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自サイトから転載。少々下品な描写が入るので、R15にしています。
平凡を貫く俺には可愛らしい顔立ちをした双子の兄様がいた。
両親共に美形。そして、兄もそれに倣ったように整った美形部類の顔だ。
けれど、俺はどこをどう遺伝子が誤作動を起こしてしまったのか、二人に似ずの平凡顔でこの世に生を受けた。
病院で一人だけ取り違えられたんじゃないかって心配した両親がDNA検査なるものをしたようだが。
「血は、繋がっている……確実に私達の子だ」
と、いうワケで母様の不倫という可能性も綺麗に吹き飛ばして下さったその紙切れには母も感謝しただろうな。
まぁ、別に両親が冷たいってワケでもなけりゃ、兄も俺に辛く当たるっていうのも一切無い。
なんて素敵な家族なんだ。
そう、俺の目の前で起こっている出来事を一生見ていなけりゃな。
「うっ、あ!やっ……だめ、いく!いっちゃっ……!」
「はっ、……俺はお前が好きだったんだっ……頼む、俺の想いにこたえてくれっ!」
「あ、ぅ……う、ん……ッ……ぼくも、ぼくも、本当はヨウのことっ……んあぁっ!」
二人して絶頂を迎えた後。親切に説明してくれる解説キャラの如く素敵な言葉をペラペラ勝手に喋ってくれやがりまして………。
「本当はお前の弟のことなんざ、どうでも良かった……お前が手に入るなら………」
「ヨウ……ぼく、弟とヨウが付き合ったって聞いて、とても悲しくて……でも、弟の恋人だからって、我慢してっ……」
「っ!?……悪かった。だが、これからはお前だけだ……俺の恋人は、お前………」
「ヨウ……」
「あいつとは別れる。だから、俺の側にいろ」
「ヨウ!」
「マナト!」
ねっとりと抱き合っている俺の恋人と兄様。
その光景を見てショックを受けているは受けている……が、心の隅っこで納得している自分がいるのもまた事実だった。
……そりゃそうだな。俺みたいな平凡に、あんな格好いい奴が本気になんてなるワケねぇし。
告白してきた時には舞い上がったモンだ。
ずっと男子校なるものに通っていた俺は同性愛者寄りの傾向にあったし、なにより学校内で人気が高かったヨウが俺に、なんて……夢みたいだと乙女思考に陥っていたのも仕方ねぇ。
けど、けどな?
兄に近付く為に俺に告白って、だったらはなっから兄に告白しといた方が良かったんじゃね?って思うワケですよ。
俺を通過点にする必要なくね?って思うワケですよ。
だって、兄だって同じ学校に通っているし。人気もあったけど、付き合っている人なんていなかったしさ。
うぁ~……なんだよもぉ~………。
ガチャ……。
天井を仰ぎ見てどうにもならない“やるせなさ”ってのを噛み締めていた俺は、情事後の二人が部屋を出てきていたのに一瞬気付かず、部屋を出るタイミングを逃してしまった。
迂闊。
「カヤトッ!?い、いつからそこにっ……」
「チッ、おいテメェ……マナトに何かしてみろ、殺すぞ」
うぇえぇッ!?
怯えたようにヨウの背に隠れる兄の姿にも唖然だが、ヨウの俺に対するその言葉にも驚きが隠せないわ。いや、ホントマジで!
「よ、ヨウ……」
「安心しろ。俺が守ってやる」
んだよこの図!
愛し合う二人に勘違いしたストーカーが等々部屋に乗り込んで来ましたってか?
「……………………」
なんか……もう、馬鹿馬鹿しい。
「ヨウ……これ」
一気に感情の何処か一部が冷めた俺は、ヨウに貰っていた合い鍵をテーブルの上に置いて深い溜息を吐く。
……帰って映画でも観てから寝よ………。
どうでも良いって感じで部屋を出ようとしたけど、そういえば大切なことを言っていなかった気がする。
「ヨウ。俺達、明日から他人だから。じゃ」
ヒラヒラと手を振ってようやく部屋を出ることの出来た俺。
そこから一気に走り出した俺。
たまたま逃げ込んだ真夜中の公園で一人。
「うぁ、あぁっ……ク……うぅ……ん……」
咽び泣く俺。
恋をしていた大好きな相手。
あんなフラれ方をして悲しくないわけがないっつぅの!
……本当は。
本当は大声で泣き喚きたい。
けれど、そんなことをしたらさ、なんか負けた気になるような気がしちゃって。
だから俺は嗚咽を漏らしながらしか泣くことはしなかった。
「う、……ぅ、ッ……ク……うぅ………」
ぼっろぼろ泣きまくっていた俺の背後から突如、にゅうっ、と何かが突き出てくるのが視界に入って、俺は両肩をマジにびくつかせる。
にゅうっと出てきたもの。
それは人の腕だった。