【死】と理不尽と……
私は帰ってきた!
──はい、一週間ぶりですね。
先週は諸事情により投稿することが出来ませんでした。
また、その事情によって書くのも難しかったのでこの時間の投稿となってしまいました。
そろそろ迷宮編も終わりに差し掛かってきていますね。
まあ、あと数話でこの戦いも終わるはずなのでもうしばらくお待ちを。
それではどうぞ
「【破黒飛炎斬】!」
(支配を受けた上で『魔』と『王』の『性質』を解放して無い状態でイリスがどこまでできるのかはわからねぇが……見極める!)
【黒炎】の斬撃を飛ばしながら、それを追うように駆ける。
「──────」
それに対しイリスは何を言うわけでも無く、【魔法陣】を多数展開して【魔法】を放つ。
(『悪魔』が見たことのねぇはずの攻撃をさせられるってことは身体の完全支配じゃなくて、思考支配か!)
「──重ねて『否定』しろ。【死紫飛氷斬】!」
【紫氷】を纏わせた『白剣』を振るって先行していた【黒炎】の斬撃に重ね合わせるように斬撃を飛ばす。
二つの斬撃は重なり、色が混ざり合いながら大きくなる。
『分子運動』における『加速』である【炎】と『減速』である【氷】は本来なら相反するはずの【属性】であるがその『本質』はどちらも『否定』。
故に二つの斬撃は混ざりあい、互いを『否定』しながら肥大化する。
肥大化した斬撃は乱射される【魔法】を手当り次第に『否定』していき、あわやそのままイリスを切り裂くところまで行くが、寸前で【転移】され、躱される。
「チッ!【転移】も使えんのか──ッ!『端末』、【拡散反射】!」
飛来した光線を『端末』の機能によって拡散させて防ぐが、『端末』は耐え切れなかったのかスパークし、砕け散る。
光線の正体は言うまでもなく、イリスお得意の【魔砲】である。
(少し負荷がかかり過ぎだな……【魔王】としての『本質』を解放して無くてこれ程か……過去に戦った時も『寄生支配』を受けていたとはいえ、あの時よりも威力そのものが上がっている。コイツも強くなったってことか。なら──)
「──文字通り、殺す気で行く!【本能移行】」
──ドクンッ!
と鼓動が大きく脈動する。
それに応じるように零刀の視界が紅く染まる。
(──目の前、敵意、脅威。──理不尽、エモノ、『否定』、喰ラウ……!)
地が爆ぜ、【黒】と【紫】が尾を引きながら距離を潰す。
──それほどの速度を持ってしても、移動しているのであればイリスの『魔眼』に見えないものは、無い。
零刀の動きに合わせるようにして光線を放つ。
直線的にかなりの速度で移動していた零刀はそれを回避出来ないと判断して左腕を伝わせ『白剣』に【死】を纏わせて振るうが、先程よりも威力が込められていたせいか『白剣』は高く弾かれ、左腕は吹き飛ばされる。
──それでも零刀が駆け続けるのは『腕が欠損したくらいではどうという事は無い』と本能で理解しているからであろう。
そして、痛みで声を挙げないのも、
それが無駄な事であるということを本能で理解しているからであろう。
イリスはその零刀による『黒剣』の突きを【障壁】を張ることで防ぐ。
──しかし、零刀の攻撃はそこで終わりではなかった。
頭上から落ちてきた『白剣』を口で掴み、左眼から溢れる【死】を纏わせて【障壁】に突きを入れ、触れた部分の【障壁】の機能そのものを殺していく。
ビシリッ、と音を立てて【障壁】にヒビが入り広がっていくのを視界に入れたまま、零刀は左腕を引き絞ると黒い鱗に包まれた腕を生やす。
それに黒と紫を纏わせて振り抜き、【障壁】を砕きイリスもろとも殴り飛ばす。
「ハァ、ハァ、ふぅ。あー、理性ふっ飛んでたな。まあ、いいか」
息を切らしながらそう言って一部鱗の砕けた左腕に目を向ける。
(【衝撃の魔眼】か。直撃した箇所だけとはいえ砕けるほどとはな……しかし『悪魔』の方は傍観しているだけ、か)
チラリと視線を向けるが、やはり『悪魔』はイヤな笑みを浮かべて傍観しているだけだ。
(まあ、そっちのが好都合だ。それよりも──)
「【死】なら、あの支配しているモヤも取り除けるな」
視線を再度向ければ言葉の通り、先程拳が触れた部分のモヤが消し飛んでいるのがわかる。
(流石に触れたものまで支配してくることは無かったか。『本能』に反応してやがったからあり得るとは思っていたんだが……いや、【破壊】と【死】を纏っていたおかげか?)
悪魔をもう一度見ると、少し訝しげな表情をしている。
(この感じだと『悪魔』も予想外って所か?……ならアイツがどう行動をするか予想出来ない今、さっさとどうにかするしかねェか。──少しばかり手荒になるが、仕方ない)
「──イリス、死ぬんじゃねェぞ」
そう言って、零刀は駆け出した。
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(ここは?たしか階層主の『悪魔』と──)
現状を確認するために眼を開くと、視界を透き通った紫に覆われていることに気がつく。
(【紫水晶】?いや、これは、零刀の【紫氷】?あのときは、『寄生魔物』のせいで、零刀と戦って──)
いつかの自分に起きていた事象と少し重ね合わせながら、思い出していく。
(そうだ、零刀は!?──良かった。無事みたい)
──しかしその言葉は次の瞬間、覆された。
『悪魔』と目が合う。
ニタリと、嗤う。
ヒカリが、見える。
──それを遮るように、零刀のアタマがハジケル。
(──え?)
