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次、それはいつかの始まりである

どーも皆様こんにちは。


少し遅れてしまい申し訳ございません


ここから新章

神話ネタやら拡張解釈やら色んなものをぶち込んでいく予定ですのでお楽しみに。


これはないんじゃないか、なんてものもあるかもしれませんので、その時は感想欄にて議論でも


長ったらしい前置きもこのくらいに4月最初の投稿にして新章を開始します!

──これは夢だろう。




見渡す限り血を思わせる『紅』の中、彼は漂っていた。



どこが上でどこが下かすらあやふやで、自分と『紅』の堺目すら曖昧になりそうな場所でそんなことを思ったのは、これが夢でありながら、ここがただの【夢】で無きことを知っているからこそだろう。




姿勢はそのままに、目線を頭上へと向ける。




ソコにあるのは、巨大な蠢く円環。



大きすぎるソレは遠近感覚が狂う程の大きさでゆっくりと回転しているように見える。


さらにそのナニカの周りには大小様々な異形達が喰らい合い、踊り狂う。




──そう言えば、ヤツはアレを見て発狂しかけていたが……アレの何処に狂う要素があったんだか……




見上げながらそんなことを考えていると──足下から何かが迫ってきていることに気がつく。



それは黒く燃え盛る球体──言うなれば黒き太陽。



それは紫に輝く球体──言うなれば紫月。



それに触れようと手を伸ばそうとして、届かないことを覚る。




──届かない? そんなわけ無いだろ。俺は届かないモノに届くように……




腕を伸ばす。



然して、その腕は──




──『人のモノか』と問われれば、『否である』としか言えぬシロモノであった。






------------------------------------------------------------






「──ああ、起きている」


「あー、また先に起きてる!」


「『創造主マスター』様は私に起こされてはくれないのですか……?」


「悪いな。お前達が近くに来ると感覚でわかるから起きちまうんだよなぁ」


「……私達を感じてくれているから、と言われてしまうと」


「やりたいからって強く言えないんだよなー」


「被創造物たる私達が強く言うのはどうかと思いますが……」


「いいんだよ。言いたいことやりたいことがありゃあ俺に言ってくれてよ。あんまり硬っ苦しいのはなしにしようって言ってるだろ? 気楽でいいんだよ」



照れた様子のクロアとハクアに柔らかく笑いながらそう言った。





──あの後、『冒険者組合ギルド』へと戻ってきた零刀とラグナは依頼主でもある【総組合長グランドマスター】のエレナに事をありのままを報告した。



『SSランク』であり【最強】の『称号』を持つラグナの証言も相まって信用できる情報として処理され、事態を重く見た『冒険者組合ギルド』は『神狼山』への立ち入りを一時的に禁止した。



