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『ハズレ』と言われた生産職は我が道を行く  作者: ナリア
彼らの道は交錯する。
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【天】と【深】

お詫びも兼ねまして、昨日に引き続き今週2回目の投稿です。


皆様も体調管理にはお気を付けください。


今回、やっと戦闘回です。



ツイッターで投稿予約上げたりしてます。良かったらどうぞ。



https://twitter.com/nyafta?s=09



アドルフの踏み込みが地を砕き、零刀との距離を一瞬にして詰める。



常人には捉えられない速度だが、最早人間の領域に無い動体視力で捕捉した零刀は触腕を叩き込む。



「『瞬動』!【魔閃】!」


それをさらなる加速で躱したアドルフは魔力を纏わせた斬撃を繰り出す。



その一撃は余波だけで地を切り裂くが──



「それじゃあ届かねねェのは、わかってんだろ?」



全くの無傷でそう言った零刀は、数多の触手での連続攻撃を繰り出す。



「ぬ、ぉおおおあおお!!」



ガギギギギ! とまるで金属同士がぶつかるような音を立てながら、その全てを己の剣で捌き通す。



「その『剣術』といい、【終懐】といい……本当に予想外だな」


「どれも、お前を失ってから 、誰も死なせないために手に入れたものだ!!」



触手の隙間を縫って、魔力を乗せた突きを飛ばす。



零刀はそれを先程のように受けるが──



「──爆ぜろ、【魔爆】!」



飛翔した突きの一撃が爆発し、零刀を吹き飛ばす。



「……やっぱり気づくよなァ」



触手で体勢を立て直した零刀は、クツクツと笑いながら言う。



「……今まで俺達の攻撃で無傷だったのは、そのコートのお陰ってことだな。効果は、空間を歪めて距離を作ってるってところか。【魔法】での攻撃が効いていなかったのもそのせいか」


「ご名答。それにしても、気がつくのに時間がかかり過ぎじゃあないか?」



アドルフの言うように、それが零刀のコートである【深淵外装】の能力の一つである。


昏キ底ヨリ嘲笑ウアビス・ハウル』の『権能』により新生された【深淵外装】の中でも防御に関する能力で、『コートの表面から装備者までの短い距離を強制的に伸ばす』というものだ。