理解し難い状況に困惑し、続いて強い感情に支配され──
ドクンッ!
──それは脈打ち、自らの『本質』と呼応するかのように溢れ出す。
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零刀が【魔法】の弾幕をくぐり抜け、イリス目掛けて剣を振るう。
しかし、その斬撃は何度振るわれようと同じように【転移】され、回避されている。
それは【破壊】を宿した黒い炎や【死】を与える紫の氷を纏わせ切りつけても、変わることが無い。
──故に辺りには黒い炎が揺らめき、紫の氷がいたるところにあり、見る人が見れば地獄と、見る人が見れば芸術とも言えるような光景が広がっていた。
(やっぱり簡単にはいかねェか!)
【転移】しては弾幕を張られの繰り返しで攻撃は当たらないが、零刀は【深淵】によってその弾幕を凌げているので両者共に大した損傷も無いままである。
勿論、体力や魔力にも限界はあるのだがイリスにおいては【魔法眼】に魔力の貯蔵がある上、回避は【転移】で行っているため体力については問題ない。
零刀の場合は魔力体力共に消耗はするが『本能』によってその消費を最小限に抑えている上、筋肉の疲労は『再構成』によって修復されるのでほとんど無い。
魔力に関しても『深淵』の【循環】を応用してイリスの【魔法】から無理矢理回復しているので問題ない。
まあ、そんな永遠を思わせる戦いも──
「準備完了だ。こんな【理不尽】で不毛な戦い、終わらせてやる!」
──【理不尽】を『否定』する零刀が、許すわけが無い。
零刀が『黒剣』を振るい、それをイリスは再度【転移】で躱すと同時、辺りで揺らめいていた【黒炎】が消える。
「『魔素支配』、【変異錬成】!」
そして漂った自身の魔力と魔素を『支配』し黒耀石へと【変異】させ『錬成』してドームを作り出して捕らえる。
(『魔眼』による【転移】は目視できる範囲にしか出来ない。これでそこから出るには【千里眼】も使うしかない。そして二つの『魔眼』を使えば【重力の魔眼】は使えず、地上にしか【転移】出来ない──)
零刀の読み通り【転移】で地上に脱出する。
それと同時に『白剣』を振るい、引き絞ると辺りにあった【紫氷】が砕け散る。
「──さらに二つの『眼』が埋まっている今、【魔法】の弾幕は張れない──【壊離】!」
【壊離】はその名の通り距離を【破壊】するというものだ。
しかしながら、制限も多く移動の直線上に魔力の込められたものがあればその目の間に現れてしまうので【魔法】の目の前に現れ直撃なんてことにもなり得る。
しかし【魔法】の弾幕がない今、距離という空間的概念を一時的に【破壊】し、イリスの目の前に現れることが出来るのだ。
さらにイリスが別の『魔眼』を展開する前に、砕けた【紫氷】を『白剣』に集めていく。
「【転移】する時の魔力操作も、【魔法眼】がねェと一瞬で出来ねェのは知ってる。どれだけ一緒に戦ってきたと思ってやがる」
【紫氷】を纏った『白剣』を切り上げる。
瞬間、紫色の氷山がイリスを覆う。
その氷山に『黒剣』の『白剣』を突き刺す。
「【紫氷葬縛、壊鎖ノ獄】!」
その氷山の中を、黒い鎖が『黒剣』から伸びてイリスに巻き付く。
「頭冷やしとけ。──その間に俺は、コイツとオハナシしてるからよ」
そう言って勢いよく振り返ると直ぐそこまで迫っていた拳を左の掌で受け止める。
「せっかちな野郎だなァ──ッ!?」
悪魔の拳の衝撃を『深淵』で【循環】させ拳に乗せて放とうとするが、直前で拳を開き衝撃を起こして回転して肘を入れる。
さすがの悪魔も予想外だったのかモロに入り、吹き飛ばされる。
(『深淵』で【循環】させきれなかった!?【循環】が難しい程の威力があの拳に込められていたってのか……あんなのモロに受けたらマジでヤベェぞ!)
悪魔に視線を向けると少し不機嫌そうにしているだけで特に堪えた様子はない。
(クソッ、マジで【理不尽】過ぎるだろ!俺の手元に武器はねェし……かと言って抜くわけにはいかない上黒耀石の剣じゃあ耐えられるとは思えねェ……イリスも直ぐには復活しねェだろうし──あ゛?なんで嗤って……)
悪魔がニタリと嫌な笑みを浮かべ口を開くと魔力を集中させていく。
(マズい!【咆哮】か?)
それは【吐息】とは違い、収束した光線のようなもの──イリスの【魔砲】に近いものだ。
それが、放たれた。
──イリス、目掛けて。
「クッソ、野郎がァァァアアアア!【壊離】ィ!」
空間を割り、距離を壊して射線上に割り込む。
(これを止めるには、これしかねェか!)
「──【死】よ!このクソッタレな【理不尽】を殺し尽くせェ!いっぺんたりとも通すなァ!」
その光線を、【咆哮】を左眼で、紫色の瞳で受けた。
後方へ流れるはずだったエネルギーは殺され【死】に、後から続くエネルギーはそれにぶつかって拡散される。
──すなわち、受け止めた零刀の左眼から爆散し、零刀の頭を吹き飛ばす。
痛みを感じる暇もなく、零刀の意識は消失していく。
──結果、零刀が願ったように【咆哮】は後方のイリスにいっぺんたりとも向かうことは無かった。
何故か主人公の頭が飛ぶことが多い件について。
……不思議な事もあるものですね(汗)




