勇者side:戦い
色々な事情が重なったことによりしばらく投稿できませんでした。
申し訳ございません。
剣戟が飛び、【魔法】が迫り、それを避ければ目の前に拳が迫る。
それが当たる寸前、隣の木に触れ内部に移動する事で躱す。
(危な──)
「ッらぁ!」
安心したのも束の間、振り切られた拳をそのまま横薙ぎに振るい、中にるドライアドを木ごと吹き飛ばす。
「あっぶな!って言うか、『魔法使い』的な遠距離タイプかと思ったら、ガッツリ近接戦闘じゃないっ!!」
「お前の認識なんて知るか!生憎と、清流の中で生きてきた訳じゃあ無いんで──ね!」
【木属性魔法】によって生み出された木々を先行させ踏み込み拳を握る。
「マズっ、『木々よ、壁を』!」
「はぁぁああああ!!」
ドゴンッ、と轟音とともに樹木の壁が、その拳に吹き飛ばされる。
「──【閃撃】!」
「おっとっ!」
「ちっ、外したか……」
粉砕された木々に紛れ切りかかるが、躱される。
「【風撃】!」
「次は【魔法】ね。いそがしい、いそがしい、っと」
レストの放つ【魔法】をそう言いながら余裕そうに躱すドライアドを見て、桜が口を開く。
「……そろそろ光輝たちが心配なんだけど、アドルフさん、なんか必殺技みたいなの無いの?」
「……ないことは無いが、使ったらしばらくは動けなくなる。それに、隙が大きい。ヘタに使えばこっちが全滅するぞ?」
「……なら、アイツから余裕を無くして当てれるだけの隙ができればいいんだな?」
そう言いながら桜は左腕を前に甲を向けて立て、右腕を引き絞る。
「……できるのか?」
「ま、動けなくなるのは私もだけど……やらずに殺られるのはゴメンだからな」
「…………わかった、任せるぞ。レスト!お前は支援に専念しろ!アレをやる!」
少し考えた末にそう叫ぶ。
「足止めは──」
「サクラさんに任せる!──始めるぞ」
「あいよ。じゃあ、後は任せたからな」
そう答えた桜は『身体強化』の出力を一瞬だけ上げ、距離を詰める。
「速度が上がっても、その程度じゃあ──」
「──『狂化』」
桜がそう呟いたと同時、両者の姿が消え、轟音が鳴り響いた。
土煙が晴れれば、砕け散った樹木に、そこから這い出るドライアドの姿があった。
「痛っつつ……って、ヤバっ!」
飛び退いた直後、拳が叩きつけられ大地が陥没する。
「っ!?コイツ、【狂化使い】か!?」
「──ァァアアアア!」
その声には既に理性知性は無く、湧き上がる感情を破壊衝動の赴くままにぶちまける。
「【狂化使い】、だと?」
【狂化使い】。
これは読んで字のごとく、『狂化』を使うものを指す総称だ。
『狂化』は理性知性を一時的に損失する代わりに強大なチカラを得るという『技能』だ。
──しかしながら、この『技能』は持っている者が少ない。
『狂化』を習得するためにはそれに付随する経験が必要である上に、御しきれなければ理性か戻らなくなる可能性だってあるのだ。
「こうなると厄介──ね!」
「──、───」
桜を囲うようにして木々を襲わせるが、新しく生え出した木々が暴れ周り、周囲の木々を含めて一切合切を吹き飛ばす。
「生やした木々を『狂化』した……?手数を増やしても押し切れないの!?」
「──、───!」
暴れる木々を引き連れて、ドライアドへと襲い掛かる。
ついにはその声に言語性は感じられず、ケモノのごとき野生が滲み出る。
襲い来る木々に足を止めれば拳が嵐のように激しく打ち込まれる。
(【植物魔法】も向こうの『狂化』した木には勝てないし、私のニガテな近接戦闘じゃあ分が悪すぎる……一旦距離を取るか)
躱しながら逃げながら、進行方向に生やしておいた蔦へと溶け込むように同化し、その中を移動して距離をとる。
「っ!【風斬】!」
