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バグと未来と

五月初めの投稿です。

先週は投稿出来ずに申し訳ありませんでした。


最近体調ががががが……


おっと、それではどうぞ。

「もう行くのかの?」


「ああ、数日単位じゃあねぇのはわかったが、それでも猶予は無い。持って半年なんて希望的観測でしか無いからな」


語り合った翌日、彼らは村のハズレに居た。


「すまぬな。このことに関しては我は──」


「関われないんだろ? わかってる。お前はお前の『自己エゴ』を通せばいい。そのための『権能オーソリティ』、【過去の己との決別アルターエゴ】だろ?」


零刀は知ってしまったのだ。

彼女もある意味で『理』と決別した存在だと言うことを。




──不要だと言われ望まぬ形で切り捨てられた存在だということを。




「レイさーん! 荷積み終わりましたよー!」


「ああ、なら行くか。さて、世話になったな」


「どっちかと言うと、コチラのが世話になったんじゃがな。我等・・の話も聞いてくれたしな」


「……シリウナを巻き込んでもいいのか?」


今までとは調子を変えて、真剣な表情で零刀が問いかける。


「……ああ、その事か。昨夜も話したが、シリウナは妾の望んだ存在でありながら、それを超えてきた。来るべき時に必ず役に立つはずじゃ。それに、ついて行きたいと言ったのはシリウナぞ?」


「……恩情とかは別に要らないんだがな」


「信頼されとるんじゃろ。まあ、温情とかほかの感情があるだろうことは否定せぬがの」


「『感情』、ねぇ……『ヒト』の『感情』ってのが1番理解し難い」


「それはヌシが『人間』でなくなったからか? それとも──まだ『人間』だった頃からか?」


「──さぁな」


そう言い残して零刀は仲間達のところへと向かう。


「遅いですよ! あんなに長い時間おばあちゃんと何を話してたんですか?」


「あー、なんて言うか……難しい話はしてねぇよ。お前をよろしく、的なヤツだ」


「えっ!? ……えへへ、そんな『末永くよろしく』だなんて。おばあちゃんったら、変な気を使っちゃって……全くもうっ」


「ん、零刀──って、何コレ? 頭のおかしな銀狐が見える」


「さあ? ほっときゃ治んだろ。風邪とかと一緒だろ」


「えへへー」


未だに照れ笑いをしているシリウナを『眼』で視てため息を吐く。



「…………風邪なんかより、よっぽど厄介そうな『病』」


「あ! イリス今ココロを読みましたねぇ! ズルいですよ!そういうイリスこそどうなんですか!?」


「? 零刀のこと? ……私にはもう、何も、見え無い」


「ははぁ、アレですね。おばあちゃんの言ってた『恋は盲目』ってやつですね!」


「ちょっと意味が間違っておるんじゃが……それはそうと、零刀はどこに行ったのじゃ?」


「あれ?」


「ん、シリウナが話してる間に、忘れ物があるって向こうに」


「そうか。忘れておった事があってのぅ。少し行ってくるのじゃ」


「……そう言えば、レイさんとイリスってどういった関係なんですか?」


去っていくクヴィホを尻目に、小声でイリスに問う。


「……一言じゃ表せない、けど。命の恩人。元はと言えば、零刀が『人間』を辞めたのは、私を救う為。本人は『否定』するだけかも知れないけど、結果的に救われた」


「『人間』を辞めたって……レイさんはやっぱり元々は『ヒト』だったんですね……まあ、私には関係ないですけどね! 私は今のレイさんしか知りませんし、今のレイさんが好きですからね!」