故に剣で切りつけたとしてもその剣の長さが【深淵外装】の距離……『深さ』まで達していなければ、そもそも当たりすらしないのだ。


それと同様に、【魔法】を放ったところで零刀に達する前にほとんどが消失してしまうのだ。



「ま、この【深淵外装】を超えて攻撃を当ててきたのは【最強】に続いて二人目だ」


「……師匠か。あの人の斬撃は距離を無視するからな」


「へぇ、やっぱりそんな関係か。ま、似たような技だったし、そんな気はしてたけどな」



零刀が『同じ技』と言わないのは、【最強】の使っていた技には届いていないからであろう。



そしてそれを察したアドルフも苦笑しながらも剣を構える。



「……お前は剣を使わないのか」


「アドルフさん相手に使う必要が無いだろう?」


「なら、意地でも使わせてやるさ……!」


「やってみろ!!」



触手が繰り出されるのと同時、アドルフが走り出す。


直線的であった先程とは違い、円を書くように走りながら緩急をつけ狙いを定めづらくさせる。



「やっぱり、こういう相手にはそうやって立ち回るよなァ。俺も、『迷宮』ではそうやって戦ってたなァ」



呑気に言い、逆方向から太い触腕を振るう。



それを察知したアドルフは走る角度を90度変えて零刀目がけて走り、振るわれた触腕に飛び乗ってその上を剣を突き立てながら駆ける。



「いいねェ! これこそバケモノ対ヒトって感じがするなァ!」



笑う零刀を前に、剣へと紅いオーラを収束させる。



「──此は峰すら切り裂かんと剣を振り続け、至りし大峰が如き剣撃!【大峰閃撃】!!」



アドルフの渾身の一撃が、零刀へと放たれる。



その切り上げはオーラを乗せ、生み出されたチカラは白き山の峰の如く空へと登る。



「ゴフッ! く、クハハハハハハハ! 最っ高じゃねェか!! 素晴らしいなァ、オイ!」



血液を撒き散らしながら天高く飛ばされた零刀は高らかに笑い、アドルフを賞賛する。



アドルフの渾身の一撃の威力は零刀の【深淵外装】を貫き、確実にダメージを与えていた。




「──コレで、終わりにさせてくれ」




零刀から遥か下に見える地上で、アドルフは再び剣にオーラを収束させていた。



──そのオーラは今までに無いほどに紅く染まり、そのオーラは天を穿つかの如く高みへと登っていた。




「──あの時お前を救えなかったのは、俺が未熟だったからだ。だからこそ今、俺の手で終わらせる」



アドルフの瞳には、後悔と屈辱と殺意と責任感が混ざり合い、焔のように煌めいていた。



「……コレが、『ヒト』らしい感情おもいってやつなのかねェ」


「──此は天を分かち、因果さえ絶つ為の剣」



それは、まだ彼に【呪】が掛けられておらず、彼がまだ『冒険者』であった頃に呼ばれていた名でもある。



ここまでの全てを乗せて放つ、今彼の放てる最高にして、『最強』の一撃。




「──【天剣】!!!」




その剣は立ち込める雲を切り裂き、零れ差す光とともに振り下ろされる──






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「……終わった、のか」



纏っていた紅いオーラがフッ、と消えて脱力したアドルフが濡れた大地に崩れ落ち、膝を着く。



「──アドルフさん!」


「……コウキか。他の奴らは、どうなった」


「みんな動ける段階まで回復しました! 」


「そうか……なら、俺が命を張った甲斐があったってことだ」


「彩さん! アドルフさんに回復を……!」


「──いや、いいんだ」



回復を促した光輝を止めて、アドルフは続ける。



「流石に生命エネルギーを使い過ぎた。もう、回復に回せる量すら残ってない」


「そんな……!」


「そんな顔するな。お前は『勇者』──ゴハッ!」


「アドルフさん!」


「いいから、聞け!」



悲痛な声を上げる光輝にニヒルな笑みを浮かべてから険しい顔へと変わり、血を吐いてなお伝えるべき言葉を伝える。



「……まだアイツは死んでないだろう。だから、今のうちに遠くへ逃げろ」


「……アドルフ、まさかあの一撃で死んでないって言うのか!?」


「リュウセイの言いたいこともわかるが……届いて無いだろうな。暫くは動けないハズだが……とにかく、ゴフッ、今は逃げて、くれ。できる、だけ遠、くにだ」



喋るのも辛くなってきたのか、絶え絶えに出会っても言葉を紡ぐ。



「そう、すればリーシャが……アイツなら、俺より強いハズだ。だから、伝えてくれ。俺じゃぁ、届かなかったと…………!」



悔し涙を流しながら言うアドルフ。



「……光輝、行くぞ」


