『王』たちは悩み、今後を憂う。
八月始の投稿です。
私に時間を下さい。
あ、今回で『代表会議』終わります。
それと、今日中に章名が変わる予定です。
それではどうぞ!
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宙を舞った『国王』の首は放物線を描きながらクルリクルリといくらか回り、ゴトリと落ちる。
「対価としてその首、頂いたぞ」
「──ルドルフ!」
護衛として近くに立っていた『騎士団長』のアドルフが声を上げ、駆け寄る。
その言葉を切っ掛けに、現状を理解できていなかった者達が動き出す。
「──お前ら、死にたくなければその場から動くな」
そんな面々へと零刀は『魔王覇気』を発しながら無情に告げる。
「【魔王】! やはり貴様は……!」
「……どういうつもりだ? 【魔王】」
『教主』は激昂しながら、『皇帝』はあくまで落ち着いたまま問いかける。
「言っただろ? その『国王』は『用意できるものなら用意する』ってな。だから、用意できる中で俺が今欲しかったものを頂いたまでだ」
「レイト! なぜルドルフを殺した!? 【召喚】に対する復讐か!?」
「復讐? ……ああ、そういや呼んだのはお前らだもんな。そう捉えるのも無理はない。が、心配するなアドルフ。俺はお前らに対する復讐なんて微塵も考えちゃあいねェ」
「ならなんで……!」
「ソイツをよく見ろ。ソイツは本当にお前の知っている『国王』か?」
「何を言って……!?」
『国王』を見て、驚愕した。
なぜなら、切り飛ばされた首の断面から、血が流れていなかったからだ。
「本当はとっくに死んでたんだろ」
「なんだと……そんな、もし『アンデッド』なら気づかないハズが……」
「気を抜くなよ?──ほら」
その言葉と共に、『国王』の死体から紫色の何かが飛び出す。
「──! クソッ!」
アドルフが咄嗟に斬るが、それは何事もなかったかのように一直線に飛ぶ。
──呆然としていた光輝目掛けて。
「──え?」
「はァ、仮にも護衛としてこの場にいるなら、ボサっとしてんじゃねェよ」
空間を割って唐突に現れた龍の顎が、それに食らいついた。
「せめて見た目の紫に合わせてグレープ味とかならまだ良かったんだが……」
零刀がそう言う間も、龍の顎は咀嚼を続ける。
「……へぇ、『脳』を喰うことによって記憶を取り込む能力か……こりゃ、『寄生』ってよりも『乗っ取り』に近いな」
「……今のは、『魔物』か?」
「ああ。と言っても、造られた魔物だがな。ま、それも含めて話をしなきゃならんって事だ」
そう言ったと同時、外から爆音が鳴り響く。
「っ、今度はなんだ!?」
「外でも始まったみたいだな。外は別のヤツに任せてあるが……そうだな。気になるなら何人か外に見に行けばいい」
零刀のその言葉で、護衛として来ていた何人かが退室する。
「……てか『王国メイド長』。お前分身できるのかよ。後で教えてくれないか?」
「……それなら早く、会議を終わらせるべきかと」
「そうだ! 『光神』様についても教えてくれるのだろうな!?」
「まあ、落ち着けって。俺も引っ張り過ぎた自覚はある。順を追って説明してやるよ。『光神』とこの世界が置かれている状況と──『邪神』についてな」
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「──ん、きたみたい」
目を瞑り、静かに座っていたイリスはそう言って立ち上がる。
「零刀に任された仕事、こなしてみせる」
その場でもう一度目を瞑る。
彼女の主な攻撃手段は『魔眼』。
本来、直接見ることで効果を発揮するシロモノだが、彼女に至っては事情が異なる。
(場所は、『帝都』の東西南北4箇所。ケルベロス率いる狼系、オーガ……じゃなくて、鬼? それも鬼将が率いる軍勢……どれも【鑑定眼】で見ると『魔物』じゃなくて『獄獣』ってなってるのが気になるけど……やることに変わりはない)
イリスが幾何学模様が幾重にも折り重なる眼を片方開く。
それに呼応して彼女の周りを幾つもの【魔法陣】が取り囲む。
「──『全ての根源。即ち全てを内包していた祖を祀らぬ者共よ。未だ祖に気付かぬ者共よ。生死に問わず、汝らは迷える者共である。故にここに、無知への罰と死による浄化を与えん。我、神罰の代行者なり』」
【魔法陣】が輝きを放つ──
「──【神罰代行・浄化救済】!」
瞬間、『帝都』が金色の光に包まれた。
これと言った音は無く、ただただ光の奔流が辺りを呑み込む──
──光が晴れると、そこにいたはずのバケモノたちは消え去っていた。
「零刀に聞いた、異界の神話。わたしなりに解釈して【魔法】にしたけど……べんり。零刀の話は面白いし、ためになる」
話して聞かせていた零刀もこうなるとは思っていなかっただろう。
「それにしても、範囲を4箇所に拡散して、規模を抑えればよかった。魔力八割もってかれた……」
因みにだが、彼女の魔力八割は零刀の保有魔力量を凌駕するレベルである。
「……【魔法眼】に保存してた魔力を引き出して……これで全快」
そしてそれを一瞬で全回復してしまうのだ。
零刀が規格外過ぎて忘れているかもしれないが、彼女も『魔王』。
それも『魔眼』に特化した『魔眼の王』であり、規格外の存在なのだ。
「後は……む? 誰かが上空で戦ってる? 零刀に任されたのはわたしなのに……」