その後、零刀は『Sランク』として無事に認められ『冒険者組合』による『称号』でも【紫紅の魔王オーバーロード】を公認された。


なお、元々その『称号』で名を馳せていたモノが『組合ギルド』公認となると色々な点で有利になったりするのだが……それはその機会が来たら説明する事にしよう。



「レーイさーん! 出立の準備は終わりましたかー!私は終わってないので手伝ってくださいーっ!」


「……お前はもう少し大人しくできないのか」



扉を勢い良く開けてそう叫ぶのは珍しい銀色の狐獣人のシリウナだ。



「──ん、前もって準備してなかった、シリウナが、悪い」



──見冷たく感じるような淡白な口調で告げたのは金髪の少々──【魔王】イリス。



「私は二人みたいな『収納系技能』は持ってないんですよー! 」


「お前……この都市に来て何をしていた?」


「勝手に稼いだお金は自由に使っていいって言ってたんで、服や小物を少々……」


「……はぁ、イリス。片付けるのを手伝ってやってくれ。飯に間に合わなくなりそうだ」


「……わかった。零刀は先に行ってていい。すぐにおわらせる」


「はいよ」



二人が片付けへ向かうのを見送ってから零刀も立ち上がる。



「お召し物はこちらに」


「ああ──って、リーシャいつからそこに居た」


「さぁ、いつでしょう?」



いつの間にか居たメイド姿のリーシャがどこか楽しげに言う。



「……他のヤツらはどうしてる」


「『勇者パーティー』の皆様は先程特訓を終えて戻ってきました。今は各々最後の片付けなどをして、早く終えた何人かは食堂にてお待ちしております」


「了解、なら先に行かせてもらうか」



階下へ向かう──自分の物がなくなった部屋を振り返ることも無く。



もう、戻る事は無いだろうから。




------------------------------------------------------------




「──ゲッ、【紫紅の魔王オーバーロード】!?」


「……随分な挨拶じゃねぇか、【総組合長グランドマスター】? そうは思わねぇか?【光盾】タルドさんよ」



食堂に着いて早々に目に入ったのはいつぞやにか関わった



「驚いたのは悪かったとは思うが……お前さん、コイツに何したんだ?」


「『視』られたから見つめ返しただけだ。詳しく知りたいなら実際にやってやろうか?」


「……いや、止めておこう。すぐに『鑑定』を人に使うのはエレーナの悪癖だ。いい薬にはなっただろう」



苦笑いを浮かべながら軽くエレーナの背中を叩くタルド。



「へぇ、随分と仲良さげじゃねぇの」


「アドルフから聞いていないのか? 俺達は元々同じパーティーだったんだ。とある事情で疎遠だったが……今は蟠りも無し、だ」


「なるほどねぇ、だから今回のタイミングで『Sランク』に上げたのか」



零刀が『昇級試験』を受けた日から一週間ほど経っているが、その間にタルドも『Sランク』へと上がったのだ。



「まあ、そんなところだ」


「それで、アイツらの特訓とやらはどうだったんだ?」


「ああ、それに関してだが……凄い成長速度だ。お前の同郷ってのはあんなのばかりか?」


「傍から見るとそう見えるのかもしれないが、本来の成長だけで言えばアイツらは俺よりも高いだろうな。俺は持っていた『知恵』に『生命』っていうチカラが備わっただけのただの突然変異だ」



自分が正道な努力では無いものでチカラを得たのだと暗に示しながら、どこが吐き捨てるように言って席に座る。



(もし俺があの時・・・違う状況になってたら、アイツらと一緒に普通に努力して、ちょっと変わった『魔道具』でも作って──なんていう道もあったのかもしれねぇなぁ)



「神野君、悩み事ですか?」


「いんや、ただの妄想に耽ってただけだ。もし過去が違ったら、俺もアイツらと──勿論、先生も含めてだが、一緒に歩んでく『道』もあったんだろうか──なんてな」


「今はどうあれ、過去は変えられませんからね。月並みかもしれませんが、今は先をどうするかが大事だと先生は思いますよ」


「まあ、そうだろうな。しかし、どこか嬉しそうだな、先生?」


「ええ、少しだけ。だって、生徒が胸に秘めた思いを打ち明けてくれたんですから。あなた達『生徒』に先生らしいことはあまり出来ませんでしたから……」


「そうか。まあ、俺個人としては先生の『胸に秘めたる何とやら』も打ち明けて欲しいモンだがねぇ?」


「──っ!?」



零刀の言葉に桜が頬を引き攣らせる。


引き攣らせたのは恐らく、言葉だけではなく──冷たい視線に恐怖を覚えたのもあったのだろう。


桜はその瞳から視線を外せない。


勿論、追い詰めている側である零刀が視線を外すハズも無く、互いを見つめ合う形になり──



「ほらほら、早く来てってば!レイちゃんが桜先生をナンパしてるんだってー!」


「レイくんはそんなことしないよ! 光輝くんじゃないんだから……」


「……僕はナンパなんてしたことないんだけど!!?」


「いや、わからんぞ? 零刀はもう既に二人も美女を侍らせて、あの【精霊王】も配下にしてるんだろう? 今更ナンパくらい……」


「ちょ、隆静声デカいって!」



隆静と注意する鈴。


会話の中で一際大きかったその声に反応して零刀が視線をやれば、そこには階段の陰から顔を覗かせた四人の姿が。



「……何やってるんだお前らは」


「レイちゃんのナンパを観察してた」


「お前なぁ……俺をなんだと思ってるんだ。特に隆静」



ため息混じりにそう言う零刀の傍らで、桜は乱れた息を整えていた。



(い、今のはやばかった。いろんな意味で終わるかと思った……)