それを察したレストが蔦を切断するが、その時には既にドライアドの姿は上空にあった。
「さて──『此度まで、植生《我々》は喰まれ削られ蝕まれてきた。今ここに、我が汝《我》らに復讐の機会を与えん。さあさあ集え、ここに成すは我らが敵を喰い散らかす強大な顎』」
木々が、草花が蔦が──森が。
ひとつに集まって形を成したのは──龍のごとき顎。
「──【植生ハ喰散ラス】」
それが桜へと襲い掛かる。
木々が軋み奏でるそれは、まるで咆哮のよう。
「『限界突破』──【崩穿禍】!」
アドルフの準備が終わり、技が放たれたのはその時だった。
「──ッ!?マズ──!!」
「はぁぁぁぁああああああああ!!」
桜との戦闘ですっかり意識から外れていたせいで躱せずにチカラの奔流に飲み込まれる。
放たれていた植物たちが地へとぶつかり辺りに衝撃を撒き散らす。
「──【空絶領域】!」
咄嗟にレストが結界を張ればその直後、土煙や残骸によって視界が遮られる。
「レストか……助かった」
「でも、サクラさんが……」
レストの言うように結界の中にはレストとアドルフ、二人の姿しかなかった。
「くそッ!俺がもう少し早く使えていれば──」
アドルフは悔しげに言葉を発するが、それ以上紡ぐことはできなかった。
土煙が吹き飛ばされたのだ。
「──『擬似神化』」
その声に視線を向ければ、宙には背と緑の髪が伸び、大人びた姿のドライアドの姿があった。
「なっ……無傷、だと……?」
「そんな……過去にアレは、山に穴を開けるほどの威力があったのに……」
「私も、まさかコレを使わされるとは思ってなかったよ。ま、結局弱者が強者をどうこうするためには何かで上回らなくちゃいけないってことだよ。そう、例えば──犠牲を払うこととか、見捨てることとか──ね!」
突如として生え出した木々が彼らを叩き潰そうとするが、結界に阻まれる。
「……【空間魔法】か。移動できない代わりに『空間』を固定した、一時的な絶対防御だな」
そう言いながら、抉られた地を背に、淵に降り立つ。
「ま、いくら空絶の結界とはいえども、【擬似神】の『格』なら壊せるか」
「くっ、なぜ……何故そこまで私たちを!あなた達ドライアドは、あなた達の縄張りを壊さなければ手は出さないはず……!」
「そうだ。その通りだ」
「なら、なぜ──」
「最近な、縄張り同然の場所ができたんだ。しかしそこは──既に荒らされていたよ。そのきっかけは、お前らだ。後はもう、わかるよな?」
そう言いながら、歩みを進める。
──その時だった。
「──なら、私のシマを守るためなら、お前をぶっ飛ばしても構わねぇよなぁ?」
その声とともに、背後から羽交い締めにされる。
それをしたのは、先程直撃していたはずの桜だった。
「なっ、なぜ生きている!?」
「ああ、死ぬかと思ったぜ?でもまぁ、アレのお陰で目ぇ覚めた」
その体勢のままでドライアドの首に腕を掛け絞める。
「ぐっ、まさか、『狂化』したままで、理性を……!」
「だーいせーいかーい。このクビ、頂くぞ!」
命の危機を感じたドライアドは暴れ始めるが、『狂化』した桜の腕力は尋常ではなく、抜け出せない。
(まずい、まずいまずいまずいまずい!このままだと本気で殺られる!?このまま私が死んだら、彼女だけじゃ……仕方ない、か)
「──ドライアドが植物の精霊って言うのは知ってるよね。なら、それが擬似的にでも『神』に至ったらどうなると思う?」
「あ?何を言って──」
「サクラさん!今すぐそのドライアドから離れて!」
ドライアドの言葉に何かを察したレストが叫ぶ。
「──もう遅い」
二人を覆い隠すように植物が生い茂る。
その中から眩い光が溢れ出て、弾けた飛んだ。
桜さんはキャスターではなくバーサーカーだったようです




