔【属性神:光】〕
称号:【光を司るモノ】【光神】【見通すモノ】【神格所有者】
〈権能〉:光ヲ我ガ手二我ハ光ナリ
〈固有技能〉: 神託
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「ん、ホントだ……『ステータス』の数値は出てないけど……あれ?この『権能』?って表記、わたしが見た時には、無かった。初めて見る」
「数値が無いのはリルムスフィアが見ようとしなかったからだろうが……『権能』についてはわからんな。てか、俺の『ステータス』を見た時に見てないのか?」
「────って、勝手にヒトの『ステータス』を見るなぁぁあああ!あと!勝手に他人に見せるなぁ!てかなんで見れてるの!?」
「いや、お前が見たからだろ?」
「訳がわからないんですけど!」
「【深淵】の効果だ」
「いや、分からないって!この【外道】!」
「ああ、知ってる。それよりも、だ。なぜイリスには『権能』が見えなかったんだ?」
「──それが見れるってことは、あなたも?」
「ああ……だが、その言い方だと『権能』の所有者にしか見えないってことか?と言うより、他に何を知っている?」
「そうよ。でも、『権能』の取得条件もわからないし、チカラもその【存在】それぞれ。わかることと言えばそれを行使する権利があるってことだけ。それ以外は私も知らないわ」
「……そうか。ああ、じゃあもう一つ聞きたいことがあったんだ。いや、本来こっちが目的だ。──【勇者召喚】を行なわせたのは『光神』リルムスフィア。テメェじゃあねぇな?」
今までのふざけた雰囲気が嘘だったかのように、真面目な声音で話しかける。
「……そうね。私が召喚したわけじゃあ無いけど……元々は私のところにあった物ね。でも、どうしてそんなことを……?」
「ああ!?、んなもん俺も呼ばれたうちの一人だからに決まってんだろ?」
「……えっ?…………ま、またまたご冗談を……あなたみたいなよく分からない存在が喚ばれるなんてこと……………………マジで?」
それに対してコクリと頷く。
「いや、でもあなた【異世界人】の『称号』無くない?」
「ああ、それ失くした」
「失くした!?」
「てか、もう人間辞めたしな」
「人間辞めた!?何があったらそうなるのよ……」
「まあ、きっかけは確実にこの世界に喚ばれたからだろうな。まあ、さらに言えば一緒に来たヤツのせいでもあるし、何よりも俺が弱かったせいってのもある」
その言葉を聞いて、リムは申し訳なさを感じる。
「そんな……でも、どうして……まあ、いいわ。でも、その話をするためにはまずこうなった要因まで話さなくてはならないの。多分、魔王っ娘が聞きたいことも関係するから……その後でいいかしら」
「……了解。……ここから回想?」
「イリス、そういうことは思っていても言っていいことじゃあねぇからな?」
「……ほんとにやりにくいわね……まあ、いいわ。これは五千年ほど前の話──」
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──今から五千年ほど前、セカイには金髪美少女女神の──えっ?そういうのは要らないって?…………いや、わかった、わかったから!その物騒な炎纏わせて殴りつけるのはやめて!……私、『光神』と『闇神』がいました。
二柱の神はどちらも元は『精霊』で、類希なる能力を買われ『神格』を与えられ神になりました。
──今度は何?与えられたってことは上の神がいるのかって?それは後でてくるから少し待ってて!
