在り方を問うは理不尽故に
どうも皆様こんばんわ。私ナリアでごさいます。
諸事情により投稿が遅れまして申し訳ございません。
今週もう一度投稿するので許してくださいな。(なんでもするとは言ってない)
はい、それではどうぞ。
疑問的な場面の解説は後ほどの更新で。
──『理不尽』とはなんだろうか。
俺が──神野零刀が嫌うモノ。
果たしてそれはなんだ?
定義は? 基準は? 何が『理不尽』で何が違う?
そしてそれを、だれが決める?
何がどうして、どうして何が?
俺は何が『理不尽』なのかさえはっきりとわかっちゃあいなかった。
「──どうした! 何もできないのかぁ? ハハハハハ!!」
耳障りなワライゴエが耳をうつ。
それと共に光が身体を打ちし、闇が魂を侵蝕せんと襲い掛かる。
──ああ、うるさいなあ。
その一撃一撃が確実に魂を直接打ち据えているのだが、彼はその感想しか出てこなかった。
【邪神】の攻撃は『権能』のチカラによってすべてが零刀の魂を蝕んでいるのだが……その侵蝕は零刀の根幹には届かない。
それもそのはず。零刀の喰らってきた魂は彼自身の一部となって彼を構成すると同時に、かれの真核を守る鎧の役割をしていた。
「──やっぱりお前じゃあ、俺に届かない」
「そんなボロボロになってまで、何を強がっている……!」
「お前なら見えているはずだ、わかっているはずだ。真美しいに関わる『権能』を持っているお前なら、な」
零刀のその言葉に【邪神】は一瞬攻撃の手を止め──さらに苛烈にチカラを振るいだした。
「なぜだ、何故だ何故だ!?5000年だぞ!俺は5000年もの時をかけてここまで来たのだぞ!それを、ぽっと出のお前に……!」
怒りを込めた攻撃の数々は強かに零刀を打ち抜き、その肉体を襤褸屑のように変えてゆく。
「なあ、今どんな気持ちだ? 5000年もの時をかけて積み上げてきたものがこんなにも簡単に脅かされる感覚は」
「お前ぇぇええええ!!」
「ああ、そりゃあキレるよなあ。だってお前にはこれしかないもんなあ!」
攻撃を受けながら煽る煽る。
理由は簡単。零刀が『理不尽』だと感じたから。『否定』すると決めたから。
(──ああ、そうだな。俺が『理不尽』だと感じたから、決めたから。それでいいじゃないか)
ふと、そんな風に思った。そう感じた。そう考えた。
「──そうだな、それでいい。だって俺は、『理不尽』を『否定』する『理不尽』だからな」
ひとつ、自分の在り方を再確認する。
──そんな時だった。
何処からともなく、光輝く剣が飛来して【邪神】に襲い掛かる。
「これは……!?」
「光輝の【光剣】か……」
「木っ端風情が……我らの領域の戦いの邪魔をするな!」
【光剣】を振り払った【邪神】は再度攻撃を放つが虚空に現れた大盾が阻む。
「隆静の盾か? ──ああ、イリスが飛ばしたのか」
今まで思考に没頭していたせいか気が付かなかったその視線に零刀は笑みを浮かべる。
「大方、何をやってるんだ、っていう抗議を込めて送ったんだろうな」
本来見えないその視線を見返して、零刀は笑う。
「……そろそろ俺も選択しないとな。クロア、ハクア」
『待ってました!』
『──はい』
両手に黒と白二振りの剣が握られる。
「壊せ」
呑み込まんと迫ってきた【闇】が砕け散る。
「殺せ」
射し貫かんと迫ってきた【光】が死に絶える。
「っ、なに!?」
「ああ、足りない。それじゃあ俺に届きもしない」
どこか物足りなさげに呟く。
「なあ、お前はどうして『理不尽』になったのかを憶えているか?」
「何を……そんなこと知るか!」
いとも簡単に攻撃を完封されたことに動揺を隠せない【邪神】に零刀は心の底から失望した。
「そうか。ならお前が助けたいと願った少女のことさえも本当に憶えてないんだな?」
「なんだそれは……お前は一体、何を言っている?」
突然、全く知らない知識を披露されたかのように啞然とした【邪神】だが、思い出したかのように感情を再度燃焼させる。
「戯言を……何を抜かしたところでお前はここで終わりだ!」
狂ったかのようにチカラを行使する【邪神】。
「お前、もう限界なのか」
「何を言っている、知るか、知ったことか……! 俺は、アイツを助けるまで止まれないんだ!!」
感情が、爆発する。
しかし、それは何事もなかったかのように消えてしまう。
「なんだ、今のは……俺は、いま、なんて……」
「……もういい、何も思うな。何も考えるな。俺が否定する前に自分を否定するな」
『……マスター?』
突如手放されたクロアとハクア。