「えー、桜先生と息をするのを忘れるくらいに見詰めあってた癖にぃ? えー、うそだあー」



そんなことを思っているとは露知らず、鈴がその話題を言及し始める。



「『お前の胸の内を明かしてくれ』とか言ってたわよこの男」



温かい飲み物を手に戻ってきたリアが笑みを堪えながら煽るとそのまま席に座る。



「ほらー! 」


「……お前ら、おふざけ半分でやってるのはわかるが……約一名それがわかってない奴がいるからそこら辺にしとけよ」



零刀の指摘に全員が辺りを見渡して──彩で止まる。



「え、え?」


「……そうだねー。純粋な彩ちゃんが可哀想だもんね。いやー、気が利くねぇレイちゃん」


「……知るか。さっさと飯を食え。出発の時間が迫ってるんだぞ」



食事をし始めた零刀を見て各々が席について食事をし始める。






零刀の言う『出発』。



それは文字通りこの『帝国』から出ていくという話である。



そして、これから行く先は──『エリヒド王国』。




アドルフの仕える国であり、『勇者』を【召喚】した国。




すなわち──『神野 零刀』を喚び出した国。



アドルフや『勇者パーティー』の面々に「顔だけでも出しておくべきだ」と言われたのもあるが、彼自身一度行くべきだと考えていた。




それは『迷宮都市』で彼らに会い、『帝国』へ来た後も変わらなかった。


と言うよりも『王国』へ行く理由が変わったというのが大きい。





「──食後のお茶、いるならついでに持ってくるけど?」


「ん? ああ、頼む」



いつの間にか誰も居なくなった食堂でリアにそう返しながら今後すべきことを思考する。



(他の【異世界人】連中が何か有益な物や情報を持ってないか。あとは特殊な『技能』なんかも確認しておくべきか。それと──『王城』の図書館か。情報という面ではあそこが一番情報が集まっている)



「はい」


「ん、ありがとうな」



軽く笑みを浮かべながらカップを受け取り口を付ける。




──今の彼は只人の身にあらず、魔性に近い。




魔のモノを喰らい続けその力を我がものとして来た彼の身振り手振りはそのひとつひとつに『魔性』が宿る。




故に、その笑みにリアが何を感じたのかは、若干紅く染まった彼女の頬を見れば語らずとも察せるであろう。




「コホン、何か考え事でもしてるの?」


「ん? まあな。これからどうしたもんかねぇ、と思ってな」


「へぇ、零刀でも不安に感じることがあるんだ」


「不安……か。なるほど、俺は今、不安を感じているのか……未来そのものは力ではどうにもならないから、か?」



嗤う。


バケモノになってチカラを得た今でも未来に手は届かない。




──まだ足りない。






「そうだよな。まだ足りないんだ・・・・・・・・。だから『王国』に向かうんだろ」



多少のチカラを手に入れて、どこか浮かれていたのかもしれない。



慢心していた。



そんな自分を、嗤う。



浅ましいと。


愚かしいと。



「零刀……?」



この女はどうだろうか?


特別な『チカラ』は感じないが……そこそこの素質と『異世界の因子』がある。



「聞きたいことがあるんだけど……って、ねぇ聞いてるの──」


「──そこらの有象無象よりよっぽど美味そうだ」



欲の宿った紫紅の瞳はさらなる『魔性』を醸し出し、彼女の意識を引き摺り込む。



零刀が腰を上げ、顔を寄せる。



緩慢な動きであるのにも関わらず、彼女は身動ぎ一つできない。



「おーい、零刀! 荷積み終わったぞー!」


「──っ!? 分かった、今行く!……悪いな」



隆静の声にふと我に返った零刀は立ち上がり外へと向かう。



「~~っ、あぶな、かった……」



椅子の上で脱力しながらリアはそう漏らす。



(喰われると本能でわかっているのにも関わらず、ソレを拒む考えそのものが浮かばない……まるで──)