で、【属性神】になったものの特にこれといった仕事があるわけでもなかったのですが、『世界が危機に瀕した時に使うように』と【勇者召喚】の【魔法陣】を貰い受けました。それ以外に変わったことは無く二人とも【精霊王】なんてのもやってたので、そこそこ忙しい生活を送っていました。
そしてしばらくの間は平和にやっていたのですが、ある日平和だったハズの『人間』と『魔族』が戦争を始めました。
そして精霊達が暮らしていた森にまで戦火は広がり始め、流石に黙っていられなくなった二柱の神は戦争に介入しようとしました。
しかし、そこに邪魔をする者がいました。
そのモノは自分を【邪神】と名乗り、自らがこの戦争を引き起こしたと言いました。
そしてそれに気がついていた【魔王】と共にその【邪神】と戦いました。
しかし、【邪神】は『瘴気』を扱い、私の達は捕らわれてしまいました。
そしてその時に【勇者召喚】の【魔法陣】を奪われてしまったのです。
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「って感じかしら。恐らく今回【勇者召喚】をしたのはその【邪神】によるものね」
「でも、どうして、今になって?」
「さあ?【邪神】も【魔王】にやられて満身創痍だったし……そのせいじゃない?」
「【魔王】が、一番強かったのか……」
零刀はそう言いながらイリスをチラリと見る。
「……その『魔王』は、どうなった?」
「ごめんなさい、私が捕らわれた時にはまだ戦ってた……というか最後まで戦っていたのが『魔王』だったのだけれど……その戦いが終わる前に私は捕まってるからわからないの。ただ、あの『魔王』がただやられるなんてことは想像できないけれどね」
「……ん、使えないけど、それが聞ければ、後は私が確認しに行くだけ」
「……それよりも、思ったよりベタだな。テンプレとも言える」
二人が会話する中、零刀が言う。
「なによベタって……」
「いや、元の世界だとそういうのは多かったからな」
もちろん、創作の中の話である。
「多かったって……どんな世界よ…………」
それを知らないリムは勘違いして盛大に頬を引きつらせていたが……
「まあ、それは置いておいて……じゃあ今『光神』を名乗っている存在が怪しいって感じだな」
「ん、わたしもそう思う」
「なら、その【邪神】とやらをぶん殴ればいいわけか。あの悪魔に『龍』の因子を埋めて改造しようとしたのもそいつか」
「……じゃあ、あんなに長い通路を作ったのも、そいつ?」
「その改造悪魔については知らないけど……通路を作ったのは私ね。ドキドキ感があって良かったでしょ?」
「──【破滅の光線】」
「ギャァァアアアアア!!当たらないってわかってても怖いものは怖いのよ!えっ?なんで?ダメだった?」
「……長すぎる」
そんな二人の様子を見ていてふと思う。
「そう言えばここから出るにはどうすればいいんだ?」
「それなら私にまかせなさいっ!」
そう言って胸を張るリム。
「へぇ、その【邪神】とやらにやられて捕まっている残念クソ駄目女神さんがこの状況をどうにかできると?」
「し、辛辣ねぇ……って言うかそこまで言わなくてもいいじゃない!それにそこそこ私は強いのよ?」
そんなことを言うリムへと、二人は生暖かい視線を送る。
「ま、まあ、いいわ。話を戻すわね。私は【光を司るモノ】、故に『光の移動』をも支配できるのならば【転移】させることも可能!」
「……そういうものか?」
「そういうものよ」
「……それなら、便利」
それには疑問を持ちながらも、二人とも素直に感心する。
「でも、その代わりにお願いしたいことがあるの」
「……無理難題でないなら」
「……なら、私の『加護』を受けてくれないかしら?それで、『闇神』を救ってあげて欲しいの」
リムは真面目な声音でそう言った。
「どう、言うこと?」
「恐らく私が『試練の迷宮』に捕らわれているなら、彼女は魔大陸の方の『試練の迷宮』に捕らわれている可能性が高いの。でも、『迷宮』に存在する自分のチカラを利用して縛られているなら一時的にチカラを弱めないと抜け出せないの」
「そのための『光神の加護』ってわけだな?」
零刀の問いかけにリムは頷く。
「いいんじゃねぇの?イリスのこともあるから、戻ってひと段落したら『魔大陸』の方にも行ってみようと思っていたしな」