「悪いな、クロア」
『……本当にこの先に進むのですね』
「ああ。ハクアは何となく察しが付いていただろうが、この先はお前らでも無理だ」
人型になった二人が問いかけるが、それ以上は答えない。
「なんで、マスター!」
「待ってください! せめて、せめて最後まで御傍にいさせてください!」
「悪いな──イリス、俺も手伝うからクロアとハクアを頼む」
『……わかった』
その言葉の直後、二人の周りに【魔法陣】が現れる。
「「創造主様!!」」
「前に言ったことを憶えているか? 『白瀬 彩』から目を離すな。これは命令だ」
「……了解した」
「その命、命に代えましても」
「ああ、任せた」
その言葉を最後にクロアとハクアの姿が消える。
「武器を手放した、だと? どういうつもりだ」
「どうもこうもねえよ。──シリウナ、起きろ。お前のチカラが必要だ」
「──ようやくですか」
零刀の背後に銀狐の少女が現れる。
「……本当にいいんですね?」
「ああ、頼む」
シリウナは背後から零刀の首に手を回し抱きしめる。
まるで愛おしい恋人にするかのように──
「ごめんなさい、レイさん」
「ぐぅ、があ!!」
──その胸に輝く刃を突き立てた。
「……仲間割れか?」
【邪神】がそう呟くのも無理はない。
その一撃は確実に、『神野 零刀』にとって致命的なダメージを与えていた。
「ああ、これでいい。お前が謝る必要はない。これで、いいんだ」
脱力し、シリウナに支えられながら力なく呟く。
「レイさん……」
「もう、いい。お前もみんなのところに戻れ。っと、その前に」
ぺっと、小さな人型を吐き出す。
「それは……【光神】? そうか、お前も【光神】のチカラを……だからか!」
「いいや、それは関係ない。ほら、行けよ」
「レイさん、絶対に戻ってきてください。私、ずっと待ってますから」
刃が煌めきシリウナが消える。
「イリス、ここから先は見ないでくれ」
少しの間を置いて、イリスの視線も消える。
「……それでいい。これでここにいるのは『理不尽』だけ。抑えなくて済む」
瞬間、零刀の身体が崩壊を始め黒い塵を纏い始めた。
──システムエラーが発生しました。
──個体名『神野 零刀』は存在しません!
──『存在証明』システムに重大なエラーが発生しました。
──『世界の資源』の致命的な現象を確認しました。
「なんだ、それは……」
「おまえが求めた、理から外れたチカラだ」
「それは、違うだろう。己の領域を超えた何かだろう!?」
「そりゃあそうだろう? 理から外れたチカラが、個の中に納まるわけがないだろう。ましてや、それほどまでに大きな力で一個人なんて救えるわけがない」
黒い塵となって崩れ行く零刀の姿は輪郭が保てなくなっているせいかどこか大きく見える。
「『水を飲みたい』と願われたら大洪水を起こす。これはそういったものだ」
皮肉気な笑みを浮かべる零刀。
──『世界の記録』参照。
──【不明】の存在、並びに【番外個体】が原因と判明。
──排除は不可。機構による排除機能は対象に取り込まれています!
──『世界の意志』より対象の排除を却下。以後対象を理に留めることを申請。
──『権能』、【破壊ノ杖】を贈与。
──【破壊ス者】が変異します。
──秘匿されていた『ふtcygvbh』【■■】が目覚めます。
「く、来るなぁ!」
「なあ、なんで俺がこんなにも無抵抗だったと思う?」
【邪神】の猛攻を全く意に介さず、歩みを勧めながら言う。
「準備してたんだよ。お前のすべてを否定するためのな」
白く染まっていた世界が、黒く覆われてゆく。
それはまるで、零刀がこの作り物の世界を呑み込んでゆくかのように──
否、呑み込んでいるのだ。
【邪神】の創り出した『神域』ともいえるこの空間を喰らい尽すかのように──
「ここにある『理不尽』、すべて否定してやる」
【邪神】は勿論、『カミノレイト』という【『理不尽』を否定する『理不尽』】さえも。
『理不尽』を否定する彼にとって、『カミノレイト』という『理不尽』さえ否定する対象になるのだ。
「本当の『理不尽』、教えてやるよ」
他者さえも、自分さえも顧みない飢えた獣のような『理不尽』がその本質を露わにする──
──『権能』【世界ニ歯牙ヲ立テル者】に変異します。
──『理外技能』、【界喰】が覚醒します。
ジャンル『その他』で新作始めました。
『千夜一夜、夢語』
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概要はあらすじをお読みください。




