それらも彼の者の『痕跡』であるが、彼らは知る由もない。
新年明けまして、今年もよろしくお願い致します。
年末はなかなか忙しく、執筆の時間が取れなかった次第にございます。
(コミケにすら行けなかった……)
ではでは、新年の挨拶もこのくらいにして、どうぞ。
「着いたな。ここが『モニア』だ」
「ここが『精霊の森』……まあ、人間には『迷いの森』として知られていますが……そこに一番近い街です。そして──『魔族』に襲撃を受けた都市でもあります」
馬車から顔を出しながらアドルフが言ったことに同行している【宮廷魔導師】のレストが補足する。
「その割りには街に被害が無いように見えますが……」
「そう言えばそうだな。その襲撃自体は『冒険者』たちが止めたって話は聞いていたが、被害に関してはまだ聞いてなかったな」
街を見ながら歩き話をしていたがその理由もすぐにわかった。
それは街往く人たちの会話でだが、いわく
戦場となった街のすぐ外にて戦闘が行われ善戦していたものの、唐突に現れた【神話最悪の邪龍】によって戦線が崩壊しかけた時──それ以上の『最悪』が現れたのだという。
襲撃してきた『魔族』曰く──『魔王以上に、魔王』。
【神話最悪の邪龍】をまるで弄ぶかのように殴り、蹴り、掴み、投げ、圧倒したという。
──その口元に、笑みを浮かべながら。
そして最後には……食べてしまったと言う。
「……嘘ではなさそうだな。そんなことが可能なのか?」
「いえ、私の知る中ではかの【最強】でもほぼ不可能かと。身体強化系の『技能』だとしてもそれほどのものは……」
この世界の住人であるアドルフの言葉に、同じくこの世界の住人であり知識人であるレストがそう返す。
「って言うか、食ったって……ホントに『人間』かよ……」
アドルフがそう言う程にありえないことなのだ。
「龍って美味しいのかな?」
「リン……恐らく今の俺らだと食べる前に食べられるぞ?」
(まあ、低レベルの龍であればコイツらなら逃げるくらいはできるだろうがな……)
アドルフはそういうが、内心ではそう思っていた。
「それにしても『モニア』といい『レラント』といい、異常事態が多すぎないかしら?」
「桜先生の言う通りですね。もしかしたら『レラント』のアレも『モニア』の【魔王】と同一だったりするかもしれませんね」
桜の言葉にりあが同意し、そんなことを言う。
しかしながら、今の彼らにそれが真実であることは知る由もなかった。
「……レスト、一応、念の為ではあるがリーシャにこのことを連絡しておいてもらえるか」
「……了解です」
「さて、とりあえず『精霊の森』に行く馬車がないか調べに行くぞ」
そう言って探し始めたのだが──
「……無いな」
「ありませんね」
「無いんですか?」
「無かったな」
結論、見つからなかった。
「うーむ、我々の馬車を使うか……しかし、乗り捨てるわけにもいかんしなぁ。……そうだ、コウキの『アイテムボックス』に入ったりしないか?」
「……あ、入りそうですね」
「そうか……なら馬車はどうにかなるとして……さすがに兵馬を野に放つのはどうかと思うしな。兵馬は置いて、ここで一頭買って行くか」
「では、私が買ってきますね。アドルフには値段交渉なんてできないですからね」
そうしてこれからの行動が決まっていく中、隆静は街を眺めていた。
「隆静?どうかしたの?」
「鈴か……いや、ここに居たっていう【魔王】ってのについて考えててな……この街をどういう経緯であれ救ったってのに、バケモノ扱いされて、恐れられてるなんて、報われないと思ってな」
「……そう、だね」
それを聞いて同じことを思ったのか、彩が悲しげに呟く。
(……)
そして誰の視界にも入らないところで、りあは一人遠くの空を見つめていた。
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「──ふむ、やはり安全面を考えれば『勇者パーティー』に俺、案内としてレスト……森の中ということかはも加味してサクラさん……まあ、ここにいる面子全員だな」
森に向かう馬車が揺れる中、そんな会話が進む。
ちなみにであるが、同行していた他のメンバーは修行のためにと『帝国』に留まっている。
「まあ、これが一番でしょう。中に向かう前に、『ステータス』の共有はしておきましょうか」
レストの言葉に頷き、各々が『ステータス』を見せ合う。
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コウキ ヒジリカワ LV120 Age16 男
種族:人間
職業:勇者
称号:光の勇者
体力 15000
魔力量 17000
魔力 150000
筋力 160000
敏捷 120000
耐性 120000
魔耐性 82000
〈固有技能〉:獲得経験値量増加 聖剣
〈技能〉:勇者Lv8【剣術Lv9 光属性魔法Lv9 闇耐性Lv8 鑑定Lv8 アイテムボックスLv9 限界突破】
火属性魔法Lv4 水属性魔法Lv3 魔力操作Lv9 身体強化Lv10
〈加護〉光神の加護
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サヤカ シラセ LV90 Age15
種族:人間
職業:治癒師
称号:【慈愛】
体力 78000
魔力量 180000
