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『ハズレ』と言われた生産職は我が道を行く  作者: ナリア
彼らの道は交錯する。
118/177

【魔王】は一時のスローライフを夢見る。

新章です。

章名変更はしばしお待ちを。


今週は忙しいのでこの投稿のみとなります。



それでは、どうぞ!



ツイッターにて投稿予定などを上げています。


良かったらどうぞ。


https://twitter.com/nyafta?s=09

──音も無く壁が崩れ、月明かりが差す。



その光を背に、黒紫の翼を背負った人影が現れる。



「よぉ、元気になったか?」


「……あのなぁ、いちいち壁をぶち破って入ってくんのやめてくれないか? ここ要塞だぞ?」


「まぁいいじゃねぇか。前回と違って騒音を立ててねぇんだから」


「いや、『皇帝』の私室に直接来ることが問題だろ。兵士達が慌ててるじゃねぇか」


『皇帝』グレスが言うように、警笛が鳴り響き、バタバタと忙しげな音が扉の向こうから聞こえてくる。


『陛下!皇帝陛下! ご無事ですか!?一体何が──』


「ああ、問題無いぞ! タダの【魔王】の襲撃だ」


『えぇぇええええ!!?』


「おいコラ、余計にめんどくさい事にしてんじゃねぇぞ、クソ皇帝」


「悪い悪い。安心させるためにもお前さんの顔を覚えてもらおうと思って紹介したんだが……? なんで入ってこない?」


『と、扉が開きません!』


ガチャガチャと忙しなくドアノブを動かすが開かない。



それもそのハズ、零刀のちょっとした嫌がらせの『錬成』で扉は壁と一体化しており、既に開くことは無いのだ。



「おいコラ【魔王】、なんかしやがったな?」


「生憎、顔バレは勘弁なんだ。こちとら平穏に過ごしたいんでね」


「ほぅ?じゃあ『国盗り』にきたわけじゃないのか?」


「そんなことするか。【魔王】が国盗りとか確実に『勇者』が討伐に来るだろ」


「『勇者』ねぇ……あの甘ちゃんがお前さんに勝てる気はしねぇけどなあ」


「何でもかんでも殺せばいいって話じゃねぇだろ?」


「【魔王】のくせに正論いいやがって……」


「その【魔王】に助けられた『皇帝』は誰だ?」


「…………で、今日は何の用だ?」



苦虫を噛み潰したような、なんとも言えない表情をしながらも絞り出す。



この前の出来事は彼にとっては忌むべき過去でしかないのだ。



「ああ、屋台でも始めようかと思ってな。コメ寄越せ。あと苗も」


「コメを使った料理で屋台か?」


「ま、儲けようってよりはゆっくりするついでって感じだが……そういや、商売する上で必要なことってあるのか?」


「ああ、それなら『商業組合ギルド』に簡易登録さえすれば屋台ならできるぞ。因みに『料理』の『技能スキル』があれば審査も楽になるが……」


「『料理』か……『ステータス』っと……あ、ほかので気が付かなかったが『固有化』してやがる」


「おま、それ店開いて余裕で繁盛するレベルじゃねーか」


「売ろうと思ってるヤツ持ってきてるが……夜食に食うか?」


「おお! 実はまだ執務が終わりそうに無くてな……ちょうど腹がすいていたところだ。ありがたく頂こう」


零刀が空間を割って取り出した『味噌焼きおにぎり』をなんの煩いもなく手に取り齧り付く。



「……お前仮にも『皇帝』だろうが。毒味もしないでどうする」


「お前さんならそんなまだるっこい真似しないでも殺せるだろう? それに俺には『毒性無効』があるしな」


「……なるほど。ならカラダの内側から喰い尽す微生物を混ぜておいたのは正解だったか」


「ッ!!?!??? ゴフッ!? ゲホッっげほ!」


焦ったように咳き込むが、時すでに遅し。


一度飲み込んだものは咳き込んだだけでは中々吐き出せはしない。



「冗談だ。だが、気を付けておけよ。そういう殺し方もあるってことだ。『技能スキル』に頼りすぎるなってことだ」


「ゲホッ、お前、こんなタイミングで言うなよ……てか美味いな。コメを丸めたものに何かを塗って焼いているのか?」


「ああ。獣人のとこで手に入れた味噌だ」


「……そう、か。俺としては助かるが、いいのか?」



このタイミングで敵国だった所のモノを売るということがどう言った意味を持つのかに気がついたグレス。



「何がだ?俺はただ気を休めるために商売をするだけだ」



問いかけられても零刀はそれ以外に答えない。


結局彼は、どこまで行っても自分勝手。



『理不尽』であり続けるしかないのだ。



それが、生きる為に彼の望んでいたモノであった。



「そうか。お前さんがそう言うなら、そうなんだろうな。よし、こちらで許可証を出しておこう」


「いいのか?そんなことに権利使って」


「さっきの味が気に入ったからな。もちろん俺も食いに行かせてもらうからな?」


「楽しみにしてろ。他にもいくつか案があるんだ。せいぜい腹を空かせて来るんだな」


そう言って許可証を受け取ると部屋から飛び立った。



次の瞬間には既に壁が『再構成』されており、【魔王】の来訪など夢であったかと思えるほどにいつも通りであった。



「強大すぎるチカラをもち、他者を考えず、あくまで己の為に、か。驚く程に自分勝手。なるほど確かに、ヤツは【魔王】だ。お前もそう思うだろ?『ロヴェシア』」



壁に飾られた剣──【魔王の魔剣】『ロヴェリグロシアイム』に問いかける。



『──ああ、そうだな。それに、ヤツはどことなく前担い手の【魔王】に似ている』



遠い、悠久の過去を思い起こすかのように呟く。



「お前、まさかだがアイツに鞍替えしたりしないよな?」


『まさか、今の相棒はお前だ。それにあの【魔王】にはもう剣がある。この【魔王の魔剣】に匹敵する剣が二振りな』


「そうか……それはそれで恐ろしいが……お前がいるならいい。さて、『商業組合ギルド』に【魔王】宛でコメを送っておくか」


そう言いながら扉に手をかける。





が、開かない。




「アイツ……扉をそのままにして出ていきやがったな……はぁ。相棒、手伝ってくれ」


『はいよ。……まったく』




やれやれ感を出しながらもどこか嬉しそうに扉を切り裂いていくのであった。





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「意外と簡単に、許可貰えた……?」


「ああ、多分皇帝さんが気を使ってくれたんだろうな」


屋台を含めた様々な店が建ち並ぶ道を歩きながらそんなことを話す。


『商業組合ギルド』で許可を貰った彼らは屋台をどこに置くかを見定めに来たのだ。



「……店は適当でいいか。設備は最低限物が置ければ構わないしな」


「ん、運ぶの手伝う」



適当に目に入った使われていない屋台を選び、二人で器具などを運び入れていく。



「さて、あとはコレを見えるところに置いとけって言ってたか」



そう言いながら立てかけたのは『営業許可証』と『固有技能:料理』の書かれた看板。



「店名は……『ロード』でいいか。シリウナが買い出しから帰ってきたら調理を始めよう」


「ん、わたしも料理、手伝う?」



「いや、お前料理できないだろ。俺がやるからイリスは客寄せな」


「ん、りょーかい」



「──さて、一時のスローライフと行こうか」



この時の彼は知る由もなかった。



【魔王】となった彼に、そんな簡単に平穏など訪れないということを。




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【『ハズレ』と言われた生産職でも戦いたい!!】
並行して書いているものです。

【ココロミタシテ】
何となくで書いた詩です。
これらもよろしくお願いします。
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