「……まだ、アドルフさんが──」


「甘ったれるな! 俺らが生きてるこの世界はこういう所なんだ!! アドルフの決死の覚悟を無駄にする気か!?」



「…………そう、だよね。行こう」



隆静の悔しげな言葉に一筋涙を流し、それを拭って答える。



『──いィヤ、ニガさねェゼ?』



アドルフの【天剣】によって刻まれた大きく深い溝から、声が響いた。



そこからズルリぞるりと這い出でるは触腕、触手、翼、鉤爪、尾、眼球、鱗の生えた巨腕。




即ち──異形。




届いテイた・・・・・ゾ。 ギリギリで『深さ』を稼ゲルだけ稼いダが……このザマだ』



異形の肉体が収縮し、人型を象る。



「……ったく、髪の毛に溜めていた・・・・・・・・・『圧縮魔素』を使っちまったじゃねぇか」



真っ白な髪をガシガシと掻きながら溜息をつく。



その零刀の身体には、大きな斬撃痕が首筋から太腿まで刻まれていた。



「どうにかギリギリ生きては居るが……あと少し『変質異形』が遅れていたら死んでいたかもな」


「……そう、か。そして俺はお前に──」


「ああ、剣を抜かせて貰った。一振だけだが、な」



その左手には『白剣ハクア』が握られていた。



「良かったよ。アドルフさんが予想以上でさ。俺もそこそこに楽しめた。だが……『勇者』光輝、お前は別だ」



黒い魔力が溢れ出て、龍の顎を象る。



「【魔王】に対してロクに対抗できない『勇者』なんて、居るだけ無駄だろ? ──寄越せよ、そのチカラ」


「──コウキ! 逃げろォ!」


「グオオオオオオオオオオ!!」



アドルフの叫びと同じくして、咆哮する龍の顎が迫る。



「【岩壁ロックウォール】!」


「【樹木壁ウドゥ・ウワル】!」



【魔法】で防壁を作りながら走るが、顎は減速する様子もなく、迫り来る。



(これじゃあ、『守護騎士』の俺が盾になってもキツいか……万事休す──いや、ここでコイツらを護らないでどうする!!)



隆静が反転し、顎へと向き直る。



「隆静!!?」


「そのまま走れ! 振り返るな!! ──【最後ノラスト──】」



「──それは、今回は俺の役目だ」



発動直前、突然の衝撃に隆静は吹き飛ばされる。



「──お前ら、生き延びろよ」



──最後、アドルフは彼らに笑顔を向けて顎に呑み込まれた。




それを見届けた瞬間、ギリギリでアドルフの投げ飛ばした『魔道具』が風の爆発を巻き起こし、『勇者パーティー』の彼らを大きく吹き飛ばした。



「……思ったのと違うのを喰っちまったな。まあ、どっちが先でも変わらないか。それにしても、あんなヤツを守るために自分の命を擲つとは……俺には理解できないな」




「──空中とは言え、ここま距離が取れれば『転移魔道具』が使えそうだ! 光輝!…………おい、光輝?」



零刀バケモノを見て


アドルフの死を見て


そんな言葉を聞いて、




宙を舞う中で




光輝の何かが




コワレタ。





「──うわあああああああああああ!!」


「光輝!」



【光盾】を生み出した光輝はそれを足場として蹴り、零刀へと距離を詰める。




「なんだ、戻ってきたのか? 別にあのまま逃げ帰るならそれでも──っ!」



『聖剣』での一撃を素手で受け止めた零刀だが、何かを感じたのか飛び退いた。



「ああ、なるほど。失って始めて、自分の立場を理解したか。犠牲が無けりゃ覚悟が出来ねェなんて、クソ喰らえだが……まあ、それで覚悟しないクソ野郎よりはマシか」


「絶対に許さない……お前だけは殺す!」



そう言う光輝の瞳には、確かに殺意があって──




「……予定とは少し異なったがまあ、いいか。──さあ、やろうか。【魔王】と『勇者』の戦いを!」



零刀は【魔王】らしく堂々と、両手を広げて告げる。



「──『聖光覚醒』」



それを見据え、光輝は一言そう言い放った。



まさかのアドルフさん戦でした。

アドルフさんは零刀の悲劇より再び鍛錬を繰り返し、ここまで至りました。


まあ、『試練の迷宮』で『勇者パーティー』が始めて到達できた階層についていけていた時点でかなりの強さではあったのですが……


彼の過去話については、またいつの日にか。

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【『ハズレ』と言われた生産職でも戦いたい!!】
並行して書いているものです。

【ココロミタシテ】
何となくで書いた詩です。
これらもよろしくお願いします。
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