迷宮都市
そろそろ【戦いたい!!】の方も書かないと⋯
─迷宮都市『オルデール』は王国管轄の都市であり、もとは迷宮を管理するための施設を建てただけなのだが次第に発展していき、それを王国が支援しながら今のかたちになった。
迷宮産の魔物は食べる事が出来ないが、逆に迷宮外の魔物であれば食べる事ができ、美味しいものが多いという。
しかし、迷宮で手に入る素材は普通に使うことができるのでそれを使った物はもちろんのこと、迷宮へ挑むための武具や泊まるための宿も良いものとなっている。
ここは『冒険者によって成り立っている都市』と言っても良いであろう。
─by王城図書『迷宮と都市と冒険者』
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(これは…想像以上だね)
到着し、都市に入ってすぐに驚いた。王城の図書室で予備知識は持っていたので『記憶管理』の技能で定着させたことを思い出すことができるが、読んで知った以上に活気にあふれていた。
(これは、百聞は一見にしかず、というやつだね)
「うわぁー、凄いね!レイちゃんレイちゃん!あのお肉はなんだろね!」
と、子供のように鈴が騒ぐ。
「ちょっと鈴、騒ぎすぎじゃない?」
それに対して、彩が注意する。
「まあ一旦落ち着けお前ら。後で自由時間やるから」
苦笑いを浮かべながらアドルフが言う。
「ほんとに?やったぁ!レイちゃん、これからデートしようデート!」
「なっ!」
「こら鈴、ふざけたことを言ってないでみんなで行こうよ」
と、零刀が言ったことによって。
「計画を立てるのはいいが早く宿に行くぞ!」
「「「はーい」」」
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宿に荷物を置いた僕達はパーティーメンバーで『オルデール』を歩いていた。
アドルフさんからは1人ずつ銀貨5枚を受け取っている。お小遣いである。
「それにしても…ねぇ」
隆静が肉串を嬉しそうに食べている鈴を見て苦笑いを浮かべる。
この肉串は最初に鈴が気になっていた肉である。
鈴が「どうしても食べたい」と言うので、買いに行ったのだ。
そこでちょっとしたトラブルがあった。
肉串を真っ先に食べて喜んでいる鈴をそのままに、何の肉かを聞いたのである。
「そう言えばこのお肉ってなんのお肉なんですか?」
ちなみに聞いたのは零刀である。
「おう、知らないで食ってたのか?」
「ええ。恥ずかしながら」
「これはな、『一角兎』っていう魔物の肉なんだ」
その時、鈴が崩れ落ちた。
「う、うさぎ…。わ、わたしはうさぎさんを食べてしまったと言うのか。そのような大罪を犯してしまったのか…。なんて事だ…」
なんてことを言っている
ちなみに鈴はうさぎが大好きで、家でうさぎを飼っている。
なぜか僕が近寄ると逃げられてしまうが⋯
「鈴?いらないなら私が貰うよ?」
「うまいものに罪はない!!そうさ、言ってしまえば人間とは罪を犯して生きているのだ!これからも生きるためならば私は罪を犯し続けよう!」
変なところで覚悟をしていた。
彩も苦笑いである。
「なーんて事があったのに、今では食べ歩きなんてしているし…」
「楽しくて良いじゃないか。鈴のそういうところ僕は好きだけれど」
「そ、そう?ならこのままでいいかな」
「でも、食べ過ぎて太らないようにね」
「レイちゃんのバカ!女の敵!」
「僕はこの鈴が好きなだけ何だけど…」
「そ、そう?なら気をつけないと…」
(((レイ(くん)恐るべし!)))
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それから宿に帰った。
僕の部屋は1人部屋だ。何でかって?聞かないでくれるとありがたい。
食事は美味しかったし、この宿にはお風呂があった。『ステータス』の差がここまでとは…。
(明日はいよいよ迷宮探索か⋯。アドルフさんがいる事だし万が一はないとは思うけれど…。『とっておき』を使わないことを祈ろうかな)
”コンコン”
「はい」
”僕だ、光輝だ。入れてもらっても良いかな”
「どーぞー」
”ガチャリ”と扉が開く
「ごめんね、こんな時間に。少し相談したい事があって…」
「うん?何かあった?」
「明日の迷宮探索が怖いんだ。生き物を殺さないといけない。それが怖いんだ」
よくみると、手足が少し震えている。
零刀は少し考えてから
「僕がどうこう言うのは違うと思うけれど、今はそれでいいと思う。これから先、その感覚が薄れていってしまうかもしれない。だけど、それの感覚を忘れてはいけないと思う。鈴じゃあないけれど、生き物は生きる上で、罪を犯している。それでも生きたいと思った。成すべき事があった。ならばやるしかないと思うんだ」
と言った。
「でも、最後に決めるのは結局『自分自身』だよ」
と付け加えた。
「そう、だね。わかったよ。ありがとう、おかげで少し楽になったよ」
「どういたしまして」
と零刀は笑顔で言う。
「うん、じゃあおやすみ」
と言って部屋を出ていく。
「うん、おやすみ」
─そして、運命の歯車は回り、狂い出す。