魔力 180000
筋力 49000
敏捷 49000
耐性 48000
魔耐性 70000
〈固有技能〉:回復魔法 付与魔法
〈技能〉:魔力操作Lv10 身体強化Lv4 火属性魔法Lv7 光属性魔法Lv8 水属性魔法Lv7
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リン キノ LV89 Age15
種族:人間
職業:槌操師
称号:
体力 92000
魔力量 48000
魔力 51000
筋力 100000
敏捷 65000
耐性 83000
魔耐性 38000
〈固有技能〉: 身体強化
〈技能〉: 槌術Lv9 土属性魔法Lv8 魔力操作Lv8 火属性魔法Lv5
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リュウセイ キムラ LV91 Age16
種族:人間
職業:守護騎士
称号:【守護者】
体力 180000
魔力量 68000
魔力 58000
筋力 65000
敏捷 59000
耐性 190000
魔耐性 170000
〈技能〉:守護Lv7【身体強化Lv8 鉄壁Lv8 金剛体Lv7】 剣術Lv8 魔力操作Lv6
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サクラ ミドリカワ LV85 Age23 女
種族:人間
職業:樹術師
称号:
体力 70000
魔力量 180000
魔力 190000
筋力 82000
敏捷 59000
耐性 59000
魔耐性 79000
〈固有技能〉:木属性魔法
〈技能〉:魔力操作Lv9 風属性魔法Lv9 土属性魔法Lv6 体術Lv9 棒術Lv7 体術Lv8
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坂本 りあ LV90 Age15 女
種族:人間
職業:剣士
称号:【疾風乱舞】
体力 80000
魔力量 69000
魔力 56000
筋力 64000
敏捷 110000
耐性 50000
魔耐性 50000
〈固有技能〉:疾風迅雷 風雷属性魔法
〈技能〉:剣術Lv9 身体強化Lv7 魔力操作Lv6 瞬動Lv10
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「……こうして見るとやはり、【異世界人】の成長は早いし、大きいな」
「そうなのか?俺らはあまりこっちの世界の人の『ステータス』をあまり見た事がないからな……それはそうとして、今更なんだがアドルフさんとレストさんの『ステータス』見たことなかったよな?」
「ああ、そう言えば確かに……」
隆静の言葉に興味を持った光輝が乗る。
「そう言えばそうだったな……うーむ、俺たちにも事情があるもんでな……まあ、これから共闘することを考えて一部だけ見せておこう」
そう言い、今まで見せなかった『ステータス』の一部を見せる。
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アドルフ・ソガード Lv89 Age42 男
種族:人間
職業:騎士
称号:【騎士団長】
〈固有技能(ユニークスキル〉:心眼 並立思考 思考加速 魔剣召喚 身体強化
〈技能〉: 魔力操作Lv8 魔装Lv5 魔纏Lv8 火属性魔法Lv3 風属性魔法
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レスト・フレアル Lv98 女
職業:精霊術師
称号:【宮廷魔導師】
〈固有技能(ユニークスキル〉:契約 並立思考 思考加速 精霊召喚 魔力支配 風属性魔法 水属性魔法
〈技能〉:火属性魔法Lv3
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「うわ、すごい『固有技能』の量だな……」
「でも、『ステータス』は見せてくれないんですね……」
「『固有技能』は特殊なモノと『技能』を高め、己のモノにしたものとがあるからな。『ステータス』の差に関わらず『固有技能』の差で勝敗が決まることも多いんだ」
「『ステータス』が全てじゃないと言うわけですか……」
「そうなるな。【魔法】のがわかりやすいか?その一撃が戦況を変えたりするってのが他の『技能』にも言えるってことだ。ま、さらに言うならばそれは『技術』にも言えることだがな」
「『技術』、ですか?」
アドルフの言葉に疑問を感じた彩が問う。
「ああ。例えば戦闘中の視線や言動、行動や身体の動かし方があるな」
その言葉に感じるものがあった光輝や隆静が納得する。
その時だった。
「アドルフ!魔物よ!厄介なのが出たわ!」
「これは……『イビルアイ』か!」
馬車の前方にいたのは、触手を持つ、宙に浮いた巨大な眼球。
「気をつけろ、あいつは『邪眼』と言って『魔眼』に似た『技能』を持っている。『魔力』や『瘴気』を感じたらヤツの視線から外れるんだ。これも『ステータス』には現れない技術だ。わかったな!」
「「「了解!」」」
(しかし、こんなところに『イビルアイ』が出るなんて情報、あったか……?)
そんな疑問を覚えつつも、戦いへと身を移していくのであった。




