いつかの僕
皆さんお久し振りです。
何故かこの回は納得がいかず4回程書き直していました。
では、どうぞ
「てめぇ誰だ!?」
(ここ、は─?)
零刀はひとり、集団を前にして立っていた。
(なんだろう、懐かしいような…)
「おい!」
「なんで名乗らなくちゃいけねぇんだよ、俺なんかどうでもいいだろ?」
(なっ!?勝手に声が!?身体の自由も利かない!)
「つーかよ、」
鉄パイプを肩に担ぐ。
「さっさとやるぞ、この状況だ、分かってんだろ?」
(声も僕の声なハズなのに身体が勝手に……)
理解できないこの状況に戸惑っているとふと、視線が動き視界にあるものが映った。
(光輝に隆静、それと─白瀬さん?なんで─)
その疑問が解消される前に零刀の身体が動き出し、自分もダメージを受けながら次々に殴り倒していく──
──ふと、視界にノイズが走る。
(─あ、れ?さっきまでいた場所と似ているけれど別の場所?)
ノイズが晴れると先程とは別の場所にいた。
(また、だ。また懐かしいような感じがする。でも、さっきもそうだけれどここに関する記憶がないのになぜ?)
「よくもうちの──」
「てめぇの──」
(─おっと、考え込んじゃって会話聞いてなかった)
そして、戦闘が始まった。
相手は多数いるのにもかかわらず、確実に一人ひとりを倒している。
しかし、無傷で、という訳には行かなかった。
服は所々破れているし、傷も負っている。
(ぐっ、なんだ?)
突然、頭が痛くなる。
身体的な痛みではなく、もっと、こう、心が痛むかのような、まるでこれ以上のことを考えていたくないと思うような─
目の前に敵は1人しか居ないが、持っていた武器(鉄パイプ)も今手元にはない。
「ちっ、まさかこれだけの数がやられるとはな⋯。でも、武器も無けりゃ何もできねえだろ?」
そう言って拳を振り上げ右ストレートをかましてくる。
それを首を傾けることで躱し、右手の貫手を─
─相手の喉元に、思いっきり叩き込んだ。
「うぐぇ、ゲホッ、ゴホッ」
声も出せず、呼吸もままならないまま地面に倒れている。
「…少し強めにやったからな。喉は潰れてるかも知れねぇが……、首にもだいぶダメージ入ってんだろ。しばらくの間身体は動かねぇと思うぞ」
そう言い残して縛られていたみんなのところへ行く。
頭痛が、酷くなる。
まるでこれからの事を見せたくないと言わんばかりに。
ふと、彼女達の、目が視界に入る。
それはどこか、僕に怯えているようで、僕を恐れているようで─
「あぁ、また、かよ。俺、を…俺をそんな目で見ないでくれ」
それは、いつかの、あのときの目と重なって─
ゴン、と後頭部に強い衝撃が加わる。
「へ、へへへ。やってやったぜ─」
─反射的に振られた裏拳が顎を捉えた。
意識が、朦朧とする中、
「…隆静、すまねぇが、あと、は、頼む」
ふらりと身体が揺れ倒れ始める。
(…そうだ、これは、紛れもない僕の記憶。僕が僕であった頃の記憶─)
俺がそう伝え終えたと同時に、世界にヒビが入り始め、壊れていく。
(そうだ、思い返せば僕は生きている中で、いくつもの理不尽とぶつかっていた)
世界が、崩れていく。
(それをどうにかして切り抜けてきたんだろ?)
崩壊していく。
(でも、逃げることも、切り抜けることもできないこともあった。これからはもっとあるかもしれない。だから、もうそんなことはやめよう。これからは─)
俺が決意をしたのと同時に世界は崩壊し終え─
─意識がブラックアウトした。
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零刀に『トラ』と呼ばれていた魔物は近くで暴れていた魔物を蹴散らして自分の棲家への帰路にあった。
新鮮ないくら食べても再生する食糧を手に入れ、さらに先ほど蹴散らして来た魔物も合わせればしばらくは狩りに出なくても済む。
そんな気持ちでいると目の前に分かれ道が現れる。
片方は棲家があり、もう片方は水辺に繋がっている。
迷わず棲家の方へと歩みを進めると、道が濡れていることに気がつく。
─他の魔物が、棲家に向かっている?
そう思い、すぐに走って棲家へ向かう。
─あそこにはあの『食糧』だってある。取られるわけには行かない。
そんな思考をして、走った。
しばらくすると棲家が見えて来た。
そこにはあの『食糧』と悪魔の死体があった。
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トラはすぐに『食糧』が生きているかの確認をしようとした。おそらくあの再生は生きていないと意味が無いと思ったからであろう。
それも喰らい付けば分かると思い、横たわる『白髪の少年』に自慢の牙を突き立てようとした。
─刹那、少年から大量の魔力が吹き出した。
それはまるで、ダムが決壊するかのような勢いで。
とっさにトラは大きく距離を取る。
「アレには触れてはいけない」と本能で感じたのだ。
少年が口を開く。
「ハァ、ったく、よくも人を食糧にしてくれやがったな」
それは普段の彼を知っている者ならば驚くような口調だった。
立ち上った彼の髪は先程まで白くなっていたが溢れ出た魔力によって少し染められ、今は灰色になっていて、さらに右眼は血のように紅く、左眼は紫色になっていた。
再度、口を開く。
「『カタチ、それはそのものによって異なっている。それは成すものによって決められている。
─しかし、我が行く道を妨げようとするのであれば、我はそのカタチを否定する。
そして、否定する我が魔力は、我が魔素は、ここに集いて、剣を成す』」
一呼吸置いて
「『錬成』」
そう紡いだ。
周囲にあった魔力は、集結し、剣をカタチ取った。
そこには真っ黒な刀身に赤い線の入った剣があった。
その剣を、トラに向ける。
「来いよ理不尽、俺がてめぇを否定してやる」
瞬間、トラが爪を振るい、魔力の斬撃を飛ばす。
それに対して零刀は剣に黒い魔力を纏わせ、切り払う。
「……まあ、こうなるよな。さて、もう終わりか?」
そう言い放つ。
「グラアアア!」
トラが飛びかかり、噛み付こうとする。
「『我が魔力は壁を成す』【魔力障壁】」
黒い魔力が目の前に障壁を作り出し、トラの牙とぶつかる。
少しの時間、拮抗していたが、トラが飛び退く。
─次の瞬間にはその牙はボロボロと崩れていた。
「グラァァアア!?」
痛みに耐えかねて悲鳴のような声をあげる。
「ハァ、こんなもんか。俺に必要以上にいたぶる趣味はねェ。つーか、もう飽きた」
剣を振り上げて
「俺の糧になれ、理不尽」
よりいっそう剣に魔力を込めて振り下ろす。
魔力は斬撃となって飛び、トラを両断した。
詳しい過去話はいずれ三者視点で書こうと思っていたおります。