「そう、なの?」
「ああ?テメェだってなんか気にしてただろ?」
「……気づいてたんだ」
「はあ、とりあえず受けてくれるってことね?」
そんな会話をしている二人を見ながら、リムはため息を吐きながら問うと、肯定が返ってくる。
「じゃあ──『我が光神の名の元において、彼らにチカラを与えん』」
リムの声が脳内に直接聞こえたかと思うと二人の身体が光りに包まれる──
「──は?」
「へっ?」
──瞬間、零刀の身体を黒いモヤが覆った。
『……あ、あれ?』
「あー、すまん。『加護』喰っちまった」
「……あの、『加護』って食べれたっけ?」
「いや、なんかこのままだと身体に定着しなさそうだなぁーって思って……」
「はぁ……もう、訳がわからないわ」
そうして『光神』は考えることを放棄した。
「まあ、無駄にするよりはマシだろ」
「まあ、そうだけど……」
「ならいいだろ」
リムは不満そうな顔をしながらも、それで無理矢理納得する。
「……そう言えば零刀、この水晶をどうにかできないの?」
「あー、多分できるんじゃねぇか?」
「なっ、ならそれを早く──」
「ただ、中身がどうなるかは知らねぇがな」
そう言いながら、手から魔力を放つと「ゴメンナサイ、ヤッパリイイデス」と返ってきた。
「──さて、じゃあ飛ばしてもらってもいいかな?」
「……あ、これ私の『加護』が無いと飛ばせないんだけど」
「大丈夫だ。『加護』はもれなく喰ったからチカラそのモノは俺の中にある」
「ホントに訳がわからないわ……」
「まあ、いいじゃねぇか。【転移】できることには変わりねぇんだからな」
「はいはい、理解できないってことを理解したわ。じゃあ飛ばすわよ」
「あ、少し待て。最後に一つだけ、聞きたいことがあった」
二人の身体が光に包まれる中、零刀が言う。
「最後ね。ならいいわよ」
「──『無属性魔法』って、知ってるか?もちろん、『技能』の話だ」
「……ちょっと待って、それを知ってるってことはあなた……って言うことはあの【黒炎】も……?」
「ああ、知ってるか?」
驚愕しているリムを見ながら、恐らく知っているのだろうと当たりをつけながら問いかける。
「……【属性】という現象の【過程】があることによって引き起こされる【結果】がある。しかし、その【結果】そのものがそこに存在していたとしたら?」
「……まさか」
「……『魔力』には所有者の『本質』が強く現れることがある。それが例えば『情熱』ならば【火属性】が得意だったりすることもあるの。『本質』に関しては『生き方』でもあるからどうこう言うつもりは無いけど、これだけは言っておくわ──」
そう言って、リムは真剣な顔で零刀を見る。
「あなたのソレは、最悪の『肯定』であり、最良の『否定』。使い方次第であなたは『勇者』にでも、それこそ『魔王』にでもなれる」
その言葉に、零刀は──
「俺は『勇者』には成れねぇよ。残念だが『勇者』の席はもう適任で埋まっている。『正義』を持ち【希望】を与えるのはそいつの仕事でいい。だから俺は──俺の『否定』すべき相手に【絶望】を与え、【破壊】し【死】を与える。ただ、それでいい」
笑みを浮かべてそう答えた。
──瞬間、リムは確かに恐怖した。
見通すチカラを持った自分が、知ることのできない、理解することのできない【不明】な目の前の存在に。
「──そう。あなた、『理不尽』ね」
「そうならなけりゃ、生き抜けなかったからな」
「そう。もう終わりかしら?それなら飛ばすわよ」
「ああ。頼んだ」
それを皮切りに、光が増していく──
「──今度会う時はぶん殴るからな」
「ん、その時はわたしも」
そんな言葉を残して、二人は【転移】していった。
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「…………行ったわね」
再び一人きりになった私はそう呟く。
──思った以上に一人の時間が長すぎたせいか、大分話し込んでしまった。
「それよりも、『今度会う時はぶん殴る』、ね。それは私の事を、この檻から出してくれるってことかしら?」
私はひとり、久しぶりに笑みを零す。
──そう言えば、あのレイトという少年を覗いた時に、ほんの僅かに見えたナニカが互いを貪り喰っている光景
「──あれは、何だったのかしら……」
そんな私の声が、その場に虚しく響いていた。




