悲しみと励ましと…
個人的な事情により、この週を入れて二週間ほど、更新ペースが不定期に戻ります。
よろしくお願いします。
零刀が行方不明になってしまったということはクラスメイトに直ぐに知れ渡った。
零刀を失ってしまったことによってみんながショックを受け、一度王城に帰ることとなった。
------------------------------------------------------------
「そう、か。零刀くんが亡くなってしまったか…」
帰ってきて直ぐに謁見の間にて国王様に報告をする。
「いえ、まだ亡くなったとは…」
「うむ、しかしその転移トラップすら再確認できなかったのだろう?」
「……はい」
そう、いてもたってもいられず、もう一度迷宮に入り捜索を試みたのだが転移トラップ自体が見つからなかったのだ。
「ならば、捜索のしようもない。死んでしまったものとして考える他あるまい」
「それは……」
分かっている。本当は生きている確率の方が低いってことも。
「アドルフ、認めたくないのは分かるが『勇者』を含めまだまだお前を必要としている者がいる。その者達を死なせたくないのならお前が頑張るしかあるまい」
「はっ」
そうだ、レイにも頼まれた。だからみんなが死なないように、強くなれるようにしよう。
─レイが見た時に驚くように。
------------------------------------------------------------
僕は何もできなかった…。
中位悪魔と戦っている時も、レイが落ちていく時も、何もできやしなかった。
─何が『勇者』だ。
レイが励ましてくれたから、レイが支えてくれたから今の自分がいると言ってもいい。
─『大切な仲間』ひとり守れないで
なんて無力なんだろうか
こんな『勇者』なんて─
”コンコン”
「どうぞ」
入ってきたのは隆静だった。
「よう、しけた面してんな」
「…しょうがないだろ」
「しょうがない、か」
そして隆静は真剣な顔で言う。
「月並みな言葉かもしれねえけど、レイがそんなこと望んでるとでも思ってんのか?」
その言葉に腹が立った。
「そんなこと言われたって分かるわけないじゃないか!だって、レイはもう─」
「死んだと言いたいのか?」
「……ああ」
「あのレイがか?それこそ冗談だろ?……あいつならいつかひょっこり帰ってくるだろ、それこそ何も無かったかのように」
「でも─」
「んでもってもっと強くなって、今度は守れるようになればいい」
顔を上げると隆静は拳を握っていた。
「俺だって、『守護騎士』なのに、守るための職業なのに、守れなかった。だから、今度こそ守れるように強くならねえと!」
そんな隆静を見て僕も決意が固まった。
「僕も強くなりたい、だから─」
「ああ、やるぞ!」
「おう!」と互いに決意を固めた。
------------------------------------------------------------
「……ふう」
光輝の部屋から出てひとり、一息つく。
(ああ、なんてったってこんなことやってんだろうな…)
「よう、お疲れさん」
ふと、声をかけられたので、そちらを向くとアドルフがいた。
「どうかしたんですか?」
「レイのことについてだ」
自分から表情が消えるのが分かる。
「レイの、何を?」
自分が思っていた以上に語気が強くなっていることに気づく。
「向こうであったことをだ。コウキは知らないんだろうが、お前は知ってるんだろ?」
沈黙が、流れる。
「……いいでしょう。ですが、これは─」
一瞬、このことを言うべきかどうか、迷う。
「─零刀が、忘れてしまった。俺らが、思い出させたくない、そんな話です」
------------------------------------------------------------
「ここ、は?」
私はベッドの上で目を覚ました。
横を見ると鈴が眠っている。
「ここは医務室?」
鈴も目を覚ました。
「彩!大丈夫?」
「なに、が?」
「だってまる2日も眠って⋯」
そうだ、私は─
「れ、レイくんは?どこ?」
「⋯レイちゃんは」
今の状況の説明も受けた。
そっか、やっぱり夢じゃなかったんだ。
「うん、でも大丈夫だよね。レイくんのことだもん。多分何事も無かったかのように帰ってきて笑ってくれるよ」
自分でもいいながら声が震えているのがわかる。
「うん、そうだよね。強くなろ?レイちゃんと一緒に戦えるように」
「うん、そうだね頑張ろうね、鈴」
この後、2人で泣いて、笑った。
------------------------------------------------------------
私は先生で、生徒を守らないと行けないのに
自室でひとり、そんなことを考えていた。
どうすればレイくんを失わずに済んだ?
私が一緒に居ればよかった?何かが変わった?
どうしたらこれから誰も失わずに済む?
私が強くなればいい?
それだけじゃだめだ。生徒たちにも強くなってもらわないと。
私にも目が届かないときがある。今回もそうだ。
だから強くならなきゃ、強くしなくちゃ。
………………………………………………………………………………
「よし、みんな集まったようだな」
王城に帰ってきてから数日がたったある日、訓練場にみんなが集められた。
「今日は改めてみんなに言っておきたいことがある」
少し全体が騒めく。
「先日の迷宮探索でレイトが行方不明になった。これは事実だ。そして、これからもそんなことが起こるかもしれん」
騒めきが大きくなる。
「それでも!強くなりたいと、大切なものを守りたいと思うものが訓練に参加しろ!強制はしない!」
場が静まる中、ひとり声を発するものがいた。
このクラスの担任の桜である。
「私は、皆さんに死んで欲しくありません。例え私が強くなったとしても、皆さんを助けられるとは限りません。だから、お願いします。本来教師である私が言うのもどうかと思いますが、強くなってください!」
その一言によって心動かされた生徒たちから同意する声があがる。
(レイと同じパーティーだった奴は確定か。それとあの場にいた『剣士』と『騎士』、教師もか。それ以外の微妙だった奴らもその教師によって強くなることを決心したか…)
アドルフはひとり、そんなことを思いながら。