胸を張ってどこか嬉しそうに言うシリウナを目を細めて、どこか眩しげに見る。


「私ばっかりレイさんのこと喋ってますけど、イリスはどう思ってるんですか?」


その問いはなんの気負いもなく、何気なく聞いたものだった。



「──すべて」


「へ? すべて?」


「そう。今のわたしがあるのは、零刀のお陰。この命も、このカラダも、肉も血も──すべてが零刀のモノ・・・・・


イリスは思い出していた。


迷宮で呪縛から開放された時のことを。

手料理を食べさせてくれたことを。

自分の手足を切り落としてまで生かしてくれたことを。




──気が付けばイリスという存在は、零刀が大半を占めていた。




それを今のシリウナの問いで気が付いてしまった。


本人さえ知らぬ間に象られ始めていた『依存性』は、ここに来て芽を出した。


「そこまで吐露されると、あとから来た私が割り込んでいいものかと尻込みしますねー……」


「ん、問題ない。というかシリウナは

もう、零刀の所有物。だって【奴隷】だし」


「そう言えばそうでした!? 対等に扱われすぎて忘れてましたよ!」


「──と言うか、お前って未だ【奴隷】らしい働きしてないだろ」


そう言いながら戻ってきた零刀が話に交じる。


「買い出しは私がしてましたってば!」


「買い出しだけだろうが。しかも勝手に居なくなるわ……」


「うぅ……それに関しては弁明の余地もございません」


「……まあいい。せいぜいこれから頑張るんだな」


シュンとして耳を伏せるシリウナにそう言うと、今度はクヴィホに向き直る。


「さて、世話になったな」


「本当に世話になったのは我々じゃよ。うまい飯も食わせてもらったしの」


「それを言ったら味噌やらなんやらを提供してくれたことにも……っと、これ以上は埒が明かないから終わりってことで」


「同感じゃ。そう言えば、忘れ物とやらはどうしたのじゃ?」


「ちゃんと回収してきたぞ。流石に永遠に【悪夢】を見続けるのは嫌だろう?」


「ふふふ」

「ククク」


「……なんか、おばあちゃんのが私よりも親密そうなんですが」


笑い合う二人を見て思わずそう零す。


「そうじゃ。最後に占いでもしてやろうか?」


「占いか……やったことないな」


「こう見えても『職業』が『占術師』でな。今まで外したことは無いぞ?」


「ほぅ、そこまで言うなら頼んでみようか」


自信満々のクヴィホにそう言うと「心得た」と言って懐から『水晶玉』を取り出す。


「【水晶占い】か? 面白い」


「さて──【『世界の記アカシックレコード』閲覧権限】起動。【空】よりアクセス経路を確立」


「……『世界の記アカシックレコード』、だと? まさか、この世界にあるのか?」


「なんですか?そのアカシックレコードって」


「捉え方、解釈はいくつかあるらしいが……簡単に言えば『世界の記録』だ。過去、現在、未来における全ての事象を記録しているってヤツだ」


「『未来予知』発動。『占術』にて数多ある可能性から限局──」


クヴィホの姿にノイズが走り、ブレる。


「──【世界ガ流レハ我ガ乱スアマ・ワールズ・バグ】!」


クヴィホの姿が一際強くブレる。



『未来』の彼らの『情報』を見る。



その中には当然、零刀も含まれているわけで──当然彼はそれを、見つめ返す・・・・・




そこには『勇気』があった。


そこには『正義』があった。


そこには『恐怖』があった。


そこには『慈愛』があった。




──そこには『否定』があった。




「──ぐぅ!? かはっ!……はぁ、はぁ。久方ぶりに、全力で『未来』を占ったぞ……」


「世界の情報にそこまでの深さで干渉して、よく消滅しなかったな」


「実を言えば少し危なかったのじゃが……まあ、こうして存在している。それよりも手短に伝えよう。思ったより負担が大きくての。帰って寝たいのじゃ。……先ずはシリウナからじゃな」


「はい!」


「……お前、将来零刀と殺し合う・・・・未来が見えたから、精々死なぬように頑張るのじゃぞ」


「えぇ!? いやいやいやいや(笑)無理ですって! 第一、どうして私がレイさんと!?」


「それは知らん。……ま、見限られぬように頑張るんじゃな。次にイリス嬢。主じゃが……心せよ。このままでは大切なモノを失うぞ」


「……なら、その原因を排除するだけ」


シリウナは落ち込み、イリスは己の魔眼を耀かせる。



「最後に零刀じゃが……すまぬな。やはり見れんかった」


「ああ、気にするな。──代わりに俺が見た。全てじゃないがな」


「……流石、と言うべきかの。最後に、今言った未来はこのまま行けばこうなるという未だ来ぬものでしかない。変えられるかどうかは汝等次第じゃ」


「当たり前だ。俺は俺の道を行くだけだ」


「……案外、汝の『未来』の道筋が見えぬのは、己のチカラで新しい道を切り開いているからかもしれぬの」


「──さぁな」


クヴィホのその言葉に、少し口角を上げて言った。


「……もう行く。じゃあ、またな。【世界に紛れた異分子バグ】」


「またの。【道よりハズレしモノ】よ」


互いの言い様に笑みを浮かべそれ以上は言うことが無いと背を向ける。


「……お前も久しぶりだな。UMAうま


「……ルルゥ」


馬車に繋がれたUMAを撫ぜてから馬車に乗り込む。


「あれ?レイさん、御者は?」


「いらん。家のUMAうまは頭がいいからな。言えば聞いてくれるぞ?お前と違ってな」


「く……まさか、ペット枠にもライバルが居るなんて……私はどうすれば……」


「ぶつぶつ言ってないで、早く乗って」


「ちょっ!?蹴らないでくださいよぅ!」


ゲシゲシと蹴られながらシリウナも乗り、続いてイリスも乗り込む。


「おばあちゃーーん!行ってきまーーす!立派な狐になって帰ってきまーーす!」


その言葉を背に受けたクヴィホは振り向かずに手を振ることで見送る。



「そういや、イリス。荷物は全部持ってきたんだよな」


「ん、カンペキ」


「なら、『迷宮都市』に戻る必要は無いか」


「ん、じゃあどこに行くの?」


「んー、そうだな……『帝国』なんてどうだ?」


「……いや、あのぅ。なんで戦争の敵国に行くんですか」


「いや、米の強奪しかして無いからな。それに、『勇者』についても少し調べたい事があるからだな」


「『勇者』、ですか? どうして唐突に……」


「一応『同郷』だしな。あと、クヴィホと話していて思うことがあったからだ」


「へぇ、そうなんですか。あれ?でも『勇者 』って異界の……えぇっ!?」


「方角は向こうだ。UMA、頼んだぞ。」


「……ルルゥ」


戸惑うシリウナをよそに、指示を出して馬車を進める。


(『勇者』……光輝はどうでもいいとして、隆静達はどうしてるかね)


そういうことを考えてしまうのは、やはり先程見た『未来』のせいだろう。


(──アイツらは今の……いや、『未来』の俺を見て何を思ったんだろうか)



「──レイさん、レイさん。そう言えば私、聞きたいことがたくさんあったんです!」


「なんだ唐突に」


「これから一緒になるなら色々なことを知りたいと思いまして!」


「……そうか。なら俺らのとりあえずの目標は『神を殴ること』な」


「……えぇぇえええええ!??」


「ん、うるさい」


騒ぐシリウナと文句を言うイリスを見て──



(ま、『未来』も大切だが俺が生きているのは『今』だ。それに、この『今』は悪くない)



──心の中で呟いて笑みを浮かべるのであった。





裏設定詰め込み度


???>>クヴィホ>>(越えられない壁)>>イリス、シリウナ>>零刀

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【『ハズレ』と言われた生産職でも戦いたい!!】
並行して書いているものです。

【ココロミタシテ】
何となくで書いた詩です。
これらもよろしくお願いします。
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