若干の苛立ちを感じたイリスはその場へと【転移】する。
「──なぜ貴方がここに居る!」
大鎌を構えた女性は問いかける。
「私にも私の願いがあるのだ。たとえかつての同僚だとしても、邪魔をするのなら排除する……!」
執事服の男性はそう答えると同時、大鎌の女性へと距離を詰める。
二人は交錯し──
「──【爆滅】」
そこへ光の爆撃が襲いかかる。
「わたしを差し置いて、なぜ戦っている?」
「クッ、新手か……!」
「まさか我々の戦いを阻めるものが居るとは──ッッ!!?」
両者がイリスを見上げ、執事の方が驚愕した。
「な、なぜアナタ様がここに……! そんな、なぜ……!?」
「ッ! 貰った!」
その一瞬をついて、大鎌が振るわれる。
「っ! しまった!」
慌てて後方に飛び、距離を取るが余波で両目が切り裂かれる。
「ク……まさか、『獄獣』をどうにかできる者に加え、『機構』の者も居るとは……完全に予想外でした。ここは退かせてもらいましょう。【獄門】」
「待て!」
大鎌を振るうが、当たる直前で門へと潜られ空を切る。
「……一人逃げたけど、あなたがわたしとやる?」
「……いや、私には別の仕事もある。ヤツが居なくなったのならここで引かせてもらうとするよ。【冥府之門】」
そう言い残して彼女も姿を消す。
「……これで終わり? なんだか、味気ない」
そんなことを思いながら帝都を見下ろす。
そこでは先程の光を『光神』のチカラだといい、崇めるものが多く居た。
「……わたしは『光神』じゃなくて、零刀のためにやったのに。本当に民衆は、楽な方に流れやすい。この程度の愚鈍なヤツら、やろうと思えばやれるのに……」
眼に【魔法陣】を浮かべ──呆れたようにため息をついて消す。
「まったく、救いようがない。それにしてもあの執事、私のことを知っていた……?」
執事の態度を思い出して首を傾げる。
「ん……わからないし、後で零刀に聞いてみよう。あと、褒めてもらおう」
そう言って先程まで居た宿へ戻る。
──その姿を見て恐る者が居たのだが、それにイリスが気が付いていたのかどうかは本人にしかわからない。
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「……ふぅ」
どこからともなく、ため息が聞こえた。
それも無理はない。
つい先程、あの【魔王】が退室したことにより気が抜けたのであろう。
息が詰まるほど突拍子も無く、有り得ないような話であったからだ。
『信じるか信じねェかは、テメェらで決めろ。どっちにしろ、いずれ事は起こる』
そんな言葉を残して彼は去っていったのだ。
「……それにしても、最初のインパクトで場の空気を呑み込み、会場を直し自分色に染めることで主導権を握り、自分主体で話をすすめる。──あの【魔王】には『支配者』としての才能がりますね」
「……『獣王国』で史上最高の【賢王】と呼ばれるあんたから見てもか?」
「そうですね。そして、彼にはチカラを持つもの特有の自信がある。流石に『皇帝』も呑まれたのでは?」
「否定はしねぇよ。ま、その『支配者』としてのチカラが『王』としてのモノとは少し違うんだろうが」
「ええ、それにしてもこの話は突然すぎましたね。『光神教会』からすれば頭の痛くなる事案なのでは?」
「……まあ、そうですね。しかし、私達『光神教会』はただ神に救いを求めるだけの集団ではない。ヒトの標として『光神』様を崇めてはいるが、救うのも救われるのもヒトでしか無い。もちろん、隠すことなく伝えることとします」
『教主』はまさに頭が痛そうに、弱く言った。
「まあ、納得していない者もいるようですがね」
そう言って辺りを見回せば、目をそらすものもいる。
「……しかし、ここで『国王』を殺す必要はあったのか?」
誰かがボソリと零した。
「……あまりこう言うのも不謹慎かも知れませんが、ええ。確かに効果はあったはずです」
それに対して『獣王』が答える。
「まず、『光神』のことを知っているという情報を出すことによって、その情報の真偽を知りたい黒幕はアプローチをかける。そこで殺すことでそれ以上の情報を与えない。これによって少なくとも『国王』を利用していたことに気づかれていることは確定する。なら、『光神』のことも知っていておかしくない」
そこで一度切り、認識度合いを確認してから続ける。
「『国王殺し』と『光神教会暴露』。この二つの行為によって『エリヒド王国』と『光神教会』という二つの大きな勢力が敵に回ることを防いだ。これに関しては我々にまで被害が及んだ可能性があった。そして、我々は救われたも同然の状況で【魔王】にこれ以上強く出ることができない。まったく、やりずらい」
そこまで言い切って、さらに脱力する。
「それで、『王国』は今後、どう動く?」
「グレス……正直、どうしたもんかと悩んじゃいるが……レスト。【転移魔法】で『王国』へ先に帰って事情を伝えろ。恐らく、次期王……いや、『女王』が決まることになる」
「……分かりました」
一言残して、レストは姿を消す。
「……はぁ、どうすればいいんだ。こんな状況」
アドルフが零した言葉は、この場にいる全員の内心と同じであった。
残るは勇者との溝……彼らの思いは交錯し、ぶつかり合う!
次回! まだどうするか決めてません!
と、少し次回予告風にしてみました(予告できてない)