「──魅入られたかのよう、だった?」



突然かけられた声に心臓が跳ねる。



「り、鈴……脅かさないでよ……」


「驚いたのは私の方だよ。まさかここまで『魔性』に寄ってるなんて思ってなかったからね。りあちゃんが当てられやすい・・・・・・・だけかも知れないけど……これからレイちゃんに会う時に一人は避けた方がいいよ」



険しい顔をしながら鈴は呟く。




「──もしかしたらもう既に、レイちゃんは限界かもしれない」




------------------------------------------------------------






「荷積みお疲れさん」


「レイトか。馬車に載せればいいと聞いたから載せたが……二頭以上で引く馬車のサイズだが、馬はどうするんだ?」



引手の居ない馬車を見ながらアドルフが問いかける。



「零刀、まさか……」


「いや、さすがに自動車は作れなかった。どうしてもそのレベルの魔力バッテリーは無いし、第一車輪を回転させるとなると変換効率が悪すぎた」


「試したことは試したのか……」



まさか本当にやっていたとは思わず隆静は呆れ顔で苦笑する。



「まあ、エアーサスペンションとかは付けているが……まあ、あとは馬だな」


「この世界にはサスペンションなんてないからね……」



馬車での旅を思い出してしみじみ思う光輝やさらに呆れる隆静を他所に、何も無い空間をノックするように叩く。




──空間を破り、くらい世界からいでるは灰色の馬とそれに跨る黒と灰の鎧騎士。




灰の馬は紫眼を耀かせ、騎士からは紫煙が滲み出す。



二者は空間が閉じると共に姿勢を低くし、零刀へ敬意を表する。



『・・・・』


「面倒だからそういうのは要らん。で、コイツらに御者をさせるから問題ない」


「見るからにヤバそうな見た目なんだが……」


「まあ、騎士の方は元はと言えば俺が使う予定だった鎧を改造したやつだからな」


「……零刀、素材は?」


「勿論、俺だが?」


「『素材:魔王』とか強いに決まってるだろ」



そんなやり取りをしている彼らを他所に鎧騎士は灰馬を馬車へと接続していく。



「お待たせ──って、すげぇっ! 騎士だよ騎士! フルプレートだよ!」


「鈴ちゃん元気だねー」


「どこからそんな元気を出してるんだか……」



ちょうどやってきた他のメンバーが鈴のテンションに着いていけないながらも馬車を見る。



黒色の車体は足下に収納スペースがあり、その上に長椅子が三つほど固定されている。



「レイちゃん! この騎士はデュラハンじゃないの? なんで!?」


「首の中身は無いからある意味デュラハンだぞ。特性も【死の宣告】とかが使える」


「まじで!!? じゃあ頭外したらふつ飛ばされるじゃん!?」


「何しようとしてんだお前は……まあいい。荷物はぜんぶ載せたな? なら乗れ。行くぞ」



このままだと日が暮れる、と零刀は馬車に乗り、他の皆を促す。



「零刀くん、君のの連れは──」


「ん、おまたせ」


「ごめんなさい! 時間かかっちゃいました!」



光輝がそう問いかけた瞬間、零刀の両隣の席にその二人が突然現れた。



「思ったより、荷物がおおかった……あんな量の武器、いつ使うのやら……」


「暗器は『暗殺者』の嗜みですぅ! 使うべき時に使うために沢山用意してるんですよ!」


「……終わったならいいが、いざと言う時はそれを捨ててでも動く時がある。それは忘れるなよ」


「…………なるほど。了解しました」



それとなく真面目な調子の言葉に、シリウナが何かを察したのか真剣に頷いたのを見て、零刀は指示を出す。



「『クロフィル』、馬車を出せ。目的地は『エリヒド王国』だ」



その命令にクロフィルと呼ばれた騎士は馬を走らせる。





零刀の言うように向かう先は『エリヒド王国』。




多くの【異世界人】達が未だ拠点として使っている場所であり──







──『神野 零刀』がこの世界に【召喚】された場所である。

新章の章題は話が進むにつれて解放にして行きたいと考えています。(そういうのをやってみたかった)

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【『ハズレ』と言われた生産職でも戦いたい!!】
並行して書いているものです。

【ココロミタシテ】
何となくで書いた詩です。
これらもよろしくお願いします。
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